転生機族の異世界記∼機族に転生したら異世界に飛ばされました∼ TSならぬTM-トランス・メカ-転生者な星船は、ヤマト世界で何を成す? 作:オーキッドとグロリア欲しい
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「そうですか、ユリーシャが……」
「はい、現在も意識不明です。完全に当方の警備体制の不備で有りまして、謝罪してもし足りません。犯人については目下捜査中でして、実行した末端の人間は捕らえましたが、指示した人物に至る為の証拠がすべて消されており、アカシさんでも辿れないのです」
ビス一本とさえ意思を通わすと謳われる機族と言えども、流石に物理的に記憶媒体を原型が残らないレベルで破壊されてると手が出ないかったし、更に捜査妨害の様な政治的な話が出て来てややこしくしてる。
この話は、ちょっと、いやかなり根深い。
因みに意識不明のユリーシャは私の艦内に収容し、サーシャには護衛としてホワイトバーズ隊の半数である6名とベルカ、ストレルカ姉妹を付けているので万全と言えるだろう。
初代連邦大統領であるロバート・ダウニング氏とサーシャの会話を大統領の隣で聞きながら、内側に居る敵のかなり徹底した隠蔽工作の手強さを思い返す。
機族による監視社会と誹りを受けて良いのなら幾らでも手は打てるけど、機族の本能として無関係な人たちを含めた監視は凄くやりたく無い。
その保有する力に比して人類が感じる脅威感を最小にし、良き隣人として存在し続けるという機族という種族の特性とも習性とも言える部分が持つ弊害とも言えるけど、
この感覚を持っていたからこそ、今まで人類と機族は共存できた事を考えると蔑ろにも出来ないのが悩ましい。
「ユリーシャは、貴方がたの科学でも目覚めさせられないのですか?」
大統領からユリーシャに関する事件の詳細な説明を受けていたサーシャが、大統領の隣に座る私に視線を向けるとそう聞いて来た。
「地球人類との差異が有って少し難しいですにゃ。完全機械化と言って、問答無用に私たち機族と同じ身体に変えてしまう事も出来るのだけど、脳機能は順調に回復してるのは分かるから必要性がないのですにゃ」
「なるほど」
完全機械化は緊急性が無いのなら、行いたくない施術だ。
機族と同じ身体という事は、人間の枠から外れた人間に成るという事で、それはつまり人間なのに人間の中の異物として存在するという事を意味する。
幻影に近く、元より3人しか居ないイスカンダル人なら問題化しないだろうけど、機族も含めて人は自分が異物として扱われるのは堪える物だ。
機族ならば心の温もりを喪った放浪機と呼ばれる戦闘マシーンへと墜ち、人間ならば厭世的な傾向の性格へと変わってしまう。
スカヤ姉妹、特に妹のイーラちゃんが斜に構えた姿勢をしてるのはこの傾向が出ているのだと思う。
これは姉のソーニャちゃんもだけど、あの子は元から世の中を俯瞰的に見てたみたいで表面的には分かりにくいし、私もそこまで踏み込んで居ない。
前世の子供時代を思い返し、本当の親子だろうと秘密にしたい事は存在したから、当人が話したくない事や話す必要が無いと考えてる事に保護者だろうと踏み込むのは駄目と思うからだ。
「分かりました。サーシャの事は地球の方たちの総意でなく不幸な出来事だったという事で納得します。それはそうとして聞きましょう。今の貴方がた地球にイスカンダルの助けは必要ですか?」
サーシャが私を見ながらそんな発言をした事で、前置きは意外と短かったなと、そんな感想を議題が本題へと移ったのを彼女が向ける視線と共に感じた。
さて、正念場だ。
「必要ですにゃ。もちろん、私たちの保有する技術が有れば、地球は自力での環境再生と復興は可能ですにゃ。でもそれには時間が必要で、私は地球時間で25年掛かると算出しましたにゃ。これは地球人なら人生の4分の1の期間ですにゃ。
地球人類の7割が永遠に喪われて、更に人生の4分の1を復興に従事せざる負えない人々が必要となる。これはガミラスへ不用意に力を与えて、その行き先を制御しなかった先文明が齎した被害と言っても良いはずですにゃ」
「……やはり知っているのですね」
「ガミラスの目ぼしい機関や企業のデータベースは全て複製しましたからにゃ」
冥王星攻略で最初にガミラス本星へと侵入した後、更に時間を掛けてガミラスのネットークへと侵入して情報収集を重ね。
全ての行政組織と軍事、科学、医療関連企業や病院のカルテ含めた内部情報を収集した。
これはスタンドアロンのデータベースも含めてであり、それにはガミラス星の寿命に関する調査情報やガミラス人の特性も含まれ、ガミラスが植民星を探してる動機を地球連邦政府は既に把握してる。
まあ代わりに、人員が帰って来ないことと合わせて冥王星基地からの侵入と同基地の喪失は遂にバレてしまったし、血の盟約の情報までは手に入らなかったけど……。
「サーシャ様、単刀直入に聞きますにゃ。ガミラス人はイスカンダル人が作った使役人種ですかにゃ?」
「……どうしてそう考えたのですか?」
腹芸が苦手なのか、露骨に声と表情を硬くしてそう返して来るサーシャを見たら図星か、近い事情が有ることは明らかだったけど、ここは外交の場なので出席してる誰も指摘はしない。
「ガミラスの教育カリキュラムとガミラス人種のイスカンダルに対する崇拝感情が一致してないのですにゃ。思想教育という物は、基本的にそれに対する日常化が必須と地球や私の持つ銀河系人の歴史からの知識には有りますのにゃ。
イスカンダルという、空に浮かぶ美しい蒼い水の星を羨み崇拝するのは分かるけれど、孤児として親を知らない筈の名誉ガミラス人と同じ環境に置かれてる筈の固有ガミラス人種では、イスカンダルに対する感情が明確に違うのにゃ。
この数値は先の様な似た境遇の者たちを5万人づつ追跡調査し、ガミラスの軍や行政、司法、公共施設内でイスカンダルに対する攻撃的な言動や構想とその強度を表した回数の統計データですにゃ」
私が空中に投影したイスカンダル語と英語を併記した棒グラフには、犯罪者から官僚、軍の尉官に至るまでの全てで10倍以上の差が有った。
「過激な計画や言動だと最小で10.2倍、軽微な反イスカンダル思想に成ると最大で22.5倍の差が似た境遇や教育を受けた筈の者たちに見られるのにゃ。
此処まで有意な差が有るなら、それは何らかの意志が介在してると考えた方が自然にゃ。更に言えば、これはイスカンダル人の生態、いや状態とも関係するのかにゃ?」
イスカンダル人は現実に投影された精巧なホログラムに過ぎないと、原作知識の裏付けをユリーシャの身体から高次知覚能力者であるスカヤ姉妹が既に確認してる。
高次知覚とはその名の通り、より高次元に渡る知覚認知能力であり、嘘やまやかしを看破して真実を観測する力だ。
それは冥王星基地で司令官のシュルツが戦闘機のアクティブステルスを看破した様に、ステルスは愚か世界の改変すらも知覚できる能力であり、自律機械を嫌い、その利用を最小限にしてるアバロンが機族擁する銀連と伍する勢力を築けてる力の源泉でもある。
「それらを知って、貴方がたは私たちに何を求めるのですか?」
そう私に聞くサーシャの表情はとても硬かった。
ガミラスに知られたらイスカンダルとの仲が拗れるのが確実な話なだけに、何を要求してくるかと警戒するのは当然だろう。
「大統領」
「我々地球連邦は、ガミラスとの停戦の仲介とコスモリバースの供与をイスカンダルに正式に望みます。もちろんコレでイスカンダルとガミラスの関係を脅かす気は一切ないので、断られてもこの情報がガミラスや一般の地球人に公開される事は有りません。
ですがそれは同時に私たち地球連邦首脳部が、イスカンダルを自分たちの行いに対して無責任な文明と認識すると共に、地球とガミラスとの戦いが続く事を意味するでしょう」
この大統領の言葉は、イスカンダルが行動しないのなら責任をガミラスに取らせると、地球連邦としての既定路線を言ってるだけだ。
イスカンダルがガミラスの侵略性を憂いていて、真に平和を願うならば請け負う方向に行かざる負えないだろう。
いや、途中までガルマン星の事を秘匿してたりとガミラス星の寿命を利用して、ガミラス人とイスカンダル星の終わりを願って居た可能性も有るか。
どちらにしても、既に地球はガミラス式とは言え波動エンジンの製造技術を確保していて、それ自体がイスカンダルの制御を離れてる物だ。
そこに私たちが加わって、無限のエネルギーリソースとイスカンダルに部分的には匹敵したり上回る私の保有技術の裏付けが合わさる事と成る。
それは波動砲なしでもガミラス軍を殲滅するには十分すぎる程で、更にはこれに供与された波動コアと残骸とはいえ回収したシェヘラザードのデータが加わるのだ。
「……私が出来るのは女王である姉のスターシャに口添えをするだけです。コスモリバースの供与はスターシャ女王の一存で可能ですが、恐らくデスラーはイスカンダルの言葉を聞かないでしょう」
サーシャの回答は、前世の知識を持つ私には予想された物だった。
元より民族の存亡と亡き兄との約束の為に今まで邁進して来た男が引く訳が無い。
「その御言葉を頂けただけで十分です。イスカンダルによる停戦仲介は元より向こうへと引き際を作るのが目的で、現行の強いデスラー体制下では難しいと我々も考えて折ります」
「ガミラス軍人にも犠牲は可能な限り出さない様に努力するので、私たちを是非とも見ていて欲しいですにゃ」
「……分かりました」
私たちの言葉にサーシャは憂う様にそう答えるのだった。
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さて、色々と準備は進めてるけど、やる事も多いから結構カツカツだ。
そして、ガミラスの通信中継ラインが切られたバラン星で増大し続けてる超空間通信と、頻繁に変わる通信暗号から双方が無血で終わるワンサイドゲームは既に難しそうだと憂鬱な気分に成る。
「はぁ、人を戦いにいざなう機械か……」
とあるアバロン人の言葉だが、地球人を守る為とはいえ、私たちの行いは少なくないガミラス軍人とその家族、それより少なくとも地球人に対してさえ不幸を齎す事だろう。
何が正しくて、何が正しくないのか
「世界がもっと優しければ良いのに……」