それでは、どうぞ。
和哉はこの状況にて罪悪感を持って居たが故に、菘琉璃の要求に対して足踏みしていた。自分が別の方法を取れば彼女は辛い思いをしなかったのかも知れないという事への贖罪として戦極ドライバーを渡すという選択肢と、それでも同じような事を繰り返さない為にまどかたちを守る為に行使する力である戦極ドライバーを持ち続けて彼女の要求を拒否するのか。
「なぁ、
「わたしの事知ってるってことはやっぱり早乙女君……か」
和哉は今何を成すべきかが分からず、質問を琉璃に投げた。琉璃は和哉の質問に対して顔を俯かせて答える事は無い。
「何でだよっ!」
答えてくれない事に苛立ちを感じたか、和哉は声を荒げるも琉璃は答えなかった。
「……早乙女君、もう一度言うよ? 戦極ドライバーを……渡して」
そして引き下がる事無く引き渡しを要求する琉璃に和哉はどうすれば良いのか分からず頭を掻きむしりたい衝動に駆られた。彼女への罪悪感ともう繰り返させないという決意の板挟みに苛まれて頭がどうにかなりそうだ。
あの嘗て自分を救ってくれた魔法少女のような娘を増やさせたくは無いのに。
―――いや待てよ?
和哉は有る事を思いついた。……と言っても荒れ狂う嵐の海に浮かんでいる藁に縋るレベルの焼石に水っぷりで、無理だと分かり切ったような提案だった。
「親玉に脅されているのか? だったら俺たちと来いよ……!」
不利な状況であちらが飲んでくれるような提案では無かった。案の定、と言うべきか琉璃は首を横に振った。当然だ。こちらに勝算はまるでないと言うのに。
「理由ぐらい、教えてくれないのか?」
もう一度、問う。しばし、お互いが沈黙し、風の音と電車が通過する音だけがこの場を支配する。
半ば和哉はヤケクソ気味な心境だった。先送りにしようとした問題が真っ先に殴りかかって来たのだから仕方のない事ではある。
あまりのヤケクソになって食らいつく和哉のしつこさに観念したか、琉璃はぽつりと答えた。
「守りたいものが有るから、私はここに居るの」
まるで頭をガツンとバットで叩かれたような感覚を覚えた。今目の前に居るのは嘗て友達だった頃の琉璃じゃないのだと思い知らされた。彼女の眼から覚悟というか、引き下がれない何かを感じられた。
「何を……」
「渡さないと……実力で取り上げるよ?」
琉璃がゆっくりと手を差し出しながら和哉のもとに歩み寄る。和哉は上着の内ポケットに仕舞った戦極ドライバーに手を掛ける。
大人しく渡すべきか?
実際俺は碌に役に立って居ないからいいではないかと内なる己が語り掛ける。一方でもう一つの己がそうしたら自分の覚悟は、決意は無駄になると警告する。
悩んでいる内にじりじりと琉璃と和哉の間の距離が縮まって行く。刻一刻とタイムリミットが迫る。
「……くっ」
和哉が答えに窮したその時、横から殺気を感じた。咄嗟に横を見るとフォーゼアームズを纏ったトリスタンがロケットで飛んできて和哉を勢いのままに殴り飛ばそうとすべく飛んできたのだ。
「はっ!?」
和哉は咄嗟にそれを飛び避けて、河原に転げ落ちて地面に手と膝が付くが直ぐに立て直して戦極ドライバーとメロンロックシードを取り出して影武に変身した。
「変身ッ!」
【メロンアームズ! 天・下・御・免!】
無双セイバーを抜刀して、もう一度影武を狙って飛んでくるトリスタンを見据えた。落ち着け。落ち着けば対処は出来る。
和哉は深呼吸しながら落ち着いて飛び掛かって来るタイミングを見計らう。そして―――
カウンター気味に無双セイバーで―――一閃。
光実曰く基礎は出来上がっていた為、落ち着いて対処すれば能力任せの相手への対処は多少だが簡単だった。薙ぎ払われたトリスタンは火花を上げながら軽く吹っ飛び地面に転がり落ちる。
影武は残心を取ってからゆっくりと、墜落したトリスタンに視線をやるとトリスタンはロケットアームを解除して立ち上がって、舌打ちしているのが見えた。何時もならば迷惑千万な客だが、今は丁度良かった。先ほど悩んでいた問題が先送りになったのだから。
それが最良の対応では無いという事は、分かっているのだけれど。
無双セイバーの切っ先を向けて様子を見ていると、立ち上がったトリスタンが再度ロケットを起動させて、鈍器の要領で殴りかかって来た。
「なぁ、知ってるか!?」
振りかぶって飛んできたロケットをメロンディフェンダーを投げ捨て躱しながら、トリスタンは突如として謎の切り出しをしてきた。それが不可解で苛立ちを加速させ不機嫌全開な声でに影武は返した。
「何をだ!?」
「呉島光実という男の事だよ! アイツさ、人殺しの家系なんだぜ?」
「どういう意味だっ!」
影武はトリスタンをヤクザキックで蹴り飛ばし、反動で一気に距離を取り、無双セイバーで射撃を放つ。
エナジー以上の出力を持つ相手に攻撃を真正面から受けるのは危険だ。避けるか射程外から攻撃するのが最良の策である。だが、少々トリスタンの言葉に気を取られて唯でさえ精度の悪い射撃が相手に一発もかすりもしなかった。
「謎の植物が全世界に繁殖した騒動あったろ? あれは一部の人間がそうなる事を前々から知ってたんだよ。その一部の人間が呉島家をはじめとしたユグドラシルグループや国の高級官僚さ。そして不要な人間は総て消滅させて、気に入った一部の人間だけ生きながらえようとした。あらゆる手段を使い多くの人間を犠牲にした最低最悪の連中なんだぜ? 呉島家はそれを推進させた連中なのさ」
「最低最悪……お前が言うかよッ!」
影武は吐き捨てるように吠えながら、リロードして無双セイバーから弾丸を放ち続ける。だが、内心動揺していて全く弾丸が命中しなかった。
そんな馬鹿な話があるか、一部の人間以外皆殺しにするつもりだったなどと……
それに大企業たるユグドラシル社が関わっていた事も信じられた話では無かった。今では縮小されてしまったようだが、少々距離があるが、隣町及び隣駅に相当する見滝原でもユグドラシル社笠下の企業に関わっている人が多かった。
そんな生活と隣り合わせの企業が皆殺しだと?
光実はその片棒を担いだとでも言うのか。自分と同じ年齢でそんな事が有るとでも言うのか。ただ単に親とかが勝手にやったとかそういうのではないのか。
約1年前、沢芽市を中心に起こった全世界が混乱したあの怪植物事件で沢芽市を実質支配していたユグドラシルが絡んでいたと言われてもおかしいとも言えないのも悔しい話でもある。腹に一物抱えていてもおかしくないレベルの大組織だ。
詳細は事件が起こる前に戦極ドライバーを寄越した親戚が何かを知っている可能性があるのではないか? 彼とはあれ以降一切連絡が付かないが……そして戦極ドライバーを所有している光実は一体。
中途半端につながって行く、認めたくないものを形造って……
「低能が……いい加減気付けよ真実にさぁ!」
電光石火。吠えながらトリスタンが超高速で影武に当たらぬ弾丸を恐れず突っ込んでくる。アッパーカット気味に顎にロケットアームで殴られて空中に影武は吹っ飛ばされた。衝撃で手から無双セイバーが離れて地面に突き刺さった。
トリスタンの追撃に対し、影武は咄嗟に空中で迎撃に入る。ディフェンダーを捨てたのが仇となったか、防御手段が無い。ならば……残された方法は、一つ。
影武はカッティングブレードに手を掛けた。
【メロンスカッシュ!】
【リミットブレイク!】
両者ともカッティングブレードを一回倒し、トリスタンはロケットドリルキックを発動、影武は無刃キックを発動して両者のキックは衝突した。
無論、この時点で明らかにどちらが有利か火を見るよりも明らかである。
「プロジェクト・アーク。この言葉を奴に言ってみろよ……生きていたらな!」
「ッ!?」
衝突し力が拮抗し合っている数秒間、トリスタンはそう言った。言い終えるとどうやら手加減していたらしく、一気に力を解放されて一気に押し出されてしまった。
―――また覆せないのか。
エネルギー同士の衝突で発生した爆発に押された影武の身体が宙を舞う。爆風に吹き飛ばされ、比較的深い川に叩き込まれて変身を解除させられた和哉はそう思いながら意識を手放した。
「ふん……」
害虫は潰した―――変身を解除した正治は大きなカタルシスを覚えていた。まさか琉璃と和哉が知り合いだったのは初耳だったが、これで死ねば琉璃にたかる蠅は消えるというもの。
川に叩き落とされ大きな水の波紋が造られず川の流れの中に消えていく和哉をゴミを見るように見下ろしていた。
和哉が生きていても光実は孤立するし、和哉が死亡していれば
これが報いだ、呉島家。正義は勝つのである。そのまま孤立するなり騙しつるんだ低能仲間が死ぬのを見て絶望でもすればいい。
正治は
法律に守られた屑を屠り、どうせクソの役にも立たない低能を始末するなり導くなりして、琉璃という弱き者を救う。それを己が成すのだと。
その点、あの周子は良いものを寄越してくれたものであると正治は思う。時間制限付きで実質首輪付きなのが気に食わないが、ゲネシスドライバーを凌ぐ力を手に入れられたのだから。
「ざまぁ見ろよ低能と屑ども」
正治は吐き捨てるようにそう言ってから、呆気に取られている琉璃のもとへ歩み寄る……が、―――頬を強く叩く炸裂音がこの場に響いた。
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フェニックスはパワーで押す典型的な脳筋なのは、前回の戦闘で明らかになっている事だった。龍玄天斬は3人に指示を飛ばした。
「散開して、かく乱しつつ攻撃。相手は典型的なパワータイプです。付け入る隙は大きいので極力被弾を避けつつ攻撃を」
「戦った事あるような口ぶりだね」
ウィザードは何時になく真面目な声色で龍玄天斬に問うた。その声には妙な気迫がこもっておりそれに軽く圧されながらも龍玄天斬は答えた。
「一度倒した筈のファントムなんですけど……」
「倒した?」
「……はい」
ウィザードは確認するように問い、答えを聞いて一気に息を吐いてから何も答えなかった。
ハルトは……ウィザードは一瞬焦った。トウゴを、フェニックスを倒したという事を聞いて、知らない人間に嘗ての友を倒されるのは耐えられた話では無い(じゃぁ迷いなく倒せるのかと言われれば首を横に振るが)
だが、現にフェニックスは生きている。
しかし、龍玄天斬が嘘を吐くメリットが無い。その上指摘も的を射ているので嘘とも思えない。底知れぬ不安と不穏さを覚えながらウィザードは銃形態のソードガンを二丁をフェニックスに向けた。
初手はウィザードとマミの発砲だった。ばら撒かれる十数発の弾丸がフェニックスを襲うが、フェニックスが巨大な刀身を持った大剣を盾のように用いて総て弾いてしまう。そして、弾丸に気を取られている隙に杏子と龍玄天斬はフェニックスとの距離を一気に詰めた。
「喰らいやがれ!」
着弾後、杏子の叫びと共に杏子の長槍と龍玄天斬のソニックアローが防御を掻い潜りフェニックス目掛けて振り下ろされ、その二つの刃は確かな手ごたえと共にフェニックスの固い皮膚を切り裂いた。
攻撃を受けて後方にふらつくフェニックスだが、力任せに大剣を振るって杏子たちを薙ぎ払った。
―――以前より、力が増しているのか?
一瞬光実はフェニックス相手に違和感を覚えるが、そんな事を気にしている場合では無かった。
「小細工しやがってよォ!」
フェニックスは憤怒を込めて吠えると、全身に灼熱の炎をマグマの如く吹き上がらせた。すると目に見える速度で二人が作った傷が塞がってきていた。
「……ッ!」
焦りを覚えたか、マミがマスケット銃を大量生成して立て続けに発砲するのだが、与えたダメージは凄まじい速度で再生してしまい、焼け石に水だった。
【WATER】
だが、ウィザードは冷静だった。フレイムからウォーターへとエレメント変化させてから拘束魔法【BIND】を発動させた。
燃え上がり身体を再生させるフェニックスの足元に水の鎖が現れてフェニックスの身体を覆う。そして凄まじい量の水蒸気を発生させ、フェニックス周辺は白に包まれた。
そしてウィザードは剣形態へと変形させたソードガンを逆手持ちで以て、フェニックスのもとへ白い水蒸気を突っ切って詰め寄る。そして―――
【HURRICANE】
ハリケーンへとエレメントを変化させて水蒸気を魔力風で吹き飛ばし、超高速でフェニックスを切り刻む。フェニックスは無理矢理力任せに反撃に出ようとするも、龍玄天斬が放つ光の矢と、マミが放つ弾丸、杏子が放つ鞭のようにしなる長槍がそれを阻み反撃を許さない。―――そして。
【SLASH STRIKE】
スラッシュストライクを発生させた刃をフェニックスに突きつけた。だが、フェニックスは余裕綽々の態度でウィザードを嘲笑った。
「おいおい、俺をやろうってのか? 俺をやっちまえばトウゴとか言う奴の記憶も何もかも吹っ飛んじまうんだぜ?」
「…………」
確かにそうだ。今、自分の成そうとしている事は同族殺しだ。ソウは総てを元通りする方法を知っているようだが、それはまるで夢のような業だ。自分では考えが付かないし、もし失敗でもすれば完全に取り返しとつかない事になるだろう。
悩んでいる内にフェニックスの身体がトウゴの姿へと変わった。
「なぁ、ハルト。俺を殺すのか?」
「……」
ハルトの腹の底にある怒りがふつふつと煮えたぎって来る。
やめろ、その姿を俺に見せるな。やめろ……やめろ……
「俺たち……友達だろう?」
「……まれ」
「ハルト?」
「黙れと言っているんだよッ!」
魔力風を纏ったソードガンがトウゴ、否、人間態のフェニックス目掛けて振り下ろされた。その刃はいともたやすく身体を切り裂き、傷口から血が噴水の如く噴き出した。
「オ、オイ!」
杏子はウィザードを咎めようとするも間に合わないし、どうすれば良いのか分からなかった。一方でマミは目の前で起こっているショッキングな光景に茫然自失とし、龍玄天斬は唖然としていた。
倒れたトウゴだったものを返り血を浴びたウィザードは見下ろす。その佇まいは何処か、寂しげに見えた。亡骸は脆い砂の山ように崩れ落ちて灰と化していく。
「…………ごめん」
そう、ポツリとウィザードは呟いた。
―――これで、終わったのか。
龍玄天斬は勝ったのに何故だが勝った気がしない後味の悪さと釈然としない想いに駆られながらウィザードの後ろ姿を見る。マミも杏子も少し納得いかない表情で、灰の山を見ていた。―――すると……
灰の山が勝手に動き出した。ハリケーンの起こした風はとっくに収まっており……風が無いのに拘わらずだ。
4人は何事かと、各々武器を構える。
灰はウィザードの足元を離れてフェニックスの姿へと元通りに形作り、シルエットだけならば完全にフェニックスであろう姿に変わると、フェニックス型の灰の塊は突如として燃え上がった。
その炎は凄まじい熱気を放っており、唯の人間ならば辛くて逃げ出しているか卒倒しているであろう。
劣悪な環境でも動ける魔法少女勢ですら顔を顰めていた。
「チィッ……何が起こっていやがる……!」
舌打ちしながら杏子は目の前で起こっている光景が有りえなさ過ぎて思った事を越えに出してしまう。その疑問に答える者はだれ一人とて居ない。そして―――杏子の疑問はおのずと解決する事となる。
「驚いたぜ死にぞこないの魔法使いのハルトさんよォ……まさか生身の人間をぶった切るとは思いもしなかったぜ!」
ゲラゲラと事も無げに笑うフェニックスが灰と炎の塊を内側から破るように現れたというあまりにも信じがたい光景という回答を以て……
和哉「琉璃ぃぃぃぃぃぃ!」
杏子「ハルトォォォォォォ!」
???「彼女は瑠璃ではない(無言の腹パン)」
???「良い腹パンだ、感動的だな。だが無意味だ(笑顔の腹パン)」
冗談はさて置き……真面目にまとめを。
差は縮まっている。少しずつだけど、確実に。そしてそれに気づかない正治、光実とシドと小説版753たち劣化させてから足して3で割ったナニカを目指す様子。
そしてフェニックスさんやり口が完全にワームかラダム。そんなに地球外生命体に憧れているんなら宇宙に連れて行ってやろうか(フラグ)
近い内に外伝も更新します。乞うご期待。
制限だらけの本編ですが外伝では(色んな意味で)好き放題出来ると思う(`・ω・´)