こんな気安い主従関係良いよね。
「ご招待ありがとうございます、ノーブルリリー公爵殿。御子女が6歳になったとのことで。心より祝いの言葉を送らせていただきます」
「ありがとうございます、グランローズ公爵殿。貴方ほどのお方に来て頂けるとは、私の娘も喜ぶでしょう」
「いえいえ、お嬢さまは見目麗しい上に大層聡明であるとの噂。私の息子も是非ともご挨拶をと」
「ええ、自慢の娘です。多少変わったところもありますがそれも含め非常に愛おしく…」
「…お嬢さま、大丈夫ですか?緊張されてませんか?」
「ふーーーっ、はーーーー、大丈夫。頑張れる。 言葉遣いも立ち振る舞いも習ったし練習した。大丈夫」
イケる。大丈夫。ずっと練習してたし、言葉遣いは前世の記憶がある。大丈夫。大丈夫....なハズ…
「聞こえておられますか?お嬢さま?お嬢さま!」
「わっ!?ああ、アリスか。どうかした?」
「緊張されておいでのようですね。大丈夫ですか?」
「大丈夫……じゃないかも」
「私に何かできることはありますか?」
「ん....そうだ、背中ひっぱたいて気合い入れてくれる?」
前世だと姉ちゃんがやってくれてたな。痛かったけど緊張は吹き飛ぶからありがたかった。
「お任せください。それでは失礼して」
「遠慮せずにしっかりね」
「はい。ふっ!」パアンッ!
「いっっっ〜〜〜………。ふーーー、ありがと、アリス。緊張どっか行ったよ」
「いえいえ、従者として当然の勤めです」
「別にいいんだけどさ、結構容赦なくいったよね」
「遠慮せずにとのことでしたので。いけませんでしたか?」
「いや別にそういうわけじゃないけどさ…もうちょっと主人に対して容赦とかさ…」
「私の雇い主は旦那様であってお嬢さまではありませんよ?ところでお嬢さま」
「え、そうなの?いやまあそうか…。で、何?」
「お嬢さまは被虐趣味でもあるのですか?」
「HA?」
いきなり何を言いだすんだこのメイドは。
「ですからお嬢さまは被虐趣味でもあるのかと」
「いや聞こえてるよ。だから『は?』って言ったんだ」
「ああ、違うのですか。いきなり叩いて欲しいと言われたので被虐趣味に目覚めていたのかと思いました。どうやって旦那様にお伝えすれば良いかと悩みましたよ」
「判断が早いよ!違うから!確かに押し倒すより押し倒されたい派だけど、って何を言わせるんだアリス!」
間違えれ暴露しちゃったんだけど!?
「お嬢さまは押し倒すよりも押し倒されたい派っと。随分と進んでますねぇ。誰の影響でしょうか。旦那様と奥方様にどうやってお伝えしましょう」
「絶対やめて!」
絶対家族会議になる!どうやって説明すれば良いんだよ!?
「さてと、お嬢さま。緊張はほぐれましたか?」
「え?ああ、うん。緊張してたのが噓みたい…」
「それは良かったです。誕生会、頑張ってください。応援していますよ。」
「もしかしてわざと?」
「なんのことでしょうか?」
アリスったらとぼけちゃってさ。
「んふふ、わざとだと思っておくね。ありがとう、アリス。行ってくる」
「いってらっしゃいませ、お嬢さま。服装も大変愛らしいです。安心して行ってきてください」
「ハレーティアお嬢様の誕生会にようこそおいでくださいました!紳士淑女の皆々様、今日は是非とも愛らしく着飾ったお嬢さまの姿を一目見て行ってください!」
この声はセバスだな…そんな期待させるようなこと言われたら出づらいんだけど…
「ハレーティアお嬢さまのご登場です!」
こつ...こつ...こつ...こつ...こつ...こつ...
お、息を飲むような音が聞こえた。どーだ、これがお母さまとアリスのセンスだ。
今来ているのは薄い水色のプリンセスラインのドレス。瞳の色に合わせたルビーのブローチが胸の上で輝いている。まだ体が幼いこともあってコルセットは形だけ。その分スカート部分のボリュームが大きめになっている。髪はいくつか三つ編みを作ってまとめて?巻いて?ある。お母さま似の月の光のような白金髪も相まって月の花のようだ。淡い色でまとまった姿と白い肌に赤い目がよく映える。我ながら道にいたら絶対振り向くレベルの美少女…なんだけどかなり複雑。
よし、挨拶だ。文面は結構考えたし間違えないように頑張ろう。
「ご紹介にあずかりました。お初にお目にかかります。お…じゃない、わたくし、ハレーティア・ノーブルリリーと申します。以後、お見知りおきを。本日はわたくしの6歳の誕生会に来ていただいたこと、感謝の念に堪えません。これから先、さまざまな面でお力を貸していただくことがあると思いまが、ご懇意にしていただけたら非常に有り難いです。今日の会を心より楽しんでいただけると幸いです。今日という日に皆様と出会えたことを世界の創造主たるいと高きお方に感謝いたします」
しーん
え?なんかミスった?結構頑張ったつもりなんだけどダメだった?どうしよ、ここから巻き返せるか?
「は、ハレーティアお嬢さまの挨拶でした。お食事をお楽しみください」
「ふ、ふははは!さすがはお前の娘だな、エドワード!」
誰だろ、このおじさん。長めの金髪に、切れ長の碧眼。どっかで見たことあるような…?
「国王陛下!?」
え?噓でしょお父さま。呼んだの!?
「なんだ、来てはいけなかったのか?余にも招待状を送ってくれていただろう?」
「いえ、決してそういうわけでは…公務の方は?」
「案ずるな。全て済ませてきた。学園からの友人の愛娘の誕生会ともなれば来ないわけにはいくまいよ。その娘が見目麗しいうえに頭脳明晰との噂ともなれば一目見ておきたいというのが人情というものだろう。」
「国王陛下…!」
「それに…今日は友人として来ているのだ。そんな他人行儀な呼び方はやめてくれ、エドワード」
「ふっ、わかったよ。ギルガメッシュ」
おお〜、お父さまは国王陛下の友人なのか。凄くね?凄いよね!
ヒューっ!かっくいー!さすがお父さま!
「それで君がハレーティア嬢だね。いい挨拶だったよ。6歳児らしからぬ堂々としたものだった。私の息子でもこうはいかないだろう」
「あ、ありがとうございます。お褒めいただき光栄です」
「そうかしこまってくれるな。将来、我が国に役立ってくれることを願っているよ」
「はい。粉骨砕身、邁進して参ります」
「随分と難しい言葉を知っているんだな。君の将来を楽しみにしているよ」
うわーお、国王陛下に褒められちゃったよ。周りの貴族の方々がすごい顔でこっちを見てら。
「なあエドワード、いったいどんな教育をしたらここまで育つんだ?」
「私が聞きたいよ。特に上の子二人と違う育て方をしたわけでもないんだ…」
聞かれても答えられないし離れてよ。
「お誕生日おめでとうございます。我が家は〜」「お嬢さまは噂以上にお美しく…」「実に結構なパーティーで…」
ME ☆ NN ☆ DO ☆ I
もう右の耳から入って左の耳から出てくの。ぜんっぜん情報が増えていかない。ぜんぜん関わりのないおじさんたちが挨拶してくれてるけど誰が誰やら。笑顔で時たま相槌入れながら聞き続けてる分褒めてほしいぐらい。もう二度としたくない。今回は一応パーティーの主役だから特に挨拶まわりとかいらないけど、これから先パーティーに参加させられることを考えるとユーウツ〜。
何か食事でもしよっかな。今日は立食式です。ヨセフたちが腕によりをかけて作ってくれたご飯。もちろんめっちゃ美味しい。
さーあ何食べよっかなぁ。ローストビーフ食べたい。サラダも食べなきゃな。
…ん?あれは…ヤバい。どうしよう。攻略対象が来てる。逃げよっかな。