転生機族の異世界記∼機族に転生したら異世界に飛ばされました∼ TSならぬTM-トランス・メカ-転生者な星船は、ヤマト世界で何を成す?   作:オーキッドとグロリア欲しい

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閑話1 有人戦闘機

数発放たれたビームの軌跡が鋭角な回避機動を行っていたコスモファルコンに突き刺さり、そのシールドを飽和させて突破する。

 

『スプラッシュワン・ファルコンゼロツー』

 

くそ、シノがやられた。

 

生き残ってるのはもう俺だけだ。

 

2機の分隊を相手に、各国のエースを集めて編成された飛行隊20機で掛かって攻撃がかすりもしないのは、流石に情けねえ。

 

有効打は無理でも、せめて一矢報いてやる。

 

そう決意してから思考操作でフェイザーの収束率を最大限に下げて速射性は逆に上げると、全力で逃げながら両翼下のフレキシブルアームに懸架された2門のフェイザーを後ろに向けて、パワーリザーバーの限界まで引き撃ちをする。

 

推重比的にはほぼ同じだし、リザーバーの容量ではコッチが上回る。

 

だが、全く当たらない。

 

当たる気配が無い。

 

そしてビームを数発当てられてシールドが破られ、呆気なく落とされた。

 

「くそっ!人間だけだとハンデを貰ってもこれか!」

 

数の利に加えて、相手はミサイルや機族用攻撃子機等の遠隔攻撃兵装を使わないという、かなり大きなハンデを貰ってもこれだ。

 

こちらの気も知らずに不透化したコックピットの外で笑顔でハイタッチを交わしてお互いに喜び合う、頭から翼を生やした少女たちに対して思わず悪態を吐いてしまう。

 

彼女たちが悪くないのは分かってる。

 

むしろ地球の大恩人だし、知り合った彼女たち自身の性格も素直で優しく好感が持てるという事も実感してる。

 

何せ彼女たちからすると時代遅れなコスモファルコンの改良に文句を言わず、何なら積極的に付き合ってくれてる姿勢からもそれは明らかだ。

 

だがそれは、自身の戦闘機乗りとしての技量が全く通用しないという事に対する慰めには成らないし、それで諦めたらこれ以上の自身の成長は無くなるだろうという事も分かる。

 

『加藤さん、近距離戦は私に任せてくれませんか?人間の脳では思考リンク操作を使ってもどうしても判断速度に限界が有りますし』

 

「オーキッド、これが人間の意地とか下らない理由ならそれで良いがな。そうじゃねぇんだよ。お前たちでも機族がその気になるだけで無力化されるんだろ?

機族が敵に成るのは考え難いが、機族と同じでお前を無力化できる敵が現れないとは言えない筈だ。その時、俺達は機族に頼るだけに成っちまう。それは駄目だ」

 

『確かに、私も制御体と同じく亜完全言語機ですから、操られる事は無くてもベクトルドライバでの干渉や攻勢ナノマシンによるマシンハザードで停止させられるリスクは有ります。

機族や制御体、或いはサーブボットの様なほぼナノマシンで構成された機体なら大丈夫なのですが、人間だけでも運用可能な様に作られてる私たちや直立戦闘機といったハードボット搭載の自律AIだと対策しても有りえてしまうリスクです。しかし………』

 

「問題は方法だよな……」

 

今俺が乗っているコスモファルコンは、改良され過ぎて最早別物だ。

 

外観こそ翼下パイロンが大型化して、キャノピーの透過と不透過の切り替えと棒の様な外燃エンジンにエンジンノズルが変わっただけに見えるが、中身は外装全てとフレームレベルから強化され、

更に反物資/ベクトルドライバとシールドジェネレーターや自律AIの導入により、亜光速領域での飛行さえも安全に可能と成ったが、それは機体だけの話だ。

 

『はい、既に次元エナーシャルキャンセラーと思考リンクの導入により、人間が発揮可能な思考速度の上限に達してます。これ以上となると人体側を弄る事しか無くなり……』

 

「ヒト形質維持法に引っ掛かると」

 

人間の様なナニカっていうのはどんな存在なんだろうか?

 

そう、人類が機族の主人で有り続ける為という理由で各国で同時施行された法文を思い出しながら想像する。

 

それは何となくだが、感情を切り捨てた人間という物が思い浮かんだ。

 

それこそ今の相棒である、コイツらAIよりも明らかに無機質な人間が……。

 

「それはゾッとしないな……よし!やり方を変えるぞ」

 

今までの方法で限界が来てるなら、別の方向からのアプローチを考えるしか無い。

 

「人間ってのは適応とか進化とかするもんだ、それは別に身体を機械に置き換える事だけしか方法が無い訳じゃねぇ筈だ」

「で、そう啖呵切っての検討会ですかぁ」

 

「シノうるせぇぞ。俺だけじゃ思い付かなかったんだよ。オーキッドも最後のは余計だ」

 

『いやぁ、あの時の加藤さんの宣言カッコよかったですよ』

 

会議室に集った隊のメンバーに対してオーキッドが俺がつい吐いた言葉を暴露され、それをシノが茶化す。

 

「ったく」

 

「あの加藤隊長?私たちがこの会議に居ても良いんでしょうか?私たちを想定敵にして攻略法を考える会議ですよね」

 

機族戦闘機である渡辺綱美がそう聞いてくる。

隣に座るアタランテ・ライオネルもその言葉と同じ意見らしく、頷いている。

 

「あん?渡辺、むしろ機族クラスの敵を想定するなら、仮想敵が務まる当事者が居ないと話しになんないだろ。俺たちは勝負をしてるんじゃないんだぞ」

 

「あ、はい!」

 

ライオネルと渡辺の2人はなんで嬉しそうなんだ?シノや他の奴もニヤニヤしてるし、わけが分からねぇ。

 

『加藤隊長はやっぱり良い方ですね』

 

『そうでしょう。しかしまあ、問題は方法ですわね』

 

「ですね。単体での火力だけなら私たちを上回れても、結局は攻撃予測のパターン数と反応速度で、人間の方たちとは差が出てしまいますし」

 

シノと良くペアを組むグロリアに何か褒められたが、それは兎も角、続くオーキッドの言葉に渡辺が補足する。

 

そうだよな。

 

人間と機族では単純に身体の性能で埋めがたい程に差が有るんだ。

 

「単純に連携する練度を上げても限界が有るよなぁ」

 

「ライオネルサンやシノサンの言う様に、人間の脳では限界が有るし、例えワレワレなら攻撃を通せたとしても一般的なパイロットでは難しいだろう」

 

更に続ける篠原の言葉に、北米管区から来たベンソン・リカルドが翻訳機を使わない所々少し訛った日本語で懸念点を付け加える。

 

2メートル近い大柄な黒人であり、コクピットで窮屈そうに収まる姿は滑稽だが、腕は勿論立ち、その対ガミラス航空戦に置ける空戦理論では国連軍に教本化された理論派でも有る。

 

「2人に聞きたいのだけど、空間を塗り潰す様な連携と武器の両方が有ればどうかしら?発揮可能な出力自体が大きな有人機体なら、そう言った武器でも有効打を与えられる出力を出せない?」

 

超能力の資質を持つ飛行課程修了者という理由から隊へと来た山本玲が、そう機族の2人に聞く。

 

対抗できるとすればコイツの持つらしい超能力だが、未だに訓練中で実用的な利用は無理だと言うし、資質を持つ人間自体が少ないから連携と同じで一般化は難しいだろう。

 

「その場合は、私なら連携の外周から切り崩すのですけど。……武器の方はどうなんでしょう?前例に心当たりが無いですが、出力的には……行けそうですかね。アカシさんに作って貰えないか聞いてみますね」

 

アタランテが山本の質問にそう答えると、端末を操作し始めた。

 

最初に見た時はロボットが通信に端末を使う光景が不可解で、機能的にお前らなら考えるだけで通信できるだろと前に聞いたが、基本的に非常時や宇宙空間でしか使わない文化なのだそうだ。

 

「機族戦闘機レベルの相手を想定するなら問題は他にも有る。数の利と連携を前提とする場合、転送による支援を使えたり、攻撃子機を引き連れた戦闘機が相手だと優位性はあっさりと覆ってしまうだろう。

限定的ながらガミラスも転送技術を実現していた事からも、機族戦闘機レベルの技術を実現していると想定するなら当然実用化してると見るべきだ」

 

次に中東管区から派遣されてるカシムがそう発言した。

 

コイツは18歳の隊最年少で何時も口をへの字にしてる真面目な性格であり、言う事は至極的確で既に大学の工学部を出て居て、パイロットとしての技量だけでなく技術にも明るい奴だ。

 

カシムの懸念点も分かる。

 

例え連携して飽和させる戦術が有効だとしてもだ、それは数の利を失えばアッサリと覆ってしまうだろう。

 

しかし俺たちが乗る有人機は、制御体よりも生産が圧倒的に容易で、機族の様な供給制限や配備数が少ない超兵器とは違う。

 

……それならだ。

 

「よし!戦闘機である以上、ある程度の割り切りは必要な筈だ。転送妨害や攻撃子機の妨害や対処は艦艇や機族、制御体に任せて兵器システムとして有人機の役割を見直し、単体で何でもやらせる事は辞めるぞ。

というか、そんな多芸な事は機族しか無理だろうから、俺たち人間はその機族の負担を減らす役割をすべきだ」

 

部下の反応を見ると隊の人間は納得してるか考え込んでる顔だが、戦闘機である2人はあまり良い反応をしてない。

 

まあ、短いながらも知り合った2人の性格から予想はできる。

 

人間に仕事を押し付けて自分たちを最大限生かす方向性が良い物と考えられても、心情的に本来は自分たちが請け負うリスクを人間に負わせる事に対して引け目を感じてるんだろう。

 

「渡辺、ライオネル。俺たちは戦闘機パイロットで軍人だ。覚悟してこの仕事をしてる。人間に自分たちのリスクを負わせる事を気にしてるんだろうが、気にすんなとは言わねぇが気負うな。それは俺たちがしてる覚悟に対する侮辱だ。良いな!」

 

「「はっはい!」」

 

虚を疲れた様に姿勢を正し返事をする2人に対して、俺は意識してニヤリと笑い宣言した。

「こいつが新型のフェイザー砲ですか、砲口部分が変わった以外は今までと同じなんですね」

 

翌日、隊が利用してる格納庫へと機族の女王にして工作艦であるアカシが来ていた。

 

と言っても猫耳を頭に生やしたチンチクリンな姿をしていて、ニュースで見た姿との違いに隊の部下たちと同じく驚いたが、なんでも本来の姿はコッチで、女王としての姿は、機族の女王として頼りがいの有る印象を与える為のアバターの一種なのだそうだ。

 

それにこの身体も、星船とか大容量機族なら生み出せる分体の一つと教えられた、何にせよ昨日の今日で要求した物を持ってくるのは仕事が早え。

 

流石はあの不快だった地下都市の環境をあっという間に快適な場所に改造した工作艦ってのは伊達じゃねぇと実感した。

 

「部品は共通化された物が多いですからにゃ。一応は、出力強化の為に砲尾のパーツが30センチ伸びてますにゃ。そして砲口の物が今回リクエストされた要求の為に組み付けた部品で、マルチビームスプリッタですにゃ。

これによりビームを4本へと分割して、それぞれ目標方向へと自由に割り振る事が可能と成りましたにゃ。もちろん空間を埋める様に射撃する事も可能ですにゃ」

 

今までは垂直でスマートな砲身然としていたフェイザー砲の砲身が砲口の手前から一回り太くなり、そこに何やら三又の瘤のような不格好な出っ張りが出来ている。

 

「まあ、同時に4本放つビーム1本辺りの出力は1本だった時の3割と大きく減ったのだけど、対戦闘機だと元から過剰出力だった上に機体側に付託する冷却系を強化する事で速射性能は前の280%に上げてますにゃ。

相応に持続射撃能力も落ちたんだけど、人間からの攻撃判断を前提とするなら集中力が続かないから、自律AIよりも持続射撃時間は少なくて済む筈ですにゃ。それから、合計出力は1割上がってるけど射程は6割まで減ってますにゃ」

 

「大丈夫です。手数が増える方が有り難いですし、今でも射程は少し持て余してた位なので」

 

私としては、有人機はガミラスやガトランティス、デザリアム戦闘機を圧倒して、かつ長距離から敵艦を撃破する様な単純な運用を想定してただけに、

私たちと似た技術レベルの技術を保有して、ハードボットの高度な自律AIを無力化する敵の運用想定が来るのは予想外だったからだ。

 

これが機族や制御体を想定しての物ならまだ分かるんだけど、そうじゃ無くて、機族や制御体が相手側の遠隔攻撃兵装や自律機械を無効化する事を前提とした運用検討から出て来たから少し驚いた。

 

今回の注文では、機族や制御体が支援して転送による有人機の武器換装を柔軟に行う事で、既存の長射程フェイザーや手数重視のフェイザー等を組み換えたり組み合わせて運用する為の技術検証も含まれてて、

どうやら機族や制御体の負担を減らす為に有人機に攻撃子機の役割を一部担わせる事などを試したいらしい。

 

確かに人間より戦闘に向いてる機族でも制御体でも、特に戦闘機レベルの容量だと、どうしても情報処理的な限界が星船より小さいので、有人機に子機の役割を担わせる事は理には叶ってる。

 

「しかしまあ、銀連とは文化も環境も違うから、地球の運用者である方たちともっと連携しないと駄目ですにゃね。今回の話はコミュニケーションの重要性を再確認出来て良かったですにゃ」

 

当然、前に私がしてた運用想定よりリスクが上がるから、理には叶ってるとは思いつつも、機族としての本能的にはあまり推奨したく無い方法ではあるけども。

 

「いえ、こちらこそお手数掛けして申し訳ない。有り難い限りです」

 

惑星日本や銀連時代は、その経験と機族や工作艦-亜科詩-としての実績から、独りの考えで色々と作ったり行動しても問題は出なかったけど、此処は私たちは種族として新入りな上に、銀連とは違う歴史と文化を持つ星という事を忘れて居た。

 

もちろん地球と地球人を助ける為に物事を押し通す事も必要だけど、なるべく尊重する事も大事な筈だ。

 

この感覚は常に忘れない方が良いだろうな。

「お前ら、準備は良いか?」『『『行けます!!』』』

 

「では、始めにマシンハザード等による自律AI機能停止時の機族戦闘機、制御体との連携想定演習から始める!気張るぞ!!」

 

こうして始まった機族戦闘機や制御体の負担を減らす事を目的に組まれた数々の想定演習は、有人機と機族戦闘機や制御体の役割に対しての新たな知見を示し、

上層部で内々に検討されて居た、自律AIによる完全無人戦闘機での有人機の代替方針は見直される事へと成った。

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