人生のあまりの不運さに神を呪ったら天罰食らって触った者みな強制TSできるようになった ~ギャング未遂の大学生はまんざらでもないらしい~ 作:とんべえ
話をまとめると、石占い屋のある街で、流れの【スキル迷宮〈メイズ〉】使いが勝手な事をしはじめた。
高層ビルを怪物が跋扈する迷宮にしてしまったのだ。
先に役所が動いてしまったので、静観していたら、被害者を出す事態に発展、石占いの一派は 仕方なく協力を申し出た。
役人及びその関係者にも隠れスキル持ちがいたので、話だけはすんなりと通ったそうな。
石占いの会は“戦い”をイメージするスキル持ちが多いのも、大きく寄与している。
いくら胡散臭かろうと、事態の打破は現実なので、公認ではあるが一部の役人のみが知る内々的組織となった。
誰もがこれで終息するだろうと考えた。
ところが、スキル迷宮がユニークスキルだった。
スキルと言うのは、発音が短いほど上位になり、ギャップ次第で、効果が弱まったり、最悪効かなくなる。
この石占いの会から派遣された【ユニークスキル斧】のスキル使いは深いため息をついた。
年齢は中年の頃、背が高く細身の体つき。ゲームで見るようなバトルアクスを所持しており、本来なら通報ものだが違和感を感じない。
ただの【スキル斧使い】ではなくユニークが付くとこういう効果になるのだった。
「一度は十八階に到達したのはいいですが、それ以降、後退を続けております。今では五階がやっとの始末」
「何か問題でも?」
「とにかく人手が足りないのです。破竹の勢いに乗った時が我々にもあったのですが、サキュバスと遭遇し多数の被害を、あ、いえ、死んだ訳ではないのですが、全員病院送りです」
「サキュバスですか」
「はい」
「そんなにしゅごかったですか」
「そりゃーもう。しゅごいです」
半信半疑どころか完全に疑っている役人達のいら立ちが、一瞬にしてどこかに行ってしまった。バツの悪い顔ばかりだ。
「【スキル魅了〈チャーム〉】以前に非常に蠱惑〈こわく〉的な連中でして、マッシブな連中ほど精気を吸い尽くされる始末。そこで隊のスキルの格上げを画策しました」
「それが俺らなのね」
役所の変なおばさんに促されるまま、メディカルトレーラーハウスに乗り込んだ。
健康診断と医師との問診。
妙なアンケートと写真撮影。
軽く一時間が過ぎ、首には対異能特殊チームと刻印されたIDカードを首から吊り下げられる。
ようやく状況開始〈ミッションスタート〉だ。
「燃えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
石占い屋所属の【スキル炎使い〈フレイム〉】君だ。
とても分かりやすくて現れる怪物を片っ端から燃やしていく。
「よっこいしょぉぉぉぉ!!」
同じく石占い屋所属の【ユニークスキル斧】さん。
斧らしい倒し方で現れる怪物をかち割っていく。
「フゥ……ハッ!」
同じ手相占い所属で同行者の【スキル紙使い〈ペーパー〉】。
投げつけられた折り紙が、回転しながら怪物を片っ端から切り刻んでいく。
遭遇しては仲間が倒し、また遭遇してはまた仲間が倒す。
今では怪物と対峙する不安感は、まるでなく無双状態〈チート〉だ。
ちょっとだけ申し訳なく思ったりした。
「うちらの出番はなさそうですね」俺がそういうと、【ユニークスキル紐】さんが「同じユニークスキルでも、【ユニークスキル迷宮】に対して私たちの数が、つまり格上だから、そう見えるんですよ」と答えてくれた。
チーム全員が赤い紐を手首に巻いていた。こうするとスキル効果を共有できるのだ。
スキル上、紐は結ぶというイメージを持つからな。
ちょっとだけ、ほっこりした。
人に気遣われるって久しぶりだ。
その【ユニークスキル紐】使いは、紐で怪物をぐるぐる巻きに捕縛していた。
そこを俺以外のスキル持ちがボコボコにする。
「見てください。このオーク、ユニセクシャルっぽくなってます」
紐スキルを介してTSスキルも微妙に伝わっているらしい。
オスとしてのシンボルが小さくなって嘆いているように見えた。
「弱体化って立派な支援ですよ」
何故か、俺もつらい。
「もういいですよ。それより先ほどからフハハってみょうちくりんな笑い声が聞こえるのですが」
「私じゃありません」
「フアハハハハって、いい加減気づきたまえ!!」
見上げれば吹き抜け構造の最上階にスーツ姿の男が立っていた。
中肉中背、何処にでもいそうなおっさんだったが、身に着けているものだけは高級品だった。
ビル内のテナントから失敬したに違いない。
【ユニークスキル紐】使いが拡声器を取り出した。
「犯人に告ぐ。無駄な抵抗はやめて投降しなさい。これ以上罪を重ねては駄目です」
「人を犯罪者扱いするな!」
仲間からヤジが飛ぶ。
「嘘こけ。身に着けているものどう見たってテナントショップからの盗品だろ」
「問題はそこだっけ? いやいや、問題ではあるけれど」
「このタワーは私のものだ。つまりすべて私の物なのだ!!」
「うるせぇ! この迷宮野郎! お前のおかげで俺らの存在が露見しちまったじゃねーか! どうしてくれる!」
「とりあえず話し合いましょう。一階まで来てください」
「私に指図するとはいい度胸、チ。サキュバスが来やがった。私は最上階に居る、来れるものなら来たまえ!! 毎度毎度男ばかりの能無し役人ども!!」
あの【ユニークスキル迷宮】持ちは逃げるように階段を昇って行った。ひょっとしてサキュバスから逃げてるのか。
「タスケテー」
一応女である【スキル紙使い】が「もう放っておきましょう」とお冠状態である。
そうしたら【ユニークスキル斧】さんが「そういう訳にもいかんでしょう」と言った。
最高記録の十八階を突破し現れたサキュバスは、女である【スキル紙使い】をリーダーにアタック、傷ついたサキュバスはコンクリートの床に身を横たえ、消滅した。
「怪物とはいえ、傷つくおなごの姿は見ていて、あまり良いものではありませんなぁ」
そして最後の部屋にたどり着く。
サキュバス上位存在であるハイサキュバスは、絶望を感じる程のボス感だ。
俺を含めた男どもはチャームを喰らい論外の状態に。
唯一の女である【スキル紙使い】は、レベル差が起因で手も足も出ない。
おいでと呼ばれたので白昼夢を見るかのように近づき、促されるままその肢体に手で触る。
精気吸収〈エナジードレイン〉されるその直前である。
【スキルTS】発動
あれよあれよみるみる縮み、インキュバスになった。
「かわいぃぃぃっ!!!」
一発でだめになる女性スキル持ち。
我に返った【スキル炎使い】君が「燃えろー」で倒す。
「ひどい!」
こうして最初の仕事は終わったのだった。