転生機族の異世界記∼機族に転生したら異世界に飛ばされました∼ TSならぬTM-トランス・メカ-転生者な星船は、ヤマト世界で何を成す? 作:オーキッドとグロリア欲しい
また、誤字報告もありがとうございます。
ローレル演習、地球連邦の象徴である月桂樹の名を冠したその演習は、地球連邦の正式発足と機族の加入、ガミラス太陽系勢力の掃討を記念して冥王星とその近海で実施されていた。
全3日の期間の内、前段演習として初日と2日目に実施された演習は、旧来戦力だとしても効果的な手段が分かっていた場合なら、ガミラスに対してどの程度有効な損害を与えられたかという。
機族加入以前に置ける対ガミラス戦の総括と情報の重要性を確認する事を目的とされた演習であり、地球側艦隊を操る、特に第二次火星沖海戦以後に入隊した新人の防人たちに先人たちが味わった無力感を追体験させた。
それでも全く無力だった訳ではなく、カ2号作戦の様にガミラスに損害を与えられたケースも頻出した事により、開戦当初からの血で書き連ねられたデータによる積み重ねが無駄では無い事が確かめられた。
そして3日目の後段演習では、機族の加入により加入・供与された新世代戦力のお披露目の場として、鹵獲したガミラス艦隊や航空機とそのダミーを相手にした模擬戦やガミラス戦艦を実艦標的にした射撃演習が行われていた。
「藪、釜の様子はどうだ?」
床に存在するサブシステム用のアクセスハッチから出て来た藪に対して、短い付き合いになるが新しく任された機関の調子を聞く。
「おやっさん、コイツら怖いぐらいに調子が良いよ。波動エンジンの方はちょっとクセが有るけど、それでもキリシマの融合炉より分かりやすいし、反物質動力炉の方は凄く素直というか、徹底的に枯れた技術の物を簡素化したみたいな感じだ」
ふむ。藪もワシと同じ印象を受けたか、ガミラス式波動エンジンは荒削りだが、反物質炉のコイツはとんでも無くこなれてると感じる。
微に入り細を穿つ様な用心深さで設計され作られてる印象が有り、それは少し偏執的な物を感じる位だ。
「そうか、何せ反物質炉の原設計は150年以上前からの物らしいからな。提供してくれた亜科詩からしてもこなれてるんだろう。手間が掛からんというのも寂しい物だが、そもそも人が足りんからこれも流れなんだろうな」
「無人艦を含めてとはいえ、2万隻の艦隊整備計画だからね。隔世の感ってのはこう言う事なんだろうなぁ」
「機族が来るまでは負け戦だったからな。ワシは孫たちが無事に生き残れる様で安心したよ」
「まあそれもコイツが仕様書通りの性能を出せるなら、だけどね」
「藪……、まあそれもこの演習で直ぐに分かるさ」
こいつの悲観的な所がマシに成ればとも思うが、これも藪の用心深さに繋がっていると思えば何とも言えんな。
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「目標群Aの艦隊光速の約10%で更に近付く、距離6000万キロ、目標群B、C、Dの艦隊は目標群Aを先頭にした雁行隊形で後方200づつ距離を保ち追従してる模様。
更に地球天頂方向、ワープ阻害圏外縁、距離1億1000に1000隻規模のワープアウトと思われる反応を検知、地球天底方向距離1億1000にも同規模のワープアウト反応を2つ検知!この3つは地球へのコリジョンコースを取ってます!現在加速中!」
こっちは200隻で数の差は実に30対1か、全く、エキシビションじゃ無かったのか?
此処まで確認された敵艦隊の総数は6000隻、演習かつ大軍に策なしとは言っても、此処まで振り切れた陽動と同時波状攻撃で来るとは……。
こんな艦隊を消耗品と見てる様な運用はゾッとするが、相手側からすると可能な手段だ。
「天頂の艦隊目標群をE、天底の2つを目標群F、目標群Gと以後呼称する。索敵、目標群E、F、Gの地球攻撃可能圏内への到達予想時間を算出しろ」
「現在の加速力を維持した場合、最短で42分後です」
時間的な余裕はまだあるか。
この場合だと速度が乗っている陽動艦隊の方が脅威だろう。
しかし、センサーレンジが劇的に伸びて今までとは勝手が全く違うな。
取捨選択も指揮官の仕事とはいえ、情報量が桁違いに増えてその仕事自体が増えたから大変だ。
これから新編成された艦隊が続々と増えるとはいえ、今地球に存在するのは俺が任された第7艦隊だけだから、この艦隊だけで余裕を持って対処して見せなければ成らない。
そう、アカシさんと土方さんと芹沢局長に、この第7艦隊の指揮官へと就任する時に聞かされたこの演習の目的を思い出す。
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「艦隊対処演習では、地球の方たちを安心させる為に山南さんには圧倒的な勝利を演出して欲しいのですにゃ」
ちゃぶ台の向こうで姿勢良く正座したアカシさんが、顔の横で人差し指をピンと立ててそう言った。
「もちろん、此方-ガミラス-側が採用する戦法のシナリオは渡さんがな」
その隣で土方さんが腕を組んでそう続けるが、明らかに後輩をしごく時と同じで楽しそうな目をしていた。
「いや、土方さん。広報の為のエキシビション的な演習なんだから良いでしょうに」
「山南くん、そうも言ってられんかも知れんのだ。ガミラスから取得した情報を分析した所、ガミラスに比肩し得る可能性がある勢力として、ガトランティスという勢力が浮上した。これがどうも、天の川銀河に勢力を広げようとしてるのだ」
土方さんから教育を受けた過去の経験から無駄と知りつつ翻意を求めた所で、芹沢局長が事情の説明をしてくれた。
「もちろん、地球軌道と月面の惑星防衛システムでバーンと派手に殲滅する演出も出来る事は出来ますにゃ」
「しかしそれは、地球防衛最後の手段だ。聡い人間には後が無かったと気取られる可能性がある」
「では、艦隊が揃うまで演習を延期してはどうなんです?」
「その場合、ヤマト艦隊のイスカンダル行きで不安が表出する可能性が有りますのにゃ。派遣艦隊はヤマト以外はほぼ無人艦とは言え、隻数が当初より増えましたにゃ。これに関して今でも各所でちょっと不満が出てますにゃ」
「沖田が地球の英雄という事も有るだろうが、機族が居るとは言え、今の地球にイスカンダルに行けるとされる戦力を派遣する余裕が有るのかと言われたら。実体を知らないのならば、無いと判断するのが自然だ」
「芹沢さんが言う様に、私が冥王星を制圧した手段がハッキングでの制圧という、分かりにくい手段というのが私たちが頼りなく見られてしまった原因ですにゃ。
なので山南さんには申し訳ないのですけど、私たちが出来なかった地球の方たちに安心感を与える事と、実戦的な艦隊演習の両立をお願いしたいのですにゃ。
私-亜科詩-は、ちょっと工作艦としての仕事が多くて動かせないですしにゃ。
お詫びと言っては何ですけど、ヤマトがコスモリバースを持って帰って来たら、山南さんが乗るその時点での集大成的な次期地球艦隊の旗艦クラス戦艦(山南スペシャル)を作りますにゃ」
「止めてください!?」
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ははっ、山南スペシャルか、あれは流石に冗談だろうがアカシさんは真剣な表情をしていたのが少し気になった。
まさかな……。
「初撃として長距離転送による転送雷撃と戦闘機による同時攻撃を実施したい。索敵、敵の転送妨害状況はどうか?」
取り敢えず思考を今に戻して、結局は一つ一つ対処して行くしか無いと決意した。
そして、銀連でも地球でも変わらないオーソドックスな同時攻撃を行う事を決め、その為の指示を出す。
「全ての敵艦隊、球状に転送妨害を展開中。範囲はゼルグート級と巨大な盾を懸架してるクリピテラ級を中心とした6万3000キロメートル」
戦闘機が装備する大型フェイザーなら射程内か、なるべくならアクティブステルスを利用した攻撃は隠しておきたい所だから、最初は冥王星を利用するか。
「目標群Aが冥王星に近付く距離5600で妨害範囲外の全方位からの長距離転送雷撃を実施する。同時に戦闘機隊を冥王星の影に配置しての狙撃と位相差爆雷搭載機の転送による同時攻撃、
優先して妨害艦を排除し、転送雷撃による殲滅を図る。制御体-レギュレータ-、最適時間と転送配置を算出し、実行せよ」
『了解。……狙撃戦闘機隊、配置完了。同時攻撃実施30秒前……10秒前…3、2、1実行』
さて、どうなる?
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「転送されて直ぐに攻撃とは、全く忙しないねぇ」
『そうですかね?こんな物な気がしますけど。それに襲撃を掛ける私らの隊長や加藤隊長たちの方がシビアですし』
「確かにそうだけどな」
俺の機体の側で冥王星を背景にコチラを向いて話をする頭から金属の羽を生やした見た目は生身の女の子、OAV-02、山口衛-やまぐち・えい-は、この編隊に置いて自律AIでも難しい長距離狙撃を実現する為の射撃統制を行う内の1機だ。
以前なら、演算補助機としてサーブボットを引き連れる必要が有って、転送妨害環境下での展開力や機動力に制限が掛かったが、
俺の乗る機体の様に有人機にそれを載せる事で機動性と精密な射撃の両立と、転送妨害環境下での大型対艦砲の外部化による取り回し向上が出来た。
『篠原さんも衛-えい-も、演習とはいえ私語は良くないですよ』
「ははっ、京-けい-ちゃんは相変わらず真面目だな。でも言う通りそろそろ仕事をする時間だ」
『はあ、……こちら狙撃隊統制機OAV-01。冥王星からの重力と大気による影響を補正完了。各機連動、目標割り振り、狙撃準備よし。ガミラス艦隊が地平線から出るまで、カウント3で行きます。その後は3秒間だけ各個に自由射撃です』
思考リンクを介した視界には、冥王星とその向こう側に存在する本来は見えない筈のガミラス艦隊とその構成艦が透過されて映る。
後は、照準を合わせてタイミングを見て、思考操作でコンマの誤差もブレも無いトリガーを引くだけだ。
『3、2、1、発射』
統制機である戦略型機族戦闘機の高山京-たかやま・けい-のその言葉と共に、狙撃隊を構成するコスモファルコン2型から放たれた60条のフェイザーの軌跡は、
冥王星の地表を掠めてその薄い大気を突破し、ガミラス艦隊各艦へと突き刺さり、そして向こう側へと突き抜けた。
それから3秒間、目ぼしい目標に対してトリガーを引く。
『射撃終了。効果有り、敵艦隊前衛の3割、左翼の3割の撃沈ないしは大破を確認』
『篠原さんお見事です。1射目は3隻抜きですよ』
「いや、お前が機体制御と位置取りしてくれたお陰だ」
『そうですか?ありがとうございます』
「所でグロリア、隊長達の方はどうなってる?」
『既に狙撃方向から突入して、あ、今終わった所です。目標群Aの転送妨害が全て消失しました』
グロリアのその言葉の数秒後、転送雷撃による攻撃で、敵A艦隊は1隻残さず撃沈された。
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「どうやらシノたちは上手くやったみたいだな」
転送された正面には既に艦隊に残骸化した穴が生まれていた。
其処で生き残ってる敵艦も多いが、未だに混乱から脱してない様で反撃も散発的だ。
『目標発見、盾を懸架したクリピテラ級2隻』
「よし、行くぞオーキッド」
『隊長、お先に。ニケ、やりなさい』『了解-ラジャ-!』
「あっ山本!目の良さじゃ山本に勝てねぇか」
『ですわね。初撃と狙撃による残骸でセンサーの識別性能が下がってますわ。最後に確認された妨害艦の位置が此処、狙撃が当たったのがこれですわ』
本格化した高次知覚-パーセプション-の訓練により、最近はセンサーを上回る目の良さを身に着けた山本が先を越す。
俺たちは有りもので勝負するしか無いから、地道に行くしかねぇ。
「よし!この2隻に向かう。シールド最大にして突っ切るぞ」
『了解。敵艦の射線とそのベクトルを表示。ミサイルの対処はお任せ下さい』
そうして俺らは転送妨害を行っていた敵艦を全て片付けて離脱。
そして……。
「……問答無用ってのは、正にこの事だな」
離脱した直ぐ後に艦隊による転送雷撃が再開し、数秒と置かずにまだ600隻以上が無事だったガミラス艦隊A群は全て残骸へと変えられた。
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「目標群Aの全滅を確認。目標群B、C、Dは艦隊密度を上げてます!目標群E、F、Gから何かの容器が放出されました。総数約12億!スキャンの結果出ました!生物兵器です!!
目標群E、F、G艦隊隊形を変更、生物兵器カプセル群を取り囲んでます。センサーに影が出来ました!」
土方さん、其処までやりますか……。
仕方ない。
こうなると順番に対処していたら、殲滅した艦隊と共に生物兵器のカプセルが地球に降り注ぐ事になる。
それは明らかに不味い。
多少リスクが有る戦法だとしても、無人艦なら無理が効く、か?
「艦艇による転送襲撃及び転送雷撃戦を行う。全ての敵艦隊正面へと転送強化浮標、制御体を下ろした限定AI動作の艦を転送して主砲フェイザー、100センチ電磁砲含めた全火力と転送雷撃により敵の前衛集団を殲滅。同時に全戦闘機隊で同時転送襲撃を掛ける!」
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「山南さん、お見事ですにゃ。土方さんのシナリオを知った時は、地球の7000万キロ以遠で全て撃沈して、損害は有人戦闘機6機の小破判定と限定AI艦4隻の中破判定で済ませるとは思いませんでしたにゃ」
これは本当に驚いた。
私の予想だと、もっと損害が出て、もっと地球近傍に踏み込まれると考えてたからだ。
特に敵1個艦隊に対して、20隻からなる複数艦の転送強襲で前衛を崩して其処に戦闘機隊を送り込む方法、幾ら無人艦かつ性能差が有るとはいえ思い付いても怖い手だ。
「無人艦の場合、多少壊しても良いと予め言われてましたからね。転送強化浮標を併用すれば、最悪でも中破以上はなら無いと保証されてましたし」
「まあ、制御体を下ろして限定AI運用にした無人艦なら、最悪の場合でも換えは効きますからにゃ」
それでも、史実の未来で起きた白色彗星帝国戦の様な消耗戦は流石に勘弁して欲しいけど。
しかし、強襲斬り込みとでも言うべき運用思想、これは史実のアンドロメダ派生のアマテラスと似てる。
こういう使い方を考えた艦が有った方がいいのかも知れない。