最近ゆゆゆの世界に、てつをを放り込む案が閃いた。四国絶対安全都市宣言の所為でしょうか。
『南光太郎は太陽の子である』みたいな。絶望的展開つながりでシャンゼリオンも良いかも知れない。収拾がつかなくなるので多分やらないけれどもww
「ここは――――」
眼を開くとそこは緑で空が覆われていた。そしてその緑の隙間から出て来る木漏れ日が呉島光実の目を刺し、それが半覚醒状態の光実の目を覚まさせた。
起き上がると周囲には草木が生い茂る中の一本の獣道のド真ん中で眠っていた事を光実は知った。
先程まで見滝原市のとある一角で武神龍玄と戦闘していた筈なのだが、一体ここは何処なのだろうか? 周囲を見渡しても草木しか見当たらず虚しく蝉の声が聴こえるだけ。
まさか。
周囲を見渡している内に光実はとある一つの可能性に行き着いた。
「また――――来てしまったのか……」
嘗て光実たちアーマードライダーが迷い込んだ異世界『戦極時代』に再び来てしまったという可能性だ。気を失う前に自分たちは奇妙な形状をしたクラックを見た事を思い出す。オレンジ色の奇妙なクラックをだ。
嘗て迷い込んだ際もそのクラックに突如として呑み込まれた。今回も同じ状況だとでも言うのか。携帯は言うまでも無く圏外。もう一度辺りを見回しても人の影も形も無い。
だが物は試しに幾度か大声で二人の名前を呼んでみるものの、虚しく声が木霊するだけで反応は無かった。
仕方ない。帰る手段を奪われたのだ。奪った張本人から手段を取り戻すために動くしかあるまい。嘗て配下として戦った上司であるイエヤスという男が無事で生きているのであれば、それを拠点に動きようはある。しかし、この世界の地理が分からない以上総当たりで適当に行くしかあるまい。
史実の通りならば天下を取ったのはイエヤスの筈だ。
歩いて行けば自ずと情報は入って来る。
光実はロックビークル・ローズアタッカーを取り出し、起動させバイクと化したそれに跨り何処となく走り出した。暫くすると陽が沈んでしまうが、こんな所で眠ったりしたら何をされるか分かりはしないので眠る事はせず真っ直ぐにバイクを走らせた。
周囲を見渡しつつ低速で獣道を真っ直ぐに辿って走っていくが、出口は一向に姿を見せない。夜が明けた時だ。眠気を気合いで堪えつつ走っていると、何やら騒ぎに近い音を耳にした。
悲鳴、慟哭、剣戟、爆音。
何事かと、音に耳を傾けてその方向へと向ける。それは獣道から外れてしまう方向からであった。光実はローズアタッカーから降りて草むらの中へと走った。走っていくうちにどんどんその声が大きくなって行き、草むらを抜けると村と言える集落に辿り着いた。本来ならば何事かと現場に飛び込むべきなのだろうが目の前で繰り広げられている光景に言葉を失いそれどころでは無かった。
「そんな……バカな」
目の前に繰り広げられている光景。それは黒影か、トルーパーに酷似したアーマードライダーの集団が家屋を打ちこわし、奪っていく。若しくは生身の人間を圧倒的力を以て叩き潰したりという凄惨極まりない光景が繰り広げられていたのだから。
略奪、暴力、破壊。
そんな中で一人の短い黒髪の少女が戦っている姿を見る事が出来た。その姿は和服で小柄乍らも剣を振り回して、黒影もどきを叩き伏せていた。彼女の背後には十代も行かないであろう3人の子供たちが黒影もどきの暴虐に怯えきっているようで泣いている。
「変身……!」
観戦している場合では無いと思い光実は龍玄へと変身し、最も近い位置で木製の家屋に火をつけている黒影もどきに迷いなくブドウ龍砲を発砲した。何はともあれ、無抵抗の人間や物を傷付ける人間が正しいとは思えないのだから。
背後から撃たれて、前のめりによろけた黒影もどきが何事かと龍玄の方向を向いた瞬間、龍玄の飛び蹴りが黒影もどきの顔面に炸裂した。
黒影もどきを蹴り倒した龍玄はブドウ龍砲の銃口を少女と交戦している黒影もどきを通り抜けざまに撃って銃身で殴り倒し、少女と子供たちの安全を確認してから次のターゲットを探すべく、少女と子供たちを無視して走り出した。
問題は彼女から離れた場所に居る黒影もどきだ。
龍玄が先ほど銃口を向けていた対象は容赦なく撃ち倒し、大通りを走りながら、正確にブドウ龍砲で撃ち、接近すれば黒影もどきの持つ長槍、影松を奪って殴り倒す。
家屋の屋根から黒影もどきが飛び掛かるもそれを龍玄は、ジャンプしてアッパーカット気味の一撃を以て迎撃。見事に奇襲でダメージを受けることなく倒す事に成功した。
「なんだ……こいつ、つえぇ……」
龍玄の対応の速さに完全にやられた龍玄の足元で倒れている黒影もどきは、忌々しげに龍玄を見上げる。それに龍玄は膝を折って屈み手を伸ばして黒影もどきから戦極ドライバーを奪い取った。
それに伴い黒影もどきの正体が露わになる。黒影もどきの中身は小汚い服装の山賊であった。だがそれは光実にとってはどうでも良かった。奪い取った戦極ドライバーを見るも此方が使っている戦極ドライバーと何ら変わりない形状だった。
「お、俺の帯返してくれよォ……!」
情けない声で懇願する黒影もどきの変身者の山賊だが、それに龍玄はそれを無視して問うた。
「これは何処で手に入れた?」
「そ、それはお頭が……」
「お頭?」
「さ、さぁ、言ったぞ。だから俺の帯を返してくれよッ!?」
「…………」
「おぉぉぉぉぉぉいッ!?」
龍玄はそれを無視して、叫びを背に戦極ドライバーを持ち去って行った。返してやるとは言っては居ないし、返してやって再び暴れられもしたら迷惑千万大損害だ。落ち着いて調べもしたかったのもある。
頼むからそのまま帰ってくれ。
黒影もどきを手あたり次第に叩き潰し、黒影もどきに襲われている人間を流れ作業の如く助け出しつつ広場に行き着くと、黒影もどきが宙を舞った。思わず宙を舞う黒影もどきを見上げるも、直ぐに前を見直す。そこに居たのは――――
「鍵真ハルト……? それに佐倉さん!」
鍵真ハルトが変身したウィザードと佐倉杏子がウィザーソードガンを振るって黒影もどきを吹き飛ばしていた。
「……ん? あぁ、ブドウ君居たのか」
黒影もどきが雨の様に地面に墜落し、そんな中でウィザードは気にも留めずに歩いて行く。よく思うのだが、彼の冷淡さや切り替えの早さには底知れぬ恐怖感を覚える。一体何が彼をそうさせるのだろうか? それに杏子は一歩遅れてウィザードについてきた。
「なんでここに居るんだ?」
「それは……」
杏子の問いに龍玄はウィザードに事のいきさつを話した。ハルトの反応は淡々としていて、ある程度話したらウィザードもお返しにと黒影もどきを倒しながらいきさつを教えてくれた。ハルトたちは一日先この村へやって来たのだという。行く場所に困り一日この村で滞在していたらしいのだが、どうやら所属不明の良くわからない敵に連れ込まれたのは同じのようだ。しかも昨日も同じような事があったらしい。
「所で佐倉さんグリーフシードはどうするつもりなんですか」
「あー、一応ストックは幸い5つくらい持ってるからそう簡単にアタシが魔力切れで死にはしねぇよ。場所が場所なんで魔法は極力使わせないようにしてるし、コイツでも戦えるからな」
そういうと杏子はハルトから借りたらしいウィザーソードガンを光実に見せた。
光実は仮面の下で安堵と不安と共に一気に息を吐き出した。この世界に魔女が居るのかよくわからないので、魔法は使わせない方が良い。ハルトの場合は自然回復型なので何とでもなるのだが。
「……敵はどれくらい?」
「ここら一体は片付けたよ。後は細かい所を探すって方向で」
「じゃぁ、散開して各個撃破しましょう」
光実の提案で3手に分かれて、各個撃破に当たった。黒影もどき程度なら苦戦する事は無い。数もさして多くないので疲弊してしまう事は有るまい。
光実は再び、家屋が立ち並ぶ場所へと走った。先ほど、黒影もどきとやり合っていた少女と守られていた子供たちが無事かどうか気になったのだ。
少女たちの姿を見つけて、そちらへと歩み寄ると、少女は敵から奪ったものだと思われる影松を持って龍玄に向けた。龍玄は足を止めて手を上げる。
「……僕に敵意は無いよ」
「……先ほど連中を容赦なく殴り飛ばしていたものね。でも、貴方はなにもの? 武神龍鎧武軍とは違うようだけれど。魔法使いを名乗っていた男の仲間?」
「鍵真ハルトの事なら知っているよ。一応、仲間……かな?」
倒すべき敵が一致しているだけであまり親しい訳でもないが、話が拗れるので一応仲間だと言う事にしておく。それに同行している杏子と光実の仲間であるマミを介して仲間とは一応言えなくも無い。
話していて気が抜けていたその刹那――――背後から殺気を感じた。
「隙有りィ!」
襲ってきたのは倒し損ねた黒影もどきだ。
龍玄は振り向き様に弾丸を叩き込もうとブドウ龍砲を構えようとした。だが、間に合わない。その時、少女が何もない場所から剣を出現させ、その剣で黒影もどきの腹を突き刺した。
深々と刺さった刃に黒影もどきは糸の切れた人形のように崩れ落ちる。急所を刺したか。だが、その光景に違和感を覚えた。普通の剣で黒影レベルとは言え、貫けるのは少しおかしい。それに何もない場所から精製させたのは一体……
その出来事から考えて、考えられる事は一つ。
まさか。
光実はこれ以上追及する事はしなかった。龍玄が少女に顔を向けると少し顔を伏せる。後ろめたい事でもあるのだろうか?
だが、そんな事は今は気にしている場合では無かった。まずは襲撃者の撃退だ――――
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「この村を山賊どもから守ってくれて悪いな」
間もなくして山賊は粗方撃退する事に成功した。ハルト、杏子と合流して安全を確認すると、何処かに身を潜めていたのか、村長だという小太りの男が現れ、屋敷まで招き、村長は扇子でパタパタと仰ぎながら、少し尊大な礼をしてワインを出した。その如何にも成金なその姿に光実は心中でうんざりした。
招かれた場所は村の中の癖して洋風の屋敷で、広い応接間にて3人はソファに座らされた。ジープや拳銃が普通に流通している戦極時代のカオスっぷりは相変わらずのようである。
「ちょくちょく狙われるのだよこの村は。食糧が沢山あるからか伝承の所為か」
村長はやれやれと言いつつ、葡萄ワインを一口。3人にもワインは出されたのだが、杏子と光実は手を出す事無く、唯一成人であるハルトだけちびちびと飲んでいた。
どれだけこの世界は荒れているのだろうか。村長から話を聞けば聞くほど光実は世紀末感溢れる世界を想像せずには居られない。そもそもあんな山賊に戦極ドライバーが出回っていると言うのは何事だろうか。
以前はそのような事は無かった筈だ。少なくともこの世界に於ける人間は生身で戦っていた筈だ。
「こっちも帯は有るにはあるんだけど如何せん数が少なくて身を隠す事が最近多くなっいるのだよ」
随分な事だ。先ほど戦闘で人が襲われていた姿は見えこそしたが、戦っている人の姿は杏子とハルト、そして子供たちを護っていた魔法少女ぐらいだった。だと言うのにこの館では何人か兵士の姿を見る事が出来た。
その兵士で撃退出来ずとも避難誘導出来た筈ではないかと思うが。まぁ別に珍しい事では無い。保身のために仕えるものを宝の持ち腐れにしてしまう事ぐらいは。
「所で、伝承の所為とはどういう事でしょうか」
ふと、村長の言葉で気になったその伝承とやらを光実は村長に問う。それに村長は答えた。
「この村では大昔から存在している『魔女』と呼ばれる天からの使いが居るのだと言う。それは幾ら傷を負っても、容易く元通りに治ってしまい、異形の妖であろうと簡単に吹き飛ばしてしまう存在。一説によるとその肉を喰らった者は不老不死に成れるそうだ」
「…………」
それが一体何なのか、光実には検討が付かない事は無かった。ハルトも杏子も同じ様である。まぁそれに答えに近い単語をこの男は言っているからであろうが。杏子はそれを聴き、かなり眉間にしわを寄せていた。
話の後で礼として豪勢な食事を出されたので、一応空腹であった光実たちは戴く事にした。更に村長は光実が眠気でボロボロなのを見抜いたか、寝室まで与えられた。光実は言葉に甘える事にした。兎に角眠くて仕方が無かったのだ。
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数時間後、陽が一番高くまで上った時間にて光実は起き上がり、ハルトたちに少し出かけて来ると言ってから外を歩くことにした。あの少女が変身しなかった理由は恐らくあの伝承の所為だろう。恐らく変身して戦えば何をされるか分かったものでは無い。
道中で村の住民に助けた事に礼を言われたり頭を下げられて、少し居心地が悪かったが。
例の少女は直ぐに見つかった。少女は子供たちの様子を見ていた。
「あの時は刃を向けて済みませんでした。それと、助けてくれて有難うございます」
「いえそんな事は。頭を上げて下さい」
「そうですか」
会うなり頭を下げられたので光実は慌てて、頭を上げるように言う。少女はそうですかと、先ほどの戦闘態勢とは打って変わってニコリと年頃の少女のように可愛らしく笑った。
「この村でキュゥべえと契約して魔法少女を?」
「はい」
話は少し離れた滝の近くで話す事にした。ここでは誰が聴いているのか分かったものでは無い。滝の音で声はかき消され、恐らくこれで盗み聞きする者の耳には届くまい。
少女……リンと名乗った少女から聞かされた話に光実は少女に聴こえないように小さく舌打ちした。まさか、この世界にまでキュゥべえが手を伸ばしているとは。想定外にも程がある。話によるとこの世界にも魔女は存在するのだと言う。少女はこの村で生まれ育ち、魔法少女としてこの村に蔓延る魔女を倒しこの村の安全を守って来たのだという。因みにハルトたちとは昨日知り合ったとかなんとか。
「(インキュベーターめ……)」
「どうされましたか?」
「いえ、何でも」
「……暫く私は魔女と戦っていたのですが、ここ最近盗賊がこの村にやってきたのです。あの黒い鎧を身に着けて。キュゥべえが普通の人の前で結界の外で魔法少女として極力戦わない方が良いと言っていて、一応見た子供たちには口止めはしておきましたが……」
「可能ならばそれが良いです」
例の伝承を聞かされるとそうも言いたくなる。光実の言葉にリンは少し驚くも、直ぐに気を取り直した。
盗賊を叩き潰した方が良いかもしれない。イエヤスの居場所を突き止めれば一気に状況が変わるのだが、闇雲に動いた所でどうにもなりはしないだろう。光実は何時も通りやれる事から一つ一つやって行く事を決意した。
「所で、貴方は一体何処から――――」
少女の問いに光実は異世界から来たとは言える訳もなく少し答えに困ったが、何とか知恵を絞って答えた。
「通りすがりですよ。ただの」と。
村に戻ると、6人ほど子供たちがリンに駆け寄って来た。その中には戦闘中でリンの後ろにに居た子も居る。どうやらリンはここの子供たちに慕われているらしい。リンもそれに笑顔で接し、小さな男の子を肩車し光実と村中を歩いた。
そんな中、子供たちのうちの一人は問うた。
「リンお姉ちゃん、このお兄ちゃんと何のお話していたの~?」
「んー、内緒っ」
「えーっ、ずーるい!」
そんな風に話す子供たちとリンを見て思わず光実は微笑む。
こういうのも悪くはない。この村を放っておけなくなってくるし、戦っている意義という物も感じるものである。
和哉たちの事も心配だが、居場所も碌に分かっていない現状、動いても仕方あるまい。それに戦極ドライバーが何故出回ってしまっているのかも気になる所だ。お頭とやらを締め出して聞き出す必要も有ろうという物。
暫く歩いていると杏子とばったりと出くわした。
「アンタそこに居たか……ちと、3人で色々話したい事がある。来てくれねぇか?」
「あぁ、はい。……リンさん、それでは」
光実はそう言ってリンと分かれ、杏子について行く事にした。行先は……甘味所、所謂喫茶店であった。何処の世界に行っても安定して甘いものを喰おうとするハルトと杏子に苦笑しつつ、光実は杏子と一緒に暖簾を潜った。
光実「昇龍拳ッ!」
次回、作戦会議。そして……