因みに龍騎放送当時住んでいた場所では今はライダーは放送されて居ないとかなんとか。どういう事なの……(因みに今でも深夜アニメを見るのもままならないヲタ殺し)
今回R-15と胸糞な成分が強めですのでお覚悟の上を。
ハルトたちのフェニックス接触から数十分前。
ザックに沢芽市の事は任せる事にし、光実はマミと合流したのだが彼女の顔色は以前より悪くないように感じられた。出遭ったばかりの頃に戻っているような、それどころか強い決意を背負っているように感じられた。それを証拠に使い魔とは言えど一体を光実が力を行使する前にマミが撃破してしまった。
こちらの心配が杞憂だったのか? 光実は思うのだ。自分は彼女たちに何をしてやれているのだろうかと。
そんな事を考えていた光実はマミとパトロールの続きとして見滝原市の街中を歩き回っていると、ほむらを見かけた。ほむらにマミは気付いていないようで気にもかけずに歩いている。ほむらは光実の方を無表情でじっと見つめており些か不気味さを感じる。視線が合ってどうするか迷っている内にほむらが光実に念話を送った。
『歩きながら私の話を聴きなさい』
ほむらの指示に従い、光実はマミの後ろで歩きながらほむらの念話に意識を傾けた。
『残り丁度2週間で史上最悪の魔女が来るわ。そして、政美周子が強力なロックシードを手に入れ、以前戦闘したお菓子の魔女以上の耐久力を持った魔女を簡単に倒した』
史上最悪の魔女と、強力なロックシードという言葉に光実は顔を顰めた。強力なロックシードという単語には少々心当たりがあった。それに史上最悪の魔女とは一体何なのか光実には興味があった。唯でさえ倒すのに手間取るのに史上最悪と来た場合どうなるのか。
『先に後者について貴方に訊くけど、風林火山というロックシードを知っているかしら?』
ほむらの質問に思わず声を上げそうになった。風林火山とは以前見たファイルにあったロックシードの名前だ。やはりあちら側に回っていたと言うのか。
『知っているようね。まぁこれは後で訊くわ。キュゥべえを中継しないと貴方は念話で話せないし、2週間後に来るものはキュゥべえ聞かれていい話では無いから』
風林火山は使用者に掛ける負担が大きくヨモツヘグリ同様凍結されて、そのまま処分された筈のものである。人間に扱える代物では無い。そう考えたが、魔法で多少の調整が出来れば何ともないし、魔法少女の身体は『人外同然』な為、使えなくもないと光実は納得した。
そろそろほむらとの情報交換も必要か。連絡が出来る和哉を介して伝えるのが得策かもしれない。
『前者の話に変えましょう。2週間後にワルプルギスの夜と呼ばれる魔女が来る。その魔女の力は複数の魔法少女が束になっても勝利は厳しい存在なのだけれど、ソイツを倒すのに戦力を貸してほしい。それ以上は望まないわ。まぁ、間接的に早乙女和哉という連絡手段があるのだから、それを介して情報交換する日程を決めましょう。異論は無いわね?』
光実は誰にも気づかれないように頭を縦に振った。
『無論、その事は巴マミ、及び美樹さやかには内密で頼むわ。言ってもお互い良い事はないでしょうし』
その言葉を最後に念話は途切れ、光実の脳に直接響く声は無くなった。
ワルプルギスと周子とファントム。そして魔法少女そのものに、インキュベーター。そして沢芽市の件もある。ここ暫くは忙しくなりそうだ。光実は頭の中で状況と勢力図を作り上げて整理する。
ワルプルギスと呼ばれる存在が良くわからないが、これまでの結果からして的中する可能性は非常に高いだろう。彼女は何か根本的なものを知っている可能性はほぼ100%だろう。
『ワルプルギスの夜』
その単語に光実は何となくだが不吉さを感じずには居られなかった。
/
「それでは、行きましょう」
場所は変わって見滝原市のとある地下駐車場の一角。マミが何もない場所から、魔女結界への扉を創り出して光実とマミはその中へと足を踏み入れた。
「変身」
【ソーダァ……メロンエナジーアームズ!】
魔女結界に侵入してすぐさま光実はゲネシスドライバーとメロンエナジーロックシードを取り出し変身し、魔女に勘付かれないように慎重に長い魔女結界の通路を歩いた。今回は薄暗く、周囲にコロコロと等身大の車輪型使い魔が子供の笑い声とセミの鳴き声を合成したかのような奇妙な音を出しながら道端で転がり、様々なタイヤや車輪が山積みされたものを模した背景が広がっている。
相も変わらず薄気味悪い世界である。長居は精神衛生上宜しくない。
襲う車輪型使い魔を避けては打ち倒し、襲わぬ車輪型の使い魔も倒しては進む。放っておけば魔女になって人に害を成す可能性があるからだ。だが、魔法少女の生命線であるグリーフシードが得られるチャンスを減らすのと同義でもある。それが時として光実の判断を迷わせる。周子たちがやっている事を完全否定できない己がもどかしかった。
やり方は兎も角として彼女らの目的は生きる為。代替案を出さねば止める事は不可能だし、こちらの言い分も聞いてはくれないだろう。
マミの動きは非常に淀みなく以前と同じように流れるように始末しており、マミが殆ど持ち直しているように光実には視えた。
無論、光実も見ているだけでなく、ソニックアローで斬り捨てては、撃ち貫く。ここで躊躇して誰かが犠牲になっては本末転倒であるのだ。迷って何もしないよりはマシだと思うしかない。
殆ど倒し切った時だ。若干巨大で龍玄天斬の背の1.5倍相当の大きさのタイヤに大きな目玉が付いた使い魔がこちらへとイノシシの如く勢いで向かって転がって来た。速度は此方が散開して回避するより命中する方が速い。龍玄天斬はソニックアローを以て地を踏み締めてタイヤを受け止めた。
「くぅっ…………ぐっ!」
「呉島さん!」
タイヤに接触した瞬間、龍玄天斬の身体に強い衝撃が襲い、脚が後方に少し滑る。それを踏ん張る事で押し出されてしまう事を避けて、マミを守った。
「今だ! 巴さん!」
「……えぇ!」
龍玄天斬が後ろに居るマミに声を掛けると、マミは意を決してマスケット銃で目玉を目掛けて引き金を―――引いた。
銃声と共に放たれる金色の弾丸。それは使い魔の目玉へに吸い込まれるように飛んでいく―――が。
それは突如として天井から現れた鞭のようにうねる何かが弾丸の行く先を阻み、マミの放った弾丸は弾かれて別の方向へと飛び失速。地面に数回バウンドしてから転がって行った。
一体何事か。龍玄天斬は使い魔を受け止めていてそれどころでは無かったのだが、マミはそれが誰の仕業か知っていた。
「まったく相変わらずだねぇ…………マミ。卵産む前の鶏をシメちまってさ」
侮蔑、いや、呆れに似た声が二人の耳に入る。そして鞭のようにしなるものの先端に付いた槍の穂先ににた刃が龍玄天斬を襲い吹っ飛ばした。
火花を上げて龍玄天斬は吹っ飛ぶも、空中で体勢を立て直し見事に着地する。そして龍玄天斬が止めていた使い魔は「ケケケッ」と子供の甲高い笑い声に似た何かを放つと、逆の方向へ転がり逃げてしまった。
使い魔が逃げてしまったが故に現実離れした光景が見慣れた地下駐車場へと戻る。
そしてうねる鞭が天井へ引っ込んでから少女が使い魔の居た場所に降り立った。その少女はマミやさやかと同じくらいの背で赤く長い髪をポニーテールで結っている。そしてコスプレにしか見えないノースリーブの丈の長い上着に短いスカートを穿いている。
そして胸元にある赤く輝く宝石を見て光実が彼女が一体何者なのか大凡の検討は付いた。―――魔法少女だ。
龍玄天斬はソニックアローを持つ手に力を入れる。まさか彼女も周子の仲間では無いか。周子の仲間ならば苦戦が予想されるだろう。こいつはマミの事を知っているようだが―――
「佐倉さん、どうして邪魔をしたの」
マミは怒気を込めてそう言った。
龍玄天斬は、彼女と知り合いなのかとマミに問うと、マミは頷いた。
「昔、コイツと組んでたのさ。今は別行動だけどね」
マミの代わりに佐倉が自嘲気味に答えつつ、槍を肩に掛けて気怠そうに龍玄天斬とマミを視線を移しつつマミの質問に答えた。
「数人くらい人食わせとけばグリーフシードを持つようになる。ソイツを倒せばいいのに相変わらず他人の為に戦ってんのか。マミ」
「えぇ。佐倉さん貴女は」
違うみたいね。と、マミがそう云う前に杏子は溜息を吐いてから答えた。
「アンタさ。そうやって手段選んでばかりだと…………死んじまうぞ」
杏子の声が少し曇った。まるでマミを心配しているかのような。
光実からすれば一体何がどうなっているのか分からず、二人を交互に視線を移しつつ彼女らの話で状況を把握しようと努める以外何も出来なかった。
「ふざけないで!」
杏子の言葉を遮るようにマミは叫ぶ。それはやってはいけない事だと。間違いなのだと。だが、ソウルジェムが濁り切れば待っている末路を知っている光実は頭を抱えずには居られなかった。
「誰かを犠牲にしてまで私は生きたくなんて―――」
「そうやって綺麗事言ってさ! イライラするんだよ、そう言うの!」
「佐倉さん!」
どうやら、この二人はコンビを組んでいたが、何かしらの出来事で喧嘩別れしたらしい。マミの性格からして何故使い魔を放置する人間と組んだのかわからないのだが、『元々そういう人間でなかった』可能性もあるだろう。……だが今の時点では『マミの敵』であるのには間違いない。現に使い魔を倒す事を妨害したのだから。
佐倉が何処まで魔法少女の事について知っているのか分からないが、光実の見立てでは恐らくこちらと同じ、いや、それ以上を知っている可能性が高い。
如何にしてキュゥべえへの信頼を失墜させるのかが鍵なのだが、今は関係の無い話なので後回しにしておこう。
人間を食わそうとしているのは光実からしても看過できる問題では無い。
敵ならば戦うしかあるまい。
まさしく一触即発の状態でこの場に緊張が走る。一体誰が先に手を出すのか。その時―――佐倉から後ろの方向にある車が凄まじい音と共に弾けた。
「何だッ!?」
佐倉は驚いたように声を上げながら後ろを向き、龍玄天斬とマミの視線も佐倉の視線と同じ方向へと向かう。そこには黒いローブを纏った異形と不死鳥型の怪人が対峙していた。
この二人には見覚えがある。
ウィザードとフェニックスだ。
「あのファントム、倒した筈じゃ……!」
光実は驚愕の余りに仮面の下で目を見開いた。車の爆発で火の海になった場所に立ってウィザードと対峙しているのは紛れも無く、和哉と共闘して撃破したソレで…………
甦ったのか、はたまた双子か三つ子か。もしかしたらアレは初級インべスの如く大量に居るのか。……いや、流石に無いか。そう思いたい。
「ハルト!」
佐倉が大きな声を掛けると、ウィザードが佐倉たちの方を向いた。
「杏子ちゃん!? それにブドウ君じゃないか!」
「いや、ブドウじゃないんですけど」
龍玄天斬はウィザードにさり気なくツッコミながら、マミと佐倉杏子と共にウィザードの前に走り寄った。共通の敵が現れたが故に、協力して撃退した方が得策だと3人とも判断したのだった。
/
放課後にて、和哉は呉島貴虎の戦い方を学びつつ己の身体を鍛えるべく川沿いを走っていた。ここ最近剣道部も休むようになってしまっていた。中沢や灰津に心配されたが、和哉からしたらそれどころでは無かった。
正治を倒すために鍛えている事を精神安定剤にしている己の浅ましさに嫌気が刺していた。
琉璃の件はどうすればいいのか分からない。
彼女は完全に周子の側に回っている。それに目を向けたくないが故に今は戦っている。
だが現実というのは酷く残酷で―――
「っ……!」
琉璃が和哉の走る先に立っていた。和哉はそれに驚き、脚を止める。
「戦極ドライバーを……渡してください」
開口一番がそれだった。それに和哉は口を噤み、上着の内に仕舞った戦極ドライバーに手を掛ける。
彼女はきっと自分の事を覚えてはいないし、きっと覚えているのは自分だけなのだろう。小学生の頃だ。当時彼女とは普通に友達をしていたのだけれど―――
和哉は元々、運動神経のある人間では無かった。というか身体を動かすのが面倒くさくてゲームしたり漫画読んだりとインドア派な人間であった。昼休みだって図書室行って借りる事の出来ない漫画を読んだりして時間を潰していた。
そうでありながら一人で居るのにもあまり耐えられないという非常に我儘で難儀な性格をしていたが為に、何時も図書室に居る人間と話したりすることで孤独を何とかしようと声を掛けた。それが琉璃だった。
琉璃は当時の和哉からすれば難しかった魔法使いが主役の分厚い小説を読んでおり、それが面白いのかと聞いたのが始まりであった。
「それってさ、面白いの?」
声を掛けると、驚いたような顔をして琉璃は黙り込む。
まずったか。
和哉は謝って直ぐに離れようと思った矢先、彼女は小さな声で答えた。
「…………面白い、よ?」
そこから色々話すようになった。他に話す相手など、殆ど居なかったのが大きいが。正直彼女の読む本はわけが分からない(分厚くて読む気にならなかった)が故に、気軽に読める本を教えて貰ったりした。お陰で読書感想文を書く前に読む本に苦労しなくなったのは本当に感謝したい所だ。
喩えお題が固定でも、簡単に読んでしまえるようになったり、もう既に読んでいたり。
琉璃は本を面白く解説したりしてくれて和哉も漫画以外の本に興味を持つようになった。和哉が読書に慣れて来た所でお互い感想を言い合ったりして、和哉にとってはそれは『楽しい』の一言だった。異性の友人自体琉璃が最初だったのだが、何故か気兼ねなく話せた。
気付けばそれが毎日の楽しみになっていた。
当時の和哉には異性を意識するという概念が無かったが故に、周囲から生暖かい目で見られていた事には気付く事は無かった。
脈があったのかについては当事者である和哉も知る由も無い。
後々通学路が一緒だった事に気付き、一緒に帰るようになった。
これだけならば甘酸っぱい学園ラブコメか何かで終わる事だろう。そう、これだけで終われば、だ。
そうは問屋が卸さなかった。
ちょっと話しに熱中し過ぎたのが原因か。戸締りまでずっと話し続けてしまっていた。陽は季節故に早い内に沈んでおり、人工の光が街を照らしていた。
和哉たちの通学路は元々人通りの少ない道だった。危ないから速い内に帰れと親や教師からしつこく言われたと言うのに、今日は大丈夫だと愚かにも和哉は思っていた。
『理由の在る悪意』を持って居た大人の存在を嘗めきっていた。
気が付けば彼女が居ない事に和哉は気付いた。一体何処へ行ったのかと周りえお見回すと自分より背の高い大人が立っていた。―――強い衝撃が和哉を襲った。それが一体何なのか。考える余裕もないまま和哉は自分よりずっと大きな拳で殴り飛ばされた。
この後何が起こったのかはぼかすが、良い出来事では無いのは確かだ。
こんな最低な大人が居たのかと正直絶望もした。和哉の眼に最低な大人にされるがままの琉璃が視界に入る。殴られて参っていた時に腕がと足が縛られて人気の殆ど無い雑木林の中に連れられていたが、縛りは甘く何とか足の縄だけは解く事が出来た。
最低な大人は琉璃を滅茶苦茶にしてしまうのに関心が行っていて拘束から解放された事に気付いては居ない。
このまま助けようと一瞬考えたものの、最低な大人は和哉よりずっと背が高く、運動神経が並以下の和哉では太刀打ちが出来ないのは明白だったし、臆病だったのも災いした。
和哉は、最低な大人に気付かれないように逃げた。
背に彼女の視線を受けながらも、逃げた。
最低な大人が怖くて怖くて仕方が無かった。そして暫く走ってから思いとどまった。自分だけ逃げてどうするのだと。幸運にも偶然警察官が居た。その事を知らせると警察官は直ぐに向かってくれた。和哉の顔に殴られた痕と手に拘束があった為に直ぐに信じてくれた。
琉璃と最低な大人が居る場所まで案内すると、最低な大人の餌食になっていた琉璃の姿を目にした。和哉の案内を受けて駆け付けた警察官は和哉の眼を覆ったが、目にははっきりと映った。彼女の虚ろな、目が。ずたずたにされた服が。
相方が最低な大人を取り押さえ、和哉の眼を覆っていた警察官は和哉を琉璃が見えない場所まで連れて連絡を入れる。
凄まじいまでの後悔が、和哉を襲った。
見たのは一瞬だったが、彼女の惨状がしつこく和哉の瞼の裏で再現される。
そうだ。俺だ。俺の所為だ。俺があんな判断を下さなければこうはならなかった。何故逃げた。何故、立ち向かわなかった。
和哉は己を責めた。責めて、責めて。責め続けた。
逃げた弱い自分が嫌いだった。テレビに出て来る正義の味方ならばきっと、あんな最低な大人など蹴散らした筈なのに。何故自分だけ逃げようとした。冷静に考えて立ち向かっても無意味だと分かるのに責めずには居られなかった。
だが、事件の後、話を聞いた琉璃の両親は和哉を責めなかった。悪いのは犯人なのだと言った。教師は少し説教をしただけでそれ以上は何も言わなかった。家族に限ってはもう言う必要は無い。
誰も和哉を罰しなかった。それが、逆に和哉の心に重くのしかかり続けた。
琉璃はその事件を最後に和哉の前に顔を見せずそのまま転校してしまった。
『ごめんなさい』の一言も、言えないまま…………
今もその後悔が心に深く突き刺さっている。
今回は平成初期特有の利害の一致による共闘、フェニックス復活。そして和哉と琉璃の邂逅&過去でした。
アカン、そろそろ実家に帰省せねば…………orz