とりあえず十数日経った。
キツい。凄くキツい。精神的にめちゃくちゃキツい。赤ちゃんの体だから全然動けないしすぐ眠くなる。何かして欲しいのを伝えたくても泣くことしか出来ない。周りのことも全然分かんないし、前世の記憶思い出すか一人しりとりか妄想ぐらいしかすることがない。いや、できることが無い。
そして何よりもキツいのが…ごめん、失礼なのは分かってる。ホントに申し訳ないと思ってる。でも言わせてくれ。授乳がキツい。お母さまには悪いけど中身はもう男子高校生なわけで…、いいお母さんなんだ。毎日最低三回は授乳しに来てくれる上に時間があれば俺のところに可愛がりに着てくれる。美人だしスタイル良いし兄弟分け隔て無く接してくれる優しいお母さまだけど高校生の精神年齢だとキツいです…
転生してから初めてのときに一瞬興奮するかもって思ったことは墓まで持っていく秘密です(肉親ゆえか女の子の体ゆえか興奮することはなかった)。
寝て起きてご飯(母乳)食べて(飲んで?)また寝て…っていう生活が続いてたんだけど…
お母さまはもちろん、リズ姉ちゃんもアル兄ちゃんもよく遊びに来てくれる。リズ姉ちゃんは五〜六歳ぐらい、アル兄ちゃんは三〜四歳ぐらいかな?一日一回は絶対に来てくれるし六日に一日はほぼ一日中同じ部屋に居る。一緒にいるときは頰をツンツンされたり、もちもちされたり、抱っこされたり。
他にも沢山話しかけてくれるからちょっとずつこの世界のことが分かってきた。徹夜でぶっ通しでやった関係で忘れてることとかも結構あったから助かった。例えば、この世界は六日で一週間。一ヶ月六週間で一年が十ヶ月で三六〇日(幸いにも時間の数え方は3600秒→60分→一時間で同じだった)。春にあたる発芽の季節から一年が始まって、深植の季節(夏)、落葉の季節(秋)、睡樹の季節(冬)と続く。発芽の季節と落葉の季節が長くて三ヶ月ずつ。深植の季節と睡樹の季節は二ヶ月ずつだ。曜日は火の日、水の日、土の日、風の日、影の日、光の日で魔法の属性とおんなじなど、早いうちから常識を知られたのことはリズ姉ちゃんたちに感謝しないとな。
ある日、リズ姉ちゃんが話してくれることで気になることがあった。
ぱたぱたと弾むように走って部屋の扉を開けはなつなり、
「ねえハル!私ね、明日から魔法の授業をつけて貰えることになったの!」
「あう?」
「リズ。淑女が廊下を走ってはいけないわ。それにハルはまだ一歳にもならないのに、分からないでしょう」
俺は安楽椅子に座ったお母さまに抱かれている状態でリズ姉ちゃんの嬉しそうな方向を聞いていた。
魔法か〜。俺も早く使えるようになりたいなぁ。メラ○ーマとかマヒ○ドとか。自分でも魔法作れたら楽しいだろうな。こう、指をパチンってやると大量の魔方陣がブワァって…っと妄想の世界に飛び立ってた。
「ごめんなさい、お母さま。でも凄く嬉しくて!魔法を上手に使えるようになったらハルにも見せてあげるからね!」
「そんなこと言ってもハルは分からないでしょうに…」
「でもなんだか話を聞いてくれているような気がするの」
「そんなこと…いえ、そうね。確かに夜泣きも聞かないし、起きてるのに泣くでもなく静かにしていて全然手がかからないし、生まれつき賢い子なのかしら?リズはもちろん、アルなんてあんなに大変だったのに」
ぎくっ、お母さま感が鋭い…
「あはは!アルはやっぱり大変だったんだ!」
「あなたも人のことが言えないくらいには大変だったわよ」
「わ〜、聞こえなーい!」
なんとか話が逸れた…
前世?の記憶があるなんてバレたら異常者扱いされかねないからな。隠して生きていこう。
それはそうと魔法か。『Fantastic Love Story』ハレーティアの得意属性ってなんだっけ?ほとんど魔法を使ってる描写がなかったからな…えーっと、うーん…あ!そうだ、風だ。と、いうより我らがノーブルリリー家は風属性の家系だ。お母さまは嫁いできた人だったはずだから属性は分かんないけど。ゲームの中の“ハレーティア”が魔法使ってたシーンなんて嫌がらせのシーン以外で記憶にないけど。あれ?影属性も使ってたような…気のせいかな、うろ覚えだな…
まあいいか。とりあえず魔力を知覚してすることから始めて、動かせるようになることを目標に頑張ってみるか。
そうやって目標を決めるまでは良かったんだ。だけど…全っ然ダメ。分かんない。体の中に何かあるっぽいことには気づいた。んだけどそれだけなんだよなあ。目を閉じて意識を集中したら胸の中心の辺りに何かあったかいものが在るのには気づいたけど、動かしたりは上手くいかない。ボールみたいなイメージの器的なナニカががあって魔力っぽいものが入ってて少しずつ少しずつ滲みでてる。
魔力?をちょっと揺らす?ことはできるけどそれ以上は何も出来ない。とりあえずもっと動かせるように頑張ろう。幸いヒマだしね。
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なお、ハレーティアこと御川晴都は知らないことだが、彼?がやっている修行は一般的なものではない。
本来なら他の魔法使いの協力のもと、まず魔力を外部から流してもらうことで魔力を意識できるようにする。その後魔力を動かせるように修行を始め、魔力を操れるようになってから魔法を教わる。
なお、本来なら姉であるエリザベッタがそうしていたように、魔法の修行は自意識が一定以上に発達し、魔力の器がある程度完成する六歳ごろになってから始めるのが普通である。
転生者であるがゆえに、中途半端に知識を持ってしまっているがゆえに、彼は気が付かないうちに異常な行動をとっていた。
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それから数ヶ月経って、俺が転生して半年が経ち、発芽の季節がきてアル兄ちゃんがリズ姉ちゃんの修行に参加し始めたころ。
俺はかなり安定して魔力を動かせるようになってきていた。球状の器の中から引き出して使おうとするとそれだけでだいぶ疲れるから、滲み出てるような少しの魔力をちょっとずつちょっとずつ動かすように練習を続けた。滲み出た魔力を操作してゆっくりと血管に沿わせるようなイメージで流していく。目を閉じて体の隅々まで意識を行き渡らせるようにして頑張った。
体から出すのはまだ上手くイメージ出来なくて出来てないけどいつかはできるようになりたいな。
そして…気づいた時めちゃくちゃびっくりしたんだけど…体に魔力流すとめっちゃ身体能力上がる。いや〜作中ではこんな描写なかったからね。驚かされた。純粋に動きが凄く早くなったしパワーも上がった。
それでね、魔力流してるときにパワーを試してたら布団引き裂けちゃった☆
いや〜マジ慌てた。まあ赤ちゃんがこんなこと出来るわけないだろうって事で偶然の事故扱いになったから良かったんだけど。
あと、リズ姉ちゃんが話してくれたんだけど授業が始まって半年、ようやく魔法を習い始めたみたい。
最初の方は体内の魔力に気づくことから始めて、そこから世界中の魔力に気づけるようにするんだって。
あとは体内の魔力を動かせるように特訓して、世界の魔力を使えるようになって、ようやく魔法。
今はイメージとか呪文を習ってるんだって教えてくれた。
魔法を見せてもらうのが楽しみだ。俺も早く使えるようになりたいな。
補足というかまとめ
『Fantastic Love Story』の日時
時間の数え方は共通で、3600秒 → 60分 → 1時間
曜日は、火の日 → 水の日 → 土の日 → 風の日 → 影の日 → 光の日 → 火の日…の週六日、一ヶ月六週間。光の日は学校などはお休み
季節は
発芽の季節(1〜3月)(春) → 深植の季節(4〜5月)(夏) → 落葉の季節(6〜8月)(秋) → 睡樹の季節(9〜10月)(冬)
今回は設定多めでした。