ブオンっと音が鳴り、長方形の透明な板みたいなものが目の前に出現した。液晶タブレットみたいだなあ。
「これが結界です。マジックフィールド、とも呼んでいます」
ミルーカ様が綺麗な指先で四角を空中にいくつも描いていく。するといくつもの四角がひとりでに動いて重ね合わさっていった。
「こうすることでマジックフィールドがより強固になっていきます」
説明を重ねながら幾重にもマジックフィールドをコンスタントにテンポ良く重ねていくミルーカ様。重ねる多いな。
やがてみるみるとマジックフィールドは四方へと広がっていき――
「完成です」
でかい透明な壁みたいなのが形成された。
試しにコンコンと手で叩いてみる。かて~~。
「凄いですね。これ」
「頑張りました」
エッヘンと胸を張るミルーカ様。いや可愛すぎか。
「これで魔族はこちらには来れないんですか?」
俺は、ミルーカ様にそう尋ねると
「もちのろんですね」
と胸を張ったまま返事が返ってきた。だから可愛すぎか。
「じゃあ、これで一安心ですね」
俺がそう言うと、ミルーカ様はニコリとして頷いた。
「はい。では戻りましょうか」
ぎゅっと、シェイクハンズ。
ひょおおおおおおおおおお!?
俺はミルーカ様と一緒にアルセンまで瞬間移動。女神ファーストクラスアルセン行き御搭乗ありがとうございました~~! ミルーカ様の手は細く、そしてしなやか。柔らかな指は俺の手を遠慮がちに、それでも決して離すまいと言うような。そんな感じで俺とミルーカ様は、手を繋いでいた。
アルセンの町に着いた俺とミルーカ様は、ギルドに寄っていく。受付に向かい、クエスト完了の報告をすると受付嬢から「報酬です」とチャリチャリ音が鳴る巾着袋? みたいなものを貰った。中を見てみるとコインがいくつも入っている。コインを1枚つまんで取り出してみた。
「えっと……これはこの世界の通貨ですか?」
俺がコインをまじまじと見ながら、ミルーカ様に尋ねる。
「はい。それは1ネカですね。グレードがありまして、ネア、ネム、ネミ、ネマ、ネカと分けられており、1、10、100、1000、10000と数字があります」
めっちゃあるやん。混乱してくる。
俺がグルグル目を回していると、クスリとミルーカ様は微笑した。
「少しずつ、勉強していきましょう。焦ることはありませんからね」
ミルーカ様のその柔らかな声音が俺の心に浸透していき、やがて平静さを取り戻す。
俺とミルーカ様はギルドの隣に併設されている酒場に足を運んだ。中々の盛況ぶりだ。冒険帰りか?
「1、10、100、……はい、全部で500ネミあります。おお、結構な報酬ですよ」
ミルーカ様は、ちょこっと驚いた様子でそう仰った。へえ、多いんだ。俺はふと尋ねた。
「じゃあ何か買えますかね?」
「はい。食事してもいいですし、露店でアイテム買ってもいいですし、お好きに使ってください」
ミルーカ様のお言葉に俺はコクリと頷く。
「そうですか……じゃあミルーカ様、何か欲しいものはありますか?」
「…………………………へ?」
俺の言葉を理解するのに時間がかかったミルーカ様は呆けた声を出す。
「ミルーカ様に何かプレゼントしたいです」
俺は真っ直ぐミルーカ様を見つめて言うと、ミルーカ様は目をあっちへこっちへしていた。
「え、いや、あの唐傘さん? これはあなたの報酬なんですよ?」
「はい。分かっています。好きに使っていいんですよね?」
何やら混乱中のミルーカ様に俺はゆっくりと、諭すように言った。
「俺は、この報酬を使って、プレゼントをして、ミルーカ様の喜んでいる姿が見たいんです」
「――っ!」
俺の言葉を聞いて、ミルーカ様は暫し呆然とされていた。
「あの……ミルーカ様?」
ミルーカ様は俯いて、顔を両手で覆い、肩をプルプルさせていた。どうしたんだ? 俺、出しゃばった真似しちゃったかな?
程なくして、ミルーカ様は顔を上げて、にこやかに仰った。
「失礼しました。ありがとうございます。……それでは露店の方を一緒に回って頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい!」
俺は今日一番の声で返事をした。ミルーカ様と露店へレッツラゴー!
クエストの報酬で何を買うのか? 露店へレッツゴー!
また次回です。