贖罪少年くれしま☆ミツザネェ!   作:ヌオー来訪者

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 ミッチ、久々の出番回。主人公の一人なのにこの扱いは如何に。いい加減単体で敵を撃破する話を書いた方が良いかも知れない。
 影武も久々の登場です。

 本作に関係の無い話(けれども今後の展開的にちょっとあるかも)ですが仮面ライダー剣後日譚のドラマCDが来年の1月に出るという話を聞いて結構びっくりしました。


第八話 緑と、黒

 

 

「行方不明だぁ?」

 

 早乙女和哉は思わず声を上げた。中沢と和哉。偶然遭遇した和哉の同級生の海田で登校していたのだが、海田(かいだ)の出した話題がこうだった。

 最近関東地方内で行方不明事件が多発しているらしい。それも被害者は女性ばかりで、ある日忽然と失踪してしまうのだという。総ての被害者には女性という事以外に接点は無い。と、海田は説明する。

 

「人攫いっすかね。被害者は女性ばっかなんだし」

 

 中沢が想像したのは時代劇によく出てきそうな悪代官みたいな男がソファにどっかり座ってワイングラスを傾けながら、ハーレムを形成している光景だった。……想像するだけでもむかっ腹が立つ。非常にステレオタイプな想像をした中沢は思わず眉を顰めた。

 何に? それは勿論、うらやま……けしからん事にだ。

 

「それかほら、死体を何処かに隠しているとかは? フツーに考えて捕まりたくないでしょうよ。犯行動機は女性に恨みとかでもあったり」

 

 中沢はほぼ思い付きの発想をふざけ半分で口にしてみる。無論、根拠は無い。その発想は直ぐに和哉が真面目な顔で否定した。

 

「後者は無いような気がするわ。被害者数はゆうに50人を超えている。それならば被害者の死体は一人や二人は見つかっている筈だし。俺は人攫いに一票。カイザ、お前はどう思う」

 

「海田だ。俺も人攫い……って解釈かなぁ?」

 

 男である自分たちには関係の無い話なのに和哉は少々神妙な顔だった。深く思い悩んでいるようにも中沢には見えた。これではふざけ半分に言った自分が馬鹿みたいでは無いか。だが、幸い海田は和哉程真面目な顔はしていないので少し安堵した。

 

 ……先輩は姉の事でも心配しているのだろうか? 和哉の姉である早乙女和子は中沢の担任だが、性格が面倒くさいがルックスは童顔で可愛らしい所がある。

 正直生徒であり後輩である自分が言うのがおこがましいかも知れないが、姉弟共々黙っていれば十分に異性に受けそうな外見をしている。両者とも性格というか言動がアレなので恋愛云々は壊滅的なようだが。

 

 さて、本題に戻ろう。

 もし、犯人の目的は人攫いだとしたら……何故、行方不明者の消息が一切不明なのだろうか。普通ならば一件くらい現場の目撃者とか出る筈なのだが。あまりの不可解さに中沢は顔を顰めた。

 

「ま、どっちにしろ犯人はロクでなしだろうよ」

 

 和哉が吐き捨てるように言いながら、地面の石ころを蹴り飛ばす。

 どっちにしろ犯人はロクでなしであるという事には中沢も流石に同意した。罪の無い人間を殺したり、攫ったりする事は幾らどんな理由で取り繕った所で正当化なんて出来やしないのだから……

 

 

 放課後の夕暮れ時。最初の説明会以来のお茶会がマミの家にて行われた。

 参加者は前回と同じ。ガラス造りのテーブルにつきマミが用意したケーキと紅茶を食していた。一種の親睦会と補足説明会みたいなものだ。信頼を勝ち得てゆけば魔法少女やキュゥべえについての情報が手に入るかも知れないという打算もあって呉島光実は参加し、マミたちの話に耳を傾けていた。

 

 マミが紅茶を一口含み、説明を始める。

 

「皆も多分分かっているだろうけど魔法少女にも悪い人が居るわ」

 

 光実は、さもありなんと思いながらまどかたちに合わせて頷く。力を手に入れた人間は歪む時が有る。……嘗ての己がそうだったように。契約した後に歪むか否かなんてキュゥべえでも予測は出来ないのだろう。もしかしたら人格関係なく素質のある人間を狙って契約しているのかも知れないが。

 光実はおもてなしとして出されたシャルモンのケーキを一口頬張りながらそんな事を考える。

 

「ですね。転校生とか転校生とか転校生とか」

 

 さやかの認識では完全にほむらは悪人のようだ。まぁ聞いた話だと「契約したら総てを失う。周りが大切ならば契約するな」と言われたのが本当なら『契約したらお前を殺す』とも解釈はできよう。

 

 光実はまだ、彼女を……暁美ほむらを敵とも味方とも考えてはいなかった。判断するには情報が少なすぎる。それに、キュゥべえに対する疑念が少なからず心の何処かに存在しているので完全に信用出来ない。

 

 さやかの発言を耳にしてまどかは少々納得のいかない表情で俯いているのが光実の視界に入る。何故脅迫(?)されている本人が納得がいかないと言わんばかりの表情をしているのか。それが光実には不思議で仕方なかった。ただの脳内お花畑なだけなのか、疑問に思うだけの出来事に出会っているのか。……もしくは、底抜けのお人好しか。

 

 

「暁美さんだけでは無いわ。アレは最近のものだから。……前から存在しているのが居るのよ」

 

 マミの発言に「えぇっ」とさやかとまどかが目を丸くしながら声を上げた。さやかは先ほどまで動かしていたフォークの動きを止めている。光実も考えるのを中断して再び耳を傾けた。

 

「政美周子。私たちと同じ魔法少女なんだけど……気に食わなかったり、自分に従わない魔法少女を殺害したり、グリーフシードを奪い取ったり、使い魔を放置して襲われている人間を見殺しにしたりしている極めて危険な魔法少女よ」

 

 政美周子、か。光実は確かにその名前を頭にインプットした。普通に危険過ぎる存在だ。話が本当ならば、警戒せねばならない。最悪交戦の可能性もある。

 どれが本当の敵でどれが味方か。まだ分からないままだが、名前や勢力図が分かって来ているのは良い傾向だ。

 

「うわー……あからさまに悪い奴だ……」

 

 さやかが心底嫌な表情で言い、それにマミは苦笑する。

 

「知り合いの魔法少女が教えてくれた話なんだけど、彼女は風見野で活動しているみたいだからこちらでは活動はしていないらしいけどね……こういう悪い人も居るし、魔法少女同士のトラブルもあるから、魔法少女になる場合はそこに気をつけて欲しいわね」

 

 グリーフシードという見返りさえ無ければ、こんな事にはならなかったのだろうか? ふと光実は思った。だがそれを考えるのは無意味かつ無駄だ。今は自分がどう動くべきかを考えねばならない。

 マミ自身はこれまでの行動を見ると人命優先の戦い方をしており、そこについてはマミと光実は戦い方が一致する。今の所は暫くマミは信用するという事で力を貸し、影武と名乗る黒いアーマードライダーの正体を探る事にしていようと考えている。

 

――いま出来る事はそれだけか。

 

 光実は紅茶を一口含んで、一息吐く。

 

 先ほどまで考え事に夢中で紅茶の味を味わっていなかったが、改めて味を意識して飲んでみるとこの紅茶は後味が良くて、飲みやすくて、陳腐な感想だがとても美味しかった。

 

 

 

 

【ハイィ~! ブドウスカッシュ!】

「ティロ・フィナーレ!」

 

 地上から放つ龍玄の必殺の射撃技であるドラゴンショットと街頭の上からのマミのティロ・フィナーレが使い魔に炸裂し、巨大な異形は爆煙と共に欠片も残さず吹き飛び、結界は消滅。元の夜の暗い公園内へと戻ってゆく。

 

 

 『魔法少女体験コース』が始まって約一週間が経った。

 

 もういい加減慣れて来たのか、さやかもまどかも魔女に対してあまり驚かずに、冷静に対処できるようになって来ていた。光実もまた、マミの助力と情報提供により対魔女戦にも慣れてきていた。

 

「いやーマミさんも呉島さんもカッコいいねっ!」

 

 自衛のためのバットを肩に掛けてさやかが「そこに痺れる憧れる」と言わんばかりの表情で二人を讃える。それに苦笑しながら変身を解く光実だが、元の制服姿に戻ったマミは困った表情でさやかに顔を向けた。

 

「もう見世物じゃないのよ? 危ない事をしているという意識ぐらいは忘れないでいて欲しいわ」

 

「イエス・サー!」

 

 何故か敬礼で答えるさやか。マミの言う通り、危ない事をしているという意識は忘れないで欲しいと思っていた。危機感が無ければ人は馬鹿をやらかすのだから。

 所で女性相手はイエス・マミ……じゃなくてイエス・マムではなかったかと光実は思わず突っ込みたくなったが、話が逸れそうな気がするので止めておいた。正直どうでもいい事だ。

 

 

「今回のは使い魔だったみたいだね。今回の敵はグリーフシードを落とさなかったし」

「そうですね……」

 

 光実の発言にまどかは少し落ち込み気味に頷く。いつの間にかまどかの肩にいつからそこに居たのやらキュゥべえがちょこんと乗っている。

 

 使い魔は魔女から分離した手下であり、グリーフシードを持っていない。放っておけば魔女へと変わるのだが、それはマミも光実も許さない。喩え使い魔だろうと逃がさず駆逐するのがマミと光実のスタンスだ。それは既にまどかもさやかも承知しており、納得もしているようだ。全く、純粋な少女たちである。

 

 

 

 

 

「二人共、もう願い事は決まった?」

 

 帰り道、マミはまどかとさやかに尋ねた。だが、反応は以前と同じで決まっていないようでそれをマミは察した。

 

「まぁ、そういうものよね。いざ考えろって言われたら」

 

 願い事。もし自分に一つだけ願い事を叶えられると言われたならば、どんな事を願っているだろうか? 

 光実も考えてみるけれど、やはり思い浮かばない。強いて言うならば、過ちを犯す過去の自分を止めたい。という事ぐらいだろうか?

 けれども、これまでの出来事が無ければずっと自分はあの時のままで歪んだままだったかも知れない。……守りたかったものを殆ど失うという高い代償を支払う事となったが今のままで良いのかも知れないが……止めよう。不毛だ、こんな事考えるのは。所詮IFはIFなのだから。

 

 

 ……巴さんは一体何を願って魔法少女になったのだろうか? ふと、そんな事を訊きたくなったので光実はマミに訊いてみた。

 

「巴さんはどんな願い事を?」

 

 すると、マミは足を止めてすっかり黙り込んでしまった。マミが足を止めた事により、3人も足を止める。……地雷を踏んでしまったか。光実は後悔し、「答えなくていい」と言おうとした瞬間だった。……マミは重く閉ざされた口を開いた。

 

「私の場合は……考える余裕さえなかったというだけ」

 

 考える余裕が無い。それが何を意味するか光実は薄々感づいていた。……命の危機、か。地雷だった。光実は己の失言に気付き後悔した。

 

「後悔している訳じゃないのよ? 今の生き方も、その時に死んでしまうよりはずっと良いと思ってる。……でもね、考える時間がある子にはちゃんと考えた上で決めて欲しいの。自分に考える余裕が無かったから猶更……ね」

 

 一度だけの機会だからこそ考えて欲しい。それがマミの願いだった。いつか後で後悔しないか。

 

「あの、マミさん?」

 

 その時、さやかが口を開いた。呼ばれたマミはさやかの方を向く。

 

「願いって、自分の為だけの事しか、駄目なのかな? 例えばの話なんだけど……私なんかより困っている人が居て、その人の為に願い事を叶えるというのは……」

 

 その問いに答えたのはマミでは無く、まどかの肩に乗ったキュゥべえだった。

 

『別に契約者自身が願い事の対象になる必然性は無いけれどね。前例もない訳じゃないし』

 

 それを聞いたさやかの表情が夜の暗闇と反比例して明るくなるのだが、それをマミは真剣は表情で言葉を返した。

 

「でもそれは感心出来た話じゃないわ。他人の願いを叶えるのなら尚の事、自分の願いをはっきりさせておかないと。……美樹さん、貴女はその人に夢を叶えて欲しいの? それとも、その人の恩人になりたいのか。同じようでも全然違うわよ。これ」

 

 滅私か、打算か。確かに180度方向性が違う。

 

「マミさん……その言い方、非道いと思う」

 

 さやかのバットを持つ手が強く握られる。図星でも突かれたのか、それとも……

 

――巴さんのいう事は間違いでは無い。

 

 もし、目的が分からないのならば、はっきりしていないのならば戦わない方が良い。彼女に悪いが、目的が決まるまで止めて置いた方が賢明だと光実は思うのである。

 浅い考えで成した行い程裏目に出るものは無いのだから……

 

「ごめんなさいね。でも今の内に言っておかなないと、そこをはき違えたまま先に進むと、アナタきっと後悔する事になるから……」

 

「……そうだね、私の考えが甘かった。ごめん」

 

 さやかの謝罪で他人の願いの話は終わったのだが、光実の心にマミの言葉は胸の奥に深く深く突き刺さったままだった。まるで、過去の己の行いを戒めるように。責め続けるように。

 ……今もまだ、光実は自分が許せないままだった。

 

 

 

 

 

 

 まどかとさやかが各々家に帰って行った後も、マミと光実の魔女探索は続いていた。使い魔が暴れていたのならそんなに遠くには魔女は逃げていないとマミが踏んだからだ。

 二人とも、親と言う親が家に居ないので門限は無い。まぁ、深夜巡回しているお巡りさんに用心しなければならないのだが、幸い今日はそれらしき人影は見当たらなかった。

 

「魔女の気配は?」

 

「うーん……この公園を出てしまっているかも知れないわね」

 

 光実の問いにマミは困ったように、手元のソウルジェムを見やる。ソウルジェムは淡く黄色い光を放っており、ライトの代わりにもなっている。公園には二人以外誰も居らず、街灯は寂しく誰も居ない地面を照らし、この公園のトレードマークのようなものである噴水から噴き出た水の音がこの広場に空しく響く。

 

「……呉島さん」

 

 暫く歩き回って疲れた為に、休憩として近くのベンチに座った時だった。マミは隣に座った光実を呼んだ。

 

「呉島さんは……どうして私たちに力を貸してくれるの?」

 

 マミの問いかけに光実は答えに詰まった。強いて言うのならばこの状況を紘汰さんならば放っては置かない、という事だろうか。理不尽で人を殺されるのを葛葉紘汰は人一倍嫌っていた。一年前のスカラーシステムの一件も、オーバーロードに対しても。

 

 だが……それを言って彼女は納得してくれるだろうか?

 

 スカラーは世間一般には知られては居ない話ではあるし、話してはならない部分も沢山ある。一応流石にアーマードライダーシステムについては話はしたが(詳細に関しては部外者には吹聴禁止と断りは入れた)

 

 まぁ、何もかも一纏めにしてしまえば……

 

「……贖罪、かな」

 

「しょくざい……?」

 

 マミは一瞬、食材と連想したがそれを罪を償う方の贖罪であるという事に少し時間を要した。それを他所に光実は言葉を紡ぐ。

 

「沢山の人を、友達を自分の我儘で裏切って、傷付けた。許してもらおうなんて思っては居ない。でも、どうしようもない僕を救った人たちの分も戦い続けたいと、そう思ったんだ」

 

 光実の寂しげに見える瞳の奥に強い光が宿っていた。マミは光実がどれだけの業を背負ったのかは知らない。けれども、今のこの男は『正義の味方』だと思えるのだ。己の身を削って無数の使い魔と戦い、まどかたちを守っていた。

 あの行動は偽りでなく本物だった。

 

「じゃ、魔女捜索再開しようか」

 

 光実は立ち上がって、先ほどの寂しげな瞳はなんだったのか笑顔で立ち上がる。

 

――私も、彼のように『強く』在れるかしら。

 

 光実の後ろ姿を見てそんな事を思いながら、マミもベンチから立ち上がり光実の隣に向かおうとしたその時、バイクのエンジン音が微かに光実の耳に聞こえて来た。

 

 普通ならば、暴走族か通りすがりのバイク乗りだろうと思うが、今聴こえているものは違う。徐々に、徐々に大きくなってくる。――減速の様子を見せない。それにこの公園ではバイクで走る事は一切許されていない筈だというのに……何故……?

 

 光実はけたたましいエンジン音のする方を向く。マミもまた、異変に感付いて同じ方を向くと、眩い光がマミと光実の目を刺激した。――これは……ライトかっ!

 

 その乗り手の姿が見えた途端、二人は身構えた。

 

【ブドウ!】

 

 咄嗟に光実は戦極ドライバーを腰に巻き付け、ブドウロックシードを開錠。減速せず頭の高さまで前輪を持ち上げ突っ込んでくるバイクを驚きの余り唖然としていたマミを突き飛ばしてからマミの居る方向に避けた。

 

「お前は……!」

 

 避けられたバイクをアイドリング状態で止め、バイクから降りる。……乗り手はどう見ても人間では無かった。黒い皮膚に燃える炎をイメージしたような(たてがみ)、まさしく異形というべき風貌にマミはソウルジェムを取り出すが、光実は手で制した。

 

 ここ最近連戦でマミは大分グリーフシードを消耗している筈。あの怪人がグリーフシードを持っている筈が無いので、ここは消耗が少ないアーマードライダーだけで打って出る。それを察したマミは首を横に振るが、光実は折れなかった。

 

 それを他所に怪人は周囲を見渡し、舌打ちした。

 

「チッ……ゲートはもう居ないか」

 

 悔しげに言い放つ怪人に光実は眉を顰めた。『ゲート』確かに彼はそう言った。という事はあの鳥怪人の仲間か。

 

「まぁいい。フレスベルグが世話になった奴で、もう片方の女はゲートの知り合いだ。ここは下準備と行きましょう!」

 

 フレスベルグ。北欧神話に登場する鷲の形をした巨人。確かに相手は鳥類であったが……

 

 問答無用で魔剣を携えて襲い掛かって来る為に考える余裕は与えてくれなかった。光実はドライバーにブドウロックシードをセットし、叩くように開いた錠前を閉めてベルトに完全固定させ、待機音が鳴る前に間髪入れずにカッティングブレードを倒した。

 

【ロック・オン ハイィ~ッ! ブドウアームズ! 龍・砲・ハッハッハッ!】

 

 クラックを通じて夜空から落ちて来た大きな葡萄を被り、光実の服装が、中華風の素体(ライドウェア)へと書き換わり、巨大な葡萄が変形。鎧の形を成す事でアーマードライダー龍玄へと変身。

 怪人が龍玄にゼロ距離まで詰めて魔剣を振り下ろすが、それを龍玄はアームズウェポン『ブドウ龍砲』をトンファーの要領で持って魔剣を受け止めた。

 

 重い衝撃が龍玄を襲うが、光実にとってはこの程度屁でも無い。優勢とは行かないが互角のままお互い押し合っていた。

 

「アンタは何者なんだ! ゲートって何だ!」

 

 魔剣とブドウ龍砲が擦れ合い、火花が散る。龍玄の問いに怪人は余裕綽々の声で答えた。

 

「私たちは『ファントム』人間を凌駕する優れた種。そして私は……ヘルハウンドだ!」

 

「っ……!」

 

 ヘルハウンドに押されて、怯んだタイミングで龍玄に魔剣で斬撃を数発浴びせる。火花が大きく散り龍玄の装甲に傷が付くも光実はこの程度で引き下がる気は無かった。

 

「さて、ゲートについては貴方たち科学世界に生きる人間には理解できないでしょう。魔力を持たぬ凡愚たちに!」

 

 随分と上から目線な奴だ。――オーバーロードと同類か。

 

 龍玄はブドウ龍砲でヘルハウンドの顔を力一杯に殴りつけ、膝蹴りを叩き込む。膝蹴りで怯んだヘルハウンドにブドウ龍砲を持っていない拳で殴り飛ばした。

 

「えぇい! グール!」

 

 殴られ、後退したヘルハウンドは灰色の小さな石の破片らしきものを地面に向かって投げつけた。するとその石の破片は光実たちと同じくらいの大きさの灰色のゾンビのような怪物へと姿を変えた。

 

 その数はざっと数えて10体程か。

 

「くっ……呉島さん、私も戦うわ!」

 

 これでは数の暴力だ。龍玄の背後で戦闘を見ていたマミが飛び出そうとした次の瞬間、

 

「その必要はない」

 

 公園内に厳かな声が龍玄とマミの耳に入った。その声には光実にとっては聞き覚えのある声であった。――影武!

 上空から降って来た影武マツボックリアームズが龍玄の前に着地、長槍型の専用装備(アームズウェポン)である影松の穂先を怪人の群れへと切っ先を向けた。

 

「……味方、なのか?」

 

 龍玄の問いに影武は静かに、無言で頷く。今は彼の力を借りなければならないらしい。信用できるのかとマミが言いたげに龍玄に視線を送るが、少なくとも敵ならば見殺しにでもしておくか、戦闘後で弱った所を狙えば良い筈だ。

 

 だから、今は……龍玄は頷く事で答える。敵ならばその時に考えれば良い。

 

 左に影武、右に龍玄が並び立ち、龍玄はヘルハウンド、影武はグールの群れに向かって走り出した。

 

「撃ぃッ!」

 

 影武は薙ぎ払うように影松を一閃させ前方のグール数体を纏めて切り裂く。だが、切れ味は中途半端で致命傷に至らない。だが、手を緩めず手近なグールに影松を腹に突き刺し、蹴りを刺さった影松に叩き込む。

 

 影松がグールに深く突き刺さり、グールは力なく地面に倒れて黒い霧の如く四散する。それに構わず次のターゲットを見据えてベルトに固定された無双セイバーを抜刀、空かさずもう一体のグールを横に薙ぐように切り裂き、斬られたグールは上半身と下半身が分かれ消滅。

 

 だが、グールもやられっ放しでは居られない。緩慢な動きで手持ちの武器である槍を振るい、影武に向かって振り下ろす。

 

「っ!?」

 

 慌てて飛び避け、無双セイバーの後部スイッチであるバレットスライドを引き銃弾を補填。グールから後方に離れながらトリガーを引く。

 無双セイバーの鍔部分に取り付けられた銃身、銃口から弾丸がグール目掛けて放たれ、グール3体に命中。3体が大きく怯んだ所で影武は再度突撃。3体を通り抜けざまに切り捨てた。

 

――残りは、5体。

 

 有り難い事に纏まっている配置だ。今ならばまとめて撃破出来る。影武は無造作にドライバーのカッティングブレードを3回連続で倒す。

 

【マツボックリスパーキング!】

 

 音声がドライバーから放たれた次の瞬間、影武は空高くジャンプした。そして……ドリルの如く回転しながらマツボックリ状のエネルギー波を纏った状態で、無双セイバーによる特攻を仕掛ける。

 

 グールに向かって猛スピードで飛んでくる影武はまるで弾丸だった。一番前に居たグールを貫き、衰えない勢いで後方のグールたちにもボウリングの如く突っ込み、弾かれたピンのように弾かれ、吹き飛ばされ、貫かれ、5体共々消滅した。

 

 グール程度ならば、マツボックリでも充分戦っていけるものだ。影武は地面に転がっている影松をおもむろに拾い上げた。

 

 

 

 

 銃弾を発砲しても、弾かれるだけで遠距離戦は最早泥仕合だった。龍玄が撃ったのをヘルハウンドが魔剣で防ぎ、ヘルハウンドが放った火球を龍玄が躱す若しくはこちらの放った弾で相殺する。

 

 このままでは、負けるのは龍玄だった。ヘルハウンドはまるで疲れを見せていないが、龍玄は肩で息をし始めている。彼から魔剣を奪い取らなければ銃弾はあまり効かないと言っても過言では無い。

 

「なら、強力な火力で押し飛ばせば良い……!」

 

 周囲に邪魔なものは無い。正直、扱い辛い武器ではあるのだがキウイロックシードの出番が来たようだ。

 

【キウイ!】

 

 ヘルハウンドが放つ火球を避けながらも龍玄はキウイロックシードを取り出し、開錠。ブドウロックシードと入れ替えるように、ドライバーにキウイロックシードをセットし、カッティングブレードで切った。

 

【ハイィ~ッ! キウイアームズ! 撃・輪・セイヤッハッ!】

 

 素体に戻り、新たに巨大なキウイが龍玄の頭に被さり鎧の形へと変わる。それと同時に専用武器の圏『キウイ撃輪』が両手に出現した。

 

「はッ!」

 

 キウイ撃輪を手にするや否や、龍玄は両方ともヘルハウンドに向かって投げつける。まさかいきなり投げつけられるとは思わなかったのか、ヘルハウンドの対応は後手に回り、防御に使った魔剣はキウイ撃輪の質量に逆らえずに弾かれ、あらぬ方向へ吹っ飛んで地面に突き刺さった。

 

 ブーメランのように戻って来たキウイ撃輪をキャッチし、それを以て丸腰のヘルハウンドに向かって駆け出す。無論、火球による抵抗は受けるがキウイ撃輪の大きな面積を利用し、シャットアウト。

 

 射程距離まで詰め寄った所でキウイ撃輪で舞うようにヘルハウンドの身体を切り付けようとしたその時、

 

 

 

 

 ヘルハウンドの身体は地面に沈み込むように、消え去った。

 




 以上、謎の行方不明事件の話と、悪い魔法少女の話と、ヘルハウンド戦、キウイ登場回でした。……ヘルハウンドは逃げましたけど実質龍玄の勝ちみたいなものです。3度目の正直できっと次は無いでしょう。
 二度あることは三度あるとか思った人、前に出なさい。

 今更な話ですが原作序盤で盗んだスイカロックシードは貴虎に返却した脳内設定なので今の光実は持っていません(露骨なバランス調整)
 そして光実は終始舞さん一筋的な扱いの予定。マミと光実の会話でフラグかと思った人、申し訳ない(`・ω・´)
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