贖罪少年くれしま☆ミツザネェ!   作:ヌオー来訪者

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 EXAMシステムスタンバイ……と言うのは冗談として。


第04話 蒼い騎士

「時間、あるかしら?」

 

「え、えぇ一応は」

 

 ここでマミに出くわすとは思わなかった。……マミと連絡先の交換はしていなかったし、恐らくマミはさやかを探していたのだろう。

 

 人通りの少ない場所の、あの魔法少女体験コースの際に光実とマミが共闘した廃ビルの入り口前まで連れられ、マミの口からぽつりと呼んだ理由を語り始めた。

 

「魔法少女になりたいと、思った?」

 

「……それは」

 

 マミの問いにさやかは答えに詰まる。先ほど少しだけ魔法少女になりたいと思いかけたのだが、今はどうすればいいのか分からず宙ぶらりんなのが現状だ。

 悩んでいる内にマミの口から驚くべき言葉が放たれた。

 

「申し訳ないけれど魔法少女体験コースはこれでお終いにさせて貰うわ……」

 

「えっ?」

 

 マミの言葉にさやかは驚愕の余り眼を丸くした。

 

「それは、どうして……」

 

 さやかには分からなかった。自分たちが即決しなかったからなのか。

 

「勝手なのはわかっているわ。けど、政美周子さんの一件もあるし、これ以上アナタたちを巻き込めないわ」

 

 即決していれば、マミと一緒にあの連中と戦えたのだろうか。あのいけ好かない男を叩く事も出来たのか。さやかの脳裏に様々な後悔が渦巻く。今の自分たちは足手まといなのだとマミは考えたのかとさやかは頭の中で結論付けた。

 思考している内にマミが「ごめんなさい」と辛うじて微かに聴こえる程度に呟く。何故、マミが謝るのかさやかには分からなかった。

 

――それに、今のあたしには戦極ドライバーが……!

 

 さやかは自分の手提げ鞄の中に入れた光実から(本来は自衛のために)託された戦極ドライバーを取り出そうと試みて、鞄の中に手を突っ込もうとしたが、マミの視線はさやかの方には無かった。

 

「……どうしました?」

 

 マミの表情が、先ほどの寂しげな表情から一転。険しい表情へと変わる。さやかは何が起こったのか察しかねていたが、マミの視線の先を辿るとあるものに行き着いた。

 

――グリーフシード!?

 

 黒々とした瘴気を放ったグリーフシードが入り口の床に転がっていた。このままでは孵化するのは時間の問題だろう。

 

「逃げなさい……!」

 

 だが、マミの言葉は虚しく、さやかもマミをも巻き込んでグリーフシードが孵化により発生した結界に呑まれ――この『人の世界』から消え去った――

 

 

 

 

「ふん……」

 

 脇でほくそ笑んでいる正治の姿に気付かないまま……

 

 

 

 

 気が付けば、そこは以前に見た結界に似ているような気がしないがそれと比べたら薄暗い光景が広がっていた。その様はまるで迷宮の廊下だ。

 廊下の両脇には重厚な鎧騎士甲冑が3体ずつ立っている。

 

「拙いわね……」

 

 マミの表情がこれまで以上に深刻な表情になって、奥の扉を見据える。さやかも奥の扉をを見ながらマミから伸ばされた手を掴んで、奥へと歩き進む。

 両脇に並んでいる鎧騎士甲冑の列を通り過ぎると、がちゃがちゃと背後から金属がぶつかり合う音がこの魔女結界通路に響き渡った。

 

「っ……!?」

 

 さやかがほぼ反射的に背後を振り向き、マミも少し遅れて振り向く。すると、両脇に置かれていた甲冑たちがガタガタと震えていた。

 

 そして今のさやかたちから見た一番奥にいる甲冑からがちゃりと音を立てて歩き始めた。

 

――だろうと思ったよ!?

 

 余りにもあからさま過ぎる展開ではあるが、それ故に寧ろ恐怖感を感じる。自分より圧倒的な質量を持つものがこちらに向かって突っ走てくるのは恐ろしいものである。

 

 マミは、ソウルジェムを取り出して魔法少女の姿へと変わり、さやかを背後にやってマスケット銃を迫る甲冑……使い魔の群れに向けた。

 

 

 やはり、銃を持つ手が震えていた。何時か自分は死ぬのではないのかという恐怖心と、まどかの自分は弱くないという言葉に応えたい思いと、人を守るという使命感の板挟み。口の中が渇く。

 

「……っ」

 

 マミは襲い来る恐怖心を振り切り、迫る騎士甲冑型使い魔に向けた銃の引き金に力を入れて引いた。――ズドン、と引き金を引くと同時に耳を打つ銃声。

 そして、先程の銃声は何だったのかと問い詰めたいぐらいにカンッと渇いた音を立てて騎士甲冑のような使い魔の胴体に小さく火花が散った……

 

――やはり駄目なの……!

 

 騎士甲冑のような使い魔が固いのか、己の精神状態が良くないのか。恐らく両方だ。寄りにもよって防御力の高い相手に出くわすとは。

 

「マミさんっ」

 

 さやかの声に、マミは踵を返し扉の方へとさやかを連れて走り出した。戦う度に、迫るお菓子の魔女の姿を思い出す。思い出すたびに手が震え、魔力の凝縮をミスって弱い弾丸しか放てない。

 大元である魔女を優先的に倒すべきか……いや、それは魔法少女としてそれでいいのか? 使い魔は魔女を倒しても力を持って居れば消滅しない。それどころか魔女へと変質して人に更なる害を成す。

 だが、こうやって拘っていればさやかも自分も死んでしまう。だからまず、さやかを逃がすために結界から脱出するべきか――

 

 走る勢いを止めないまま扉の門へと手を伸ばしてからドン、と乱暴に叩く。すると扉が開き、そのまま別の部屋へと二人は突き進んだ……

 

 

 

 突き進んだ先には薄暗い空間が広がっていた。よく古びた洋館にありそうな広いエントランスに似たの空間が広がっていた。それにふと昔プレイした帽子を被った髭の弟が活躍するゲームを思い出す。

 だが、それを思い出した直後、現実に引き戻される。その空間には先程の通り道に居た騎士甲冑型使い魔よりやや数の多い使い魔で溢れかえっていた。その数……10か。

 

 ここまで状況が深刻だとは――マミは苦虫を噛み潰したような顔で前方に迫る数体を見据えた。魔女の居場所をサーチし、この部屋の奥の扉の向こうにある魔女の居場所を察知する。

 

 マミは、さやかの手を掴んだまま再び走り出した。

 

 

「っ!」

 

 勢いよく、使い魔の前まで進みさやかは攻撃を覚悟して走りながら思わず目を強く瞑るが、マミは襲って来る使い魔を拘束魔法で一時的に動けなくしてしまっている為、使い魔はマミたちを襲う事は出来なかった。 だが、拘束魔法の効力はお菓子の魔女との戦いより前程の効力を持っておらず、多少距離が離れると忽ちその効力を失ってしまう。

 だから、一歩一歩少しでも遠くまで進めるように大股で進んでいくが為、転びそうになりさやかは眼を開ける。

 さやかは何となくマミらしからぬ行動に違和感を覚えつつあった。それを問い詰める余裕は周囲が許さない。ガシャガシャと音を立てて少し離れて拘束から解放された使い魔が迫る。

 

 

 魔女の居場所に通ずる扉の取っ手がはっきりと見える所まで至ったその時、横から何か大きな影がさやかの視界まで広がった。

 横を向くと槍を携えた使い魔が、剣を振り上げている姿さやかの瞳に映った。――伏兵か。

 

「危ない――ッ」

 

 さやかよりやや早く察知したマミが使い魔の強襲に驚愕したさやかを突き飛ばす。振り下ろされた剣は空を斬り、床にずしんと音を立てて突き刺さった。

 

 突き飛ばされたさやかは床に尻餅を突き、隙を突かれて殺されまいと根性で起き上がって、周囲を見渡す。

 

 四方八方重厚な鎧の影……完全に囲まれていた。マミも、さやかも。図体のある使い魔の群れに。マミとさやかは別々に分断されており、マミがさやかを助けに行く事は困難な状態にある。万事休す、四面楚歌。そんな言葉が良く似合う状況にさやかの膝は笑っていた。

 マミがマスケット銃で発砲するも、さやかとマミの間に立っている使い魔はびくともせず、銃声と渇いた音がこの場に空しく響くだけ。マミにゆっくり迫る使い魔にさやかは思わず叫ぶ。

 

「マミさんッ! ……あっ」

 

 状況を覆すだけのものが手持ちバッグの中に入っている事、この時にてそれに漸く気づいた。さやかはバッグの中を探り、時間を掛けず戦極ドライバーを取り出し、腰に巻き付けた。するとフェイスプレートが発光し、騎士を模した仮面の模様が刻まれる。

 

 

 ……不思議と、切迫した状況下さやかは冷静だった。さやか自身それに驚く暇も無く、脳裏に光実の変身が脳内で再生される。さやかはそれと同じように、別に取り出したロックシードを開錠させた。

 

【バナナ】

 

 頭上からクラックが出現し、バナナ型ユニットが出現する。開錠させたロックシードをドライバーにセットし、拳で叩くように閉錠させる。

 

「美樹……さん?

 

 マミにとってその光景は奇異に見えた。確かに光実がさやかに自衛用にドライバーを渡したのは知っているし、現場を見ている。だが、光実がやる事というイメージのあったマミにとってはやはり衝撃的で少し寂しいものであった……

 

【ロック・オン】

 

 閉錠するや否やドライバーからトランペットによるファンファーレのような待機音が流れる。そしてそれからさやかはカッティングブレードを勢いよく倒した。

 

 【カモン!】とドライバーが電子音声で放つや否や、バナナ型ユニットがさやかの頭に覆い被さる。被さると同時にさやかの身体が蒼と銀を基調とした素体(ライドウェア)に覆われて、バナナ型ユニットを被ったさやかの頭も装甲に覆われる。その姿はまるでさやかたちは知らないが、アーマードライダーバロンを彷彿とさせる(但し、雰囲気だけで色々形状は異なる)素体。

 

「美樹さん……がバナナ!?」

 

 マミには巨大なバナナを被った騎士が非常にシュールに見えたらしく周囲の迫る使い魔を忘れて叫ぶ。それに――

 

「バナナじゃないです! バナナですけど!」

 

 などと意味の解らない事を言い返しているうちにバナナ型ユニットが変形し、鎧の形へと変えた。

 

【バナナアームズ! Knight of Spear!】

 

 完全に変形し切ると、右手に専用武器(アームズウェポン)である槍型武器『バナスピア―』が出現する。……その姿は女鎧騎士を思わせる外見だった。線がどちらかと言えば女性的である。まぁ中身が中身だから当然か。――自分の装備や状態を確認している余裕はさやかには無かった。光実の龍玄と同じ理屈ならそれなりに戦える筈だ。そう考えたさやか、いや――アーマードライダー、シュバリエはバナスピア―が槍である事だけを確認してマミのもとへヤケクソ気味に叫び声を上げながら向かって突っ込んだ。

 

「うあああああああああああああああああああああッ!!!」

 

 立ちふさがる使い魔を掻い潜り、マミに迫る使い魔をタックルで跳ね飛ばした。

 

「でぇぇぇぇぇえええぃい!」

 

 勢いよくぶつかり、使い魔ががしゃんと喧しい音を立てて倒れてしまい、シュバリエは勢いのままにマミのもとへ。

 

「マミさん!」

 

 そしてそのままマミを抱えてこの使い魔の群れから大きくジャンプして離れた。着地して、マミを降ろした後、シュバリエがバナスピア―を構えた。どこまでやれるか分からないがやるしかあるまい。後ろに居るマミは動けないようで一人でやるしか無い。

 

 一体の使い魔が二人のもとへ先行して迫る。それをさやかは――バナスピア―を突き出した。

 

 

 確かな、手応え。バナスピア―が使い魔の鋼の胴体にざくりと綺麗に突き刺さった。刺さるや否や使い魔は糸の切れた操り人形の如くぶらりと四肢に力を無くし、黒い瘴気となって消え去った。

 

――やった!?

 

 さやかは仮面の下で顔を綻ばせる。これならマミを助けられる。そんな気がした。第二波としてもう一体が剣を持ってシュバリエに斬りかかるが、それをバナスピア―で薙ぎ払い、横方向へ吹き飛ばした。

 

――行ける。

 

 マミは今部屋の片隅に居るので位置取りを間違えなければ背後からの襲撃でマミや己がやられる事は無いだろう。さやかは意を決してバナスピア―を握り直して構えた。

 

 恐怖、そんな感情もあったが、マミを死なせたくは無かった。短い間でも尊敬していた。尊敬している。譲れないものがあったが故、さやかは引き下がろうとは思えなかった。光実のようにやっていけるかは分からない。でも、光実が自分たちを助けてくれたように勇気を出す事くらいならば……出来る筈。

 

「さぁ、掛ってきなさいよ……!」

 

 気合いを入れ直し、襲い来る使い魔をバナスピア―で使い魔を貫き、切り裂き、薙ぎ払う。魔女相手は自信が無いが、使い魔程度なら何とか対応が出来ると、さやかは思った。

 不意を突かれて掴まってしまうが、出力で無理矢理振りほどく。その際に使い魔の腕が引きちぎれて地面に転がり、腕をもがれた使い魔にシュバリエは使い魔の胴体に拳を放つ。鋼を貫き火花を立てる。胴体を貫通した直後、その使い魔は消滅した。

 この場に居る最後の一体が槍と盾を携えてパラディンに飛び掛かる。それにシュバリエはドライバーのカッティングブレードを1回倒した。

 

【カモン! バナナスカッシュ!】

 

「行けぇッ!」

 

 黄色いエネルギーがバナスピア―から発生し、そのエネルギーをバナスピア―で突きを入れるとそのエネルギーがバナスピア―に従って動き、そのまま使い魔を突き飛ばしてバラバラに粉砕、消滅させた。

 

「やった……」

 

 この結界総ての使い魔を倒したわけでも無いし、魔女は健在だが、初陣であるさやかはこの場に居る敵を倒した事に安堵していた。

 安全を確認したシュバリエはバナスピア―を逆手持ちにして、膝を付いているマミのもとへ駆け寄る。

 

「マミさん、大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ」

 

 マミの顔色が優れないようで、これ以上戦う事は無理なのではないかとさやかは思った。自分が魔女を倒せるとはこれまで見て来た戦いを見れば思えない。一応戦闘経験がそれなりにある筈の光実ですら、魔女の再生力には手を焼いている。素人がやれる気がしなかった。

 ……だが、魔女を放っておけば沢山の人が傷つく。どうすれば良い? 諦めて逃げるのか? ……それは、出来ない。だがマミが心配でもある。どうする、どうする。

 

「有難う、助けてくれて。……行きましょう」

 

 だが、立ち上がったマミが奥の魔女の部屋まで進もうとした事でさやかの苦悩は終わった。心配でもあったが、素人が先輩へ何か言うのには何か抵抗があった。

 

 

 

 マミはこれまで積み重ねて来たものが崩壊していくような気がしていた。恐怖心に取り憑かれた挙句、後輩に追い抜かれてしまう。今の自分は魔法少女でなく、唯怯えるだけの人間だ。

 魔法少女体験コースをしなければさやかは周子に攫われる事は無かっただろう。そして、お菓子の魔女に遭う前にほむらたちに倒されて自分は恐怖心に取り憑かれる事は無かったのだろう。

 

――全部は、孤独に耐えきれない弱い私の所為だ……

 

 さやかが変身したアーマードライダーシュバリエと共に通路を走っている内に、そう思わずには居られなかった。

 

 

 そして次の扉を開けて入った瞬間、シュバリエとマミが各々武器を構えた。二人の目に映るは――巨体。

 それはまるでチェスのクイーンの駒のような形状をしていた。さやかたちよりやや大きかった使い魔より大きい。付近には使い魔が数体シュバリエたちを見据えていた。




 マミさんのファンの方、色々申し訳ないです。今のマミの状態が平成ライダーに詳しい人なら察せられる筈なのですが……もずくは出ないよ?
 さて、ルイージマンションをやったことがある人はどれだけいるのやら……

 さやかは土壇場で強いタイプな気がする。光実程用意周到では無いですが。


 12/21 パラディン→シュバリエ 意味合いはナイトと同じ。

 これで和、洋、中のライダーが揃いました。さて、どうなる事やら……
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