四大企業 アトラース   作:スキル素材年中枯渇ニキ

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13:しかし警部、人権活動家が多くの民間人が乗車している列車を爆破するでしょうか?

 

「ふざけるな! 今更そんな事認められるか!」

 

「だが、こうして食料や衛生事情が明るくなったのはアドルフのおかげに違いない! それにこっちの方が現実的だ! 違うか?」

 

 またこれか。会議が一向に進まない。

 

 エンターヘヴンのアジトにある長テーブルにはそれぞれ親アドルフ派と反アドルフ派で分かれて着席している。この光景だけでもE・Hは頭が痛くなってきた。1年も前からこの平行線な言い争いは続いている。

 

 E・Hにとって、この溜息が何回目か覚えていられなかった。今回の主題に入る前に、アドルフを受け入れるか否かで意見が分かれ、とてもじゃないが本題に斬りだせない。

 

「そのダークヴェールは何一つ我々に情報を開示していないじゃないか! 我々を信用していない証拠だ! そんな奴と手を組む道理はない!」

 

「信用されなくて当然だ! アドルフが何を望んでいるかは知っているだろう? 彼が我々と手を組もうと考えたのは、アウトローにも自由を齎すという崇高な使命に心を動かされたからだ! だがそれと同時に、彼は犠牲を嫌悪している! テロに積極的な組織に全ての情報を開示するのはリスクが高いというのは当然の言い分だ」

 

「甚だしい侮辱だ! 奴は今まで散っていった同志達に、唾を吐きかけている! 同志達の犠牲はどうなる!?」

 

「奇麗事を抜かすな! そもそもお前達が列車の爆破なんて暴挙に出なければ中央政府の監視の目は緩く済んだんだ! 注目を集めるとは言っていたが、これじゃまるで逆効果じゃないか!」

 

「何だと――」

 

「静粛にッ!」

 

 流石に埒が明かないと確信したギュンターが静止を促す。ギュンターの一喝ともなれば、流石に一度は意見を喉元に押し込まざるを得なかった。

 

 とは言え、この静寂があと何十秒持つか分かったものではないが……

 

「今回の議題は、アウターリム治安維持活動の一環として、ラプチャー新興宗教団体への襲撃計画の立案の筈。別件の議論で時間を浪費するな!」

 

「中佐殿ッ……貴方も貴方だ! 一体ダークヴェールに何を吹き込まれたか知らないが、ご家族の不幸に目を逸らし、敵討ちの義務から目を逸らす貴方の姿勢に失望を禁じ得ない!」

 

「言ったな!? 中佐殿がどのような気持ちでアドルフに協力しているか考えた事はあるのか!? 中佐殿のご家族を自分の主張の為に利用するなど恥を知れ!!」

 

 E・Hはまた溜息が意図せず漏れた。手を頭に当てて頭痛も抑える。今回は十秒も持たなかったらしい。

 

「アンタからも何か言ってやってくれ!」

 

 反アドルフ派の席側、そこの壁に寄りかかる一人のニケが声を掛けられる。

 

 クロウ

 

 訳あってエンターヘヴンのリーダーの座をE・Hと二分して活動し、現在は中央政府所属部隊エキゾチックの隊長。

 

 その緑の瞳は眼球の中で黒い霧が立ち込めているのかと思うほどに薄暗く、何を見つめているかは定かではなかった。しかし吹かす煙草は何度も噛まれ、人差し指は腕組みの中トントンと上腕を叩き、表情は皴が寄っていた。クロウを知る人間からすると、比較的機嫌が悪そうな印象を受けた。

 

「……なぁE・H」

 

「何」

 

「奴が情報を開示したがらないってのは、まぁ分かる。だがお前は違うだろ? 奴がニケを確保してる絡繰りについて洗いざらい教えてもらったって話だったよな?」

 

「ええ」

 

「んで? お前はギュンター以外に誰もその情報を共有していない。おかしいよなぁ? 仮にそれが、ニケとモノを交換できるマーケットのようなものだと仮定したとして、何故情報を教えない? 何故それを使ってニケを手に入れない? テロにしても農業にしても、ニケはいるに越したことはないだろう?」

 

「……現状、アドルフ以外に使えないからよ」

 

「使えないねぇ……信頼されてないの間違いだったりしないか?」

 

「事は慎重を要するっていうのは言い分としては当然だわ。でもいずれは目に見える形で恩恵に――」

 

「そうじゃない。お前が何を見聞きしたのかは知らないが、それ自体がブラフの可能性はねぇかって聞いてんだ」

 

「ブラフ……つまり私はアドルフに騙されているかもしれないと?」

 

「そっちの可能性の方が高いぐらいだ。お前が見聞きしたものだって、全部信用を得る為の偽装とも考えられる」

 

「偽装ね……笑えるわ。アレが全部偽装なら、アドルフは人類史上最高のマジシャンだわ。テトララインは喉から手が出る程に欲しいでしょうね」

 

「……」

 

 クロウが咥えていた煙草が何度も噛み砕かれて到頭(とうとう)千切れる。まだ火が点いていたそれを、しかし踏み潰したり等で火の始末をする事すらしなかった。

 

(……コイツ、本当に何を見てきた……? 言い包めればそこそこいう事聞くんだが、ダークヴェール絡みとなると耳すら貸そうとしねぇ)

 

「兎も角、何度も言わせないで。アドルフに関する情報を伏せているのは、偏に重大かつデリゲートな問題を抱えているから。貴方達の考えは十分に分かってる。でもアウターリムの治安の為にもそこを押して、準備が整うまで何とかこの件に関しては堪えて。」

 

 意図せず噴出するこの議論を、ある時にはなあなあで棚に上げ、またある時には力業で押し込めて騙し騙しやり過ごしてきた。

 

 しかしいい加減限界が来ていたというのが、E・Hにも肌で感じていた。

 

 アドルフも努力している。だからこそ半数前後を味方に引き入れられた。農業のノウハウ、肥料、食物の種、ラプチャーコア、それを要いた発電機、物資と技術においてはこれ以上ない程の援助を受けている。

 

 残り半数が反アドルフ派なのはある種の不可抗力でもあった。元々主義主張はそう簡単に捻じ曲げられるものでもない。アークに対する復讐を強い目的とする思想を丸ごとひっくり返すというのは、彼らの今までの人生の否定に等しい。受け入れられない人間は少なくないのは当然の話だろう。

 

(ここら辺が限界かしら……想定より少し早いけど、粛清に踏み切るべきか……だけど……)

 

 E・Hの視線が一瞬だけ、クロウに向けられる。

 

 アドルフはエンターヘヴンに、解散と起業の支援を求めた。だが、それを行うには意見が分かれすぎている。だからここで大きな組織改革が必要だったのだが、そこで問題になってくるのがクロウだった。

 

 AFX爆破テロ事件。クロウがその事件の主犯であり、エンターヘヴンがテロ組織としての道を歩み始めた原因であり先駆者。

 

 E・Hから見ると、アドルフとクロウは到底手を取り合えない関係にあるように見える。アドルフが彼女を嫌っているのは前々から聞いていた。そしてクロウもまた自分のやり方と相反するアドルフの事を良く思っては居まい。

 

 ここで大胆な組織改革を行った場合、そのクロウがどのようなリアクションをするのかが全く予想がつかない。これが最大の問題点だった。破壊工作、暗殺、流言、クロウにとっては息をするように出来るだろう。

 

 今自分達がやっている事がクロウを怒らせるような物であれば、おそらく彼女の巧言で蹂躙されるだろう。

 

 かといって排除は論外だ。何かとエンターヘヴンを彼女なりに支援してきたクロウだが、表向きは中央政府所属部隊の隊長だ。その彼女が死ねば間違いなく中央政府は強引な調査に出向くだろう。

 

 クロウを味方に引き入れる。取れる手はひとつしかなかった。

 

(アドルフ……貴方はクロウを蛇蝎の如く嫌っていたけど……もうそろそろ彼女と話をしなければならない段階かもしれないわ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー! 隊長が戻ってきた!」

 

「今日の会議はどうだった?」

 

 エキゾチック部隊所属、ジャッカルは戻ってきたクロウの姿にはしゃぎ、バイパーはおそらく今日も進展がないだろう会議の内容を尋ねるも、当のクロウはただでさえ宜しくない機嫌が、バイパーの問いを聞いてさらに悪化したように思える。

 

「いつもと変わらずだ。前なら一日で決まった事で、その話題にすら行き付かない有様だ」

 

「そんなにアドルフくんが嫌い?」

 

 会議が進まない原因、エンターヘヴンが二つに分かれた……その更に原因であるアドルフは、エンターヘヴンを裏で操作しているであろうクロウにとっては目の上のたん瘤と言った所だろう。

 

 しかしクロウはバイパーに隙を見せない為か、不機嫌な顔は変わらずとも表情を崩すという事をしなかった。

 

「さてね。少なくともあちらさんからは相当嫌われてるようだ。話だけでもと付け足してやってもあのバカ(E・H)は一向に会わせようとしねぇ」

 

 エキゾチックとしては、アドルフの自宅にアウターリム流の挨拶という手もあったが、それをやるにはあそこにいるニケの数が懸念事項だった。

 

 アドルフは、現状クロウに主導権を握られていると考えてはいるが、実の所そのクロウにしても優位に立てているとは少しばかり言い難かった。

 

 というのも、クロウは当初アドルフの背後を洗いざらい握って、アドルフのコントロールを掌握するという狙いがあった。アドルフにダークヴェールという異名が付いた理由をクロウは知らない訳ではなかったが、アークでの伝手やその裏の伝手を総動員すれば尻尾ぐらいは掴めるだろう。いくらクロウと言えどもそんな仕方のない慢心があった。

 

 まさか前世が科学者のNIKKEプレイヤーがこの世界に転生してきて、捨てられていたニケのボディから中央政府の最高機密である筈のニケの構造を解析して、ジャンクパーツからニケを製造する機械を作り出して、見事ニケを作ってみせたという度し難い真実に誰が行きつけるというのだろうか。クロウも想像力は比較的豊かな人間ではあったが、この事実に行きつける程という訳ではなかった。

 

 しかし結果としてクロウは長い間、アドルフの存在しない尻尾を追いかけて無駄な時間を過ごした形になる。

 

 このあたしが得体の知れないガキに一杯食わされた。当人としてはそこに怒りを感じないでもなかった。だがアドルフ本人をクロウが嫌っているのかと聞かれれば、おそらくクロウとしては言葉に詰まった筈であった。

 

 どちらかと言えば、クロウのストレスの一番の原因はエンターヘヴンの現状に他ならず、アドルフに対しては、よく分からない……と口にせざるを得ないだろう。

 

「……」

 

 とは言え、良くも悪くもこの現状はおそらく長続きしない。クロウはそう確信していたし、同じ部隊のニケであるバイパーも薄々そんな気はしていた。

 

(ダークヴェールの狙いがエンターヘヴンの掌握なら、絶対にこれ以上は進展しない。奴が強硬策でも取れば状況は変わってくるだろうが、普通ならもうそろそろだと思うんだが……)

 

 思考を巡らせるクロウ。そこにガチャ、とドアから出てきたのは、進展のない会議が終わった後もギュンターとコソコソ話をしていたE・Hの姿があった。

 

 クロウは待ってましたと言わんばかりに声をかける。E・Hも大して驚かずに耳を傾けた。内容も彼女の予想した通りであった。

 

「頃合いだろう、E・H。お互いの為だ。もうそろそろダークヴェールに合わせな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アドルフです。今私はラボで研究中。作者は最近展開に行き詰まったら私になんか研究させる描写書いときゃええかとか思ってるらしい。おおメタいメタい。

 

 今回は、キロが搭乗していたタロスのような……いや、アレよりはもう少しスリムな感じの強化外骨格を研究してみている。インフィ〇ット・ストラトスのI〇や、ブルー〇ーカイブのアビ・〇シェフみたいな感じの奴だ。

 

 ……実の所、強化外骨格自体は、私専用の物を既に作ってあるんだ。と言っても、戦闘用ではない。ニケの皆が武器を壊したときに修理したり、手入れを行ったりする時に、私でも彼女達の武器や弾薬を持ち上げられるように簡単な物を作った。

 

 ざっくり要約してしまうと、空気の力で腕力を増やす機械だ。

 

 背中に背負っている空気吸引機が大量の空気を取り込み、それを腕に繋がるポンプに送り込むことで空気圧を作り、その空気圧で重い物を持ち上げさせるという仕組みだ。これで一応はニケ用の銃も運用は辛うじて可能だ。

 

 だがラプチャーと対峙するんじゃ、こんなオモチャじゃ全然足りない。

 

 というか、私が目指しているのはニケ用の強化外骨格だ。それも、T.A.V:H*1で使われている、ニケと共通規格のコア搭載強化外骨格。

 

 私がこれに最も魅力を感じているのは、ハフバイベのLAST KINGDOMで見せた、キロとタロスのコア直列接続だ。

 

 ……私は、物語は物語として楽しめる人間だ。友情、努力、勝利とか、人間とロボットの友情とか、そういうのは嫌いじゃない。ラピとレッドフードの物語や、キロとタロスの物語は涙を無しには語れない。

 

 その上で言おう。この世界は、人間や機械のスペックに、絆パワーだとか友情だとか、そういう奇麗に言い換えた根性論が介在する事は絶対にありえない。

 

 キロとタロスのコア直列接続、当時の私はアレが友情パワーみたいに錯覚したが、作中でのタロスの解説を聞くにあれは、ラピの物と同じコアの反発作用だ。

 

 死ぬほど言い方は悪いが、キロのニケとしてのスペックとタロスの器用貧乏な性能で、(アレが何なのかよく分からないが)ニヒリスターまがいの覚醒をしだしたトーカティブを圧倒している。やはりダブルコア現象*2は絶対に研究しておくべきだ。

 

 そんな訳でちょっと前に、もう既にコアとニケを直列に接続する機械を作ってみている。早速レイチェルのコアに繋いで実験してみると、予想通り互いのコアが反発し出した。その余波で生じる膨大なエネルギーも観測できた。

 

 ダブルコア現象の再現自体は簡単だった。問題は、これを実践レベルで安定させる事だ。

 

 ラピの場合たった二秒で大量の冷却水を必要とするほどの高温を発し、キロとタロスの場合でも3分が稼働限界だった。実際私がレイチェルに対して行った実験にしても激痛、又はそれに類する症状を確認している。「二度とやるなこのクソガキマッドサイエンティスト!!」とゲンコツを食らってしまった……。

 

 大分適当に作った機械なので、もっと効率的に反発させてより膨大なエネルギーを生み出す研究も可能だろう。だがまずは接続による余波を除去、または最小限に留める研究が先だ。

 

 希望はある。原作で見せたラピとレッドフードの融合だ。

 

 出力自体は反発作用を起こした時より弱まっているように見えるが、それでもかなりの出力だ。ベヒモスやレヴィアタンと対等に渡り合っているぐらいだからな。何より安定しているっていうのが素晴らしい。

 

 くどいようだが、私は友情や絆が未知なるパワーを引き出すとは考えていない。ラピとレッドフードの融合も、科学的に説明が可能な筈だ。

 

 ならば、ニケと強化外骨格とのダブルコア現象、それも反発作用ではなく融合による出力強化を狙えるのではないだろうか。

 

 コストを考えると頭が痛いが、科学者というのはついついロマンを追い求めてしまう物なのです。

 

 まぁ兎に角、まずは接続による負荷の軽減が課題だな。そこから融合のヒントがあるかもしれない。

 

「アドルフ、ちょっといい?」

 

 という所で、ハンナがラボに入ってきた。

 

「ハンナ、どうかしたか? コアも肥料もまだ備蓄があったと思うけど……」

 

「そうじゃないの。いーちゃんが来てるわ。何か少し重要な話があるんだって。休憩室で待たせてるから、顔を出してあげて」

 

 なんかいつの間にかハンナはE・Hをそんな呼び方をしていたらしい。彼女も満更でもなさそうだった辺り、やはり1人の人間なのだろう。テロなんかやってないで、人助けをしていた方がずっと彼女らしいと、この一年でそういう人間だと思えるんだ。

 

 しかし、重要な話とは何だろうか。確か、まだエンターヘヴンは狩りに移行できる段階ではないっていうのはこの前話してもらった筈だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アドルフ、まずは礼を言うわ。石鹸の生産体制と水の浄化作業がようやく形になったわ」

 

 E・Hに前置きとして振られた話だが、大変結構なニュースだ。

 

 アウターリムが取り巻く悪環境は、なにも食料不足だけではない。

 

 この環境故に驚くものでもないが、平均寿命は30歳を下回る。人口ピラミッドで言えばアウターリムは勿論富士山型。あっちこっちで捨て子が見つかるぐらいには誰かがズッコンバッコンやりまくる癖に、医療体制が崩壊を通り越して無くなってるから疫病で子供が真っ先に死ぬ。

 

 壊れて物置と化したトイレが捨て子置き場になり、そこが産婦人科と呼ばれているという吐き気を催すブラックジョークがあるんで、産婦人科にも掛かれず出産も命懸けの上性病というダブルパンチで女性も死にやすい。

 

 仕事に出てる男性にしても、地上でラプチャーに殺されたりマフィアの抗争に巻き込まれたり、老朽化著しい建築物や手抜き建築で働いた結果事故死が相次ぎと、死亡率は女性と割とトントン。

 

 その上で兎に角疫病で人が死ぬ。ただでさえ栄養失調で免疫力が落ちている中で、何も手が加えられていない水脈で喉を潤す結果食中毒と感染症で負のスパイラル。シャワーを浴びれず、場所によっては排せつ物の処理もいい加減で疫病の温床になる。

 

 管理している組織の采配次第で幾らかマシな状況になっている場所もあるが、アウターリム全体としては深刻な問題であるのには違いない。

 

 そこでまず手を加えるべきは疫病対策と安全な水の確保だと思った。E・Hもこれには激しく同意したので人員確保には苦労はしなかった。

 

 まず浄水だが、それをする為の施設がないと話にならない。なので浄水場の建設をエンターヘヴンに依頼。幸い建設技術にある程度は明るい人材がエンターヘヴン側にはいたようで、設計図を渡して建ててもらう。マイティツールズ程の仕事は到底期待できまいが、贅沢は言えないな。

 

 ……因みに私は水を火で沸騰、その後ろ過してから飲んでるので病気には罹ってない……筈。

 

 そして浄水作業を行うにあたって必要になってくる薬品は私達が材料を調達。疫病対策で生産体制を整えている石鹸の材料もだ。

 

 長い時間をかけてようやく浄水場が完成したようだ。

 

 朗報には違いないが、そうなると問題になってくるのは……

 

「ただ……やはり薬品関連の材料はアドルフ達頼りになるわ」

 

「それは仕方ないでしょう。材料の一つの岩塩が採れる鉱脈まではどれだけ急いでも往復で2時間は掛かる距離ですから、普通の人間には任せられません」

 

 その上電車も車もなく、ラプチャーが蔓延る地上という場所を徒歩で2時間だ。岩塩というお荷物をピッケルで採取して、ラプチャーからの攻撃を銃で応戦しなければならない。必然的に過酷な遠征にならざるを得ない。

 

「貴方達には苦労を掛けるわね……その、とても言いにくいんだけど……」

 

「個人で採掘出来る量程度では賄い切れない。そうですね?」

 

 だろうな……一度に持ち運べる量がバッグにパンパンに戦利品を詰め込むなんて有様じゃとてもじゃないが足りないわ。

 

 下手すれば中世より酷い輸送能力、それで総人口の10分の1の需要を賄うなんて無茶だ。

 

 何とかこの輸送能力を改善したい……装甲ステルス輸送車でも作るか……? いやでもな、あれもやるこれもやると、キャパオーバーも甚だしいぞ……。

 

 ……待てよ? 何か引っかかるな

 

 装甲……装甲……

 

 

 

 ……あっ。

 

 

 

 あるじゃないか。地上を走行する、輸送能力が高くておまけに武装も備えている機械が。

 

 そしてそれは私の原作知識が正しければ、ここアウターリムに絶対にある! 何しろエンターヘヴンが作ってたって話だからな!

 

「あの、E・Hさん――」

 

 

 

 

 

「――成程……! 確かにアレをアドルフに任せれば、輸送能力の問題も解決するし、地上に行く子達の援護にもなる!」

 

 そうE・Hは言いかけて、だがすぐに首を横に振った。

 

「……でも、アレは過激派が管理しているわ。アドルフが手を加えると聞けば彼らは黙っていない筈よ」

 

 惜しい。光明が見えてきたかと思ったが、やはりエンターヘヴンを何とかする方が先か……!

 

「そう、前置きが長くなったわね。今日私が来たのは、それと関係がある事よ」

 

「というと……?」

 

「……クロウを、こちら側に引き込まなければならない」

 

「っ……」

 

 クロウの名前を出されるだけで顔を引きつるようになってしまった。元からそんな好きなキャラではなかったが、嫌いでもなかった。寧ろ意見が終始一貫してるのはある種の好感すら覚えていた。

 

 だがこの世界でエンターヘヴンと関わり始めてからというもの、クロウは殺さなければならない大敵という確信が日に日に強まっている。

 

「貴方がクロウを嫌っているのは分かってる。エンターヘヴンがテロをやり始めた先駆けだもの。テロを嫌う貴方がクロウを嫌うのも理解できる。でも、今のやり方じゃもうこれ以上は事態が進展しない。迷いの残る人員はもう片っ端から吸い尽くした。後は意見が固まった人間だけ。もう中立派とも言うべき人間は居なくなったの」

 

「そこで、クロウを引き込めば旗頭を失った過激派は、小突けば瓦解するような派閥に弱体化するという訳ですね……」

 

「ええ。そこで聞かせて欲しいの。アドルフは、どうしてそこまでクロウを嫌うの? 正直な話……私はそこまで? と思うの。確かに、彼女のやり方はとても褒められた物じゃない。でも、選択肢がない中で彼女なりにアウターリムの未来を考えてやった……やむを得なかった。だから私は、彼女を糾弾できない。もう既に私もやる事やったというのもあるけど、選択肢がない人間の立場というのも考えたいの。私もそうだったから……」

 

 クロウに関する彼女の認識は、今初めて聞いた。

 

「彼女と話をして欲しいという事であれば、その件については了承します。ですがE・Hさん」

 

 人を見る目がないんじゃないか。そう思わずにはいられない評価だった。

 

「アレがアウターリムの未来を考えている等、笑えない冗談です」

 

「アドルフ……いくら何でも、そこまで――」

 

「逆に聞きますが、彼女は何故AFX爆破テロなんて暴挙に出たのでしょうか?」

 

「それは、中央政府やアーク市民の関心を引く為に――」

 

「それで集まったのは憎悪でしょう。本当に関心を引く事が目的であれば、中央政府の行政施設の破壊等に留めておくべきだった。なのに爆破して一番死人が出る列車という場所を態々選んだ。AFX爆破テロの惨状は噂通り。これでアーク市民は完全にエンターヘヴンの敵に回った! 逆効果だと思いませんか? 飢えて死んだ子供の写真や、光の射さないアウターリムの街並みの写真をアピールして同情票を得るという手もあった。まだ打てる手はあった! にも拘らず、彼女はテロを断行した!」

 

 ああ、そう考えるとスッキリする……原作で明言されたわけではないから推測でしかないが、恐らくAFX爆破テロの目的は、注目を引く事ではなく、()()()()()()()()()()()()()という手段を封殺する為だ。

 

 アークの破滅を願うクロウからすれば、万が一同情票が集まった結果中央政府とエンターヘヴンの融和の可能性が出てきたらそれこそ困る筈だ。アークとアウターリムの対立構造が維持できなくなるんだからな!

 

「E・Hさん、この際ハッキリ言っておきます。

 

 

 

 アレはアークの破滅を願い、アウターリムをその為の道具としか考えていない、正真正銘……『人類の敵』です」

*1
タロスが該当

*2
仮称




現在公開可能な情報

強化外骨格

現在アトラース社では複数のタイプが開発されてきたが、アドルフが初期に開発したのはニケ専用武器の整備や運搬を行う為の簡易的な物だった。

空気吸引機を背中に背負い、手足それぞれに対応した外骨格を装着する。空気吸引機と外骨格はポンプで繋がっており、吸引された空気がポンプを通り、空気圧を生み出す事でエネルギーを得る。子供の力でも武器を持ち上げることが可能だった。

嘗てアドルフが使用していた強化外骨格は、多くの人間の希望で現在博物館で管理。故障しており、現在は動かせない状態である。
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