四大企業 アトラース 作:スキル素材年中枯渇ニキ
「初めまして~! 私、オーバー・ザ・ホライズンで、乗務員を務めています。ソラって呼んでくださいね♡」
「え、ええ……」
ほぼ使われていない見せかけの居間に待たせていたのは、成程オルガの言っていた通りCAのような恰好……いや、航空機を運用している以上実際CAなのだろう。実際その側面は持っていると考えられる。
そんな彼女のスーツからは溢れんばかりの豊満な胸は、成程運営らしい趣味だ。後の原作では実装されているだろうなとプレイヤーとしての感覚で分かる。
そして彼女の所属するというオーバー・ザ・ホライズン。原作知識にはないが、この世界に来てからは聞いた事のある名前だった。インタビューで言っていた空軍相当の部隊とはコレの事かと思ったと同時に、おそらく自分は関わることはないだろうと思っていた。
故に読めない。このソラと名乗るニケは私に何を求めている? 任務でここにいるとしてもそれは果たして空軍の役割では断じてない。
考えるに、個人的な理由で訪ねている……筈。
「ちょっと……警戒させちゃいましたかね?」
「まぁ、私も立場上身の安全に気を使わないという訳にはいきませんから」
実際、私が暗殺される可能性は過激派の爆破計画が露呈して以降輪をかけて心配されるようになった。コレクターを始め、私の事が都合が悪い人間からは何度か暗殺されかけている。
尤も、私のニケ達が護衛してくれているのに加え、私もちょっとした不意打ち対策の発明品があるので全てが失敗に終わっている……なんてのは今生きている私を見れば分かるな。
「しかし、貴女は中央政府所属ではあるものの、公務員としてここにいる訳ではありませんね? もしそうなら単独で来る訳がありません」
「ええ。そこの……オルガちゃん、でしたっけ? に説明した通り、お噂は
何を頼まれるかは知らないが、とりあえず考えさせてくれで時間を稼ぐつもりでいる。その間にコイツの弱みを握りたい。あまり考えたくはないが、不自然にニケ戦力を持ってるガキがいまーす! なんて中央政府にチクられたらたまったもんじゃない。そういう脅しの可能性をチラつかせて交渉に迫る可能性は十分に考えられる。
こうやって無事にアウターリムを出入りできるんだ。ある意味でおそらく碌な勤務態度ではあるまい。付け入る隙はある……と思う。
「貴方も忙しそうですし、単刀直入に言っちゃいますね☆ 地上に出向いて物資を集めているニケ達に、あるものを探して欲しいんです」
「ふむ……? その探して欲しいものとは?」
「……勝利の翼号、って知っています?」
思わず目を見開いた。出てくると思っていなかった名前を前に、耳すら疑う。
「……噂程度には聞いた事があります。かつての伝説の部隊、ゴッデスが乗船していた飛行戦艦。……まさかそれを探せと?」
「はい! 私達オーバー・ザ・ホライズンにとって究極の目標であり、人類の為に再び空に上がるべき……とても、とても貴重な「人類の財産」です」
「……」
元々、何処かで放棄されているだろうとは予測していた。ストームブリンガーと殴り合いが成立する戦力、無事ならアークが保管していない筈がない。
オーバー・ザ・ホライズンにとって究極の目標……成程、ストームブリンガーに勝てる航空戦力、空軍からすれば喉から手が出る程に欲しい訳だ。
捜索自体は頷いてもいい……だが……
「本当は、地上に上がるコレクターの集団とかに依頼したりしていたんですけどね……でも最近の彼らは忙しいみたいで☆」
コレクター……ああ、成程。これ間接的に私のせいか。
「責任を取れ、という話でしょうか?」
「いやいや~、そんな堅苦しいニュアンスじゃないんです。勝利の翼号が欲しいのは、先程言ったように私達の部隊にとって究極の目標である、と同時に……光の下で生きていたいからです。本当に、他意はないんですよ♡」
……おそらく、彼女の言葉に嘘はないのだろう。これから出会うと思われるちしかんにも似たようなやり取りをしたのだろうか。
「勿論、タダでとは言いません。これはお願いではなく、取引のつもりで来ました♡」
なんて考えている傍で、悪そうな表情をして人差し指を口元に立ててシーッとジェスチャー。
その瞬間、その豊満な胸を包み込むスーツを両手で掴み、あたかも露出狂のように左右に勢いよく広げる。暴力的な揺れを繰り出す乳房がまろびで――
バサッ!
――る筈もなく、CAスーツの裏側にいくつもの物資が張り付くように収納されていた。
中は食料品がメインだろうか。数は少ないが工具や医薬品もある。
「コレクターとの取引ではこういう物を提供していたんですけれど……貴方の場合はそこまでメリットがありませんよね。今は、ご承諾頂かなくても構いません。ただ……何か欲しい物でもありましたら、いつでもご相談ください。私が貴方の希望を叶えてみせましょう♡」
ビックリした。ハニトラかと思った。側にいるオルガが銃に手を触れてるし。
立場が立場なだけに9歳のショタだっつーのに何度か普通にハニトラされるようになったんだよね。その度にニケの皆んなが
『汚い乳首をアドルフ様に見せるな貴様ァ! 怖がってるだろうがッ!!』
『何なのその乳首、早く隠しなさい!!』
『ふざけた乳首しやがって!!』
と叩き返してくれている。つかニケ達皆んな各々で化粧とかしたりして見た目に気を使ってるんだぞ? そんな女たちを侍らせている男相手にハニトラやろうって考えた奴バカだろ……いや、この世界からしてみればニケフィリアの私が異常なのか。
……ただまぁ、物資で交換という事ならこの取引自体は悪くない。……ただし、得をするのは
「いえ、分かりました。その医薬品、それで手を打ちましょう。勝利の翼号、必ず見つけてみせます」
「……ふふっ、やっぱり噂通りでしたね☆」
「噂?」
「医薬品に目がないそうですね。病気に苦しむ子供達を助けようとしてるって話を聞いた事があります」
「……」
ニケを作る為の人間が欲しくて具合の悪い人間を探している。そのついでで治療しているだけ。
……ではあるのだが、これから支配階級を目指す人間としては人道的な名声が欲しくないかと言えば嘘になる。
実際に彼女がどのような噂を聞いたのかは定かではないが。コレクターに頼っていたという事は、彼らから噂を聞いたのだろうか。私、奴らからは死ぬほど恨まれてるから、変な話を聞いていないだろうか。それとも、その上でのあの発言か。
その後、手持ちの医薬品を置いていったソラは、私とblablaでフレンド登録した後は話はこれだけだと言わんばかりに立ち去って行った。
「……オルガ」
「……うん。聞いてた」
「今すぐじゃなくてもいいので、皆んなに連絡を」
「勝利の翼号……ってのを探すんだよね……ふぁ……後で皆んなに伝えとく……」
「はい。そして、それらしき物を見つけたら……
私にだけ伝えて、他の誰にも教えないでください」
「……? それって、あのソラってニケにも……?」
「はい」
寧ろ、一番伝えてはダメだ。
勝利の翼号、色んな意味でとても重要な戦力だ。これからアークと対立するかもしれない陣営としては、アークがこれを手に入れるのは避けたい。単純に考えて、アークの戦力の向上は好ましくない。
だいたい、アークがアレを手に入れた日にゃ、十中八九碌な使い方をしない。
勝利の翼号は、必ず私が手に入れる。
そして、在るべき人達に、これをお返しするんだ。
「……紅蓮さん」
死んでるとは思わない。彼女はそんなヤワじゃない。
「また、会えますよね……?」
貴方のくれた種子の数々で、飢える人達は少しずつ確実に減っていった。
これだけでもきっと、返しきれない恩だ。その上、今でも人類の為に勝利の女神としてラプチャーと戦っている。碌に補給も受けられない、仲間も指で数えられる程度、在りし日の人間社会から切り離された世界で永遠と戦い続ける。私だったら発狂している。
挙句の果てにはどこの馬の骨とも知らんクソガキに投資だなんだと偉そうなことを言われて、それで助けてやるんだ。
自分達を見捨てた屑共の末裔に。
「っ……」
自然と拳が固くなった。
私はやろうと思えば、アークで暮らす事は出来る。エリシオンにでもミシリスにでも、MMRにだって就職できるという自信があった。
これがそうせずにアウターリムで起業しようとする理由の一つだ。最終的な判断権利が中央政府に帰結するのでは意味がないんだ。結局の所中央政府にとって英雄とは英雄である内に死んでくれなければ困るんだ。
ある程度の……理解は示そう。だが納得は出来ない。
OVER ZONEのイベントストーリーを見ただろう? 死者に囚われるラプンツェル、酒に逃避する紅蓮、戦いに身を投じる為感情を殺したスノーホワイト……
そして、ピナに置いていかれ人類に裏切られて絶望の淵に立たされたドロシー。
原作の彼女達の結末はどうなった? ちしかんに救われたのだろうか? 運営には悪いが、彼女達の結末はきっとハッピーエンドだ……と、そう言い切る自信はなかった。残念ながら今の私にそれだけの信頼が、運営にはない。
『生きるのを諦めないでおくれ』
呪いとして残りかけた彼女の言葉は、今となっては生きる希望であると同時に、生きる目的そのものだ。
今からどれだけ時間が掛かるかは分からない。だが、アークに見捨てられた人達の助けになりたい。母さんと同じく病気と空腹に苦しむ人達の苦しみを、1人でも多く解放する。
そして紅蓮さん達に、何としても伝えなければならない言葉がある。何も助けたいのはアウトローだけじゃない。アウターリムを新しい補給拠点として使ってもらえないか? ささやかながら美味しい食事の一つでも出せないだろうか? それが叶わぬならせめて、一言だけでいい。言葉を伝えさせて欲しい。
……そうなると一つ重大な懸念点がある。原作でちしかんがスノーホワイトに、アークに戻ろうと思ったことはないのかと尋ねた時だ。
『慰めからの歓迎なんて、私達には無意味だ』
『……否定された気持ちになるだろう。……私達は失敗してもよかった。そんなに頑張る必要はなかったんだ。……そういう気持ちになるだろう』
この発言の確実な真意が語られる事はなかったが、大まかな想像は出来る。ゴッデスとして、人類に奉じ続ける。その決意の表れだ。
だがこうは考えられないか?
結局の所心の奥底ではスノーホワイトも、ラプンツェルも紅蓮も、ドロシーと同じように人類に失望し、憎悪した。そして、彼女達を突き動かしているのはゴッデスとしての矜持だけ。
ラプチャーと死闘を繰り広げながら人類を拒否し続ける事で、人類の大罪の証そのものとなり続ける事で心の安寧を図っているとしたら? 成程、人類もアークも捨てたものじゃないという事実を受け入れられないという説明であれば、スノーホワイトのセリフも納得がいく。
そんな狂気の沙汰としか表現できない生き様を見せつけながら地上を彷徨っているのだとしたら……それはもう取り返しがつかない。誰も彼女達を救う事は出来ない。おそらくちしかんだってそうだ。
悲観主義が過ぎるか? だが私だって結局の所、ゴッデスを見捨てた屑共の末裔である事には変わりないんだ。スノーホワイトの言葉の真意を聞くまでは、私はこの可能性を未来永劫捨てきれない!
紅蓮の目に、私はどう映った? あの奇跡の出会いを思い出す度に何度もそれを考えた。
「……っ!」
私は顔を大袈裟に振るった。
それは今考える事じゃない。まずは目の前の壁をどう飛び越えるかだ。
これからエンターヘヴンは、ラプチャーの信望者をアウターリムから一掃する計画を立てている。私はその辺に携わる訳じゃないが、新たな物資の収集力強化としてアルトアイゼンの完成を一刻も早く成し遂げなければならない。
ゴッデスをどうにかしたいなんて、ぼくはしょうらいおおきくなったらサッカーせんしゅになりたいです! と将来の夢を発表する小学生と同じだ。
皮算用をしている場合じゃない。今出来る事はあるし、私がやらなければならない事も多い。もう大勢の人間の命を左右する責任者なんだ。
しっかりしろ私!!
キッチンと言っても、ここの設備はその充実さで言えば他の追随を許さなかった。
IHクッキングヒーターは頑丈さと熱伝導率を現在の技術力で実現しうる限界まで拘り抜き、それで熱されたフライパンは、それ自体の素材の良も合わせて焦げが付く事は滅多になかった。
料理するにはあまりにも十分すぎる広さを与えられ、少なくともスペースに関して料理人がストレスを感じる事はないだろう。
器具、設備、新鮮な水、料理人にとって理想の環境と言えるこの場所で料理を完成させ、そして出来立てホヤホヤの野菜炒めを前に、下で唇をひと舐めして目を輝かせるニケが1人いた。
まずはひと口。タレで覆われた野菜をスプーンで掬い上げ、それを口に運んだ瞬間……
「……っ」
小さく、思わず笑みが零れた。あまりにも美味だったのか、スプーンの手が止まらない。気付いた時には平らげていた。
続けて差し出されたポテトサラダも、少し気が高ぶっていたのかがっつくように口の中に放り込み、熱が籠り脂っこくなった口の中をポテトサラダがひんやりと潤していく。コーンとジャガイモがほんのりと甘さを醸し出し、スッキリした味わいに引き戻す。
最後にバターで味付けされたパンで食事を締めくくる。ふわふわの食感がほんのりとした甘さと共に舌を包み込んだ。
満足したと表情だけで読み取れた。それを見て料理人も思わず笑みを零す。
「ご馳走様。ありがとう、クラスト。こんなに楽しい食事は久しぶり」
「えへへ……折角の新鮮なお野菜だったからね! まぁ、食事は美味しいに越したことはないんだけど……」
「そうね。……正直今回は社長には悪いけど――」
そこまで言って「oh、BreadyにCrust! Ⅼunchは楽しめたようですNE!」とキッチンの入口から一声。服の装飾品から照らされているライトの見た目も相まって一層五月蠅さも感じられるその男は……
三大企業の一つ、テトララインのCEO、マスタングその人だった。
「噂をすればね、社長。じゃあ早速だけど……」
マスタングからブレッディと呼ばれたニケは、美味な食事にありついて緩んだ表情が一転してキリッと変わる。
「結論から言えば、食中毒の問題は認められないわ。与えられた肥料も水も適切、栽培方法もいたって普通。本当に、いたって普通の食材よ。今後もこの品質の食材が放出されるという保証はないけれど……私が考えるに、ブラックネットから農作物を仕入れている料理店に関しては黙認しても大丈夫だと思うわ」
「Great! それはいい事を聞きましたNe」
「社長」
申し訳なさも混ざった声色で話し始める。
「今回私達クッキングオイルを呼んだのは、農作物の品質調査もかねて……ダークヴェールだったかしら? っていうアウトローを調べて欲しい……という事だったわね?」
「YES!」
「……社長。貴方には色々と世話になったわ。能力絡みで私達を守ってくれたり、色々と便宜を図ってもらったり……でもごめんなさい。
……あんまり情報を読み取れなかったというのもあるけど……今回ばかりは、少し協力したくないの」
多くの人々の思惑が交差しつつ、アドルフが10歳の誕生日を迎えて間もなくの事だった。
「作戦結構だ! 教団が礼拝の為この場所に集結しているという情報が入った。だが礼拝というのは表向きの話だ。徐々に従えるニケの数を増やし続けているアドルフを異端者として暗殺する計画を立てている。我々は情報の優位を活かす! 教団員が集合している所を、先手を取って包囲殲滅するッ!」
ギュンターが地図に指差しながら多くのニケ達に言い聞かせるように声を張り上げる。
アウターリムにおける覇権主義組織、及び危険思想を持つ武装勢力、これらを今後のアウターリム統一を目指す過程で排除する、狩りと呼称されてきた撃滅作戦。
「……! ボス、奴らが動きました。例のターゲットも補足しています」
「オッケー、そのまま見張ってて。あたし達もすぐ行くから。……一応言っておくけど、失敗は許されないと思っておいて」
「了解です。抜かりありません」
その水面下で各々が先手を取ろうとする。事の重要性を分かっている全員が先を越そうと必死だった。
「…… Breadyの調査は完璧でしTA。栽培方法、使われている肥料、そして……そのAgricultureに従事するlaborerも、何一つ違法性はありまSEN」
マスタングも、その1人である。
「ならば余計に確かめなければなならいのDESU。Dark Veilは何を目的としてOuter Rimで善政を敷いているのか……そこにDarkな思惑があってやっているならどんな手を使ってでも止めなければなりませんGA、もしも当たり前のHappinessを求めての事なら……」
自室のオフィスでスマホを取り出す。ピポパポと番号を入力してプルルルと鳴らす。
「優秀な人材が欲しいというテトララインのInterestとも一致しMASU。
……兎も角、Insuranceは掛けておく必要がありますNe」
「……もしもし、コーヒーの出前かしら。一番おすすめなのはシュガーコーヒー。ミルクコーヒーとプリムコーヒーもあるけど、シュガーコーヒーが一番美味しいわ。
……え、違う?」
現在公開可能な情報
ノヴァタイプ
元々はミシリス社製の量産型モデルであるプロダクト12をベースに再設計したアトラース社製のニケである。しかし様々な改良が重なり、現在は設計上の面影は殆どない。
最大の特徴はボディの体内に随所に仕込まれているエネルギーブースト機構によってコアから放出されるエネルギーを数倍に増幅した結果、量産型としては前例のない身体能力を発揮する点にある。重量の関係からニケでさえ運用の難しい重火器等を安定して運用可能とし、重量的許容水準を大幅に引き上げた。
更にボディの金属密度を引き上げる事で対弾性も向上している。ハーモニーキューブのシールド機能も合わさり防御面に秀で、殉職率も極度に低かった。
しかし金属密度の引き上げによって著しく重量が増加し、結果実戦では老朽化した橋を渡れない、建物に入ると床が抜ける、砂漠地帯では足を取られる等、地形的汎用性の低さが露呈する。
そして金属密度に加え、ブースト機構の搭載によってコストも極端に増加。更にノヴァタイプβの為に専用の重火器生産ラインを構築する必要性もあり、経済的にも無視できない負担となっており、量産型としては最も賛否の分かれるモデルとなった。