四大企業 アトラース   作:スキル素材年中枯渇ニキ

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blablalinkで活動報告始めてみました。生存報告とかします。
https://www.blablalink.com/user?openid=MjkwODAtMTE2NzE4NTk0Mjk0Mzc0NDEyNTI=


9:エッホエッホ 元軍人のテロリストを説得してこなくちゃ エッホエッホ

 エリシオン・ハーパーと交わしたあの握手から数日後、私は自分のラボにて研究に勤しむ。

 

 その研究内容は多岐にわたる。ニケの研究がメインなのは確かにそうだが、私の目標を考えれば決してニケの研究ばかりという訳にもいかない。

 

 ……まぁ今やってるのはそのニケの研究なのだが。

 

「軍事利用という事ならまずコストを考えなければならない……戦いは数というド〇ルのセリフは全く的を得ている……!」

 

 ニケのボディの設計図を紙に殴り書きしていた。

 

 長くニケの研究をしていて分かったが、三大企業が作る量産型の設計にはまだ改良の余地があると私の頭は判断していた。方向性が異質なテトラ社の設計は兎も角、明確に軍事利用を目指すエリシオン、ミシリス製はコスト、質の面で今だに問題を抱えているように見えるのだった。

 

 そこで私は、将来を見越して研究を行うこととした。現状ではぼくのかんがえたさいきょうのにけでしかないが、今出来ることは何でもやっておきたい。

 

「出来たぞ……! ソルジャーE.G.をベースになるべく性能を落とさずに設計を簡略化して工程を少なくした! 更に余剰分のガッデシアムを削る事で使用量も短縮。元のモデルと比較して0.8倍にまでコストカット――

 

――ウチでやる意味ないじゃろ!!!!」

 

 設計図を書き終わる間近でダメだと判断した私は設計図をビリビリに破いた。

 

「ラプチャー侵攻前とか、せめてアークであれば光ったかもしれんが……人的資源がアークの10分の1のアウターリムではコストの軽さが逆に持て余す……」

 

 両手で頭を抱える私の傍を、ヒラヒラと舞う破れた設計図。

 

 だがそれでもめげなかった私は、汗を流しながらもまた新しい紙に設計図を書いていく。

 

「コストを度外視してでも優秀な性能にするのであれば…………

 

……出来たぞ! プロダクト12をベースに、ボディの駆動系を最適化! 強化外骨格の取り付け、コアのエネルギー増幅補助装置、これでニケの出力を大きく向上! 武器も相応の物があれば、単騎でタイラント級相手にも殴り合える――

 

――コスト度外視にも限度があるんじゃ!!」

 

 紙を破くのはこれで何度目になるか分からない。ただ上手くいかない怒りを当たり散らすのに、目の前の設計図に及ぶのは当然だった。

 

「100人充足させるだけでも金が消し飛ぶ……正直タイラント級と同レベル程度じゃ割に合わない……」

 

 私はまた新しい紙を用意する。

 

「最低限のコスト、それでいて最高のコストパフォーマンスを発揮するのであれば…………

 

出来たぞ! I-DOLL・オーシャンをベースに更に駆動系を再設計! 高速機動ユニットを装備させて電撃的軍事行動が可能に――

 

――似たようなのが出てきた!!」

 

 またさっきと同じように設計図をビリビリに破く。

 

「コレ加工に特殊な工程を必要とするから結局コストは改善されてない……それでやる事が紅蓮の元いたチームのほぼ二番煎じ……」

 

 また新しい紙(ry)

 

「一旦ニケの設計から離れるか……まだまだ考えなければならない事は山ほどある。例えば……人類の生活圏。海上にはラプチャーが出現しにくいのを考えると…………

 

出来たぞ! ガル◯ンの学園艦から着想を得た全長20キロメートルに及ぶ巨大な船! 船内に発電機を備えて電力を自給自足、艦上に農場や牧場を備えて食糧を確保、人類に必要な設備を全て備えた人類活動艦! これでいつアークが滅んでも――

 

――いくらなんでも気が早いんじゃ莫迦ッ!!!」

 

 また設計図を破(ry)

 

「いくら安全でもお金がかかりすぎるんじゃ……艦内じゃどうしても賄えない資源もあるし……」

 

 こうして何度も紙を破く事態に流石に今日はここまでにするかと頭が判断した所で、丁度ラボの扉がトントンと鳴る。

 

「アドルフ、そろそろ予定の時間よ」

 

 どうも深く研究に没頭していたらしい。リーゼロッテに言われるまで、エリシオン・ハーパーと大事な話し合いがあったにも関わらず頭から離れかけていた。

 

「すみません、すぐに行きます」

 

「慌てなくていいわ。今から行けば十分間に合うから」

 

 その点リーゼロッテは私含む全員の中で一番のしっかり者と言えた。頭が良く、何でも卒無くこなす上、今いる中で唯一の()()()だった彼女は能力的には最も信頼のできる人間だった。

 

 彼女がニケになる前だった頃、元歌姫という肩書で人間オークションに売りに出されていた時は硫酸を掛けられたのか顔が焼け爛れ、容姿が些か女性には見え辛かった。買い手がつかない所を私がはした金で買い取ったが、結果的に海老で鯛を釣る幸運に恵まれた。

 

 そんな彼女を護衛に連れて家を出た。

 

 ……後でエリシオン・ハーパーに聞かされたが、この件をきっかけにダークヴェール、マセガキのブス専説なる噂が囁かれていたらしい。解せぬ。

 

 

 

 


 

 

 

 

「――では、これが現状お互いが出来る協力関係という事でいいですね?」

 

「ええ。私達の方でももう少し出せればよかったんだけれど……」

 

「いえ、十分です。何事も、急いては事を仕損じます」

 

 手を取り合うと決めたあの日から、定期的にエリシオン・ハーパーとコンタクトを取っていた。

 

 今日話し合ったのは、これから計画される地下農場の拡張。エリシオン・ハーパー側は人手と土地の提供、私は発電機、温度調整装置、野菜の種、ラプチャーコア等の物資の提供という事で話が付いた。

 

 今日護衛として付いてきているリーゼロッテも、地下農場という秘密について本格的にエンターヘヴンと共有していく点に関しては、利益の独占が出来なくなるという懸念を指摘こそすれど、明確に反対の立場を取っていたわけではなかった。リーゼロッテに限った話ではない。皆今のアウターリムの現状に思う所がない訳ではない。

 

 それでも私の説得を無しには皆から食い下がられただろうが……

 

「さて、それでは次の話に移りましょうか。E・Hさん――

 

――確か、出来るだけこちら側に引き込みたい人材がいるという話でしたね」

 

「ええ。当人の仕事場もあるし、そこに付くまで歩きながら話しましょうか」

 

 E・Hに案内されたエンターヘヴンのアジト。私はリーゼロッテを共にそこへ赴いた。

 

「……アドルフ、何も相手のアジトに足を運ぶ必要は……

 

「E・Hは、罠の可能性を恐れず私達のアジトに踏み込んだんです。私も道理は通すべきでしょう」

 

 リーゼロッテは些か不満げだったが、私はE・Hに付いていく。

 

 辺りを見渡せば、銃や爆弾の手入れをしている者、安酒で鬱憤を晴らしている者、賭け事に熱中している者、その全員がこちらに多かれ少なかれ注意を向けていた。

 

 どうやって隊長に取り入ったのかは分からないが、俺の目が黒い内に妙な事をしやがったらお前の命はないぞ。そう視線で訴えかけている気がした。少なくとも歓迎されている雰囲気ではない。

 

「名前はギュンター」

 

 そんな状況を知ってか知らずか、エリシオン・ハーパーは話を進めた。

 

「年齢は71歳。男。エンターヘヴン内ではテロの作戦立案を担当している参謀よ」

 

「71……高齢ですね」

 

「元々、彼はアークで指揮官として働いていたの。最終階級は中佐。被害なしでロード級やタイラント級を討伐した実績が何度もあって、副司令官入りは時間の問題と考えられていた程に優秀な指揮官だった。けど、20年ぐらい前に、アウターリムに拠点を置くテロリストのテロを誘致したとして、認識チップを剝奪されてアウターリムに追放されたわ」

 

「テロを誘致って……何故そんな事を」

 

「いや、本人は冤罪を主張してるわ。そして、多分その通りだと思う。……彼がアークにいた頃、ニケに人権を与えるべきだっていう危険思想――ああ、ごめんなさい。アークにとっての、ね」

 

 危険思想という言葉が出た辺りで、ほんの少しだけだが不機嫌そうに顔をしかめたリーゼロッテを見てE・Hはすぐに訂正した。

 

 エリシオン・ハーパーの謝罪に、「いや、気にしないで。それが常識っていう事は分かってるから……」とリーゼロッテが返答する。

 

「ありがとう。話を戻すわね。ギュンターのその、そういう思想が中央政府に危険視された結果、テロを誘致……に見せかけて秘密裏に排除した……っていうのが私の見解よ。些か陰謀論じみているとは思うけれどね」

 

 陰謀論……とは言えありそうな話だな……。中央政府の暴挙は原作で散々見てきたし、あの組織は最終的な利益よりも、最短で確実な方法を優先して採りたがる。あの柔軟性の欠片もない連中が、有能というだけの指揮官の意見一つで思想を変える事は絶対にない。

 

 ……ああ、そうか。私をここに呼んだ理由がそれか。

 

「成程……察するにそのギュンターという人は、中央政府に対して深い憎悪を抱いている。だから私にとって本当に有益な人材か、E・Hさんだけでは判断が難しい……そういう事ですね?」

 

「ええ。貴方の目標の事を考えると、度が過ぎる人材を雇う訳にはいかないでしょう?」

 

 確かに。そのギュンターという人が元指揮官という事は、雇うなら、遠い目で見れば、軍を指揮させる事になるだろう。裁量権も大きなものになる。だが恨みで部隊を好き勝手に動かされてはたまったものではない。

 

 それに、アウターリムで企業を立ち上げる話もアークにあんまり知られたくないし、ましてやそこからニケを作ってるという手掛かりになってしまうかもしれない。派手に動かれたら、とても困る。

 

「――ここよ。……ギュンター! 入るわ」

 

 エリシオン・ハーパーが扉を開けた先には……罅割れたボールペンを片手に事務作業をしている老人がいた。

 

 71歳と言われて納得の皴の多さ。だがひ弱な印象はない。殴り掛かれば逆に擦りつぶされてしまいそうな程の力強い筋肉が、()()()()()()越しに分かる。

 

 そのギュンターがこちらを一瞥する。エリシオン・ハーパー曰く、話は聞いているらしいが……対して興味もなさそうにしていた。

 

「この子供がそうか?」

 

「ええ。ダークヴェール改め、アドルフよ。私達の同志になった訳ではないけれど、部分的に協力が貰える事になったわ」

 

「……アドルフです。お互い思想は違えど、協力出来る所は協力していきたいと考えております」

 

「ふむ……」

 

 ギュンターの視線が私から、護衛のリーゼロッテに向けられる。

 

「適合者か」

 

 当てられた。偶然だろうか? 確かにリーゼロッテは他の量産型の容姿とはどれも似通っていない。だがそんな事はハンナにも、レイチェルにもゲルトルートにも言える事だ。多かれ少なかれ、自分なりに容姿を自由に変えさせている。見分けがつかなくて困るからだ。

 

「……合点が行った。お前は……『ここ』で作っていたのか」

 

 その言葉を聞いた瞬間、瞼が疲れるほどに上下に開く。リーゼロッテも私と同じリアクションをした上にすぐさま手が護身用の拳銃に触れる。

 

 思考する事数秒、私はエリシオン・ハーパーに視線を移す。

 

「……私は何も言ってないわ」

 

「そこまで難しい推理ではない。絶対にありえない可能性を排除していく。それを何度も行い、最後に残った可能性が真実だ。それがたとえ、どれだけ度し難い物でもな」

 

 ここまで推理で当てられた……? ほんの少し頭痛がしてきた。アウターリムでニケなんて作れるはずがないというバイアスを当てにしていた私にとって大きなショックだった。

 

「安心しろ。言いふらしたりはせん。寧ろ、こんな事がバレたらアウターリムが混乱する」

 

 ギュンターはそう言うが、本当に安心していいのか分かったものではない。アウターリムの混乱を懸念しているようだが、その気になれば私にとっての弱みを握る形になる。

 

「それでE・H、ワシの前にそのダークヴェールを連れてきて何がしたい? ……ワシに何をさせたいのだ?」

 

「……もう隠しても意味がないから直接言うけれど、今アドルフは16人ニケを作ってる。そしてこれからも作り続けるわ。貴方には、アドルフの作るニケに軍事訓練、そして彼女達の地上での指揮、言ってしまえば、彼女達の指揮官になって欲しいの」

 

「ほう……指揮官か。ニケの指揮など、もう20年もやってないぞ。こんな老い耄れが指揮官業とは笑えるな」

 

「それでも、貴方にしかできないわ。今までやっていた仕事は私が代わりに引き継ぐから、貴方は――」

 

「断る」

 

「……理由を言ってもらっていいかしら」

 

「ただ単に気が進まんだけだ。お前はこの子供にどのような可能性を感じたのかは知らんが、自分が利用されているだけの可能性を考えなかったのか?」

 

「……確かにその可能性は否定できない。それでも、私は夢を目指したいわ。アウターリムにも、光はある。希望がある。そう感じさせてくれたの」

 

「成程な……クロウがバカという訳だ」

 

 ギュンターの視線が、エリシオン・ハーパーから私に移る。

 

「それで、肝心のお前から何か話がなければ、この話は私が拒否したという事で終わりだが、何かあるか?」

 

 この話はエリシオン・ハーパーから持ち込まれて、私はその話が自分にとって有益か判断するというだけの機会だったが、とはいえ確かにそれほど有能な指揮官の協力が得られるのであればとても心強い。

 

 故に、絶対に確認しておかなければならない事がある。

 

「……ギュンターさん、お伺いしたい事があります」

 

「聞くだけ聞こう」

 

「では遠慮なく……貴方は何故、今でもその軍服を身に付けているのですか?」

 

 もしもアークに陰謀で追放されたというのが真実で、私がギュンターの立場だったら、アークに忠義を尽くす証とも言える軍服なんか私は捨ててしまいたい。にも拘わらず、ギュンターはある程度ボロボロとは言え、その軍服に身を包んでいた。アウターリムに追放されてから20年、この軍服を使い続けていたとしたら、大分大事に使っていると考えられる。

 

 ……復讐心は、恐らくあると思う。

 

 だが、本当にそれだけか?

 

 私の指摘に対し、ギュンターはほんの少し目を見開いた後、何事もなかったかのように表情を戻した。

 

「ここはアウターリムだ。真面な服など新調するのは難しかろう」

 

「そうは言いますが、軍服を身にまとったままではアウターリムにとって評判の悪い、アークの人間と間違われるでしょう。いくらアウターリムが貧しいといっても、エンターヘヴンの幹部が服一着手に入らないとは思えません」

 

「それは……最初は無理だったのだ。それが出来る頃には、この軍服が私のトレードマークになった。それだけだ」

 

「そうですか。しかしそれにしても大事そうに着ていますね」

 

「こんな世の中だ。物資を大切に使うのは当然だろう」

 

「……ブラッシングで洗濯までしてですか? しかもつい最近やったばかりですね。それに頻度は低いようですが、ドライクリーニングもしていますね」

 

 ここまで言ってギュンターが「む」と口をこぼし、目を見開く。

 

 ギュンター、それにちしかんやヨハン先輩が着ているようなタイプの軍服は、おそらく水洗いしてはいけないタイプ。普通はドライクリーニングで洗濯するのだが……こんな環境下じゃ洗濯どころじゃない……筈。やった痕跡が目に見えるが、という事は……

 

「E・Hさん、ギュンターさんはどれ程の頻度で軍服の着用を?」

 

 エリシオン・ハーパーは顎を手に軽く触れて考え始める。

 

「……仕事中は絶対に着ていたわ。プライベートでも、私服でいる事もあったけど、軍服姿の方がよく見かけ……あっ、そうか。それにしては軍服の汚れが少ない」

 

「ええ。20年使い続けているにしては綺麗過ぎます。正直な話、私は理解し難いです。ギュンターさんにとって憎悪の対象である筈のアークに対して、忠誠を誓う証とも言える軍服をこうも大切に扱う理由とは一体何でしょう?」

 

「……何が言いたい」

 

「ここから言う事は全て憶測になりますが……私が思うに、ギュンターさんは、アークの軍人……正確に言えば指揮官として、やりたい事があるのではないでしょうか?」

 

 軍服を大事にしていた。それは間違いない。憎悪だけで動いているとしたら矛盾する行動の筈だ。しかしこのご老人は参謀としてテロを立案している。裏切られてもなおアークに対して忠誠を誓っているなどというドラマチックな理由でも絶対にない。

 

 私はアークから切り離して考える。アークの軍人ではなく、指揮官としてやりたい事……

 

 指揮官の誰もが夢見る悲願……少し考えてみたが、そんなの一つしかない。

 

「地上奪還……ですか?」

 

 ギュンターの目が見開いた。すぐに表情を戻して取り繕ったが、恐らくビンゴを引き当てた。

 

 答えを求めるように、私はギュンターの顔を正面から見つめる。

 

 ……やがて観念したのか、ギュンターはばつが悪そうにしながら立ち上がって後ろを向く。

 

「…………アドルフ、と言ったな。お前は、()()という指揮官は知っているか?」

 

 新星。唐突に出てきたその異名に、『ヨハン』という名前を零しそうになるのを必死で堪える。

 

「……噂程度には。非常に有能な指揮官だったとか」

 

「私は実際に、あの方に会った事がある。随分と昔の……子供の頃の話だ。私はあの方に憧れた。ラプチャーに勝利を収めるその強さに。あの方に、大きくなったら指揮官になって、地上を奪還します、なんて言ったものだ。頭を撫でてくれた。期待しているとも、言ってくれた。それが嬉しくて、本当に指揮官になった」

 

 そんな事が……このギュンターという男は原作にはいなかったが、語られない所があるのは当たり前の話か。

 

「尤も、成り立ての頃は酷かったものだがな。何人もニケを死なせた。何度もニケに地獄を見せた。多くのニケの屍の上に、私はいるのだ」

 

 それは……新人指揮官の間は正直仕方のない話じゃないか。私だって、ニケを初めて作ろうとした時は3人死なせた。

 

「死なせ続けて、そして行き付いた果てがこの掃き溜めというのも笑えるな。あの方も……ヨハン閣下もあの世で失望している事だろう……私は、あの方の期待に何も応えられなかった」

 

 言葉が出なかった。アークが建設されてから100年、個人個人の悲劇などいくらでもあろうが、一つ一つに目を向けて見れば息が詰まる程というのは、原作をプレイしていれば分かる話だ。

 

 MIRACLE SNOWもNYA NYA PARADISEも、全体で探せばあの程度の悲劇はいくらでも出てくるだろう。だが、一つ一つに焦点を当てれば、涙が零れる。

 

「それでも、生きていれば未来で何かあるかもしれないと、現実逃避に近い希望に縋った結果、この軍服も手放せなくなっていたのだ。そして71歳の現在、地上奪還に貢献するでもなくこうして怒りの捌け口をアークに向ける為に、殺しの計画を立てている。そんな女々しく夢見る、情けない元指揮官の老い耄れ、それが私だ」

 

「……」

 

「……ふう、話が長くなったな。こんな事を喋るつもりもなかったが……兎も角、本当に他を当たった方がいい。私はもう、満足のいく指揮が取れん」

 

「それは、衰えというよりは気持ちの問題なのでしょうか?」

 

「…………」

 

 分かりかけた気がする。

 

 この人は多分、エリシオン・ハーパーと同じだ。きっと今、どうすればいいのか分からない状態なんだ。

 

 地上奪還……成程確かに難しい課題だ。

 

「……ギュンターさん」

 

 でも、ゼロじゃない。

 

 ゼロじゃないなら、別の道を提示できる。

 

「もしも……もしも、外界からはラプチャーだけでなく人間も見えなくなり、視覚だけでなくラプチャーの聴覚や熱感知センサーに対するジャマー機能も備え、方向指示センサーにもジャミングをかけることで偶然入り込むことも防ぐ事が出来る。……そんな光学迷彩を開発できたとしたら、地上奪還の可能性は現実的なものになると、考えられますか?」

 

「……?」

 

「光学迷彩……って、ちょっと待ってアドルフ、貴方まさか……!?」

 

「アウターリムの人口は、アークの10分の1。私は、可能性はゼロではないと思ってる! もう一度聞きます。もしもそんな光学迷彩を作れたとしたらどれだけ可能性が上がるか、指揮官としての判断を聞かせてください!」

 

「ッ……! お前は、自分が何を言ってるのか分かっているのか!?」

 

 ああ、常識で考えれば正気ではないのだろう。だが私は止まるわけにはいかない。

 

「言っておきますが、私はここアウターリムでニケを作ってみせた! 科学的分野で、絶対に不可能とは言わせない!」

 

「…………そんなッ、質の悪い屁理屈ではないか……!」

 

 そう言いながらもギュンターは手を頭に当てて考え込む。流石にここまで前例のない仮定に、余裕もなくダラダラと汗を垂らしていた。

 

「…………確かに……そんな四次元ポケットから出てくるような秘密道具の様な物があれば、少ない戦力で奪還は可能かもしれない……」

 

「じゃあ――」

 

「だがそれだけだ! そんな夢物語の道具が完成するまでに、一体どれ程の時間がかかるというのだ!? 私からも言っておくが、後10年もすれば平均寿命を迎える。私にはもう、時間が残されていないのだ……」

 

 奪還した地上の景色を見る事が出来ないかもしれない……成程、夢破れる可能性の方がまだ高いという訳か。ならば……

 

「ギュンターさん、貴方は夢を叶えたいのですか? それとも……夢が叶う光景を見たいのですか?」

 

「どういう……事だ?」

 

「……人は、死ねばそれまでです。何もできず、動かなくなる。ですが、夢はどうでしょう? 貴方の言うその、新星は、地上奪還を夢見て戦い続けました。ですが察するに、志半ばで命を落としたのでしょう。ですが貴方は、その新星から夢を託された!」

 

「託された……って、何を言っている。私は――」

 

「自分で言った事ですよ? 貴方は新星に、頭を撫でられて期待していると言ってもらえたと」

 

「それは……! 子供を相手にする時のその場しのぎ――」

 

「だとしてもッ! 貴方は夢を託されたんです! でなければ、新星は地上奪還の希望を何も残せず散っていったんです!!」

 

「!」

 

「そして、今度は貴方の番です。お願いです……地上奪還の悲願、私に託してはいただけませんか? 必ず、成果を挙げてみせます。例えできなくても、その次の誰かが地上奪還を目指します」

 

 そう、例えばちしかんのような。

 

「そして何時か、人類が地上を奪還したその時に……

 

あの世で新星と一緒に、笑ってください」

 

 静寂が支配した。リーゼロッテとエリシオン・ハーパーは話に割って入れず、ギュンターも黙り込んだ。

 

 ギュンターの表情から驚愕がこびり付いて離れない。彼の目に、私はどう映っただろう。

 

「………………ふっ」

 

 十数秒に及ぶ静寂が終わる。ギュンターが吹いた。

 

「ふっふっふ…………はぁーっはっはっはっはっは!!!」

 

 突如笑い出したギュンター。そこにさっきまであったような不機嫌そうな表情は見られない。

 

「ふふふ……E・H! お前はバカだ!」

 

「な、何なの突然!」

 

「そしてそんなバカが連れてきたアドルフ、お前もバカだ! 全く、馬鹿と天才は紙一重とはよく言ったものよ!」

 

「……ええ、自分でも、中々馬鹿な発言をしているとは思っています。ですが――」

 

「そして、そんなバカな発言に心を動かされたワシもまた大バカだ! ……いいだろう。搾りカスのようなワシの人生、夢に向かって邁進してみようか。手始めに、お前の所のニケを、戦闘員として使い物になる様にしてやろう」

 

「ほ、本当ですか――」

 

「ただし!」

 

 いつの間に抜いたのか、気づいたときにはギュンターの手に拳銃が握られており、それが私に向けられている。

 

 ほんの少しワンテンポ遅れて、リーゼロッテが私を庇いながらギュンターに銃を向けて護衛の役割を果たそうとしている。二人の顔が険しいものになる。

 

「ワシは何時でもお前を見ている。もしもお前が、ワシの夢を受け継ぐに値しないと思ったらその時は、ワシは躊躇なくこの引き金を引くぞ」

 

 ギュンターはそう警告した後、拳銃をホルスター付きベルトに仕舞う。私はそれを確認して、リーゼロッテに銃を下げるよう指示した。

 

「まだまだ色々課題は多かろう。ワシ達の理想を叶えられる確率は、依然として厳しい。だが、皮肉な事に、今一番希望を感じておる。地上奪還……本当に、頼むぞ」

 

 ギュンターが右手を差し出す。私はすぐにその握手の求めに応じた。

 

 地上奪還か……アウターリムから飢えを駆逐するという話でエリシオン・ハーパーと手を組んだが、いつの間にか大きな話になったものだ。

 

 だが後悔はない。進める所まで進んでやる。

 

 それに……私が言った光学迷彩、完全なハッタリという訳ではない。

 

 実の所大まかな設計図は頭の中で出来つつあった。それに……原作で量産が不可能と言われていた理由だった特殊資源……

 

 紅蓮と出会ったあの日、あの時に受け取った希少資源……もしも私の予想が正しければ……

 

 

 

 もしかしたら、ギュンターが生きている内に、夢を見せる事が出来るかもしれない。




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ニケ達からのアドルフへの好感度

ハンナ(???)
うーん……私は、あの子の事が好きっていうのは、ちょっと違うかもしれないわね……でも、私はあの子の事を愛してる。これだけは、ハッキリ言えるわ!

レイチェル(49)
やっぱり気持ち悪さは変わんねぇよ……この2年間で多少はマシになったけどな。

ゲルトルート(68)
私は……アドルフの剣だ。それ以上でもそれ以下でもない。

リーゼロッテ(89)
あの子は絶対に失っちゃダメ……それだけは分かるわ。

ベアトリス(83)
普通に好き! ゲームしよって言ったら嫌そうな顔するけど、何だかんだ付き合ってくれるんだよねー!

マルグリット(56)
アイツが面白れぇ事してる内はつるんでやるぜ。つまんねぇヤツになったら、その時は食い殺してやるがな……あーただ、所々甘い所があるのが気に入らねぇ。サンドラの奴をあのままにしておく気かよ……

ロミー(72)
心配になるなー。折角私の事助けてくれたいい人だから、死なないで欲しいんだけどなー。

ラウラ(93)
はい! 私はアドルフ様を一番お慕いしております!! ……えっ、二回も殺しかけた? ま、待ってください! アレは若さ故の過ちで――

ハルカ(84)
とても優しい方です! こんな世界で、人の為に動ける……尊敬しています。とても……

クリスティーナ(53)
うーん……出会ってちょっと日が浅いから、なんとも……あ、でも、凄い子……なんだよね?
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