そんなこんなであっち向いてホイの修練場に着いた。
「着きましたよ。唐傘さん」
「ここですか」
ミルーカ様が手で指し示す建物は木造建築でよく見たことのあるやつだ。まあ、端的に言うと道場っぽい。
「お邪魔しまーす」
ミルーカ様が普通に道場の門をギギイと開けて中に入る。え、大丈夫なのか?
「くおらあ! 何を勝手に入っておるかあ!」
白い髭を蓄えたつるっパゲのオヤジが駆け込んできた。
「だ、駄目でしたか?」
ミルーカ様が不安そうに尋ねる。
「いや、オールオッケーじゃよ」
ズコー! と俺はズッコケた。いやいいのかよ!
「き、急にどうされたんですか唐傘さん」
「ノリが良いのー若いの」
ミルーカ様がズッコけた俺を見て目をパチクリ。オヤジは感心したように頷く。
「まあなっと。オヤジさん。あっち向いてホイの修行をつけてくれ」
「えー、どうすっかなー?」
おいー、ここで渋んのかい。
「お願いします。修行をつけてくれませんか?」
ミルーカ様がオヤジにそう頼む。
「う~ん。ネーチャンの頼みは聞いてあげたいんじゃけど、この若いの、あっち向いてホイゲージ少なくないか?」
まずあっち向いてホイゲージについて説明してもらおうか?
「あっち向いてホイゲージ?」
「ほいさっさ!」
オヤジが両手を右左、上下と素早く動かす。何してんだオイ。
「若輩者にこの動きが出来るかえ?」
オヤジが俺に向かってニヤリとする。
「ほいさ」
俺が両手を右左、上下、さらに右斜め上下、左斜め上下と素早く動かす。コピーしてからのマジ適当。
「な、なんじゃと……」
オヤジはそれを見て口をアングリと開けていた。顎外れるぞオイ。
「この時点でビッグマウンテンアラウンドを習得しているじゃとーー!?」
何それ? 俺が疑問を持ってミルーカ様の方を見るとミルーカ様は口元を両手で押さえて笑いを懸命に堪えていらっしゃる。まあ、このオヤジふざけてるとしか思えないもんなあ。
「気に入った! あっち向いてホイ修行を受けることを許可するぞい! ほいさっさ!」
俺のほいさみたいなものかそれは? とりあえずあっち向いてホイ修行開始ってやつか。
「若者よ! まずは自己紹介をほいさっさ!」
「ほいさ。俺の名前は唐傘揚幸。あっち向いてホイマスターを目指している」
オヤジに対して俺がそう答えると、ミルーカ様が可愛らしくコテンと首を傾げられた。
「そうなんですか?」
「いえ、言ってみただけです」
あっち向いてホイマスターって何だっちゅーの。
「何と……あっち向いてホイの頂を目指しているとは! 見上げた向上心じゃわい!」
オヤジがおおと目を見開いた。おいおいオヤジ、あまりマジに捉えるなって。
「しからば早速修行じゃー! ついてまいれ!」
え? ここでやるんじゃないのかよ。
「ルンタッター、ほいさっさ!」
ダサっ。掛け声ダサくね? オヤジがルンルンとスキップしながら道場から外へと出ていった。見るに堪えないんですけど。
「唐傘さん。修行頑張りましょう。ルンタッターほいさっさー」
ミルーカ様はぎこちなくスキップする。可愛すぎませんか?
「はい! 行きましょう。ルンタッターほいさっさ!」
いや~、いい掛け声じゃねーかオヤジ! ……まあ、人の気持ちなんてのはさ。変わりやすいものだよ。あ、これ俺の経験談でござる~。ほいさ!
あっち向いてホイオヤジ登場。修行開始ってやつか。ルンタッタ―ほいさっさ! ほいさ! ということで次回に続きます~。