天下分け目の戦国MOVIE大合戦の続編。時系列は現状より少し後。ストーリーの都合上参戦キャラクターに偏りが有りますのでまどマギキャラ目当ての方は特にご注意ください。ライダーの比率が多くなっております。
尚、参戦しなかったまどマギキャラは本編での活躍でカバーしますのでご安心下さい。特にマミさんは本当に。
暫く居ない内に随分と好き勝手に占領してくれたものだ。
……と佐倉杏子は歯ぎしりしつつ、忌々しげにそこに居る怪人へと目を向けた。その姿は全身緑色で、生物感溢れる生々しい外見、そして特異な形状の足に、頭に生やした2本の触覚。差し詰め飛蝗怪人と呼ぶべきだろうか。飛蝗怪人は廃墟と化した教会の説教台の上に座って、睨みつけて来る杏子を見下ろしている。
廃墟と化していた教会は杏子の知る限りでは廃墟なりにもある程度整っていた筈なのだが、今となっては荒れ果てている。それが誰の所為か、一目瞭然であった。
「そこから降りろ」
何時もならば気怠そうな口調が、打って変わって殺気を込めている口調で飛蝗怪人に降りろと警告するが、飛蝗怪人は手を広げて顔を横に振った。
「無理だね。ここはウチの武神サマがこっちの武神の力を手に入れる為の餌なんで」
武神? 杏子には聴きなれない上に不可解な言葉であったのだが彼女にとってはどうだって良かった。杏子からすれば、この説教台に座っている異形が見ていて我慢ならなかった。そう、ここは――
「とっととここから出て行け。ここはテメェらが居て良い場所じゃねぇんだ」
何時もならば、グリーフシードが手に入らない相手には力を振るわないスタンスで居たのだが、今の杏子にはそれが出来なかった。何故ならここは――――杏子にとって「家」
杏子は魔法少女へと変身し武器である長槍を出現、くるくると回転させてから持ち前の突進力で突っ込み、刃を飛蝗怪人の喉目掛けて突き立てる。それを飛蝗怪人は大きくジャンプして回避。そして空中から拳で杏子を殴り飛ばさんと襲い掛かる。
「チッ!」
杏子は意外な彼の機動力舌打ちしつつ、飛蝗怪人の襲撃を後方に跳び避け、槍の柄を分割し、伸ばして鞭のようにして斬りかかる。
飛蝗怪人は持ち前の跳躍力と俊敏性を生かし、杏子の攻撃をひらりひらりと躱し、杏子を苛立たせる。
「ちょろちょろするんじゃねぇ!」
「だが断る!」
随分とふざけた怪人だ。それに言葉の用法も間違っている。御影堂で暇潰しに漫画を読む杏子からすれば彼の誤った言葉の用法は苛立つもので……
「用法も日本語も間違ってるんだよッ!」
杏子の怒りの右ストレートが飛蝗怪人の顔に炸裂した。
「おうふっ!?」
流石にいきなり怒られて右ストレートで吹っ飛ばされるとは思わなかったのか、もろに喰らった飛蝗怪人はくるくるときりもみしながら地面に落ちた。
「勢い付けて断りたいなら、『だが』は要らねぇッ!」
追い打ちを掛けるように、槍の柄を伸ばして刃を倒れた飛蝗怪人に叩き込もうと仕掛けるが……飛蝗怪人は言った。
「いやさ、可愛い女の子にどつかれるのはある意味ご褒美なもんだし誤用でも無いぞ!」
「……え」
杏子は顔を引き攣らせた。そう言われれば確かに誤用では無い。……感嘆符は外せと言いたいがまぁそこは上から目線だが多めに見よう。
相手のアブノーマルな発言に引きそうになって動きが鈍りそうになるものの、それを振り払って槍を振り下ろした。
「この変態がァァァァァァァァ!」
「悪いかよッ!」
飛蝗怪人は決して愚鈍では無く、飛蝗の脚で蹴り弾きつつ立ち上がり拳を杏子に放つ。杏子はそれを避け、隙を見つけては槍を振るうが飛蝗怪人は先ほどの右ストレートで懲りたのか確実に避けては拳を放っている。
キリが無い。杏子が持久戦を覚悟して温存せず幻影魔法で一気に叩き潰そうと考えたその時――――
数発分の銃声がした。
背後から聞こえた音なのに、杏子に当たる事無く飛蝗怪人の身体だけへと吸い込まれて火花を散らす。それが誰なのか分からない杏子では無かった。
「……ハルトか」
「オッス。おらハルト」
黒髪に黒コートという中二病なら憧れるであろう服装に似合わない、ふざけた声。昔はうざったく感じていたが今となってはもう慣れてしまったのが悔しい。苛立っていた昔を懐かしんでいると鍵真ハルトは突然真面目モードに入って口を開いた。
「そこのバッタ君……ファントムじゃないな?」
ハルトも杏子も、飛蝗怪人からファントム特有の魔力は感じられなかった。杏子はこの教会に居座っている飛蝗怪人に対して血が上って気付かなかったが、時間が経って落ち着いた今、飛蝗怪人に違和感を感じていた。
「へっ……そんなもんどうだっていいだろ? お前はあのお方の生贄になるんだからなぁ!」
飛蝗怪人は杏子を突き飛ばし、杏子の背後に居るハルトに猛スピードで飛び掛かる。それにハルトはソードで受け止めるのだが衝撃で押されて脚が地から少し浮いた。
「……なっ」
「よっし掛った!」
振り払おうとハルトは派手にソードを振るうが、飛蝗怪人はがっちりとホールドして離さず、背中の羽を羽ばたかせハルトを運んでいく。
彼の行動を解せないと思ったハルトがふと背後を見ると、そこには場違いにも程がある光景が広がっていた。
兎が跳ねているような自然あふれる山道が。だが、生やしている植物は見慣れないものばかりであった。
「……は?」
そんな馬鹿な。ハルトは己の眼を疑った。ここは廃墟とは言え街中だし、そもそも室内だ。だと言うのに何故山道が広がっているのだ。あまりの不可解さに気を取られていると力が抜け……
「うおぁ!?」
飛蝗怪人に山道まで押されて行った。
「おいハルト!?」
少し離れた距離から見ればそこは、空間に裂け目が出来ているように見えた。まるでジッパーを開いたかのような。……光実たちが変身する際に発生させるクラックに非常に酷似している……というかクラックそのものだった。
――って冷静に分析している場合じゃねぇ!
ハルトが訳の分からない空間に引きずり込まれたのだ。放っておくわけには行かなかった。後味が悪くなるような、そんな気がして。
杏子は連れ去られたハルトを追って杏子はクラックへ飛び込んだ。
そこは奇怪な植物が生い茂る世界であった。それに驚く暇もなく、杏子はハルトを捕まえた飛蝗怪人を追う。背後のクラックが閉じてしまったが、後悔している暇も無い。
暫く走っていると、また新しいクラックが前方に発生していた。
先程のクラックとは違って銀色では無くオレンジ色をしており、何処となく和風な雰囲気を醸し出している。そして奥に通ずる光景は……
ただの変哲のない植物を生やした山道だった。ハルトを捕まえた飛蝗怪人と杏子がそのクラックを通った瞬間、無情にも閉じ、帰る道を失った。
「いい加減離せっての!」
捕まっていたハルトは先ほどまでずっとソードで滅多打ちにしていたのだが、それが功を奏したか無理矢理振りほどく事に成功し、ハルトの身体は地面に叩き付けられた。
「ってて……ここ何処だ」
光景の変わりようにハルトは柄にもなく慌てていた。その一方で飛蝗怪人は……
「ノルマは達成したし撤退撤退っと……」
そそくさと羽根を羽ばたかせて何処かへと飛び去って行った。だがハルトも黙っては居ない。
飛ばされたハルトに遅れ気味であった杏子が追跡用のレッドガルーダを飛ばすハルトのもとへ走り寄った。
「何だったんだよ……あのバッタ野郎。勝手に人ん家土足で上がってから勝手に居なくなりやがって」
「さぁ?」
ハルトも良くわからず、軽く肩を竦めて杏子に分からないと訴える。今置かれている状況が何を意味しているのか、今のハルトと杏子には知る由も無かった。
「あのお方を黄泉返らせるまであと僅か。生贄になって貰うぞ……異世界の武神ライダーよ」
そして、この世界の何処かでハルトたちを、そして他のライダーを狙う影が有る事も。
人気の少ない見滝原市郊外にて……
「嘘……でしょ」
美樹さやかは信じられないものを見たかのように目を丸くした。一緒にいた光実と和哉もだ。彼女らの目の前に居るのは……
光実が変身した姿、龍玄と瓜二つだったのだから。
「な、何で龍玄が二人居るんだ!?」
和哉が光実と、3人の目の前に居る龍玄を目をきょろきょろする事で見比べる。目の前に居る龍玄は戦極ドライバーを身に着けており、ドラゴンフルーツロックシードがセットされている。これだけならばほぼ別人と取れるだろうが、素体は殆ど龍玄そのもので禍々しい紋様が付いている所以外はまんま龍玄であった。
彼は一体何者なのだろうか。さやかと和哉が疑問に思っている傍ら光実には多少心当たりが有った。
目の前に居るもう一人の龍玄は武神ライダーという単語を口走ったという事に。
武神ライダーとは戦極時代と呼ばれる世界に存在する守護神たる存在。全国に散らばる武将たちは武神ライダーたちを従え、戦国時代の如く天下を目指すのだが……
その内何処の勢力にも属していない武神ライダーである、鎧武そっくりの武神鎧武が戦極時代を荒らして回り、戦極時代に召喚された光実たちは人々を護る為に武神鎧武と戦った事が有るのだ。
全滅したとてっきり思っていたのだが、まだ存在していたらしい。
彼の言う『あのお方』が何者なのかは不明だが、発する敵意からこの目の前に居るもう一人の龍玄……いや、武神龍玄は敵であろう。発する殺気は尋常では無い。気を抜けば間違いなく……殺られる。
光実が戦極ドライバーを取り出すと、二人も続いて取り出し腰に巻く。正直釣られるままで良いのかと、自分に委ねて良いのか光実は突っ込みたくなったが、信頼されている証なのかも知れないし、それに今はそんな事をごちゃごちゃ言っている場合では無い。
「さぁ……一緒に来てもらおう!」
武神龍玄がアームズウェポンであろう、腕に付いた棘付きの大砲を構えた。
【ブドウ】【メロン】【オレンジ】
「「「変身!」」」
それに焦った3人は、其々ロックシードを取り出し光実はブドウ、和哉はメロン、さやかはオレンジロックシードを開錠。間髪入れずにベルトにセットし閉錠。カッティングブレードで一回切った。
【ハイィ~! ブドウアームズ! 龍・砲・ハッハッハッ!】
【ソイヤッ! メロンアームズ! 天・下・御・免】
【カモン! オレンジアームズ! 花道・オン・ステージ!】
頭上にクラックが開き、其々のフルーツの形状に似たアームズユニットが出現し、召喚主の頭へと被さる。そして
その瞬間、武神龍玄のアームズウェポン、ドラゴンバスターが火を噴いた。
「任せろッ」
影武が前衛に出て、
「何っ!?」
戦極ドライバーにセットするロックシードの火力では無い。まるでこれはライダーロックシード持ちと相手をしているようだった。よろける影武を他所に、龍玄は銃型武装であるブドウ龍砲を構え、シュバリエは無双セイバーを抜刀してから刀型武装である大橙丸との二刀流で武神龍玄へ向かって走り出す。
シュバリエが武神龍玄に肉迫するまで龍玄がブドウ龍砲による発砲で気を散らせる。発砲した弾丸は総て、ドラゴンバスターの銃身で防がれたが時間と隙を作る事は出来た。シュバリエがゼロ距離まで詰めた時――
「でえぇぇぇぇぇい!」
二刀を力一杯に振り下ろした。
「
……が、武神龍玄にドラゴンバスターの銃身であっさりと防がれてしまった。勢いの乗った斬撃をあっさりと防ぐとはこの武神龍玄、只者ではない。さやかは本能的にこいつは危険だと思った。一気に距離を取ろうとしたその時――――
「貴様らの目論見など分かり易くて片腹痛いわ!」
蹴りを叩き込まれ、ドラゴンバスターをシュバリエに構えて発砲した。
「っ!?」
直撃。シュバリエの装甲に大きく火花が散り派手に宙を舞い、地に落ちる。そしてちに落ちた無抵抗のシュバリエ向けてドラゴンバスターを発砲させ、弾丸を叩き込む。
「やめろよこの馬鹿!」
だが、態勢を立て直した影武が叫びながら隙の出来た武神龍玄に接近。無双セイバーを振り下ろして、一撃を装甲に叩き込んだ。
影武の斬撃で武神龍玄が怯んでいる内に龍玄は近距離で手早く倒した方が良いかも知れないと思い立ち、ブラッドオレンジを取り出そうとした所……
「その瞬間を待っていたァ!」
武神龍玄がそう吠えて、影武の斬撃に耐えつつドラゴンバスターを龍玄のブラッドオレンジを持つ手の手首目掛けて発砲した。
「ッ!?」
態勢を立て直すのが余りにも早すぎる。人間業では無い。持って居たブラッドオレンジは宙を舞い、武神龍玄の手元へと落ちる。
――しまった、奪われた……!?
光実が仮面の下で歯ぎしりする。
「ふっ……どうやら3対1には些か無理があったようだな」
流石に連続で攻撃は喰らう事は無かった。影武の8撃目の斬撃は防がれ、跳躍し距離を取られる。そして何やらブツブツと呟いた途端、武神龍玄は背を向けて腕を縦に振るい、空間の裂け目ことクラックを発生させた。
それに驚く、立ち上がったシュバリエと影武を他所に武神龍玄はそのクラックへ飛び込んでいく。
「あっ待てよ!」
我に返った影武は武神龍玄を追ってクラックへ飛び込んでいく。
深追いは禁物だと龍玄は止めかけたが、あの武神龍玄を野放しにしておくわけには行かないと思い立ち、シュバリエと共にクラックへと飛び込んだ。
それに、彼が何故ブラッドオレンジを奪ったのかも気になるのだ。
今の状況に龍玄はデジャヴを感じていた。以前も襲撃者を追ってクラックへと飛び込んだが……
ヘルへイムの森の中、3人が周囲を見渡し逃げた武神龍玄を探していると、特異な形状をしたクラックが光実の眼に入った。それが一体何なのか。光実は知っていた。
――これは……!
これが何なのか察した龍玄は影武たちを連れて逃げようとしたが時は遅し。3人共々開いた特異なクラックに吸い込まれ、ヘルへイムの森からその姿を消した。
序盤下手なギャグでふざけてますが、直ぐにシリアスな方向に行きます。
中盤以降ちょっとえぐいので(その分本編より若干爽快かも)
今回登場した武器、ドラゴンバスターはロックマンの腕に付いているバスターを想像して戴ければ分かりやすいかと。若しくはコブラのサイコガン。