ページ3:狙われた少女達
昼下がり、提督は朝潮とテレビを見ていた。そこでニュースが流れている。
「最近になり街にやってきたシルバーウルフ・マーセナリーズという傭兵部隊の動きに、警察は警戒しています。警察の関係者は彼らがこの国にやってきた意図は不明と話しており、今後も警戒を続けていくとのことです。」
「シルバーウルフ、ねぇ。」
提督が椅子にもたれかかってつぶやく。黒い軍服、帽子を身に纏った男女達は、街を我が物顔で歩いている。この国にとっては、異様な光景でしかない。
「戻ったよーっと。」
部屋の扉が開き、買い物から戻ってきた望月と秋雲が袋を持ってやってきた。
「いやー、さっき黒い軍服みたいなの着た人に声かけられちゃって。絵を描けるかーなんて聞かれてさ。」
秋雲が頭をポリポリ掻きながら話す。
「絵?何の絵ですか?」
「なんか特徴いうから、その人の絵を描いて欲しいんだって。多分迷子探してもしてるんじゃ無い?」
「その絵持ってる?」
提督が気になり、秋雲に聞く。
「あるよ。はい。」
秋雲がスケッチブックを見せる。白いフードを被り、ガスマスクのようなマスクをつけている人物の絵だった。
「なんだこりゃ、お前何描いたんだ?」
提督が首を傾げて笑いながら秋雲に聞く。
「素顔を知らないから、これで描いて欲しいって言われたんだもん。」
提督は絵を見ていると、その秋雲が書いた人物の頭の上に謎の絵を描いていた。
「あれ、これなんですか?」
朝潮が指を指して秋雲に聞く。
「さぁーね。頭に変な紋章があったとか言ってたから。」
提督はもういいよと秋雲にスケッチブックを返す。秋雲と望月は自分の部屋に戻っていった。
「はぁー、疲れた。きゅうけーい。」
提督が背伸びをして部屋を出ていく。朝潮も休憩のため、またテレビをつける。
提督は散歩で鎮守府を出て街に来ていた。すると提督の携帯が鳴り、メールが送られてくる。
「返信不要。◯◯街の廃墟ビル「27番ビル」に来て欲しい。」
提督に送られたメールには、廃墟ビルの場所に来いと言う内容のメールだった。最初は提督もジャーヴィスあたりのイタズラかと思っていたが、考えてみればジャーヴィスは遠征任務中であり、こんなことをしているほど暇ではなかった。特にやることもなかった提督は、あえてその場所に行ってみることにした。
しばらく歩き、廃墟と化した27番ビルに着く。立ち入り禁止の看板を錆びていた。提督はそのビルの中に入り、一つの部屋に入る。そこには一人の女性が立っていた。
「来てくれるとは思っていなかった。」
白いコート、帽子、そして片手にはアサルトライフルを持ち、マスクをつけている。それだけでも十分変わった格好だったが、何よりも提督が気になったのは、頭の上に浮かぶ紋章だった。正にあの時、秋雲が書いたあの人物と格好も似ていた。提督は少し後退りして、声をかける。
「お前が、俺を呼んだのか。目的は?俺を殺すつもりか。」
すると女性はマスクを外し、口を開く。
「危害を加えるつもりはない。助けて欲しいだけだ。」
そう言って女性は、窓の外を見る。
「見てくれ。あの黒い軍服の男。」
提督も窓を覗く。そこではニュースに映っていたシルバーウルフの人間がいた。
「あいつら、シルバーウルフ・マーセナリーズとかいう…」
「そうだ。私の仲間の一人を、奴らは探しているんだ。」
提督は女性の方を振り向く。女性は壁にもたれて座り、話し続ける。
「私の名前はサオリ。錠前 サオリだ。キヴォトスにあるアリウス分校からやってきた。」続けて話そうとするサオリの話を遮って、提督が話す。
「待ってくれ。キヴォトス?アリウス分校?何言ってるんださっきから。それにお前の頭の上に浮いてる紋章はなんだ?」
サオリは立ち上がり、説明する。
「話すと長くなる。それに、この私の上にあるのはヘイローというものだ。」
「ヘイローって、あの天使とかが頭の上につけてる天使の輪っかのことだよな…?まさか、死んでるのか?」
「違う。キヴォトスでは私たちのような生徒は必ずヘイローがある。それに私の仲間にも、ある。」
提督はため息をついて、古いパイプ椅子に座る。艦娘も普通の人間では無いにしてもヘイローも、獣の耳も存在しない。しかし今の目の前にいるサオリという女性にはヘイローがある。
「まぁ、詳しいことはいいや。それでさっき、シルバーウルフは仲間を探してるって言ってたな?何したんだ?」
サオリはまた窓の外を見る。
「分からない。だがきっと、捕まえるつもりだろう。」
「悪いが、俺はまだ君を信用できない。」
提督にとって、人助けはもちろんしてやりたいと考えてはいた。しかし目の前にいる女性はあまりにも怪しかった。
するとサオリは帽子を脱ぎ、跪く。
「お、おい…!」
提督はサオリの行動に少し焦る。
「頼む、あなたしかいないんだ。私は、いろんな人間に助けを求めた。しかし、応じてくれたのはあなただけだった。頼む。命令なら何でも受ける。このヘイローを破壊する爆弾も預ける。私の命を握ってくれて構わない。」
そう言ってサオリは、起爆装置を提督の前に置く。提督は足元にある起爆装置を拾い上げる。リモコンのような機械に存在する目立つ赤い大きなボタン。そのボタンひとつで、目の前にいるサオリの命を奪ってしまう。提督は押してしまわないようにリモコンのスイッチをオフにしてポケットにしまう。
「なぜそこまでして、俺に頼むんだ。俺はただの海軍の提督なんだぞ。」
「私は、あなたに先生の影を見た。またあの時のように、助けてくれると。」
「先生…?」
提督はしゃがみ、サオリの前に行く。
「分かった。できるところまでやってみよう。だから顔を上げろ。」
サオリが顔を上げる。ポケットにはサオリの命を奪う爆弾のスイッチ。
提督は一度、鎮守府に戻り全てを説明するため、サオリを連れて鎮守府へ戻っていった。
しかしこれを機に、提督は問題に巻き込まれていく。