「唐傘さん。これをどうぞ」
町を少し離れた道半ばでミルーカ様が俺に手の平サイズの小包を渡してきた。
「これは?」
「女神コインです」
「女神コイン?」
俺は中身を見て1枚取り出してみた。おお!
「み、ミルーカ様の肖像画だあ!」
う、美しい……!
「あ、あまりまじまじと見つめないでください……!」
ミルーカ様がむうと頬を赤らめながら俺に言うがこれは見ちゃいます。
俺が顔を綻ばせているとミルーカ様はコインについて説明をなさる。
「女神コインは女神の力をギュッと閉じ込めたもので強さは微々たるものですが、持っていて損はないかと」
「はい! ミルーカ様をこの手でギュッと出来るなんて夢のようです!」
「私じゃありませんよ!」
てへへと俺は手を頭に乗せる。
「このコインはどうやって使えばいいんですか?」
「はい。女神コインを指に乗せてピンと弾きます。そしてクルクルと回転している間にミルミルミルーカと唱えます」
なんか恥ずいな。
「ものは試しで1回使ってみてもいいですか?」
「はい」
俺は女神コインを指に乗せて、ピン! と上に弾いた。そして高らかに叫ぶ。
「ミルミルミルーカ様ー!」
「様はいりませんよ~」
するとパアアっとコインから光が放出される。
そしてその光粒が俺の身体に降り注がれる。なんだかキラキラしてる。煌めき☆
「はい。今ので唐傘さんの能力値が少し上がりました」
「えっ! そうなんですか!?」
全然分からん。
「フフッ。本当に微々たるものですけど。私にはそれが数字として見えるんです」
ミルーカ様はちょっとドヤっとしながら俺にそう説明なさった。なるほどです。
女神コインはそのまま使えたりもするらしいけどミルーカ様はこのやり方がお気に入りらしかった。だから俺もそれでいくかと思った。ミルミルミルーカ様ー!
あっち向いてホイの修練場は谷を越えた先にあるってことだったが……。
「はあ、はあ……」
結構バテてきたな。日頃の運動不足がここで響いたか~。
「大丈夫ですか? 唐傘さん」
ミルーカ様はケロリとした表情で息一つ切れていない。くるりと振り向いて俺の様子を観察している。情けナッシング。
「はい! 大丈夫です!」
俺は、背筋をピンと立てて、ついでに手も上げる。意思表示は大事だ。
「そうですか? ならいいですけど……」
ミルーカ様はほいほいっと凸凹した足場をリズム良く進んでいる。俺は躓かないようにえっちらおっちらって感じだ。
「あとどれぐらいで着きそうですか?」
「もうすぐですよ~」
そういえば、と俺はカミレラ様に貰った転移札なるものをポケットから取り出す。
「この転移札って、ミルーカ様も持っているんですか?」
「ええ。持っています。といっても使用することは滅多にありません」
「そうなんですか?」
「はい。テレポートがあるので、自分ではあまり使いませんね」
「カミレラ様は……」
「仕事から逃げる時によく使われています」
おやおや。俺は転移札からカミレラ様が使え、使えと叫んでいるように感じた。
「そうですか」
「唐傘さん。今は使ってはいけませんよ」
「へ?」
「カミレラ様は今ひーこらひーこら書類仕事をされている最中ですので」
ニッコリと圧をかけてくるミルーカ様。ドンマイですカミレラ様。
「分かるんですね」
俺がちょっと冷や汗をタラリしながら言うと、ミルーカ様はええ、と頷く。
「通信がひっきりなしに届いていますので」
「そ、そうですか……」
俺はカミレラ様がひーひー言いながら書類仕事に追われている様子を頭に思い浮かべた。
あっち向いてホイ修行へと向かう道中。ミルーカ様……可愛いです。次回に続きます~。