「では、参りましょう。唐傘さん」
「はい!」
ヴィーナスゲートの前でミルーカ様は俺に声を掛け、俺はハキハキと返事をする。
特に荷物はない。忘れ物とかもないよな。
「忘れ物かもかも~~~~~~」
カミレラ様が俺にピッ! とお札みたいなものを渡してきた。
「これは?」
カミレラ様が尋ねた俺にドヤ顔をキメてくる。
「転移札かも~~。困ったらこれで呼ぶかも~~。カミレラの名を呼べば飛んでくるかも~~」
「あ、ありがとうございます」
俺はそれを有り難く受け取った。
とはいえ語尾にかもがついているから本当に来るかどうかは怪しいところだ。
「カミレラ様。それでは書類仕事の方はよろしくお願いしますね」
ミルーカ様がカミレラ様にそう言うと、カミレラ様は顔をしかめる。
「げっ。そういえばそんなのあったかもかも~~」
「そうですよ。私はクエストで手が離せないんですから」
「なるべく早く帰ってくるかもかも~~」
「さあ、それはどうでしょう?」
ミルーカ様はしてやったりな表情を浮かべている。へえ、こんな一面もあるんだなあ。
「む~、……プリン」
ボソッと、カミレラ様が呟いた。
「!」
ミルーカ様がはっとする。
「プリン隠れて食べたのは一体何回目かもかも~~?」
「し、しつこいですよ! それでは行ってきます! 唐傘さん入ってください!」
「あ、逃げたなかもかも~~~~~~!」
ミルーカ様はヴィーナスゲートを開け、中へと入る。んじゃまあ俺も行くとしますか。
「唐傘さん」
「!」
カミレラ様がすっと姿勢を正して、俺に告げた。
「ミルーカの事、よろしくお願い致します」
「……はい!」
先輩女神の威厳というのをまざまざと見せつけられた俺だった。
アルセンの町に辿り着いた俺とミルーカ様は早速ギルドへと向かった。
「Сランク?」
俺がギルドの受付のお姉さんに確認を取ると、はい、と返事が返ってきた。
「このあっち向いてホイドラゴンというのは基本的には無害なのですが、ドラゴンなので1度ブチギレられると簡単には手に負えないんじゃね? とギルドマスターも仰っていますので……。ランク付けはC、となっております」
マジかよギルマス~。俺はこのクエストを受けれるんだろうか?
「大丈夫ですよ。唐傘さん」
ミルーカ様が俺にニコリとして言った。
「えっ?」
「私がついているので唐傘さんはあくまでもF,Eランクのクエストをこなした、という体でいかせられますから」
女神様のお力ってやつですか。
「そうなんですね」
「ええ。なので、唐傘さんはこちらのクエストをひとまず受理してください」
ミルーカ様がほい、と俺にクエストの依頼書を見せてくる。
「これは……」
俺が見たクエストの依頼内容は――
〖あっち向いてホイ修行〗。
あっち向いてホイに修行なんてあるのかよ。なんかここらの近くの谷を越えたところにあっち向いてホイの修行が出来る場所があると書いてあるけど……。ん? てか普通に読める! ミルーカ様が日本語に直してくれたみたいだな。
「唐傘さんにはあっち向いてホイドラゴンにあっち向いてホイで勝ってほしいので修行致しましょう」
「わ、分かりました……」
ということで俺は〖あっち向いてホイ修行〗のクエストを受けることとなった。ランクはEらしい。
カミレラ様、ミルーカ様と行ってきます! あっち向いてホイ修行へ! また次回でござる!