贖罪少年くれしま☆ミツザネェ!   作:ヌオー来訪者

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お題:9行ぐらいで分かる登場人物たちの怒りの矛先

光実「昔の自分絶対に許さねぇ!」
和哉「弱い自分とトリ野郎絶対に許さねぇ!」
マミ「私の心の恐怖心と周子絶対に許さねぇ!」
正治「俺の思い通りにならない奴絶対に許さねぇ!」
さやか「恭介を轢いた運転手絶対に許さねぇ!」
琉璃「順をボコる奴絶対に許さねぇ!」
杏子「食い物粗末にする奴絶対に許さねぇ!」
ハルト「ファントム絶対に許さねぇ!」
ほむら「QBとガンダム絶対に許さねぇ!」

 ゼッタイニーユルサナーイ!


第12話 呉島貴虎の戦い方

 眼を閉じても眠りにはつけず、自室のベッドに横たわって布団を被っていたまどかは溜息を吐いた。

 

 色々ごちゃごちゃしていてどうすれば良いのか思いつかないと言うのが現状だ。暫く天井をじーっと見つめて物思いにふけてみるけれど。意味は無かった。

 光実に対する正治の人殺し発言。そして目の前で3度程見た人間同士の殺し合い。

 まどかは人間同士が装甲を纏って斬り合い、撃ち合い。実際に人間同士の殺し合いを見ていると手と足の震えが止まらなかった。止めたいと思っても足が震えて動けなかった。

 ゲームやアニメ、映画の中の出来事なんかじゃない本物の殺し合い。無論、リセットや巻き戻しなんてものは効く事は一切無い。片方が死んでしまえばもう二度と戻りはしない。きっと殺したという事実と罪が付いて回る。

 

 絶対に止めないといけないと思っているけれど、方法の一つであるキュゥべえとの契約をしたらほむらとの約束を反故にするという事を意味する。

 ほむらのお陰で光実とさやかは助かったようなものなのに約束を破るのは恩知らずにも程がある。それに自分がマミやほむらたちの様に上手く戦えるという保証は何処にもない。だがしかし……彼の言葉が脳裏でしつこくこびりついたかのように思い出させられる。「卑怯者」と。契約しなければ間違いなく自分は卑怯な人間なのだろう。だがしかし……と、こんな調子でずっと悩んでいるのだが、答えは一向に出ない。

 

『悩んでいるのかい?』

 

 そんな時、脳内に声が直接響いた。……キュゥべえだ。キュゥべえはこれまでに買って来た縫いぐるみと目覚まし時計を置いた棚の上に紛れ込んでいた。何時から居たのだろうと思ったが、あまり気にするべき事でも無いのでそれについては考える事をやめ、起き上がってキュゥべえの方を向いて座って頷いた。

 

「……うん」

 

 するとキュゥべえは意外な言葉を口にする。

 

『君は魔法少女としての素質をマミたち以上に持って居る。その力は周子……銀色の鎧武者に匹敵するよ』

 

 一瞬だけ、キュゥべえの言葉が異国の言葉のように聞こえて……その言葉を理解した瞬間、まどかの眼の色が変わった。

 

「本当!?」

 

 もし本当ならば、止められるかも知れない。マミたちが傷つかずに済むようになるかも知れない。まどかは思わず身を乗り出しキュゥべえに顔を近づける。

 

『本当だよ。君の素質ならば、『二つの力を持つ者』であろうとその力を凌ぐ事が出来る。戦いを止める事だって不可能じゃない。僕が保障するよ』

 ならば契約すれば、和哉やマミを助ける事が出来る。契約しようと思い至ろうとしたその時、ほむらや和哉の言葉を思い出した。

 

「……ごめんキュゥべえ。もう少し時間くれるかな」

 

 きっと、この事を知ればほむらたちも分かってくれるかも知れない。明日訊いてみよう。そんなまどかの判断にキュゥべえは「考えると良いよ」とだけ答えるのだった。

 

 

 翌日、まどかは学校の屋上に二人を呼んでその事を伝えた。

 だが、反応は宜しくないものであった。和哉とほむらは即答で「駄目だ」と返したのである。返答には1秒も掛りはしなかった。

 

「どうして……!」

 

 勿論まどかは返答に納得できないと、何故駄目なのかの理由を二人に問う。それにほむらは答えた。

 

「自分だけ戦っていないから。貴女はそう思っているのでしょう」

 

「……それは」

 

 図星を突かれ、まどかは言葉を詰まらせる。

 まるでほむらはまどかの心理を完全に見抜いているようだった。ものの数週間しか付き合いが無いというのに。和哉はほむらの横で本当に謎だらけな女だなコイツと心の中でぼやいた。

 

「でも……このままじゃ」

 

 まどかはそれでも納得がいかなかった。相手は本気で殺しに掛っている。グリーフシードを得る為に圧倒的な戦力を以て。あのフォーゼアームズなる力の前ではゲネシスドライバーも無力だったと言うのに。自分はそれを上回る素質を持って居るとキュゥべえは言っていたのに。――――だが。

 

「自惚れないで。貴女一人が契約した所で状況が大きく変わる訳では無いわ。……寧ろ悪くなることだってある」

「――――おい」

 

 それにほむらは無表情で歯に衣着せぬ言い方返し、和哉は「言い過ぎだ」と咎めようと声を出す。……だが、和哉自身はまどかにどう言えば良いのか思い浮かばずまどかと同じく口を噤んだ。そして沈黙がこの場を支配した。ほむらはまどかを見つめたままで、まどかはどうすれば良いのか分からず顔を俯けるだけ。

 その沈黙を破ったのは――――和哉だった。

 

「……俺、もっと強くなるから。あいつらに負けないぐらいに。戦極とゲネシスの性能差を覆すくらいにさ」

 

 覆す方法なんて経験の浅い人間に出来るのかと言われれば、難しい事である。和哉はこの発言が無責任なものであるのは充分に承知していた。……正面からしか戦う能が無い己の弱さを恨みたくなる。

 光実のように頭の回転が速くてゲネシスドライバーを奪い取れるだけのスキルが有れば大分違ったのかも知れないが――――生憎そんなスキルは和哉は持ち合わせていない。今持って居るロックシードの性能を最大限に引き出すしかないのだ。

 

 琉璃の事は今は考えたくなかった。トリスタンを叩きのめす事だけを考える事で和哉は今の己を保っていた。

 

 

 

「で、先ほどの発言の責任は取れるの?」

 

 まどかが去り、二人だけになるとほむらは容赦なく先ほどの和哉の言葉について言及して来た。それに和哉は相当困り切ったように言った。

 

「……自信は無い」

「でしょうね」

 

 ほむらの容赦無き一言が和哉の心にぐさりと突き刺さる。氷柱みたいな女である。それも思いっきり先っぽが尖がった重くて痛そうな奴。これ以上この事を話すとノイローゼになりかねない為和哉は思い付きで話を逸らそうと決意した。

 

「しかし、アイツ契約しかねないぞ今のままじゃ。俺たちだって鹿目に付きっ切りという訳にも行かないし」

 

「話題逸らしたわね……まぁいいわ。私にいい考えがある」

 

「……何さ」

 

 和哉が半分期待、半分不安の表情で目を見開いた。それにほむらは何時も通りの無表情で制服のポケットに手を突っ込み何か小さなものを取り出した。

 

「……ナニコレ」

 

「盗聴器よ」

 

 飽くまできっぱりと無表情で言い放つほむらに和哉はぽかんとした。魔法少女に法という物は通用しないのだろうか。確かにストレートで分かりやすい方法ではあるのだが、盗聴器なぞ現実で目にするとは思いもしなかった。

 ここまで来ると重度のストーカーである。……前からそうではないかとは言ってはならない。

 

「念話を傍受出来るようにしているから後は取り付けるだけよ」

 

「お、おう……」

 

 滔々とそんな事を言われて和哉は申し訳ない気持ちで一杯だった。落ち着いたら外せとは言っておこう。……聞いてくれるかは分からないが。

 

 

 

 その放課後、和哉は光実にファミレスに呼び出された。

 一体何なのだろうと、思ってファミレスへ光実の居る場所まで向かうと光実は机にノートパソコンを置いていた。一体何なのかと和哉は光実の向かいの席に着くと光実は答えた。

 

「メロンロックシードの性能を最大限に生かしたいと思いませんか? 丁度良い参考があるんですが」

 

 願っても無いチャンスだった。ロックシードの性能を最大限に生かすしかないと昼休みに考えていたのだ。光実がノートパソコンを開き、USBメモリを差し込んで何やら操作した後、画面を和哉に向けた。

 

 見せられたのは映像だった。それも戦闘記録。映っているのはインべスと……

 

「白い影武……!?」

 

 和哉は知らないのだが呉島貴虎が変身したアーマードライダー斬月だった。攻撃を全く受け付けず無双セイバーで敵を切り裂く様は正に鬼神。相対すれば恐怖を抱く事間違いないであろう。映像が変わると青い鎧武者のようなアーマードライダーと不思議な植物の生えた森の中で戦っている映像が映し出された。

 何せ、映像越しからも威圧感を感じるのだ。証拠に蒼いアーマードライダーは尋常でない程に怯えていた。その癖して彼の動きは堅実で何処か人間離れしている印象を和哉は抱く。

 

「貴方より前に、メロンのロックシードで戦っていた人物が居た。彼は能力を全て知り尽くした上で鍛えていました。あ、それと外見が似ているのは恐らく見ていた物が一致していたんだと思います。装着者の深層意識などから素体の形状は決まりますから」

 

 形状の酷似は深層意識などから来る。影武の形状は和哉が昔見た見滝原の展示場に置かれた鎧を思い起こさせる形状であった。もしかしたら彼もその鎧を見たのかも知れない。まぁこれはどうでも良い事だ。重要な事では無い。

 斬月は能力全てを知り尽くした上で戦っていた。そう光実は言った。和哉の場合色々試行錯誤していてあまり計画性のあるやり方では無かったことには自覚はあった。もし、知る事が出来れば勝てるのだろうか。(正治)に勝利出来るのだろうか?

 

「教えてくれ。どうやったらこの男のように盾と剣を上手く使えるんだ」

 

 身を乗り出して和哉は光実に教えを乞う。無論彼に勝利してどうしようとは碌に考えても無い。だが、トリスタンを倒さなければ。越えなければ何かが始まらない気がしていた。琉璃の事から逃げている事に気付かないまま――――

 

「分かりました。先ずは……」

 

 そして、光実も彼の心境に気づかないまま――――

 

 

 さやかは何度か病院の入り口付近を行ったり来たりしていた。

 

 最低な事をやらかした挙句、きっと冷静になって考えてみれば腕を治して何を求めようとしたのかを考えると、自分が嫌いになりそうだった。そんな最低な自分を恭介は許してくれるのだろうか? いや、思えない。けれどもこのままで良いのかと問われればそれはNOだ。

 そんな風にあれこれ悩んでいて30分程掛り、陽は沈みかけていた。

 

「何してんだろうな……あたし」

 

 まどかの前では空元気で接していたが、今もまだ恭介と喧嘩した事が堪えている。あの時こうすれば良かったとか後悔ばかりしている。

 もう夜は近いから帰ろう。帰って考え直そう。家に帰った所で答えなんてものが見つからない筈なのだが、そうでもしなければやっていられなかった。

 

 さぁ帰ろうと、踵を返し病院から背を向けた瞬間、男性の叫び声が響いた。咄嗟に声のした方へ向くと、屋上でなにやら揉めているような様子が。そしてそんな中聞こえて来た名前でさやかは血相を変えた。

 

「はやまるな上条君!」

 

 カミジョウという名前にもしやと思いさやかは屋上へ向かって走り出した。

 まさか、そんな馬鹿な。

 

 屋上であの焦った男の叫び声。それが何を意味するのか分からないさやかでは無い。エレベーターは生憎50階で止まっている。寄りにもよってこれは酷い。この病院は160階とか言う狂気の沙汰レベルの高さを誇っており、日本国内では最高層の病院とされている。地道に階段を上っていくのも骨が折れるしここは待つしかない。さやかの焦りがどんどん大きくなり、次第に貧乏ゆすりするようになるそして――――

 

『一階です』

 

 漸くエレベーターが一階に降り切り、呑気にドアを開いた。それに八つ当たり気味に苛立ちつつさやかは開いたドアを分け入るようにして入り、迷いなく最上階と閉のスイッチを叩くように押して、屋上への扉を乱暴に押し開いた先で見たものにさやかは――――

 

「…………」

 

 もう既に事は終わっていたようだった。数人の医師に囲まれて恭介が居合わせたらしい仁美にしがみ付いて泣きじゃくっていた。まるで幼い子供のように。それを抱きしめる仁美はまるで聖母のようにさやかには見えた。

 最初から沢山あった自分たちとは違って恭介にとってヴァイオリンが総てで、それを失い宙ぶらりんの状況下で危うい細い命綱で今の恭介は保っていた、そんな彼を仁美は受け止めていた。

 

 足を開いた扉の前から足を踏み出そうとしたのだが、さやかは踏みとどまった。

 

 どう声を掛けたら良いのかさやかには分からなかったのだ。それに今の状況で自分が居たら余計に状況が悪化する。今の恭介には心を落ち着かせる必要がある。そんな状況下自分は邪魔なのかも知れない。

 さやかは踵を返す。

 暫くは恭介に顔を合わせない方が良いと思った。今の恭介とまともに話せる状況でもなければ、壊れたものを器用に修復する事も出来るタイプでは無い。時間に任せるしか無いのかも知れない――――

 

 そして恭介が死のうとした事に対して怒りの感情はあったし、恭介を叱りたいとは思いはした。だが、それ以上に諦めに近い感情が殆どを占めており、今の彼を最後まで助けられる自信も無かった。

 きっと自分が落ち込んだ彼に追い打ちを掛けたのだ。恭介の腕と生き甲斐奪った事故を起こした運転手に対しての怒りと様々なものへの諦めの感情が綯い交ぜになってよくわからないぐちゃぐちゃとした何かを生み出している。

 そして不思議と――――運転手への怒りの感情がなんの躊躇いもなく純粋に沸々と湧き出ていた。

 

 

 それはもう――――殺してしまいたいぐらいに(・・・・・・・・・・・・)

 

 




 戦いを止める事は不可能じゃない(両者が生きているとは言っていない)

 メロニキ映像のみ参戦。今回出た映像は恐らくプロフェッサーの報告ファイルから引っこ抜いたものかと。

 そして今回の恭介の一件ですが――――この世界における仁美の慕っております宣言は有りませんでした。何故ならば恭介の怪我が治っていないという点。こんなタイミングで宣言かますのもどうかなと思った為にこのような事態になりました。そして唐突に抱きしめた仁美も目の前で自殺寸前の恭介で相当焦っていてさやかへの宣言どころでは無かった……という訳です。まぁ告白こそしていませんが半分リーチです。仁美も良くも悪くも正々堂々とした性格で有るが故にこの後凄まじく難儀しそうです。本当に拗れるなぁもう……
 恭介とさやかが一番本作では割を食ってると言うべきかも知れません。
 二人にとっていい方向に転がって行くと良いのですが。
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