【悲報】貞操逆転世界のドスケベ配信者、事故物件の心霊現象が効かない模様   作:ナロウ・ケイ

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第1話

 夏の夜。蝉の鳴き声が聞こえてくるような暑い晩にて。

 俺はその日、異質な女性に出会った。

 

 やたらと背がでかい女だった。白い帽子と白いワンピースを身に着けていた。

 背はおおよそ八尺にわたるであろう。おおむね八尺で間違いない。()()()()()()、だいたい一尺がどの程度の長さなのか、俺は詳しかった。

 

 その浮き世離れした女は、俺のことをじっと見つめていた。

 

(……あ、やば)

 

 長身痩躯のその女性と遭遇した俺は、逃げ出すタイミングを失ってしまった。

 

 正直なところ、彼女は俺の好みどストライクだった。

 無機質な表情。どこを向いているのか定まらない濁った瞳。すらりと長い体躯。ほっそりした白い手。

 どこかに誘おうとしたのか、腕が持ち上がって、ぬるりと指が俺のもとに伸びてこようとして──。

 

「──ぽ」

「……あ、あの、お姉さん」

 

 最悪だった。

 うっすらと俺の下半身が反応してしまっていた。

 ()()()()。そう、俺は一尺に詳しい。服の上から見てもばっちりだった。

 

「────―」

 

 身の丈八尺ある女は、目を見開いて硬直した。ばっちり見られていた。最悪だった。

 沈黙は長く続かなかった。展開は早かった。その後彼女は、どこかに逃げてしまったのだ。

 当然の反応だった。

 この世界では、路上で男が勃起してしまうと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 男女比が1:100ぐらいの世界なので、そうやって男性を保護しないといけないのだ。

 

(ちくしょう、やっちまった……! やっちまった……!)

 

 最悪だった。せっかくの機会なのに大失敗してしまった。

 神主のばあやの言いつけを守ってオナ禁なんかしてるから、肝心なときにこうなるのだ。何が邪なものから身を守るためだろうか。

 声だけでもかけておけばよかった──。

 

「……あー、えー……配信中にお見苦しいものをお見せしました」

 

 俺は()()()()()()に向けて謝罪すると、そのまま村に向かって歩いていった。

 そう、実は俺は配信者である。

 二十四時間常に映像を配信することを国から義務付けられている【特別保護対象指定国民】なのだ。

 

 下半身さえ反応しなければ。

 というか今の映像映ってたんじゃなかろうか。

 

 そんな不安が脳裏をよぎる。

 果たしてどう弁明すればいいだろうか。政府支給の携帯端末(スマホ)を片手に持ちながら、俺はすっかり言葉を失っていた。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 動画コメント欄:

※コメントは特別保護対象指定国民には見えないよう検閲されています。

 

「え」

「やばいやばいやばい」

「隼人くん逃げて」

「死んだ」

「だからK村に行くのはやめとけって言ったのに」

「終わった」

「隼人くんならなんとかなる」

「あーあ、無理矢理にでも止めておくべきだったのに、ほんま警察は無能」

「八尺様実在してるやん」

「ヒエッ」

「え、今からでも入れる保険があるんですか?」

「デカァァァァァいッ説明不要!!」

「目が合った」

「八尺様おるってことは村ごと手遅れやん」

「だから貴重な男子は監禁しておけってあれほど言われてるのに、」

「隼人くんのこと知らんにわかおるね、夏休みかな?」

「指伸ばしてきてるやん!」

「怖い」

「あかん」

「やめてもう見れない」

「えっ」

「エッッッッッッッッッッッッッッッ」

「うおおおおおおお」

「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

「えんだああああああああああ」

「ナイスゥ!!」

「これを待ってた!」

「勇者来た、これで勝つる!!」

「勝ち確演出」

「デッッッッッッ」

「うお」

「●REC」

「……ふぅ」

「これで半年いけますありがとう隼人くんほんとありがとう」

「安心して見れる隼人クオリティ」

「この流れすこ」

「初心者の方へ:怪異は命の力に弱いです」

「これは切り抜き確定やね」

「スパチャにて失礼します、この配信は【隼人くんのアレが強すぎて怪異がビビる】のを楽しむほんわか動画です」

「デカすぎて記念パピコ」

「寺生まれで神主家系の隼人くんは最強の“血”だからな」

「てか、確か一回怪異が滅茶苦茶にぶっ壊された動画なかったっけ? うっかりアレに触ってアヘアヘになった奴」

「照れてる隼人くんかわヨ」

「これでも迷いなくK村に歩いていける隼人くんすごい」

「無知は力やね」

「草」

「ホラーかと思ったら釣られたわ」

「まだちょっと下半身反応残っててエチエチが凄い」

「隼人くんとかいうホラー粉砕機」

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 橘宿禰當麻仁院上総介是清隼人《たちばなすくねのたいまにいんかずさのすけこれきよはやと》。

 冗談みたいな話だが、これが俺の名前である。名前が長過ぎるのは、特別保護対象指定国民あるあるである。

 橘は氏、宿禰は姓、當麻仁院は苗字、上総介是清は通称、隼人は名(字、諱)であり、天皇より賜った橘氏をみだりに名乗るのは失礼にあたるため、當麻仁院隼人を名乗っている。

 

 これでも癖が強い名前なので、学校では、寺生まれの対魔人(たいまにん)さんとか何とかかんとかいじられたりもした。

 

「でも俺、霊感とか全然ないんだけどな」

 

 俺は嘆息した。幼なじみには()()()()()()()()()()とか言われたが、全然ピンとこない。そもそも幽霊とかおるか? とおもっている。この高度科学の時代にそんな非実在存在が生きているとは思えないのだが。

 

 国の強い勧めで、俺はK村に派遣されることになっている。

 もとい、『最新スマホと最新ノートPCあげるから、色んなサブスクも無料でつけるから』という殺し文句でこの村で生活することになっている。

 お金もたくさん貰えるので仕方ないね。お金は大事である。

 

 聞くところによると、どうやら色んな建物を転々と過ごすことになるらしい。古アパートの他に廃墟化した病院とかもあるという。

 そして、それらを綺麗に()()して欲しい、というのが俺への主な依頼となっていた。

 

「あーあ、女の子とキャッキャウフフしたいなー……」

 

 俺は嘆息した。

 男女比が1:100だと、迂闊に恋愛もできないのだ。

 あの時、下半身が反応しなければ……と後悔するももう遅い。過去を悔いても仕方がないとはいえ、本当にあれは残念であった。

 

 この日から、俺のK村での生活が始まる。けいいむら、とか、かいいむら、とか微妙な発音をしている人もいるが、まあK村で間違いない。

 遠い村で過ごす配信者スローライフ。果たしてこの地で女の子たちと仲良く出来るのか、俺の生活の明日はどちらに傾くのか、それはまだ誰も知る由がなかった。

 

 

 





 何か思いついたので書きました。
 更新については、もう一つの作品(貞操逆転世界の悪徳皇子になった俺、ひたすら魔石を食べて強くなり、破滅フラグを回避します)を優先するので、こちらは気を長くしてまったりお待ち下さい。
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