贖罪少年くれしま☆ミツザネェ!   作:ヌオー来訪者

32 / 47
 マミさんのテーマか、天野浩成氏が歌うRe:birthか、剣本編BGM『祈り』を用意してからどうぞ。……冗談です。


第13話 もう何も怖くない、怖くは無い

 さやかの異変に真っ先に気付いたのはまどかだった。

 

 何時も通り、一緒に登校していた際に事あるごとに薄気味悪く笑い、さやからしく無さに違和感を感じた。一体何が有ったのか訊いたものの、返事は「ちょっとね」としか言わず薄気味悪く微笑むだけ。

 それを不気味に思ったまどかはどうすれば良いのか分からず窮し、さやかにひっそりとストーキングする事にした。若干無茶ではあるが仁美やOLという前例があるし、今の自分に出来る事がもうそれしか無いと考えたからだ。

 

 少しでも皆の役に立ちたかった。

 

 

「何しているの、鹿目さん」

「……マミさん!」

 

 物陰に隠れてさやかの行動を見ていたまどかを背後にて怪訝な表情でマミは声を掛けた。

 

「あ、いや、その……」

 

 隠さなくては。とまどかは思った。何故そのような考えに至ったのかよくわからなかったが、何となくそうしなくてはいけない気がしたのだ。これ以上彼女を苦しめたくは無かったのかも知れない。

 

「な、なんでもありません! それではっ!」

 

 返答に窮してまどかは脱兎のごとくマミから逃げ出した。それにマミはぽかんとして逃げだしたまどかを見送った。

 

「鹿目さん……」

 

 まどかの後ろ姿が見えなくなった所でマミは、さやかの方を見やった。一体彼女がどうしたと言うのだろうか。首を傾げずには居られなかった。

 

 

 緑覆う間違いなく普通の人ならば通りもしないだろう森の中。そこで二つの影が対峙していた。片方は素体が緑色で基調とし黄緑の装甲の戦士。もう片方は黒を基調とした素体に緑色の装甲。

 ……龍玄天斬メロンエナジーアームズと影武メロンアームズはお互い武器を持って対峙していた。龍玄天斬はソニックアローを構えて、照準を影武に合せる。

 

 それに影武はメロンディフェンダーを持って防御の態勢に入る。

 

 龍玄天斬は弓を引き絞り、光の矢を放った。放たれた光の矢は真っ直ぐと影武に向かって飛来し、影武はメロンディフェンダーで受け止めた。

 

「……っく!」

 

 衝撃で、脚が後ずさる。そして、メロンディフェンダーで一振りして煙を払い、龍玄天斬に向かって無双セイバーを抜刀して走り出した。

 

「撃ィ!」

 

 叫び声と共に振り下ろされる無双セイバーの刃。それを龍玄天斬はソニックアローで受け止めた。

 

「まだ直らないみたいですね……」

「盾をちゃんと持ちつつ攻撃を上手く受け流せって……実戦でそう簡単に出来るかよ!」

 

 貴虎の戦闘データ通りに、龍玄天斬の脚を目掛けて無双セイバーを振るう。

 彼の戦闘データは非常に有意義で有用なものが沢山あった。だが、そう簡単に真似出来る代物でも無かった。

 スポーツとしての剣道を齧っているだけの人間と、様々な分野のエキスパートで殺し合い前提の訓練を行っている人間では全然違う。後者の方が圧倒的に強いに決まっている。

 

 

 和哉の悪い癖は攻撃中に防御が疎かになる事だ。攻撃中はメロンディフェンダーを持つ手が弱くなり、結果防御面が甘くなってしまうのだ。

 そして細かい構えと動きを色々指摘され、和哉のストレスがどんどんと溜まっていった。

 

「やはり時間が必要です……ね!」

 

 龍玄天斬はその攻撃をソニックアローで受け止めて影武を蹴り飛ばした。……また防御が甘くなっている。と光実は仮面の下で溜息を吐いた。

 

「ってぇ……っ」

 

 影武は蹴りを喰らうが、咄嗟にメロンディフェンダーで防御態勢に入りつつ龍玄天斬の動きを見た。この動きは先ほど光実が教えたものだ。直ぐに反撃に出ずに慎重に動く。これも戦闘では重要である。流石に猪突猛進の殴り合いでは限界が生じて来る訳で、証拠にトリスタンとの戦闘では性能の暴力でボロクソにやられている。

 

 龍玄天斬は手を緩める事無く、ソニックアローで光の矢を放つ。それを影武は受け流す態勢に入るが、タイミングを間違えて、受ける前に流す動きをしてノーガードの直撃を受け吹っ飛び、影武の変身が解かれて和哉は地面に倒れた。

 

「……はぁ、そろそろ今日は終わりにしましょう」

 

 溜息を吐きながら光実は変身を解き、倒れた和哉に手を伸ばす。それを和哉は掴み、立ち上がった。

 

 

 終わりと言っても戦闘データを閲覧したりと完全に終わりという訳では無かった。まぁこうでもしなければ周子たちとは到底戦えまい。

 光実曰く過去のデータは今を生かす足場だと言った……過去のデータを振り返らない人間に進歩など有りはしない、と。

 和哉には少々耳の痛い話であった。勉強で間違った部分に関してはあまり追求したりしなかったのだから(その所為で成績は微妙)。

 

「俺、大丈夫なのかなぁ……」

 

 少し離れた場所の自然公園の石で出来たベンチに座り、適当な資料を読みつつオロナミンCを一口含んで空を見上げた。隣で座る光実はオロナミンCの蓋を開けて答えた。

 

「いえ、一応基礎と経験はある程度積んでいるようだから、あとは彼の戦い方を全てじゃなくても良いのから自分のものにすればある程度戦える筈です。上手くやればトリスタンを撃退する事は出来る筈」

「願わくばそうなりてぇよ…………」

 

 得物が二つあると戦いづらいが、盾が無いと光の矢を防ぐ手立てが無い。貴虎のように無双セイバーで切り払う芸当が和哉に出来れば良いが、今の時点ではその技の会得は夢のまた夢である。それに覚えても身体が自然に動いて対応出来ないようでは意味が無い。毎日やって習慣化させる必要がある。

 

 思いの外長丁場になりそうだ。それにマミを助ける事もしなければならない。スマートフォンを取り出し、カレンダーで予定を確認しつつ光実は立ち上がった。

 

「それでは、僕はここで」

 

 そう言って去る光実を見送ってから、和哉はオロナミンCを一気飲みして立ち上がった。

 

「おっし、やるか!」

 

 相手は居ないがイメージトレーニングくらいは出来ると判断した和哉は気合いを入れる為に声を出して、再び森の中に入って影武に変身。

 トレーニングを再開した。トリスタンに勝利する為に……ただ動く。

 

 

 気を取り直して、まどかはさやかを追う事を続けた。さやかは陽が沈んだ放課後の下校中にて家とは真逆の方向へと向かっていく。行先は見滝原の郊外にある住宅街だった。そこにある工事現場へと歩くと、作業着を着た金髪の男性がタオルで汗を拭きつつ水を飲んでいた。

 その男へとさやかは歩み寄る。知り合いなのかと思って、二人を注視してちゃんと聴こえるように意識を集中させた。

 

「なんだお前……あぁ、あのガキのガールフレンド? なんだその錠前の玩具と機械……え?」

 

【オレンジ ロック・オン カモン! オレンジアームズ! 花道! オン・ステージ!】

 

 さやかは男の目の前で戦極ドライバーを装着し、シュバリエオレンジアームズに変身。男目掛けて大橙丸を振り上げた。

 

「さやかちゃん駄目ッ!」

 

 慌てたまどかはシュバリエに向かって走り寄り、その振り上げた腕を掴んで止めた。止めると、シュバリエは背後に居るまどかを見て、さやかとは思えないぐらいに暗く、ドスの聞いた声を出した。

 

「まどか……? どうしてそこに居るのか知らないけれど邪魔しないでよ。コイツ殺さなきゃ」

 

 ぞわりと、背筋が凍るような感覚を覚えた。まるで目の前に居る者はさやかでは無く、さやかの皮を被った怪物のようだ。抑える手が恐怖で弱まると、シュバリエは大橙丸を振り下ろした。

 

「あひぃ!?」

 

 男は情けない悲鳴を上げつつ、シュバリエの一太刀を寸前で躱す。刃を空を斬り、コンクリートで固められた地面を切り裂いた。

 対峙しているものが人間離れしている事に恐怖を覚えたか、男は失禁し白目を向いて気絶してしまった。普通ならばまどかからすれば目を覆いたくなるような光景であったが、それどころでは無かった。

 

「さやかちゃん! 駄目っ止めて!」

 

 しがみ付いてさやかの凶行を止めるべく訴えるが、シュバリエは容易くまどかを振り払い、まどかは地面に尻餅をついてしまった。さやかは上から尻餅をついたまどかを見下ろして、こう言い放った。

 

「喩えまどかでも邪魔したら殺すよ(・・・)?」

 

「ぁ……」

 

 他者に殺すと殺意をむき出しにされたのはこれが初めてだった。まどかは力なく喉からか細い声が出るだけで、叫ぶ事は出来ない。怯えるまどかに、シュバリエは構う事無く、男の方へと向いたその時、まどかの前に一人の少女が立った。

 

「……マミさん!?」

 

 まどかの声にシュバリエは驚き、再びまどかの方を向く。シュバリエはマミの存在に動揺したのか、動きが止まった。そして……

 

「マミさんも邪魔をするの……?」

 

 再び彼女らしからぬおどろおどろしい声を出す。それにマミはこれまでにない程に険しい顔を見せた。

 

「アナタまさか……魔女の口付けに……! 何かあると思って付いてきて良かったみたいね……」

 

 そして、さやかが魔女の口付けをうけた衝撃以上に恐怖心がマミの身体を襲っていた。脚が震える。マミはさやかの出す人ならざる異常な殺気に思わず逃げ出したくなった。それでもここで逃げれば男が殺されるだろうと考えると逃げる訳にも行かず、マミは勇気を振り絞り魔法少女へと変身し、マスケット銃を構えた。

 

「ねぇ、どうして皆邪魔するのかなァ? ねぇ?」

 

 シュバリエは大橙丸の刃先を引きずりつつマミに向かって歩み寄る。そして無双セイバーをも抜刀し、マミへと向かって――――振り下ろした。

 

 ガキン、と金属同士が衝突する音が鳴り響いた。マミがマスケット銃の銃身で防いだのだ。

 

「美樹さん……魔女の口付けを受けるなんて……」

 

「どっちだっていいじゃないですか……コイツは恭介の生き甲斐を奪った。恭介の全部を奪ったんだ! お陰で恭介は自殺までしようとしたんだ! それに悪い事ばかりじゃない。あの男の居場所が何となくわかったんだからさぁ!」

 

 この人が? まどかは視線をシュバリエたちから気絶した男へと向ける。この男が恭介を轢いた犯人だというのか。話によると恭介を轢いた男はシラを切った挙句、恭介を侮辱するような事を言ったのだという。まどかはその話を聞いた時憤慨した。けれども、今そこで制裁を下す事は正しい事なのだろうか?

 

 そんな事は……無い。

 

 どうしてさやかが人を傷つけなければならないのだ。優しい人間であるさやかが人を殺すような事なんておかしい。そんなこと絶対におかしいのだ。まどかの視線は再びシュバリエたちの方へと目を向けた。

 

 

 

 

「くっ……!」

 

 マスケット銃の銃身でベルトを叩いて何とか変身を解除させようとするものの、上手くいかず、剣で防がれて銃そのものが叩き切られてしまう。

 発砲する事も出来るが、威力は保障出来ない。殴った方が早いのだ。

 

「美樹さん! いい加減に目を覚ましてッ!」

 

 力の差は歴然だった。恐怖心に苛まれている上に迷いのある動きでは曲がりなりにもアーマードライダーであるシュバリエを止める事は叶わず、マミの身体は容易く吹っ飛ばされて、地面に叩き付けられた。

 

「ぁ……ぐ……美樹……さ……ん」

 

 シュバリエは男の方へと向く。そして無双セイバーの銃口を男に向けて引き金を容赦なく――――

 

 

 

 

 身体が不思議と動いていた。さやかに人は殺させはしたくなかった。人を殺した罪を背負わせたくは無かった。そして、自分が出来る事を探す事に執着し過ぎていた。

 

 それ故にまどかはシュバリエと男の前に立ち……

 

 シュバリエの放った弾丸を体に受けた。

 

 

 

「鹿目……さん?」

 

 マミは目の前に繰り広げられている光景が信じられないものに見えた。まどかが割り込んで男を庇った事に気付いたマミは、嘗て救えなかった少年の姿を思い出した。

 自分が不甲斐ないばかりに魔女に殺され死んでしまった少年。

 

 私はそのような事を繰り返させないが為に戦って来たのではないか。これでは昔と同じではないか。

 

 マミはまどかのもとへと駆け寄り、まどかを抱き起す。

 

「鹿目さん!」

 

 荒いが息は有るようで、まだ死んでは居ない。マミは治療しようとするが、治療しているうちに瞬くうちに男が殺されてしまうであろう。

 

 どうすれば……

 

「わたしの事はいいですから……さやかちゃんを……止めてあげて……くだ……さい。マミさん……はわたしなんかより……ずっと……つ……よいです……から」

 

 迷っているマミにまどかはそう言うと、目を閉じ糸の切れた人形のように動かなくなってしまった。まだ息はあるが直ぐに直さなければ命を落とす事は間違いないであろう。

 マミはまどかを地面に寝かせてふらりと力なく立ち上がった。

 

「私は強くなんかないわ……弱虫でいつも一人で泣いてばかり。ようやっと仲間が出来て舞い上がって殺されかけもした。でも……もう怖がっている場合じゃないんだ」

 

 それがせめての守れなかった人たちへの贖罪になるというのならば――――。

 

「私も、呉島さんみたいに……!」

 

 マスケット銃を一丁新しく精製し、強く握りしめる。龍玄やかつてコンビとして戦った少女を思い出しつつ、男へとゆっくりと歩み寄るシュバリエに銃口を構えた。

 

「もう二度と、絶対に恐れない……怖さに、負けないッ!」

 

 まるで自分に言い聞かせるように己を奮い立たせる。もう二度と自分に負けない。負けたくは無かった。

 

「邪魔しないでって言っているでしょう!」

 

 激昂して飛び掛かり二刀を振り上げるシュバリエにマミは――――マスケット銃一本で防ぎ、大橙丸を跳ね上げた。大橙丸はくるくると空中で回転し二人から離れた地面に突き刺さる。

 そしてマミは銃弾をゼロ距離で放ち、シュバリエを吹っ飛ばした。そして吹っ飛ぶシュバリエに拘束魔法によるリボンで縛り付けた。

 

「少し痛いけれど……我慢していて、美樹さん!」

 

 マミは空高くジャンプし、服のリボンを巨大な大砲へと変換して引き金を引き、叫ぶ。――――あの技の名前を。

 

「ティロ・フィナーレッ!」

 

 弾丸がシュバリエの装甲へ命中し、大きく身体が吹っ飛ぶ。そしてコンクリートの壁に突っ込み、装甲がダメージ過多で光と共に消滅していった。

 もうさやかに戦闘する余力は残っていないと分かったマミはまどかの傷を治すべく、まどかのもとへ行こうと振り向いたらそこには――――ほむらが倒れたまどかの傷を魔法で治癒していた。

 

「暁美さん……どうして」

 

「巴マミ、貴方は先に美樹さやかの傷を治しなさい。治した後、元凶の魔女を倒すわ。……跡形もなく」

 

 ほむらの口調には怒気と殺気が込められていた。そして心なしか何時もの冷徹な殺し屋のような印象を持つ彼女らしからず、相当焦っている表情を見せている。マミはほむらの行動が分からず少し混乱するも、彼女がまどかの傷を治しているのは事実。敵ならこのまま見捨てるか襲い掛かれば良いのだ。

 マミは壁に突っ込んださやかを助け出し、傷を治す。まどか程傷は深くなかったが為に治癒には時間が掛らなかった。髪で隠れていたが首筋に魔女の口付けが付いており、さやかの凶行の理由が直ぐに分かった。魔力を感じれば分かっていた事なのに、恐怖心でそれも鈍っていたとでも言うのか。

 それより問題はまどかだ。まどかの場合は重症のようでほむら一人では直しあぐねている。マミもまどかのもとへと歩み寄り。治癒魔法を発動させる。

 

「……私も手伝うわ」

 

 マミの行動にほむらは何も言わずに、治癒を続ける。一人では手間取っていたのだが、マミ自体治癒魔法が比較的強力な事もあって直ぐに胸から溢れ出る血が完全に何事も無かったかのように止まった。

 終わった事でほむらは大きく溜息を吐く。

 

「鹿目まどかたちの事は頼むわ」

 

 そう言い残してほむらはバックラーに手を掛けると、姿は一瞬にして掻き消えた。

 

「暁美……さん」

 

 何故助けたのか。自分より上の魔法少女を増やしたくないからではないのか。まどかと何かしらの関係でもあるのだろうか? いや、それはまどか本人は否定している。結論を下せないまま、マミはほむらの去った後をただ見ていた。

 




 マミ、復活。
 次回ほむらによる魔女への逆襲と、奴の影&グロ回(龍之介レベルが大丈夫なら問題なし)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。