誰もがそこに辿り着くわけではない。
俺は、今、絶世の美女と向き合っているのだ。
「唐傘 揚幸(からかさ あげゆき)さん。初めまして。私は見習い女神のミルーカです」
ミルーカ様は白い羽衣? みたいなものを羽織っていて、華奢な体躯の割に出るとこは出ている抜群のプロポーションを誇っているのだ。
「ど、ども……」
美貌に見惚れててしどろもどろっす。
「今日あなたをお呼びしたのは他でもありません。私と一緒に……クエストへと行って欲しいのです……」
「喜んで」
即答だった。
ミルーカ様は、大きな青い瞳をパチパチさせる。
「よろしいのですか? そんなあっさりと決められてしまっても……」
「大丈夫です。大学のレポートも提出したばっかですし」
「でも……」
「そのクエストには俺が必要なんですよね?」
「は、はい……! 先輩にはそう言われたん、です、けど……」
何だか煮え切らないにゃあ。
「俺は、ミルーカ様の、喜んでいる姿が見たいです」
「ええ? いや、そんな、私なんて……」
「謙遜しないでください。ミルーカ様はと~っても素敵なお方だ」
「え、ええーー? そ、そうですかね……えへへ嬉しいな」
めちゃんこ可愛いーーーーーーーーーー!!
女神の威厳どこ行ったーーーーーーーーーー!!
俺が悶えていると、ミルーカ様は一つ咳払いしてから俺に改めて向き直る。そして口を開いた。
「では一つ聞かせてください」
「ほいさ」
「あなたは……ちょっと待ってください。何ですかほいさって」
「ダチに使う相槌の一つです」
「そうですか……すみません。仕切り直しで」
全く問題ナッシング。
「あなたは……クエストは好きですか?」
その問いに俺は自信満々に応えた。
「大好きです! 冒険者ですから!!」
そう、今俺がいるのは大学生である俺がいる侍の国日本ではない。ドラゴンとか飛んでる系の異世界ってやつだ。その異世界の中の異次元の空間……〖女神ルーム〗に招待されている。ミルーカ様とのクエスト……心が躍るってもんよ! ひゃっほう! さて、どんなクエストが俺を待ち受けていることやら……楽しみで仕方がないぜ! ほいさ。ぽん。
俺はミルーカ様と一緒に異世界の町、アルセンを訪れた。アルセンは活気溢れる町だ。民も、商人も、そして冒険者も。この町には冒険者ギルドなるものがあるらしい。そこでクエストを受け取るってことだな。
図らずも昨日RPGをプレイしてた俺にはなんだかジ~ンと来るものがあった。なんせ、ゲームの世界が現実になっているんだぜ!?
「唐傘さん? ちょっとはしゃぎすぎですよ」
「す、すみません……!」
クスクスと微笑み、やんわりと言うミルーカ様。
いかん……。窘められてしもうた。反省反省。
そんなこんなでギルドに到着。
冒険者登録のくだりいる? いるか。
「ではここにお名前と希望職種の記入をお願いいたします」
サイドテールの受付のお姉さんから紙とペンを渡される。うへえ……字が読めねえーー……。
いや俺がバカってことじゃなくて、多分この国の言語だろ? これ。英語ならワンチャンあるか?
「唐傘さん。普通に日本語で書いて頂いて大丈夫ですよ」
「まじですか」
俺はさらさらと流麗に文字を書いていく。盛ってるとかは言わないでちょ。
「書けました」
俺がペンを置くと、ミルーカ様は紙の上に手を翳した。そしてぽそりと言の葉を紡ぐ。
「サテンライトミラージュ」
すぅーーーーーー。
「うおおおおおお!!!!!! すげーー!!!!!!」
あ、ごめん解説するわ。ミルーカ様の翳した御手から発光があったと思ったら、あら不思議。俺の書いた字が踊るようにして浮き立ってインクが七色に光ってるんだわ。やばいよね。
「ちょっとばかし羊皮紙に幻惑魔法をかけさせて頂きました。これで大丈夫だと思います」
「ナチュラルにヤババですね」
「はい。確かにお受け取り致しました。カラカサアゲユキさん、で間違いありませんか?」
羊皮紙をミルーカ様から受け取った受付嬢が俺に確認を取る。
「はい」
「希望職種は冒険者……、危険なクエストには最初の内は行かないようにしてください。Fランクのクエストからこなすことをオススメします」
「分かりました。危険なことはしません! 冒険はしますけど!」
ん? なんか矛盾してね? って思ったか?
いや、これは真理だ。
冒険者は冒険せずに冒険するものだと俺は学んでいるのだ。
見習い女神とのてえてえなクエスト始まります。ワクワク。よろしくお願いします。