ストライクウィッチーズ-乙女たちにジュラルミンの翼を- 作:社畜新兵
「よし!これより!10Kmマラソンをはじめる!よーい!行くぞ」
ヘルムートの号令とともに、二人のひな鳥が走り出した狼についていく。ナタリアと小早川、ヨアヒムとヘルムートが連れてきた新兵だ!!
「ウーノ!!!ドス!ウノ!ドス!!おい!ちんたら走るなよ!!走れ!おら!!」
ヘルムートは追い立てる!!狼の耳を突き立てながら。
「あいも変わらず、精がでますね~、少しくらい優しく育ててあげればいいのに」
それを見て、ロシアンティーをすするヨアヒム、ここは北方の果てウラル山脈の向こう側、ノヴォシブルスク閉鎖都市。その飛行場、ツァーリはモスクワを見捨て、ウラル山脈の向こうへと引きこもった。抵抗の矢面に立たされているのは、この小さな都市である。
「Knock!Knockヨアヒム少佐今いいかな?」
小太りのひげずらのサンタクロースみたいな将軍がヨアヒムのもとにやってきた。
「ペトリャコフ中将!!どうぞこちらへ!!」
そういうとヨアヒムはペトチャコフに安楽椅子をすすめる。
「ありがとう!いい椅子だな」
「いい茶葉が手に入ったんですよ。どうですか?ダージリン?いかがですか?」
「いやいい?パイプを吸っても?」
「それはご遠慮ください」
「わかった。では作戦を説明する」
ペトリャコフ中将が命令書をヨアヒムに渡した。
「観測班からの情報だ。ネウロイの攻撃がネウロイの巣の表面温度から見て3日後、に予想される」
ペトリャコフが偉そうに言った。
「それまでに、この都市を守る算段をたてないとですね」
さえぎるようにヨアヒムが答える。
「どだーんと!ただいま!!」
扉を蹴って、ヨアヒムが入場する。
「ヘルムート、戻ったのね」
「はい!ヘルムート・ビッツ大尉ただいま帰投しました」
「ちび助二人は?」
ペトリャコフ中将が聞いた。
「休ませてますよ」
「それは結構。では戦争の話をはじめよう」
3人は円卓に広げられた地図を囲む。まるでアーサー王と円卓と騎士たちがかつてそうやったように。
「奴らのやり方はいつも通り、黒い山津波でなんもかんも、押し流す。それだけ」
ヨアヒムが黒板に張り付けた戦略地図を見ながらつぶやく。
「おい、タバコ吸っていいか?」
「ああ、ワシも吸いたいな」
そんなことお構いなしに、タバコが吸いたくて仕方がない二人。
「どうぞ」
そういうとヨアヒムは灰皿を取り出し、各々が紙巻を吸い出す。
「で?その山津波をどうすれば」
ヨアヒムとヘルムートの二人に聞いた、ペトリャコフ。
「決まってるだろ」
「決まっているな」
「「燃え盛る盾と偽物の塔が必要だ」」
二人は叫ぶ
「それはどういう?」
ポカンと口を開けペトチャコフは聞き返した。
「釣りのノブセリだな!島津軍の」
興奮したた様子で、ヘルムートが言った。
「耳川の戦いで島津軍が用いた戦法ですよ。敢えて撤退して、袋小路に誘い込む」
ヨアヒムが続けて言う。
「狼のえさ場に誘い込んで一気に食っちまう!!これが釣りノブセリだよな」
ヨアヒムとヘルムートの二人は双子のように息ぴったりであった。
「なるほど、で?いかにしてそれをやる?」
ペトリャコフがパイプを咥え尋ねた。
「まず私が幻影魔法で、この町を隠し、10キロ西の地点に偽物の街を投影します」
ヨアヒムが紙巻きタバコをふかし、言った。
「それから?」
聞き役に徹するペトリャコフ中将。
「私たちウィッチ小隊が、釣り上げられたネウロイ達を十字砲火で減らしていく」
煙草の煙を大きく吐きながらヘルムートは楽しそうに話した。
「なりほどな」
ペトリャコフは感心し、この二人ならばとおもったのだ。
運命がカードを混ぜ、間もなく賭場が開かれる。
「さあさあ!おおおおおお!ウゴケェェェ!」
うなりながらヨアヒムはストライカーユニットを動かそうとする。ヨアヒムのストライカーユニットは飛び立つときに最も魔力を消費するのだ。
「はは、きつそうだねおねえさん、先行っていいか?」
ヘルムートたちが脇をタキシングしていきながら、離陸位置につく。
「こちらクーゲル!シモノフとメットを連れて飛び立つ!!許可を」
ヘルムートたちが管制塔に離陸許可を求めた。
「こちら管制塔!離陸を許可します」
それを聞いて離陸許可が下りた。
「よし!いくぞ!!俺から行くよ!」
そう言うと、クーゲルは最大魔力追従制御を実行する。エンジンがうなり声をあげ、SスピットファイアのグリフォンENGINEが彼女を空へと押し上げる。PAPAPAPAPADODODODODOODDOOWAAAAAAAOOOOOON!サジタリウスの矢じりのように放たれるた。そう!ヘルムートは!クーゲル!!「銀の弾丸」なのだ。天翔ける奇跡!回天の象徴がいま!戦場に戻ってきた。
「こちらアテナイ!クーゲル聞こえますか?」
「ああ!感度良好クーゲルからアテナイへ餌場の準備は出来たか?」
「問題ないわ、それ!!幻惑魔法開始!見たいものだけミセトクレ!!見たくないものカクシチャエ」
ヨアヒムはそういうと元々のあったノヴォシビルスクの街はすっかりと姿を消し、まぼろしの都が姿を現す。まるでそう、砂上の蜃気楼のように。
「すごい!これが中佐の力」
一部始終を目にしていた小早川比呂がそうつぶやいた。
「大丈夫ですよね?私たち勝てますよね?」
ナタリアが不安そうにつぶやく、ノヴォシブルスクの街には彼女の祖父ペトチャコフ将軍がいるのだ。
「勝てますかじゃない!!!何としても勝つぞ!!私たちが負ければ10万の人が焼かれるんだ!」
ヘルムートは歯を食いしばり叫ぶ。思い出すのは、ベルリン、マンハイムの悪夢、焼かれた都、泣き叫ぶ人々、私が弱くなければ、起きえなかっただろう。今度こそ守る。
「接敵まで50秒」
ヨアヒムから無線が入る。
「各機散開!!配置につけ!連中を一匹たちとも通すなよ!!黒い嵐が来るぞ!」
少女たちは身構えた。
「カートリッジロード!!バグ魔装展開!!いっけ!!」
そうヘルムートが叫ぶとシールドを巨大な電動のこぎりに変化させそれをフリスビーのように投げる。BLIIIIIIIと金切り声を上げ次々と、ラロス(コバエ型ネウロイ)を次々に撃墜する。
「進路確保!!ケファラスに集中砲火!!」
「ダー!!撃ちます」
「りょ!了解!コアはどこですか?」
「いいから撃て!!!」
中型の巡洋ネウロイのケファラスに攻撃が集中する。幾つもの穴が開きぼこぼこにされる。あのの隙間からコアが露出した。
「コア露出!!撃ち込め!!」
DAN!!DAN!!ヘルムートの機関砲が火をふいた。
ヘルムートたちがコアを破壊する。
「よし!!一度後退!!補給するぞ!!」
「クーゲルからヨアヒムへ!!アテナイ応答してくれ!」
「こちらアテナイ、なに?補給するの?」
「ああ、かまわんか?」
「許可します。敵の攻勢もしばらくないでしょう」
「よし!後退するぞ!!」
「はい!」
「ダー!」
ヘルムートの号令で二人の子犬は、ほっと息をつく、三匹はアテナイの元に戻っていく。もう夕暮れだ。
「ただいま、どんな感じだ巣の様子は?」
ヘルムートはヨアヒムに状況を尋ねる。
「今日の攻撃は次で最後、はい補給受けてね」
ヨアヒムがそう手をたたくと彼女の背にある巨大な「蜂の巣」から、魔力で生成したウィッチ達が出てくる。これが彼女の能力の一つ「戦略空母」である。
「武器や飯も運べるなんて、便利だなこれ」
ヘルムートは感心する。
「え!!何ですかこれ?」
「この人たちなんですか?」
小早川とナタリアは目を丸くしている。
「これは人ではないの。私の魔力から精製した「妖精」なのよ」
「まさに空飛ぶ空母だな」
話しながら、3人は補給を済ませる。
「魔導レーダーに感アリ!!敵の最後の襲撃です!!」
ヨアヒムが魔導レーダを目にしながら3人に伝えた。
「ようし!!こいつらを片付けるぞ!そしたら今日はもう上がりだ!気合い入れろよ!!」
「はい!頑張ります!!」
「私も!!気合い入れます!!」
三人が夕暮れに吸い込まれていく、ヨアヒムはただ、見送るしかない。それが彼女の「指揮官」の戦いなのだから。
ところ変わってツァーリツィン。ヴォルガ川の沿岸にある都市ツァーリツィンは帝国第3大都市である。今のこの
大都市は危機に瀕していた。ネウロイに包囲され、死の街と化していたのだ。
「よし、ジェーン食い物を持ってきた。体の調子は?」
がりがりに痩せた男が横たわった一人の少女に話しかける。
「た隊長、来てくれたんですね。てっきり見捨てられたのかと」
包帯にくるまれた少女はもはや虫の息だ。ここは野戦病院今は死にぞこないが死を待っている、それだけの場所。
「何か欲しいものは?」
「じゃあ、キスしてください」
「それはだめだ。しっかりしろ!!」
エバンス・バウキン少尉は短くジェーン・マクレディ曹長を激励する。
「また来る」
そういうとエバンスはまた戦場に戻っていく。
「いか、ないで」
この場所にはかつて立派な中隊があった。陸戦型ウィッチで編成されたカタリナ機甲中隊だ。指揮官はカールスラント人のエバンス・バウキンだった。しかし、多国籍のその部隊は足並みがそろわず、ウィッチ達が各々好き勝手行動した結果、隊は全滅した。町が包囲されて50日目のことであった。
「エバンス君、考え直してくれたんだな」
「黙れ!!おまえらのせいで!!!俺に何の用だよ!!」
ほの暗い地下でエバンスは地下の発電機に寄生した「ネウロイ」と話す。
「単純な興味だよ。私は本体から完全に切り離されてる。安心してほしい」
壁のネウロイがほくそ笑んだ。そんな気がした。
「本当にあの子は助かるんだな」
「ああ、約束しよう」
「じゃあ、契約成立だ」
「よし、ではこれを私のコアだ」
そういうと壁のネウロイはコアをエバンスに差し出す。彼はそれをブリキ缶に収める。
「ジェーンを助けるためだ。ヘルムートは、俺を許さないだろうな」
そうつぶやくとまた野戦病院に戻ってきたエバンス。
「ジェーン!!」
「エバンス大尉、忘れものですか」
「ああ、少し我慢してくれ」
そういうとエバンスはジェーンにそっと口づけを、そのすきにブリキ缶を彼女の胸に押し当てた。ネウロイは彼女の胸に寄生を開始する。
「んんんんんんんんん!!!!」
もがき苦しむジェーンの手を握りエバンスがこういう。
「大丈夫!!大丈夫だから!!!」
手を強く握る。そこで遠くから叫び声が
「ネウロイだ!!!!!!!」
巨大なクモ型のネウロイが背中に蟻型ネウロイを抱えて突入してきた。横たわった人々は、なすすべなく殺されていく。
「そんな」
エバンスは死を覚悟した。
「隊長!!伏せてください!!」
ジェーンはすっと起き上がると口をおおきく空ける。そして大きく息を吸い込んだかと思うと、一気に熱線を吐き出た。一瞬でネウロイが溶解する。あたりは再び静寂を取り戻した。人々は彼女の存在にあっけにとられている。
「逃げましょう、たいちょう」
真っ赤な髪に真っ赤な瞳になったジェーンがエバンスの手を取る。
「ああ」
ジェーンは体からクロヒョウの使い魔を出しエバンスを抱えると、ビルからビルへ飛んで行くのだった。
「さてどういうことか説明を」
人気のない場所で腕組みするジェーン
「君にネウロイのコアを埋め込んだ」
「それでこの力を手に入れたわけですね」
「ああ」
「責任取れやい」
「ああ」
かくしてこの二人は伴侶となった。エバンスにはもう妻がいるのだがな。
「5両目!!!どっかーん」
ジェーンが熱線で陸戦型ネウロイを吹っ飛ばす!絶好調だ!!
「いいな!!素晴らしい!!」
エバンスが不自然にほめそやす。
「そうですか!!じゃあ!私と結婚して!!」
にかっと笑うジェーン
「それは出来ない。俺には妻がいるんだ」
エバンスは軽くあしらった。
「その奥さん撃墜されたみたいですよ」
ジェーンは空中投下された新聞を指さす。そこには英雄地に墜つとの見出しで、オラーシャ語で書かれた見出しがあったヘルムートのことだった。
「それは嘘だよ。偽旗作戦だ。あの子は生きてる。俺にはわかるんだ」
淡々とエバンスは話す。愛する人帰りを彼もまた待っているのだ。
「それより腹減らないか?シチュー!!作ってやろう!!黒パンもあるぞ」
エバンスのご機嫌伺がはじまった。
「隊長、私はもう、おなかがすかない体になったんですよ」
悲しそうにジェーンが言う。
「そうか、ごめん、ごめんなぁ」
エバンスは耐え切れず泣き崩れてしまった。その涙さえも凍ってしまう。ツアリティンの冬は厳しい。
飲み終わりましたか?
自分で洗ってください。