今話では、アニメ風にもう少し人外染みた動きを強調してみました。元々ライダーの能力は人外です故。
特撮モノらしくないかもしれませんが……
戦闘&飯回。
影武とトリスタンはお互い刃を交えた。最早両者に迷いは無い。いや、迷いの無さではトリスタンの方が上か。
「そんな雑魚ロックシードで……勝てると思ってんのか!? 馬鹿かお前!?」
「……っ!」
無双セイバーとソニックアローの鍔迫り合いが始まるが、パワー差もあって影武が押されている。その上、トリスタンが光の矢を撃って来るが為に力を入れる余裕も無い。仮面の下で和哉の表情は焦りの色に染まって行く。
「何がアンタを駆り立てる……!」
何故正治がライダーとなって、他者を傷つけたりするのか。和哉には理解が出来なかった。その力で何故連中の手助けをするのかも。
「馬鹿どもを駆逐するんだよ……救いの無い阿呆共の眼を覚まさせてやるんだよ!」
「そうやってお前は他者を見下すのか!」
「周囲の屑共がそうさせた! 賢しければこうはならねぇんだよ低能共が!」
「あぁ分かったよ……!」
何か止むを得ない理由があると思った己が馬鹿だった、もう容赦はしないと和哉は思った。……まぁ別に戦況が変わる訳では無いのだが。
影武が無双セイバーを持つ手に全力を込める。だが、抵抗虚しく出力の暴力で押し返され、跳ね上げられた途端に数発斬撃を叩き込まれて影武は大きくよろけた。
根性でどうにか態勢を立て直し、メロンディフェンダーでトリスタンの追撃を受け止める。
まるで叩き付けるようにトリスタンはメロンディフェンダーをソニックアローで叩き付けるように斬り付ける。刃と盾が激しく衝突し火花がけたたましく散り、衝突音がこの場に響く。現時点でダメージは殆ど受けておらず、和哉はメロンディフェンダーの防御力の高さを改めて実感し、敵が力押しばかりな事に安堵した。
だがこのままではキリが無いし、勝負にもならない。影武は落ち着いてトリスタンの動きを防御しながら観察した。――そして、
トリスタンの刃が盾にぶつかった瞬間、影武はメロンディフェンダーで押し出した。
押されて後方へとよろけるトリスタン。そして影武の無双セイバーの刃が――――トリスタンを襲う!
横一文字の、一閃。
直撃を浴びたトリスタンはよろけるが決定打には至らない。これまでよりマシになったとは言え、やはり不利なものは不利。一点特化されたこちらの唯一のアドバンテージである防御力を生かして戦うしかあるまい。
斬撃に続いてパンチの要領でディフェンダーによる打撃。それを以てトリスタンの頭を力の限りにぶん殴る。
「図に乗るなよ! 餓鬼が!」
だがトリスタンも負けてはおらず、Sランクの装甲を生かして態勢を立て直しソニックアローで斬りかかる。それを影武はディフェンダーで防ぐ。
防御したのは良いものの影武の脚が、押されて地面をじりじりと後ずさる。
拙いと判断し、影武は慌てて無双セイバーを振るうのだが、トリスタンはその行動を予測していたのか、蹴りで吹っ飛ばされ反撃に失敗。踏ん張る事でどうにか身体が宙を舞う事を防いだのだが、蹴られた痛みでほぼノーガードで地を滑る。
それを隙と見たトリスタンはアーマードライダー特有の人外染みた俊敏性で影武に肉迫する。
トリスタンは、ノーガードで地を滑るように吹っ飛びつつ痛みに堪えている影武に、いつの間にかエナジーロックシードをセットしたソニックアローを袈裟斬りに振りかぶり一撃を決めた。
「がっ!?」
斬撃を受け、血飛沫の如く飛び散る影武の装甲片。装甲には大きく袈裟斬りを叩き込まれた痕が出来るが、辛うじて変身は保っていた。ブレーキが効かず地面を滑っていたが必死の踏ん張りが功を奏し漸く停止する。
「んぐっ……」
だが、叩き込まれたダメージは最早戦闘続行困難レベルであった。やはり装甲は所詮Aランク。Sランクからすれば有象無象でしか無い。羨ましいものだ――――ゴリ押しでどうにかなると云うのは。
影武はふらつきながらも無双セイバーとディフェンダーを構え直す。恐らく次を喰らえば終わりだろう。
あと一撃でもいい。
一矢報いるぐらいはしておきたい。このまま性能差の暴力で叩き潰されるのはもう御免だった。影武は大怪我覚悟で盾を捨てて捨て身の一撃を叩き込もうと考えた。
と、その時――――
トリスタンの背中に光の矢が突き刺さった。
――背後だと……ッ
何が起こったのかトリスタン本人には理解出来ずに己の後ろを見ると、そこにはソニックアローを構えた龍玄天斬が立っていた。何時でも発砲する態勢は整っているようで、丁寧にポインターがトリスタンの身体に当たっていた。
「水を差すようで悪いけれど。後ろに気を配った方が良かったんじゃないかな」
しまった、とトリスタンは後悔するもののあとの祭り。龍玄天斬は容赦なくゼロ距離で光の矢を放ち、光の矢が針山の如くトリスタンの装甲に突き刺さっていく。一通り撃った所で追撃としてソニックアローで斬り込む。
「貴様……ッ!」
龍玄天斬の斬撃にトリスタンが屈辱で怒りを露わにしていると、影武が無双セイバーでトリスタンの背後から斬りかかる。
形勢逆転とはまさにこの事か。影武が1としてゲネシス勢が2とすれば、1多い光実たちが勝つのは自明の理。それに光実は実戦慣れしている為、同じゲネシスでもトリスタンにとっては分の悪い状況であった。
正治からしたら、連中に跪くのは死んでも御免だった。自分は変わったのだ、何故このような人殺しの家系の偽善者とスペック差が分からない真性の馬鹿に倒されねばならないのだと、彼は怒り心頭だった。
殺してやる。ぶっ殺してやる。
最早彼に冷静さの欠片も無かった。あの訳の分からない魔法使いといい、連中といい。こいつらが出てきてから自分の人生が歪められた。全ては他者の所為だ。そう思っている彼に後退という選択肢は無かった。
距離を取り、挟撃から脱出したトリスタンは殲滅するべくソニックアローを構える。
だが――――それは叶う事は無かった。
身体が急に軽くなり、己が身を抱えられて戦闘領域外へと連れ去られたのだから。
「……逃げられたか」
そう、龍玄天斬は呟いた。
彼らが見た物は、黒影・真が現れトリスタンを魔法で重力を軽減させて、軽くなったトリスタンを黒影・真が連れ去る図であった。相手は冷静さを欠き、このまま叩き潰すチャンスだと思っていたのだが……時の運が良くなかったのか。
追撃は消耗している状況では危険だし、成すべき事をそっちのけにして大怪我する訳にも行かなかったが為に光実はエナジーロックシードの開いたカバーを閉じ変身を解く。それに和哉も続いた。
「悪い。時間稼ぎしか出来なかった」
「……いえ、充分です。戦極ドライバーでゲネシス相手に保つだけでも」
謝罪する和哉に、フォローする光実。実際光実からすれば、再起までに充分な時間稼ぎになった。しかし――――
「どうしてここへ?」
何故、和哉がピンポイントでここへ出くわしたのかが疑問であった。「間に合った」と言っていたが。その光実の疑問に和哉は答えた。
「鹿目が電話したんだ。まぁ、あいつゲネシスドライバー持ちは洒落にならない強敵っつー認識なんだろう。使ってないと性能差なんざあんまり分かんないし」
「成程、でもお陰で助かりました」
「それは鹿目に言ってくれ」
和哉からすれば解せない部分があった。何故、光実が正治に追い詰められたのかだ。数回程彼の戦いを間近で見て来たのだが、光実は頭の回転が速く、戦略性の高い戦闘と実戦慣れしている動きもあって、条件は同じで性能に頼り切りの正治に負ける訳が無いと思うのに。
偽善者か。僕にはぴったりの言葉かも知れないね。
一方でまどかのもとへ歩いている途中光実は先ほどトリスタンが言い放った言葉を思い出していた。あちらからすれば、罵倒の積りで言っていたのかもしれない。だが、今更引き下がれない事を再実感していた。ビートライダーズという過去にも。将来有望のエリートという過去にも。それはまるで、放たれた矢の如く。
どこまで遠くまで来たのだろう? もう1年くらい経つのだろうか。
どんよりした気分になり、その気分をどうにかするべく空を見上げてみる。今日は曇りなのか、空には光一つ見当たらなかった。
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「ラーメンライス一つ」
「麻婆豆腐セット一つ」
一方、風見野市のとある中華料理屋にてハルトと杏子は青年店員に注文をしていた。家主である律人は仕事で、麻弓はサークル連中との飲み会という事情が重なった為、夕飯を作る者が居なかったので、自炊スキルゼロのハルトと杏子は外で飯を食うと言う事になったのだ。まぁ、お陰で魔法関連の話がしやすいのだが。
杏子の注文で一瞬店員がぎょっとした顔をするが、何も言う事無く去って行った。ハルトと杏子はそれに怪訝な顔をしたが答えは出る事は無かった。
さて、それは兎も角本題に入ろう。
「見滝原市にちょっかい掛けるって……」
杏子がふとした発言でハルトは驚いたように反応を見せた。それに杏子は気怠そうに答えた。
「そう。最近キュゥべえの話だと巴マミって奴が弱体化していて、別の新しい魔法少女たちが縄張りを我が物顔で張ろうとしてるんだってよ」
「……それで?」
「魔法少女同士が疲弊した所でアタシが美味しい所をかっさらう。
それを言うなら漁夫の利ではないのか。と、ハルトはツッコミかけたが杏子が話を続けた事でそれは叶わなかった。……というか中学生レベルの年齢の癖して諺は間違ってるのに何故呂布は知っているのやら。
「ってな訳だ。
「……いや、アーマードライダーってのが居るし一筋縄じゃいかないと思うんだけどねぇ」
ハルトの指摘は尤もだった。大きな勢力が二つあり、マミ側と周子側に分かれている。双方とも魔法少女もライダーも多く保有しており、疲弊した所を狙うと言っているが時期早々ではないかとハルトは考えたのだが、杏子は断固として行くと言う。
杏子の性格からして、そんな非効率で無謀な事は特殊な事が無い限りは無いとハルトは見ていたのだが、何か事情でもあるのだろうか。
杏子の過去は碌に聴いていないし杏子本人も話そうとしないので、分かりはしないのだが。
杏子の態度は何時ものように気怠そうだが、目は真剣そのものだった。彼女が言っていた方法は実際やるかは知らないが狡い手段だし間接的に人を殺す事になるのだから、一応付いて来て見ていた方が良いかも知れないとハルトは考える。
チンピラもどきのアーマードライダーといい、不安要素が多すぎるのだ。それに風見野のファントムは粗方始末して置いた為、見滝原に本格的の行動の拠点を移すのも悪くは無いのかもしれない。風見野には……フェニックスもメデューサも居なかったのだから。
ハルトと杏子は水を一飲みしながらやる事を考えていると、青年店員が料理を乗せたトレイを持って二人の席へとやって来た。何故か顔を真っ青にしているように二人には視えたのだが気のせいだろうか。
「お待たせいたしました。ラーメンライス一つと、麻婆豆腐セット一つになります」
杏子のもとへは、麻婆豆腐セットが。ハルトにはラーメンライスが配られる。一瞬店員が諦めの表情を見せてそそくさとこの場から去って行った。
そして――――
「「いただきます」」
店員が去った後二人は手を合わせてから、料理に手を付けた。
ラーメンライスと言うものは様々な食べ方が存在する。そのまま混ぜたりする場合もあれば、そのまま分けた状態で食べるか。麺を食べ切って残った汁にご飯を投入するか。他にも色々あるのだが、ハルトは麺を食べ切ってからご飯を投入する派であった。
麺を啜りつつ、杏子の料理に視線を向けてみる。
味噌汁とご飯と沢庵と麻婆豆腐。結構定番な組み合わせであるが、ご飯に乗せて食べる麻婆豆腐は旨そうに見える。辛さも若干ご飯で和らぐし、程良い辛さとある程度の歯応えが楽しめるものだ。
麻婆豆腐もアリだったかも知れないと、ふと思ったのだが、まぁラーメンも充分に美味しいし、スープも中々の味であるが故にあまり気にならなかった。
しかし、暫くしてハルトは違和感に気付いた。水のお代わりをすべくボトルに手を掛けようとした時である。電光石火の如くボトルは杏子に取られてしまった。
不満を述べようとハルトが杏子の顔を見ると。杏子の顔が髪の毛の如く真っ赤になっていた。一体何が有ったのだろうと、呆気に取られるハルト。熱でもあるのだろうかと考えていた。一方でそんなことを考えるハルトを他所に杏子は狂ったように水を何杯もお代わりしていた。
「おーい、どしたー。水ばかり飲んでも太るものは太るぞー」
ハルトは我に返ってデリカシーの欠片も無い発言を放つ。それを耳にした杏子は、水を飲むのを止めて麻婆豆腐の皿を差し出した。
「く、食うか……」
杏子は舌でもやられたのか地味に舌足らずで動きが鈍い。それに対して怪訝な顔でハルトは麻婆豆腐をスプーンに乗せ、口に運ぶ。すると、彼の疑問の答えが出た。
な ん だ こ れ は
舌を針で刺したような痛みにその傷に塩を塗りたくったような感覚がしたかと思うと気づけば舌の感覚が無くなっていた。その一方で他の口内に突き刺すような痛みが遅い、悪寒と汗がどっと出て来る。何が何の食材なのかすらも分からなくなってくる。豆腐が最早柔らかい何かである。呑み込むと痛みが喉を襲い咳が出る。外から口内に空気を送り込んで、マシにさせようと思ったのだが、それが逆効果で痛めるオチとなる。
慌てて、コップ一杯の水をお代わりして飲み干すが、まだ足りない。
「うぇほっ……けほっ……なんぞごりゃ」
声にならない悲鳴を上げつつ仕方がないのでラーメンライスで味覚を紛らわせるが、ラーメンライスの味すらも分からなかった。
もうアレは食べたくない。それがこの麻婆豆腐に対する感想だった。
だが、杏子はその激辛の麻婆豆腐を食べる事を続けた。辛いと言うのに残さず食べるとは……けなげな! と賞賛したかった。
「痛覚鈍らせたらうめぇ」
……彼女の取った方法は兎も角として。
完食寸前には杏子が半泣きで虚ろな目をしていた事はハルトは決して忘れない。
あの殺人級の辛さが気になってハルトは後々調べてみたのだが、店主がとある街に存在するという中華料理店の麻婆豆腐に感銘を受けて破滅的辛さを追い求めていた結果であり、周辺住民は基本的に避ける店だったのだと言う。
……道理で客が碌に居ないわけである。
食らい付く和哉。実戦に慣れてきたのでしょうか。戦いは運と調子とメンタル、経験、武力とか色々絡むから判断し辛いのですが。
食事シーンの扱い易さは異常。会話がし易いです。