ストライクウィッチーズ-乙女たちにジュラルミンの翼を- 作:社畜新兵
なんでこうなったのだろう?どこで間違えた?そんなことを考えても仕方がない。そうわかっていても、そう思わずにはいられなかった。突然の衝撃。自分の体が黒く冷たい海にたたきつけられるのを感じる。ゆっくりと沈むのを感じる。どうせこれで終わりなのだ。後悔はあるが、仕方がない。これでようやく休める。
突然、私の体を勢いよく何かが引っ張る。使い魔のレヴォフだ。この大きなハイイロオオカミは彼は母からの贈り物だ、生まれたころから一緒にいる。そうか君はまだあきらめるつもりなんてさらさらないんだな。でももう無理なんだ。少し休んでいいかな?ゆっくりと目を閉じる。
「ムート、いい加減起きなさい。許さないよ、ここで終わりなんて」
何処からか透き通った声がはっきりと聞こえる。静かにすっとあたまにとおるような。
「ヨアヒムか、どれくらい寝てた?」
金髪の小柄の少女に話しかける。彼女はヨアヒム・ベルリッヒ。私の家族だ。
「一週間、それよりも自分の体を見てみなさいな、ひどいものよ」
ヨアヒムが私に鏡を向ける。包帯でぐるぐる巻き。ミイラみたいだ。
「左腕は?指輪は??」
旦那からもらった指輪がない。
「貴方ネウロイの熱線に焼かれたのよ!指輪の心配より自分を心配しなさい!!」
ヨアヒムがヘルムートにすごむ、短くなった左手をつかみながら。
「痛い」
「でしょうね。一応確認させて。あなたの名前は??」
「ヘルムート・ヴィッツ」
「所属は?」
「第3飛行隊飛行隊長。うちの奴らは?どうなった!」
少しずつ自分が撃墜された時を思い出してくる。
「無事よ。あなたを探してる。ブリタニアのウィッチと協力して海上を捜索してるみたい」
「だったら!今すぐ知らせないと!!」
「駄目よ」
「なんで!」
「貴方いま、左半身を焼かれて、左腕と左目をうしなってたのよ。トップエースが撃墜されてそんな有様なんて、みんなが知ったらどうなると思う?士気は大きく落ち込むわ」
ヨアヒムはたばこをゆっくり吹かしながら静かに答える。病室とはお構いなし。
「じゃせめてエバンスに知らせてくれ。わたしが生きてるって」
エバンスは私の夫だ2年前に結婚した。今はオラーシャ戦線にいるらしいが、無事だと信じたい。
「それもダメ。司令部はあなたの戦死を正式に発表するつもり。死にかけた、死に損なった英雄よりも、死んだ英雄の方が扱いやすいのよ」
「英雄として散々祭り上げて!戦えなくなったらあっさり捨てるってのか!!!」
怒りのあまり、とっさに立ち上がろうとするが、痛みで体が動かない。
「しばらくは安静に、それから再起の道を探りましょう」
「この扱いはあんまりだ、私はなんのために戦っていたんだ」
少しずつ涙があふれてくる。えずくヘルムートをヨアヒムはそっと抱きしめる。戦場は華々しい勝利ばかりでなない、悍ましいし死と血塗られた光景がそこには確かに広がっている。奇跡的に生き残ったヘルムートは幸運だったかあるいはただの地獄の引き延ばしか、その結末は神のみぞ知る。
おきたかヘルムート