【悲報】貞操逆転世界のドスケベ配信者、事故物件の心霊現象が効かない模様 作:ナロウ・ケイ
最初に案内された場所は、K村の古ぼけたアパートだった。
テレビもない、ラジオもない、冷蔵庫もエアコンもない、そんなひどい住処である。
しかもその上、畳の上によく分からない茶黒けたシミがあって、なんとも目に汚い。ちょっとした大きさに留まる程度ではなかった。かなり大きいシミだ。女の人が横になったらちょうどそれぐらいの面積になると思う。
(これ、うんことかじゃないよな⋯⋯うへえ)
見た目が汚くて、思わず子供のような感想が脳裏をよぎった。
どちらかというと血がのっぺりくっついた跡に見えなくもないが、普通、血はどす黒くなるはずである。こんな汚く錆びた鉄みたいな感じにはならない。血にしては色がおかしい──と思う。無論、確証はない。そもそも血溜まりが乾燥した痕跡を目撃したことは一切ないのだが。
とはいえ、文句を言っても仕方がない。こういうのを綺麗に掃除していくのが俺の仕事なのだ。
シミを雑巾で丁寧に拭く。まず最初は雑巾がけ。
基本中の基本だ。
畳を拭いてすぐのことだった。
お゛っ、お゛っ、お゛っ────。
そんな声が何処かから聞こえてきたような気がした。
(? 何処か遠くで犬が吠えてるのかな)
何となく床を拭くテンポと、例の謎の遠吠えが合致してるような気がしないでもないが、流石に気の所為であろう。
全然綺麗にならないので、丹念に、執拗に、もうとにかく拭き掃除の繰り返しである。
お゛ぉ゛っ、お゛っ、んお゛っ────。
(⋯⋯幻聴とかだったらやだなー、俺幽霊とか怖いんだよなー、いや信じてないけどさー)
小さな子供の頃は、本気で幽霊を信じていた。
今は流石に信じていないが、でも怖いものは怖い。今でもそういう嫌なことを想像する瞬間は、ないわけではない。多分、心霊現象に遭遇したら気を失う自信がある。
配信者として撮れ高を提供するため、きちんとカメラ目線で手を振る。
「いやー、家を綺麗にするのって大変ですよー。ここから秘密兵器使っちゃいますからねー」
俺には仕事がある。配信者としての義務に加えて、掃除の仕事だ。
業務用の強力なスチームクリーナーを片手に「ほーら! 見てください! 雑巾がけでは落ち切らなかった汚れがこんなに!」と説明してみせる。
こんな強烈なスチームクリーナーを畳に使っていいのかは知らない。多分よくない。よくないが、やらないより遥かにマシである。
汚れは少しずつ落ちていく。
きぃきぃきぃ、と軋むような音が続いたり、どん、どん、どん、と壁を叩くような音が散発的に聞こえたりしたが、近所の子供のいたずらっぽかったので無視をした。
「うわきったね! カビじゃん! きったね!」
途中、よく分からない文字の書かれた、カビだらけの紙シール(シールにしてはやけに太い)をはがして捨てる。シール裏面には髪の毛がうじゃうじゃ貼り付けてあって気持ち悪かった。
アパートの部屋の清掃は一日では終わらなさそうであった。
正直、住み込みの仕事なので、まあ時間がかかるような仕事を回されてもおかしくはない。こういうのはこつこつやっていくのが大事だ、と俺は思っている。
(よくわからん日記も見つかったけど、まあプライバシーだよな)
コーヒーをこぼしたのか変な色で変色した日記帳を、開きもせずにゴミ袋に捨てる。水道は、赤錆が出ているのでしばらく出しっぱなしにしておく。
先は長そうであった。
◇◇◇
動画コメント欄:
※コメントは特別保護対象指定国民には見えないよう検閲されています。
「隼人くん見えてないの!?」
「草」
「え、この人、縦に目切れてない?」
「四つん這いで這いずってるのキモスンギ」
「ひええ」
「目が合った」
「こっち見んな」
「足ちぎれてんじゃねーか」
「あ」
「ワロタ」
「それはあかんて」
「四つん這いしてたらそら(隼人くんのちんちんぐらい)そう(刺さる)よ」
「早速モザイクかかってて爆笑」
「記念パピコ」
「隼人くん腰振りスギィ」
「ちゃうやんこれ畳の上のやつ女の人の内臓やん」
「ワイ将、霊感なくて低みの見物」
「いつもの隼人くん安定」
「突然四つん這いおせっせ始まってて草」
「女の人もう動けてないやん」
「↑内臓見える、俺も、たぶん子宮?」
「あ」
「業務用はあかん」
「すすすすすスチーマーwwwwwww」
「死ぬ」
「あかん」
「(察し)」
「絶叫してて草」
「ちんぽ刺さったまま女の人持ち上がってるのis何」
「よくわからん解説plz」
「隼人くん⋯⋯」
「まじでやりたい放題してて草」
「①四つん這いの幽霊に隼人くんの隼人くんが刺さった ②抜けないまま隼人くんが床の内臓にスチーマー当ててる」
「地獄」
「ほんとひで」
「あーあ女の人壊れちゃった」
「こんなん性癖歪むわ」
「幽霊さんもう命乞いしてるやん」
「泣いちゃった⋯⋯」
「わァ⋯⋯ァ」