転生機族の異世界記∼機族に転生したら異世界に飛ばされました∼ TSならぬTM-トランス・メカ-転生者な星船は、ヤマト世界で何を成す?   作:オーキッドとグロリア欲しい

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第13話 イスカンダルからの贈り物(拾得物)

冥王星沖で繰り広げられている地球と冥王星ガミラス軍の一方的な地球艦隊の負け戦の様子を映し出していたモニターが唐突に太陽系を上から俯瞰した映像へと切り替わり、

それが今度は海王星軌道にズームすると、注目すべき有意な観測データを検出したという限定AIの処理がポップアップする。

 

「海王星公転軌道外縁にワープアウトと思われる次元波を検知!目標は前回確認されたイスカンダル船と酷似!一致率からアマテラスと認定!アマテラスは光速の約30倍の速度で火星へのコリジョンコースを取っています!」

 

ここに詰める人間で、その意味が分からない者は居ない。

 

指揮所の上段から雛壇の下でオペレーターを勤める森雪に送っていた視線を外し、彼女が発した状況報告を私の隣で共に聞いて居た藤堂長官と芹沢局長に視線を向ける。

 

「こっちも今できる準備は全て万端ですにゃ」

 

「分かりました。待機中の全軍に発令!アマノイワト開く、作戦計画通りに行動せよ。以上だ!……アカシさん、此処までは予想通りですな。しかし、今回の作戦は上手く行きますかな?」

 

藤堂長官は私の肯定に対して頷くと、直ぐ様マイクのスイッチを入れて作戦の開始を指示した。

 

しかし、事前に想定していた通りに推移してると言っても流石に不安の様子だ。

 

「まあ、こればかりは我々とイスカンダルのテクノロジーのせめぎ合いですにゃ。予想通りに難破して、更にイスカンダルが使用してる探知技術が私の想定するレベルならば、気取られずにほぼ全ての残骸を転送回収出来る筈にゃ。

気取られても残骸を回収しただけと言い訳は可能ですし、イスカンダル人からの心象が致命的に悪くなる事はない筈ですにゃ。もっともその場合は残骸を返せや破棄しろと言われる可能性も有るけど、

それでも転送システムに組み込んだ精密スキャンにより、私や地球の既知計測技術で分かる範囲なら全て調べた後ですにゃ」

 

流石に波動エンジンやそのコアは真っ先に自壊させてるだろうから、エンジン関係は構成物質が分かれば御の字というレベルだけど。

 

それでも現状、ガミラス製波動エンジンからの高出力化研究が行き詰まってるので、逆算をかける為に僅かな手掛かりでも欲しかった。

 

「確かにそうでした。しかし、どうも不安でいけませんな」

 

「さっきまで私も何度も手順を確認したので同じですにゃ。まあ、人事は尽くしたと思うので後は天命を待つだけですにゃ」

 

そう、私は前世からの座右の銘を、萌え袖をわざとらしく大袈裟にバサバサさせ冗談めかして言う。

 

私の幼い容姿だとこういう仕草が似合って人間が和みやすいので、低身長から来る日常のちょっとした不便が有っても、あまり不満は感じてない無い。

 

そう言えば比較的歳-艦齢-の行ってる、星船母艦の旻天-ビンテン-もツインテールロリだったけど、あの容姿にしてる理由を最後まで教えてくれなかった。

 

私が跳ばされると分かってれば教えてくれたかな?

 

「はは!アカシさんは豪胆ですな」「全くです」

 

恐らくもう会えないだろう、友人にして後輩な機族を思い出して少し感傷的な感じに成りつつ、いま同じ世界で生きてる目の前で緊張していた2人の表情は少し和らげる事はどうにか出来たみたいだ、流石に雰囲気は堅いままだけど。

 

まあ、これ以上は仕方ないか。

 

掛けられた期待に対して、私とこの私-亜科詩-の最大限の力で応えるだけだ。

 

しかし、アマテラスの減速率からして火星大気圏での減速を意図してるのかな?

 

どうにも今の薄い火星大気の状況を把握できてないっぽい。

 

そうなるとサーシャは、想定外に薄い火星大気により脱出ポッドで意図していた大気ブレーキが起こらなくて亡くなったと死亡の説明が付くと同時に、シェヘラザードのセンサーレンジないし、その対象物に制限が有る可能性が予想できる。

 

今も偽装の為に冥王星沖で比較想定演習の一種として行われてる、旧来の地球艦隊と冥王星ガミラスが戦った場合の演習までは必要なかったかも知れない。

『デブリに偽装した転送強化浮標は全て正常動作中、これで構成素粒子1個に至るまで回収できる筈にゃ』

 

『ソーニャちゃんから、高次知覚によるシェヘラザードで損傷が始まって脱出ポッドが射出される正確な時間と宙域座標の予知情報が来たにゃ。

これで未来は確定したから、センサー群と転送システムに対して光学によるパッシブな観測からフルスキャンへの移行と転送する時間と場所を設定したにゃ』

 

『船体回収を偽装する為の映像や質量、熱などのアクティブデコイの準備も全て終わったにゃ。現時点でソーニャちゃんの予知と使える演算力の全てを使って上げられるだけ精度は上げたにゃ。これを看破される様ならイスカンダルの技術レベルは私たちの想定を大きく上回るにゃ』

 

『ウズメの予想空域への誘導は完了にゃ。同時に彼らが失敗したら場合に備えて転送でサーシャを回収する準備もできたにゃ。イスカンダル人は思念体に近いと想定されるから、念の為に空間ごと転送するにゃ』

 

『ノー・ゴー判断の実施を完了。タスク、関連するシステム及び人員、全てオール・ゴーにゃ』

 

『カウントを始めるにゃ。カウント…スリー、トゥー、ワン、ナウ!』

 

カウントと同時に船倉の拡張空間にシェヘラザードの残骸を転送すると、完全な同時に時間停滞システムが作動し始めてこれ以上の破損拡大を阻止する。

 

後は、時間停滞を残骸の場所毎に切り替えて破損箇所を隔離し、最後にはその破壊を誘発してるだろうエンジンや伝導菅なりの高エネルギーな部分をこれまた切り替えて極小化する事で

破壊に向かうエネルギーを意図的に時間を掛けて拡散させて、シェヘラザードを可能な限り無事な形で残すのだ。

 

外界に思考を戻すと、並列思考化した私のカウントと同時に、指揮所のモニターでイスカンダル船が火星大気圏に突っ込んで爆散する様子が映し出された所だった。

 

「イスカンダル船、火星大気圏へと突入、爆発しました。その際に脱出ポッドらしき小型艇が射出された事を確認。救出に向かったウズメのシャトルからのトラクタービームにより空中で保護され、意識不明なれどバイタルは安定しており直ぐに目覚める模様。全て事前の想定通りに推移しました」

 

森雪のアナウンスを聞きつつ、私は爆発前からの光学的な情報と転送直前と転送時に行ったスキャン情報から、仮想的なシェヘラザードを作成してパズルの様に復元をすると共に回収した物品その物を解析する。

 

……これは、拾い物を調べた収穫とすれば中々かも知れないにゃ。

 

「アカシさん、どうでしたか?」

 

藤堂さんが質問して来るけど、これはニンマリ笑って答えても良い結果な筈だ。

 

「バッチリですにゃ。主な物だと、イスカンダル船のセンサーシステム、波動コアやエンジンの枢要な部分の一部とエンジンサブシステムの形を保った残骸の回収に成功。

更にイスカンダルのアンドロイドと予備コンピューターらしき物を、完全な形で手に入れましたにゃ。また、我々のベクトル機関に類似した物理法則干渉システムの残骸も入手しましたにゃ」

 

私は視線を向ける2人に対してサムズアップしつつ、簡潔に成果を教えた。

 

自壊した物を回収したにしては、これは及第点の成果だろう。

 

そして最後のベクトル機関と類似した装置は予想されていた物だ。

 

通常の宇宙空間で光速を超えるには、物理法則を書き換えるか、ビックバンクラスのエネルギーで空間を伸縮させるしか方法は無い。

 

少なくとも私が既知の理論で成立しえる通常宇宙で超光速航法を可能にする理屈だとそれしかない。

 

そして如何に波動エンジンだろうがビックバンのエネルギーには到底及ばないので、必然的に物理法則の改変により世界を誤魔化す方向という事になる。

 

「あと報告するなら、イスカンダルのテクノロジーも我々に理解できる範疇の物というレベルでしたにゃ。勿論、私達よりも進んだ技術も有りましたけど、劣る物も有って、全体的に現物が有れば原理の理解や複製が可能な範囲でしたにゃ」

 

それはおそらく技術的収斂による物だろう事から、少なくともその喪失を許容可能とするシェヘラザードに使われてる技術に限るならだけど、蛇よりも私たち銀連やアバロンと近いテクノロジーレベルという事が分かった。

 

時空間や重力に対する制御では、銀連が蛇と呼称する先史文明に及ばないのは確実だ。

 

勿論、エネルギーリソース技術という1点に於いては、私たちは愚か蛇すらも圧倒的に上回るだろう。

 

しかし、その波動エンジンという圧倒的なエネルギーリソースと、それを背景にする利用技術が存在したからか、それ以外の技術発展は少し疎かで、どうにもチグハグな進歩をしてる印象を受けた。

 

これは、圧倒的な波動エンジン技術ツリーとも言うべき物が存在したが故に、それで解決した方が早かったし、その方が効率的だったのが理由と推測できる。

 

エネルギー許容値こそ非常に高いが私たちと比べても稚拙な作りのベクトル機関や、波動防壁システムが存在するのに

銀連では携帯型の物が実用化されている電磁場や重力による防御シールド技術が、より大規模な船に存在しないという事はやはりそういう事だろう。

 

或いは、波動エネルギー関連技術に絶対の信頼を置いていたという可能性も有るけど。

 

まあ、何にせよ。

 

この収穫と、何よりサーシャの無事な生存を今は喜ぶべきだ。

 

「さて、隠蔽処置も完璧な筈にゃ。では異星からのお客様を迎えに行きましょうかにゃ」

 

「分かりました。全軍にイワト作戦の終了を通達。冥王星沖演習は予定通りに終了後、新世代兵器群と鹵獲ガミラス戦力による想定演習に移行する。それと会議室で事務方と詰めている大統領に作戦の成功と歓迎式典を予定通りに始められるとお伝えしろ」

 

回収したシェヘラザードの残骸を時間停滞フィールドを使った保全切り分け作業を始めながら、芹沢さんがが行う通達の言葉に続く様に私-亜科詩-をウズメとの邂逅地点へと進めた。

「ここは……」

 

目覚めると白い明かりの付いた天井が見えた。

 

私は確か、地球へと波動コアを届ける為に船の処分を行い、脱出艇に乗り、それから……。

 

「あ、起きましたか?古代、彼女が起きたと司令部に連絡してくれ。失礼しました。自分は地球連邦宇宙海軍所属の島大輔です。イスカンダルの方、お身体の調子はどうですか?」

 

私の言葉に反応して傍らから声が掛けられた。

 

そちらに視線を向けると穏和な表情と雰囲気をした青年がこちらを心配そうに見つめて居た。

 

「自分も島と同じく、地球連邦宇宙海軍所属の古代進であります。遥々地球まで来て頂いた事を歓迎いたします。島、あと5分以内に迎えが来るそうだ」

 

ついで、部屋の隅の操縦席らしき場所から声がして、そこに居た青年が立ち上がると振り返って私に自己紹介をしてくれた。

 

こちらの青年も穏和な雰囲気と表情をしている。

 

とても絶滅に瀕してるとは星の人間とは思えないのがどうにも気になったが、私も挨拶を返す。

 

「私はイスカンダルのサーシャ。地球の方々、初めまして。どうぞサーシャとお呼びください」

 

「はい、サーシャさん。予定ではあと5分以内、あー、1日が360度自転する地球で1.3度自転する時間と言えば分かりますか?で、地球からの迎えが来ます」

 

「はい、元より地球の時間を始めとした単位系は把握しています。それより、ユリーシャと連絡が取れないのは何故でしょうか?」

 

「それに関しての事情は我々は何も伺ってません。ただ、今から来る船には軍と政府の高官が乗ってる筈ですから、そちらの方なら知ってるかと」

 

「……そうですか、分かりました」

 

「サーシャさん、迎えが来ましたよ。しかし、いつ見てもデカい船だ」「ああ、全くだ」

 

【挿絵表示】

 

「あれが地球の船、ですか?」

 

船室に付いた窓から見えるその船の姿形は、私たちが把握している地球の船のそれとは明らかに異なる文明の物だった。

 

そして島さんから語られた言葉は、あまりにも強い力を持っている存在である事を意味した。

 

「あれは平行世界からこの太陽系に漂着した難破船である亜科詩です。彼女たちは恐らく平行世界の未来の人類文明に生み出された機械種族だそうで、

今は地球を助けてくれてます。彼女たちは凄いんですよ。何せ太陽系のガミラス軍を2隻の戦力で一掃してくれたんです」

 

「それは……」

 

余りにも強すぎる。

 

そう、言葉に出す前になんとか留まれた。

 

ガミラスにより絶滅に瀕した彼らの前でそれを口にすれば大きな不信感を抱かせてしまうだろう。

 

実際、彼らがその亜科詩を見る視線には、恩人に向ける様な信頼感や安心感、または羨望のような感情がある事を異星人である私にも分かった。

 

その亜科詩という船の構造から推進器にイスカンダルより高度な重力制御技術を用いてる事が見て取れる。

 

そんな文明に波動エンジンの技術が渡ればどうなるだろうか?

 

少なくとも更に大きな力に発展する事は間違いない。

 

今更ながら地球に波動コアを渡すべきでは無いのかも知れないという危惧がもたげてきたが、目覚めた時には既に波動コアは私の手を離れていた。

 

この船室に見当たらない事と恐らくこの船が単独船である事を考えれば、脱出艇と共に別の船室に保管されてるのだろう。

 

「あの、私の荷物を確かめた「3名が乗員船室に転送で来る」」ヴン

 

どうやら私の行動は遅かった様だ。

 

「サーシャ様、初めましてですにゃ。私は工作艦-亜科詩-にして、この世界の機族の女王でも有りますにゃ。

地球連邦政府の特使として、我々はサーシャ様をお迎えに上がりましたにゃ。地球連邦体制での初の星賓として歓迎しますにゃ」

 

頭部に地球人とは違う獣の耳を付けた少女が突如目の前に現れて自己紹介を始めたからだ。

 

柔らかな表情と声で歓迎を示してるが、明らかに私に対して警戒を向けている。

 

少し後ろに現れた2人の頭頂部に肌が見える男性と、島さん達と話をしてる髭が印象的な男性も同様で、時折こちらを注意深く探る様に見ていた。

 

その事から、彼女らはイスカンダルとガミラスの関係性を僅かでも知る人間だという事だろう。

 

それがイスカンダルとガミラスが双子星である事か、イスカンダルがガミラスの宗主国である事か迄は分からないが、不信感を抱かせるだけの根拠が有る筈だ。

 

それに先ほど見せた転送技術。

 

もしかしたら、私の乗ってきたシェヘラザードは、ほぼ完全な形で回収された可能性が有る。

 

記憶媒体の情報は全て消せても、物理的な物を破壊し尽くすのは難しい。

 

本来なら第4惑星の大気圏上層で破壊して、細分化と速度により意味の有る物は燃やし尽くす筈でしたが……。

 

動揺する思考を抑えつつ、アカシと名乗る人を模した機械の女王とそれ共に現れた2人の男性とどうにか挨拶と共に当たり障りのない言葉を少し交わす事が出来た。

 

「サーシャさん、そろそろ良いですかにゃ?地球連邦の大統領が亜科詩でお待ちですにゃ。ユリーシャ様の事は大統領を交えて、正式な場で説明したく有りますにゃ」

 

「……ええ、分かりました。行きましょう」「では4名転送」

 

どうやらこの地球の勢力圏内で私に打てる手は既になさそうだ。

 

そして恐らく、ガミラスと争うのを地球側から止めるのも難しいだろう。

 

そうなると、全ては私の言葉をガミラスが聞いてくれるか否かに掛かっている。

 

聞かない場合、争いが地球からの復讐戦へと変わり、それをイスカンダルが引き起こした事と成ってしまう。

 

私たちイスカンダルは、また過ちを繰り返してしまったのだろうか……。

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