四大企業 アトラース   作:スキル素材年中枯渇ニキ

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本当にお待たせしました……色々と都合の悪い重要な情報が出まくったので今書いてる話をほっぽりだして急遽書いた話になります……


12:大乱闘シューティングシスターズX

「……よし、出来た!」

 

 今日も今日とてラボで研究……この前の事で、正直かなり憂鬱な思いだが、無理やりにでも気を強く持っていないと動けなくなる。それはいけない。

 

 これからこのような惨事は散々見ていく事になるだろう。忘れずに、そしてもうこんな事は絶対に防ぎきると切り替える。難しい事だが、大事な事だ。

 

 ……よし。

 

 今回はそこそこ先を見越してあるコンピューターウィルスを作っている。それが私の手に収まっているUSB。

 

 名付けて、AI絶対ブッ殺助くん!! このUSBに込められた、そう名付けられたプログラムは、その名の通りAIの破壊に特化したマルウェアなのである!

 

 本来、AIのみを破壊するマルウェアというのは技術的に少し難しい。故にこのマルウェアはAIのプログラムを直接破壊する訳ではない。

 

 だから、AIをぶっ壊すのではなく、AIの仕組みを利用するという発想が王道になるだろう。

 

 このAI絶対ブッ殺助くんは、AIのネットワークに潜入して学習データベースを大規模に、そして迅速に改ざん。

 

 産みつけられる命令はこうだ。

 

 自分で自分を破壊しろ。

 

 これで感染したAIは自分の全てを破壊し尽くし、後には何も残らない。

 

 バッグアップがあっても無駄だ。コイツはデータで繋がってるだけで光の速さで感染する。

 

 早速実験を行ってみた。私が独自に作ってみたAIをAI絶対ブッ殺助くんに感染させてみる。すると10秒も掛からずにAIプログラムが真っさらになった。AIとしての形を保てなくなったとかそんな次元ではなく、本当に奇麗さっぱり消滅したのだ。

 

 この実験結果を受けて、AI絶対ブッ殺助くんは完成したと宣言する。もしもチャ〇〇G〇〇やG〇〇kなんかに感染させれば一発で消し飛ぶ代物だ。我ながらとんでもない物を作ってしまったぜ……

 

 ……これを何に使うのかって? 勿論このアウターリムの状況を作りやがったカス(エニック)に使うに決まってるだろうがよ。

 

 本当に使う訳ではないが、脅しの材料なんていくらあってもいいからな。エニックからしたらアークに対して恨みを抱いているだろう組織がアークの外周部を支配して独立なんて到底認められないからな……仮に認めたとしても、その後アウターリム統一政府を解体するよう画策するのは目に見えてる。

 

 アークを守るという命令を忠実に遂行し、物を考える。そのAI特有の柔軟性のなさは、果たして自分とアークを天秤にかけられた時どうするかは興味が湧くが、兎も角これでアークに対抗する武器が一つ作れた。私の研究は、私の目標は一歩ずつ進んでいるんだ。

 

 

 

 

 ……もっとも、このAI絶対ブッ殺助くんを少し時間が経った後で本当に使う事になろうとは、この時の私は夢にも思っていなかったが……

 

 

 

 

 

「アドルフ、ちょっといいですか?」

 

「サンドラ、どうかしましたか?」

 

 こうしてラボで研究している中サンドラに声を掛けられた。研究も今いい所だったのにという訳でもなく、自分の事情で他人に当り散らす程非常識ではないという自覚もあるので、研究を中断させられた事については特に何も思わず耳を傾けた。

 

「手持ちの資金と家賃の計算が合わないんです。多分、誰かが家賃ちょろまかしてるのかも……」

 

「またですか……前のと同一人物でしょうか?」

 

 アウターリムでは、特に誰がどの土地を持っているかというのは決まっていない。だが誰もかれもが好き勝手にすればいざこざは起きる。それこそ血を見ずには済まない程度には。なので暫定的に力のある組織が土地を管理し、個人個人がお金を差し出して安全保障を得る。こうして疑似的な住居というものが成り立っていた。

 

 その土地だが……実の所私達は支払うよりも管理する側に回っていた。

 

「今から調べる所です。一応、アドルフにも報告しておいた方がいいと思ったんです」

 

「分かりました。今誰が待機してますか?」

 

「カルラとマルグリットとラウラが……」

 

「あ、ダメだ。後に回しましょう。三人とも……特にカルラはやり過ぎるから絶対行かせないようにしてください」

 

「わ、分かりました……後でリーゼロッテが地上から帰ってくると思うので、それ次第にします」

 

「ええ、お願いします」

 

 どうして私達が土地を管理するようになったのか……その説明をする前にまず今の銀河の状況を理解……なんて大袈裟な物でもないが、少し長くなる。

 

 

 

 今から数カ月前の事だ。

 

「のあーッ! 痛って~~~!!!」

 

 とある酒場で、私はリーゼロッテ、ベアトリス、ハルカと共にブローカーに商品を売り込む取引が終わって直に、男のいかにもわざとらしい悲鳴が耳に入る。

 

「テメェ……どうしてくれんだ!! そっちがどかねぇから肩の骨が折れちまったじゃねぇか!! 慰謝料と治療費出しやがれ!!」

 

 激情に任せてハルカの胸倉を掴むチンピラ。気弱そうなハルカに狙いを絞ったとしか思えないいちゃもん。私達はテーブルに座って安酒と水を飲んでいただけだ。歩いてすらいない。そこへ肩をぶつけたとは笑える話だった。

 

(知ってるぜ……ニケは基本人間を攻撃出来ねぇ。こうやってカツアゲしても抵抗出来ねぇって訳だ……!)

 

 いちゃもんを付けてきたチンピラが何を考えこんな事をしているのかは定かではないが、そんなチンピラの思惑とは裏腹に、ハルカは胸倉を掴まれた時点ですぐさまにグラスを手に取り、チンピラの頭に叩き付ける。

 

 ガシャアアアン!!

 

 かなり強い力で殴ったのか、グラスが粉々になり、顔のあちこちにグラスの破片が刺さり、チンピラは顔のあらゆる箇所から血が噴き出すグロテスクな状態となった。

 

「あ、アガアアアアアア!!!!」

 

「敵ですね貴方……敵ですね!!」

 

「何い!? 敵か!!」

 

 ハルカの敵認定に、成程確かにこれ程度し難い難癖を付けられては無理もないだろう。ベアトリスも騒ぎを聞いて加勢。チンピラはあまりの激痛に足腰が立たなくなった所で、ハルカとベアトリスがゲシッ、ゲシッ、ゲシッ! と容赦なく連続で蹴りを叩きこむ。

 

「敵ですね! 敵ですね! 敵ですね!!」

 

「敵か! 敵か! 敵か!」

 

 ニケが一字一句同じセリフを連続で発言している辺り嫌な想像をしてしまうものの、とは言え流れとしては些か当然……いや、やっぱこれやり過ぎでは? あのチンピラ大丈夫だろうか……。

 

 その光景を呆れつつ見ていたリーゼロッテは溜息をついて残り少ない安酒をひと口。飲み干した後コトン、とグラスを置いて――

 

 

 

「ンェイ!! 貴方みたいなのが際限なくすり寄ってくるせいで面倒なのよ!! この、この!!!」

 

「敵か! 敵か! 敵か!」

 

「敵ですね! 敵ですね! 敵ですね!!」

 

 なんと止めるでもなく寧ろこの蹴り大会に加担してしまった。私はリーゼロッテにはストッパーとしての役割を期待していたが、今までのストレスが祟ってか知らぬ間に随分と精神的負担を掛けてしまったか。

 

「ちょ、ちょ、ちょ! やり過ぎですやり過ぎ!!」

 

 反省は後日行うとして、今はこのリンチを止めなければ取り返しがつかない事になるだろう。このチンピラの死をどれだけ重く見るべきかは定かではないが……

 

 

 

 

 

「……ねぇーアドルフ、流石になぁんかおかしくない?」

 

 何とかリンチを止めた後チンピラを軽く治療しようとしたが、途中で目覚めて逃げ出してしまった。仕方がないので引き続き酒場で一休みしている所でベアトリスから一声。

 

「ここ最近私達にすり寄る人が多すぎるよ? 食べ物が手に入らないから恵んでくれ―とか、金寄越せーとか、君可愛いね♡今からおじさんといい事しなぁい? ブヘヘヘヘ……とか」

 

 ここら辺は私もあずかり知る所であった。――いや待て、最後のは流石に知らない。

 

 ……が、皆自分なりに容姿を整えているのでアウターリムじゃ高嶺の花に見えるだろうか。(いやでもニケフィリアが特殊性癖と認識されてるこの異常な世界でニケが早々モテるだろうか)

 

 兎も角、ベアトリスの発言は真実である。最近じゃ別の地区から態々来たという人間までいる始末だ。そして、彼女が何を言いたいのかも薄々感ずく。

 

「誰かが意図的に悪い意味で私達の事を喧伝して回っている……そういう事ですね?」

 

 例えば、いい金稼ぎのネタがあるぞ、と餌をぶら下げて情報料を徴収しているとか。

 

 例えば、アイツらは金や食糧をたんまりと溜め込んでやがるから、今から貰いにいこうぜと言って仲間を集めて先導しているとか。

 

 ただ一つ察しがつくのは、これは私達の事が気に食わない人間や組織の犯行だろうという事だ。

 

 では誰が犯人だろうか。

 

「……アドルフ、これはやっぱり、エンターヘヴンの仕業じゃないの?」

 

 リーゼロッテの発言に、私は可能性はゼロではないとしつつも首を横に振った。

 

「私達が少なくない物資を提供して、彼らのガス抜きを行っています。病気に罹った子供達の治療にも協力して、ある程度はの信頼は得ている筈です。私達を攻撃する理由はない」

 

 それでは納得がいかないとリーゼロッテら食い下がる。

 

「それは息を吹き返した穏健派の話でしょう? 過激派は寧ろ貴方の事を目障りに考えている筈だわ!」

 

「リーゼロッテ、さっきも言いましたが、私達はそう少なくない物資を提供しているんですよ? 例えば、肥料や食物の種、自作した石鹸、そして機材が破損した際には修理も担当している。その上で、私達を攻撃しようというのはE・Hが許さないでしょう」

 

「今更方針を()()()()した彼女の言葉を、過激派が真に受けるとは思えないけど?」

 

「後ほど纏めてと言わず、そうなった場合にはすぐにでも粛清するとまで言っているんです。過激派の事は兎も角、彼女の事は信じてあげましょう」

 

 リーゼロッテはため息をついめ頭を掻く。納得したと言うよりは話を棚に上げたという所か。

 

「あ、あの……」

 

 そこでハルカがか細い声を出して手を上げた。手首をテーブルに乗せた状態で控えめに手のひらを広げる。いつも自信なさげにしているのを何時かは改善したいと思いながらも私は彼女に耳を傾けた。

 

「意見がありましたら遠慮なく仰ってください。私はより多くの人達の考えを聞いてみたいんです。見識が広がる可能性があるかもしれませんから。何より、喋るだけならタダですからね」

 

「は、はい……! じゃあ、えっと……私、エンターヘヴンの他に、犯人がいる気がして……」

 

「他に? 例えば誰?」

 

 ベアトリスの当然の疑問に、ハルカはたじろいで頭を下げる。意見を言うのは時間が掛かるが、謝罪は早いというのも問題だな……

 

「す、すみません! 何となく、そう思うというだけで……具体的に誰とかは……」

 

 まぁとは言えエンターヘヴンが犯人ではないと言い切った私としてはその可能性は前向きに考えなければならないだろう。

 

「うーん……でも他に候補は……ブローカーは違うわよね……農作物の取引だけの付き合いだもの。それ以外の情報を持っていない筈……」

 

「そもそもより詳しく私達の情報を持っている人なんて、エンターヘヴンを除けば、後は私達がお金を払ってる地主しか…………」

 

 

 

 

「「「あっ」」」

 

 

 

 

 人の意見を聞くって大事だネ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本を読みながらベッドの上で寝転がっている男。彼の持つ組織は獅子会や清明会やヘッドニアのようなメジャーなマフィアと比べれば見劣りするものの、それでもここら一帯を取り仕切る立派なマフィアだった。

 

 私の家もここのマフィアの領分であり、金を払って安全を保障してもらっていた。

 

 そんな男が拠点にしている場所、そして男の部屋に、私は酒場で休息をとっていた3人を伴って突如とでも言うべき完全な奇襲で男に襲い掛かった。

 

「ん、何だお前ら――」

 

「オルゥア! 抑えろ!!」

 

 ベアトリスが男の上半身、ハルカが下半身を抑えつけて拘束を試みる。あまりにも突如の事で男も暴れて抵抗するのにワンテンポ遅れた。

 

「な、何するんだお前っ!? 放せゴラ!!」

 

「しっかり抑えろ!」

 

「何だコイツら!? どぉけゴラ! やぁーめろお前っ! ッチ! あーもう!」

 

「抵抗しても無駄だ!」

 

「大人しくしてください……!」

 

「うっせぇ……お、お前らニケなんかに負ける訳ないだろお前オイ! 放せゴラ……放せゴラッ! 無意味だぞお前放せゴラッ!」

 

 男は強がるが、ニケの身体能力を前には殆ど意味をなしていなかった。騙し騙し手足の拘束を振り解くものの、即座にまた手首足首を握られてといういたちごっこの様相を呈していた。

 

 このままでは時間がかかると思ったか、リーゼロッテも男の拘束に手を貸した。

 

「何だお前? なんだちょ――」

 

「リゼ、ちょっとそっち抑えてて!」

 

「ッ……ゴラどけゴラ!」

 

「三人に勝てる訳ないだろ!!」

 

「バカ野郎お前俺は勝つぞお前!」

 

 最早男の虚勢は酷く虚しく見えるばかりであった。「ひっくり返すぞ!」というベアトリスの掛け声に合わせて男をベッドの上でうつ伏せにした後、すぐさま縄で手首を縛り上げる。

 

「あーもう……もう抵抗しても無駄だぞ……!」

 

「おいやめろっ、おいゴラ――ンアーッ!」

 

 三人が男相手に乱闘している間に、私は引き出しや机の上等に置かれている書類を漁る。だが実際に証拠らしき物は押さえられなかったので、やはり本人から直接聞きだすしかないようだ。丁度拘束も終わったらしい。私はハルカに部屋の入口を見張るように言ってから男に近づいて相対した。

 

「だ、ダークヴェールテメェ……! 見張りはどうした!? 何で誰も警報を鳴らさない!?」

 

「勿論スニーキングで制圧しながら来ましたよ。まぁ、途中から面倒くさくなって強行突破で来てしまいましたが」

 

 これまた話題と丁度良く、今になって警報が鳴り響く。これからこの男の手下がゾロゾロと部屋の前に来るのだろうがこうしてリーダーの命が手中に収められては後の祭りだろう。

 

「何が狙いか知らねぇが、お前らの言う通りになんねぇからなぉお!? 放せゴラ!」

 

「こちらはある程度の調べはついているので、単刀直入に聞きます。誰に情報を売り払ったのですか?」

 

「な、何……?」

 

「ネタはもう上がってんだよぉ! これなんだか分かるぅ? 盗聴器ってやつ!」

 

 ベアトリスがさりげなく、あたかも()()()()()()()()かのように見せかけながら突きつけた小型の電子機器。考えが纏まらない状態だろう所で突きつけた事で男は目に見えて焦り始めた。

 

「と、盗聴器だと……!? ま、待て! 違うんだ! ほんのちょっとした小遣い稼ぎのつもりで……」

 

「お認めになるのですね?」

 

「ッ……確かに、一時的にお前達は不利益を被るのかもしれない。だが、これはビジネスなんだ……! 何れお前達にも莫大な富が降り注ぐビジネス…………待てよ? お前ら何時から盗聴器……っていうか、盗聴器を仕掛けたにしては動き出すのが遅……」

 

 こんなでも伊達にマフィアのボスをやっていなかったらしい。思考が落ち着いて矛盾点が浮かび上がってきたか。

 

 堪えきれなくなったのか、ベアトリスが「フ、フフ……フッ」と吹き出しそうになって、そんなベアトリスの様子を見て全てを察した男はすぐさま顔を赤くした。

 

「か、カマを掛けやがったのか!? テメェらあああ!!!」

 

 そう、私達はこの男に予め盗聴器なんて仕掛けてはいないし、なんならベアトリスが男に突きつけた電子機器は盗聴器ですらない。

 

「ふざけやがって、ぶっ殺してやるッ!!!」

 

「逆よ。生殺与奪の権を握ってるのは私達なの」

 

 こめかみに拳銃をグリグリ押し当てられては流石にもう虚勢を張れなくなったか。手首を縛られて抵抗も難しいだろう。だが男は食い下がった。

 

「お、お前らは殺しをやらないんじゃなかったのか?」

 

「やらないとは言ってないわ。ただ控えてるだけ」

 

「お、俺をぶっ殺したらどうなるか分かってんだろうな!? 俺達には無数の取引先がある! そのビジネスを全部お釈迦にして生きて帰れると思うなよ!?」

 

 素人でも分かるバレバレのハッタリを言う男があまりにも滑稽に映ったか、リーゼロッテは少しだけ吹き出す。零れた笑いは恐ろしさすら感じる程に妖艶だった。

 

「ビジネスが聞いて笑えるわ。お金を貰った上で裏切った貴方達が一体どんなビジネスをするって言うのかしら? いくらアウターリムでも……いや、アウターリムだからこそ手を引く人間は多いわよ。信頼も大切な財産よ。少なくともここら一帯では仕事ができると思わない方がいいわ」

 

「ッ……!」

 

 ここまで詰められては言葉が出なかろう。冷や汗を垂らしながら「……何が望みだ」と弱弱しい声が零れた。

 

「そうですね……まずはこの件に関しての取引先を全て教えてください。妙な連中に詰め寄られて迷惑です」

 

 当然の事かと男は個人名や組織名を言い連ねる。参った事に、男の口からヘッドニアという組織名が出てきたときは少しばかり頭痛がしてきた。

 

「これで全部だ……他には?」

 

 リーゼロッテが小声でもう少し痛めつけるべきではないかと提案するが、私としてはこれでいい。()()()()()()()()()()時点でもうある程度は目的を達した。

 

「ああそれと、土地の管理から手を引いてください。信頼を失った貴方方にはもう不要なビジネスでしょう?」

 

「……他には?」

 

「強いて言うならば、もう金輪際私達にかかわらないでくださいとだけ。他には何も望みません」

 

 怪訝な目を向けられるが、この言葉に偽りはない。本当にこんな連中に望む物などありはしないんだ。

 

「……この程度で済ませた事、後悔するぞ……! 俺達はコケにしやがった代償は絶対に払わせる!」

 

「お好きにどうぞ。それだけの力を保持できるのなら」

 

 先程ベアトリスが突きつけた電子機器、盗聴器ではないが何もガラクタとは言ってない。

 

 自作したボイスレコーダーなのだ。この男との一部始終を録音している。安全を保障するという契約を破り、バレて詰められたら顧客の情報をホイホイとゲロった。その現場を押さえた。

 

 この物的証拠を元にE・Hに評判を広めてもらおう。これで奴のマフィアはビジネス所か組織の存続すら危うかろう。これで後の報復の恐れは大丈夫な筈……

 

 私達は、もうここには用はないとこのアジトを出て行った。部屋の前でハルカが誰も通すまいと男の手下達と乱闘していたが、私達が部屋から出て来て乱闘が止んだ。その隙にハルカを回収してこの場を後にする。男が止めたか、それともニケと本気で争ってこれ以上被害が出ると不味いと思ったか、追撃は来なかった。

 

 

 

 それからは、マフィア達が私達周辺の土地管理から手を引いた。今後は更なる拡大を狙う組織が土地の管理を引き継ぐだろう。その時に、私達は金を払って安全を保障してもらうのではなく、私達の住まいの土地を買う事でトラブルを対策する事としようか。

 

 どれだけ要求されるかにもよるが、エンターヘヴンの後ろ盾とニケ戦力をちらつかせればそれほどぼったくり取引にはならないと思いたい。

 

「頼む! あんたが土地を管理してくれ!」

 

 そう思ってたんだけど、それは良くも悪くも無に帰しそうであった。

 

 どうも次に管理を狙ってるマフィアが、みかじめの重さと切り取りの容赦のなさに一定の定評があるようで、いち早く聞きつけた隣人が私に安全保障を頼み込んできた。それも土地管理から手を引いて庇護下でなくなった人間の大半が押し掛けてきたという有様。

 

 ……まぁ、確かにそこまで悪名高い連中が来るのであれば、私の考えている土地の購入を受けてくれるかは、正直微妙な所だ。

 

 幸い、前任もそこまで規模が大きい土地を管理している訳ではなかった。これなら私達でもキャパオーバーという事はないかもしれない。私はその話を引き受けた。

 

 さて問題は、みかじめが増える筈だったのにと当てが外れたマフィアとの抗争であったが、予断を許さない状況とは言え今すぐ大きな争いになるとは考えにくかった。何だかんだで自前のニケ戦力とは偉大だ。こうしてマフィアをけん制する材料になるのだから。

 

 

 

 まぁ、これが私達が何故土地の管理と住民の安全保障なんて面倒事を引き受けたのかという全てだ。

 

 その後も報復されたといった報告はない所か、例のマフィアは信用されなくなった結果仕事ができずに自然消滅したと聞く。

 

 それで……ああそうだ。みかじめの未払いだった。最低限にしておいたのでそこまで苦しい金額ではない筈だが、まぁ想定できた事だ。お金がないという人間には、最近やり始めた石鹸の製造や水の浄水作業を手伝ってもらうという事で話はつくだろう。

 

 しっかし忙しくなった。研究する時間さえ満足に取れないという状況にならなければいいが……




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