転生機族の異世界記∼機族に転生したら異世界に飛ばされました∼ TSならぬTM-トランス・メカ-転生者な星船は、ヤマト世界で何を成す? 作:オーキッドとグロリア欲しい
星門、それは宇宙の星々を回廊で繋ぐ人類文明の礎で有り、成り立ちが不明ながら古くから存在して、安定したそれは簡便な超光速航法として銀河系連盟やアバロン合星国など人類文明で広く活用されていた。
しかし、最近その前提が崩れ出していた。
各地の星門を結ぶ星門回廊が突如として不安定化し、所により崩壊を起こし始めたのだ。
そしてそれは加速度的に進行しつつ有り、このままでは銀連アバロン問わず、星々が孤立して文明の後退や大量死が現実として見えて来た。
その破局を防ぐ為に、様々な勢力が原因の特定の為の調査と解決策の模索に乗り出して行く。
そしてその過程で、犠牲が出てしまう事もまた少なくなかった。
回廊崩壊、更に進行。停滞シールドの維持可能時間は残り146船内秒と。
コンゴウ、トキカゼ、ハヤカゼ、バチスカーフら、アカシ(私)以外の星門異常調査艦隊が本艦を救助しようとベクトル機関を同調させて回廊を広げようとしてるが、ジリジリと崩壊が早まっている。
「どうにも駄目みたいにゃ」
「アカシさんでも駄目ですか」
「今も模索しては居るけど、蛇に願った方がマシなレベルで詰んでるにゃ。私の道連れにして申し訳ないにゃ」
まあ、崩壊現象の内側から時間をかけて観測できるのは貴重なデータでも有る。
私みたいな出力が無きゃ、直ぐに潰されてこのデータも取れなかった筈だから、良かったとも言えるのかな。
私見も書き加えて各艦に送信と。
「いえ、この船がたまたま回廊の急激な崩壊に巻き込まれただけですし。まあ、そうですね。皆で蛇に祈っときます」
「そうそう。私らの運が悪かっただけだよー」
「元よりこの任務は危険性が高いと言われてたからねぇ」
「みんな、有難うにゃ。私は直前まで色々と試すから、祈るのは頼むにゃ」
そうは言いつつも、私たちが今使えるリソースでは、ちょっと絶望的な感じだ。
それこそ先史文明の機械の総称である蛇ならば容易く打開出来るのだろうが、蛇を呼び込む事はそれはそれでリスクが存在する。
彼女たち並行世界のホワイトバーズの子達も蛇によりこの世界へと取り残された存在で、その子達と地球派遣からの付き合いな渡辺綱美、アタランテ・ライオネルら14名は、
運悪くこの工作艦アカシ(私)が開発した新装備のテスト(遊び)に来ていた戦闘機の機族だ。
アルマゲストと名付けられた黒い蛇の並行世界移動に巻き込まれた異世界のホワイトバーズは、銀連第7艦隊が地球から撤退した時に一緒に付いてきたのだが、議会に存在が露顕。
遺物の一種として危険視した議会により、行動制限等の不自由を色々と強いられて居た。
この世界のホワイトバーズを始めとして、綱美やアタランテや私の様に特に仲の良い機族も居るし、名越司令は実の娘の様に接したりと艦隊内での不自由は無いが、
どうしても自分たちの知ってる世界とは違う事を時折突き付けられる事が有って、微妙な異物感というか座りの悪さを感じてしまうらしい。
そんな並行世界でも精鋭戦闘機隊と知られてたらしい彼女たちホワイトバーズやベテランの戦闘機である綱美やアタランテでも、
自分たち戦闘機の力ではどうにも成らない星門回廊内という状況下では落胆や不安を隠せない様で、最後の通信やメッセージを送ったり、一心不乱に祈ったりしてたりと悲壮な空気が漂って居る。
先程の言葉は彼女たちが覚悟できる様に言った物で、私もまだ諦めた訳では無いが、自己改造で増強に増強を重ねて
今は更に戦闘機達から思考支援を受けた演算能力や思考分割処理でも未だ打開策は浮かばない。
せっかく香奈花ちゃんの、名越香奈花艦長としての初任務だというのに、汚点と成ってしまいそうだ。
『アカシ、そちらからは転送出来ないの?貴女は自分を無許可で色々と改良してたわよね』
「名越司令、無理ですにゃ。私の改良した転送装置でも空間が不安定すぎて、せいぜい四肢の一部が実体化できる位にゃ。
それよりもホワイトバーズと綱美とアタランテをテスト(遊びに)に誘ったこと、申し訳ないです。香奈花ちゃんにも初任務でこんな経験をさせて申し訳ないと伝えて欲しいですにゃ」
『アカシ!諦めんなよ!バチスカーフ、ベクトル機関に更にエネルギー回せ!』
『既に許容値ギリギリです。これ以上はシールド維持に支障が出て船体が情報融解します』
『クソ!なんでこんなに崩壊が早いんだ!』
その怒声と共に、その香奈花ちゃんが通信に割り込んで来た。
そう、突然起こり始めた星門回廊の急激な崩壊現象は未だに解明の道筋が見えない。
既に銀河系連盟とアバロンの主要航路の2割が崩壊して孤立した恒星系が出始めており、この儘のペースだと2年以内に全ての星門が不通と成り、全ての人類文明の恒星系が孤立する。
通常の恒星間航法では桁違いに航行時間が掛かり、それに対応した船腹の整備には機族の超生産力を持ってしても10年は欲しいけど、その間に一体どれだけの犠牲が出るか考えたくない。
この世界に転生したからにはと、死ぬ筈の監察庁3人娘を助けたり、主人公である成恵ちゃんや和人くんに会いたかったが、
どうにも機族としての能力と特定の適性が高かったのが運の尽き、貴重な工作艦機族と成り、辺境宇宙で艦隊や宇宙や地上の環境・インフラ整備や復旧に忙殺される日々。
運用局に地球派遣の転属願いを出すも当然の様にハネられて、地球派遣艦隊には行けずに3人娘も助けられなかったし、ハルナやテトラにも会えなかった。
次こそはと、成恵の世界最終話での香奈花ちゃんの地球再訪問に着いていくつもりだったが、それもダメそうだ。
だけど、せめてこの事態解決の糸口に成りたい。
「気持ちは嬉しいにゃ。でも、物理的に無理なのにゃ。私も最後まで模索はするけど、少なくとも私やコンゴウ達の能力を合わせてもこの状況を抜け出せないにゃ」
そう、星船の力でも……そうだよ!星船じゃない力ならもしかして、もしかするかも!
「……ちょっと思い付いたにゃ!香奈花ちゃん、祈って欲しいにゃ。この前、私が作った力の石を渡したにゃ!
パーセプション(感応力)による量子干渉ならこの状況を打開出来る可能性が出て来るにゃ!」
『パーセプションは訓練中で、未だに小物を浮かす位しか出来ないんだ』
「そんな事は分かってるにゃ!良いかにゃ?パーセプションのコツは精緻なイメージと出来ると言う強い思い込みにゃ!
取り敢えず、私(アカシ)が通常宇宙空間に無事出られる様、強く精緻にイメージして欲しいにゃ!それだけを考えて欲しいにゃ!出来るだけ単純に、強く精緻にイメージしてにゃ!」
『……分かった『それ、私たちにも手伝わさせなさい!』な!!ストレルカにベルカ!?』
『私たちの船ならまだアカシに取り付けれる。私たちを基点兼ブースターにして、アカシと私たちを跳ばせ』
『そう言うことよ。じゃあ、御免遊ばせ』
そう言うと、ストレルカはバチスカーフより更に小さな船体をナノマシンで出来てる柔構造船特有の機能として極限まで船体を細く変形させ、崩壊しつつ有る回廊をギリギリ抜けて私の船体に取り付いた。
「2人共、何で来ちゃったのにゃ!?」
停滞シールドの範囲を再設定しつつ2人に聞く。
『お義母さんは姉さんと私を置いてくの?』
テロが起こる事は知っていたが、場所や時期が分からなくて本来なら歴史通りに犠牲が出た。
その罪悪感から、自立したいと言い出すまで2人を引き取り育てたのだが思いのほか情が移り移されしたのは、自身が持つ機族の本能を甘く見ていた誤算だろう。
「にゃあ。それを言うのはずるいにゃ……。あ!」
そして回廊がいよいよ狭まり、ストレルカでも通れなくなってしまう。
『もう無理ね!』
『私たちと一緒に生還するか、一緒に情報融解するかの二択に成ったな』
姉のソーニャちゃんがドヤ顔で言うとイーラちゃんがそう続ける。
「はあ、香奈花ちゃん、お願いするにゃ」
『……分かった。つまりそいつ等はアカシを慕って助けに来たんだな』
「まあ、ざっくり言うとそうにゃ。細かい事は名越准将が知ってるから、後で聞いて欲しいにゃ」
その他の人助けや技術開発からの縁やらで始めた個人的な活動は色々と行っていた。
正史と同じく、傭兵派遣会社に就職して地球に潜入した彼女たちに頼んでも3人娘は助けられなかったが、それでも助けられた人というか機族は居る。
今も艦橋に繋がる私室から、私の情報処理を手伝ってくれてる仙女に似た格好の並行世界から来た難破船ムラクモを思い浮かべる。
成恵の世界本来の歴史で彼女は、銀連議会の命令により蛇にまつわる遺物として地球に置き去りにされ、銀連艦隊の撤退で存在可能性が低下して塵と化してしまう筈だったが、私がその運命を変えたのだ。
『じゃあ、始めるぞ』
『良いわよ』
『私も大丈夫』
モニターに映る香奈花ちゃんがバチスカーフの艦長席に背を預けて目を瞑り、ストレルカの2人も同じ様に目を瞑り、そして僅かな後、私(アカシ)の船体とストレルカが通常宇宙に跳ばされた事を確認した。
その合間で私だけが記録には残らない夢を見て……。
此処は地球の衛星軌道?
地形データは間違いなく地球で有ることを示している。
しかし、眼の前の惑星は……。
「これが地球?」
戦闘機の誰かが言った。
「この様な、星が、そんな……」
ムラクモさんが思わずブリッジに繋がる私室から出て来てしまった様だ。
私とムラクモに戦闘機達は、ブリッジのモニターに映る光学センサーが捉えた海が干上がり無数のクレーターが広がる赤茶けた星を見ながら呆然としていた。
そして、自動的に行われた天体測定から、今は2198年12月と時間と位置が判明する。
「アカシさん、自己診断は!?」
ホワイトバーズの隊長である、山名美代(やまなみよ)が聞いてきたが、そんなのは既にやっている。
「既に3度やったにゃ。船体も私自身もおかしくないにゃ。これが蛇の見せる幻で無いなら、確かに地球西暦2198年の惑星地球にゃ。ソーニャちゃん、幻影の可能性は?」
パーセプター(高次知覚)なら、機族を欺ける物を看破出来るかも。
その願いにも似た問いに対する回答は無慈悲な結果だった。
『本物よ。少なくともパーセプションを欺ける技術でも無い限りはね』
そんな物、先史文明でも無理なのは常識だ。
「そんな……」
「ひどい……」
「こんなの無いよ……」
地球派遣歴が長い綱美とアタランテは当然だが、ホワイトバーズも酷くショックを受けている様で、何人か崩れ落ちている。
機械である筈の機族すら忘れる程に昔から人間と共存する機族という存在は、人類と共に歩む為に人間の女性の姿をし、レゾンデートル(存在理由)として生命の守護が刷り込まれて居るというのが銀連の常識だ。
その刷り込みは中身が元人間な転生者という私にも確かに存在するし、寧ろ前世とは違う感覚なので私の方が良く感じてると思う。
その機族としての感性から、今の状況は凄く哀しいと感じる。
でも、そんな事を言ってる場合じゃない。
機族の中でも亡霊や妖怪と言われる程に古参でも有る私は、こういうメンタルの負荷を押し殺したり、流す事にも馴れている。
さて、シェルターなどで人類が生きてるかもと切り替えた私はそう思い立ち、センサーのリソースを地中探査に割り振ろうとした直前。
ん?地表に熱と重力の反応?
これは……。
成る程、私を機族に転生させた存在か、蛇か、テレサか、アケーリアス人かは分からないが、誰かが私たちという異物をこの世界に放り込んだ訳だ。
「……富士山麓から艦隊が発進、軌道上に上がって来るにゃ。本艦に対するインターセプトコースではないにゃ」
少なくとも地球艦隊に対して銀連のアクティブステルスは効果を示しているみたいだ。
そんな事を考えながら、位置関係が変わって地球艦隊の側面が見えるように成る。
モニターに映し出される、通信から推定された旗艦らしき赤い葉巻き型の艦の船体側面には、白い字できりしまと平仮名で書かれて居た。
沖田艦がきりしまという事は、此処は宇宙戦艦ヤマト2199の世界か……。
「さて、どうするべきかにゃ」
工作艦アカシ-亜科詩-
銀河系連盟第一支援艦隊に所属する惑星日本の多目的工作艦
外観は星船母艦ビンテンと同型の全長1250メートルのコア船体に、ビンテンのドッグモジュールと外装を同じくする長方形の格納モジュールと工場モジュールを3機ずつ、計6機を同心円状に取り付けている。
工作艦としての能力は、アカシの自己改造と自己拡張、タスク処理の巧みさから、200隻からなる艦隊を敵地深部で長期間連戦させても支障無く支え、平時には単艦で2方面の所用を満たす事もしていた。
加速力は0.21光速/分とアバロンの標準的戦闘艦を上回り銀連の使用する機族護衛艦とは遜色無く、自己改造により取り付けた強力な防護兵装と併せて、第二次銀河大戦で惑星日本が連合星国軍相手に条件付き降伏を引き出せたのはアカシの功績との声が大きい。
戦勝国たるアバロンはアカシの解体を望んだが、他の参戦国はアカシの特異的な修造能力を魅力的に捉えて否決。
戦後はアカシの工作艦としてのノウハウの戦勝国への普及の為に主に銀連構成国で工作艦や病院船、行政型機族相手に教授を行い、その能力と機族寿命を飛躍的に向上させた。
なお、アカシの幼名は、鈴木アヤであり、工作艦としての勇名の他に惑星日本の江戸時代初期から生きる妖怪機族としても知られて居た。
星門回廊崩壊問題の調査任務中に戦闘機14名と星船ストレルカと共にMIA。
彼女がその任務中と最後の直前まで収集した通常の星船を圧倒的に上回る膨大かつ精密な回廊崩壊データと分析は、
後に始まる破局的な回廊崩壊現象の予測に繋がって多くの命を救い、更には解決の一助と成った。