【完結】FFX もう1人の物語&Re:FFIX 帰る場所を求めて 作:ウルハーツ
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リンドブルム城
イプセンの古城へ向かったジタン達は、そこでサラマンダーと一悶着ありながらも無事に手掛かりを手に入れて戻って来た。彼らが持って来たのは4つの鏡。それぞれには決まった内容の文面があり、手に入れた部屋の嵌っていた壁は世界地図の様な絵が描かれていた。そこで、彼は予想する。その地図に嵌っていた鏡の場所に、別世界へ繋がる道の封印を解く鍵を開ける方法があるのだと。そして彼らがそれを持ち去る時、突然現れて襲い掛かって来た未知の怪物を倒した際にそれが死に際で言った言葉。
『ひとつは全て。全てはひとつ』
「多分、全ての場所を同時に一度で攻略するって事だと思うんだよな」
「なるほど、それで俺のところに来たって訳か」
「あぁ。それで、どうなんだ? 怪我の具合は?」
「昨日と比べれば、全然余裕だな。問題ねぇよ」
既に彼らが向かってから戻ってくるまでに1日が経っており、その間にレイナの身体は人とは思えぬ速度で傷を癒していた。悪い事では無いのだが、レイナは自分が人とは違う存在になってしまっている事を実感して少々複雑な思いを抱く。だが、彼らと共に別世界へ行く為には都合が良かった。
「4か所を9人で。それぞれ水・火・風・地の鏡が示していた場所へ行く必要がある」
「俺は何処でも良いぜ」
「エーコも、レイナと一緒ならどこでも良いわ!」
「そう言うと思ったよ。実はもう、編成は決めてあるんだ」
水の場所にはレイナとエーコが。火の場所にはフライヤとサラマンダーが。風の場所にはビビ、スタイナー、そしてク族の仲間、クイナが。最後に地の場所にはジタンとダガ―が行く事となっていた。全てジタンが決めた編成であり、彼の私情が多少混ざっているのは編成から見ても明らかだが……実際の話としては、悪く無い編成である。
「出発は午後。それまでに準備をしておいてくれ」
「あぁ、分かった」
ジタンの言葉に頷いて、彼が去って行く姿を眺めたレイナはベッドへ仰向けのまま両手を頭の後ろに当てて倒れる。そんな彼女をエーコは少し心配そうに覗き込んでおり、その様子に気付いたレイナは視線を向けて口を開いた。
「なんだよ?」
「本当に大丈夫なの? だって、昨日あんな怪我をしたばっかりなのに!」
「言ったろ? 治りが速いんだって。俺も信じられないくらいにな。だから、心配すんな」
「……うん」
それから時間が来るまで、最後の休息を取った2人は彼らと共にヒルダガルデ3号へ乗り込んだ。……向かう先は水の祠。別の世界へ渡る道の封印がある場所の1つである。
水の祠
「それじゃあ、後で迎えに来る。気を付けてな」
飛空艇へ乗り込みながら告げるジタンを見送り、レイナとエーコは後ろへ振り返る。彼女達の居る場所は海に囲まれた小さな島。その島にあるのは洞窟の様な穴だけであり、魔物の気配は一切無かった。しかし不思議な程に静まり返ったその場所を見て、レイナは違和感を感じる。
「何か、あるな」
「封印があるんでしょ?」
「いや、そうじゃなくて……とりあえず進んでみるか」
飛空艇の進む速度はかなりのものであり、世界一周も数分で行える程だ。故に余り時間を掛けていては、同時に攻略を果たせなくなってしまう可能性がある。レイナは違和感を感じながらも、エーコと共に洞窟の中へと入り込んだ。
洞窟の中には謎の絵が描かれた壁や足場が沢山あった。全て読む事の出来ない文字であり、エーコは気になった様子で壁へ触れる。……途端、彼女達の足場が突然揺れ始めた。
「な、なに!?」
「っ! 跳ぶぞ!」
「えぇー!?」
突然レイナに持ち上げられたエーコは、自身に迫る
「罠があったらしいな」
「ビックリしたわ! って、あそこにあるの。何かしら?」
無事に奥へと辿り着いた時、エーコは祭壇の様なものを見つける。そしてそこへ駆け寄ろうとするのを、レイナは彼女の前へ手を出して防いだ。エーコは不思議そうにしながらも、文句は言わない。レイナが何かに気付いた事に、気付いたのだ。
「出て来いよ」
『ほう、気付いていたか』
「!?」
祭壇へ向かってレイナが言った時、帰って来た返事にエーコは驚きながらも何時でも戦える体勢に入る。そして、彼女達の目の前に現れたのは2本の触手を揺らす巨大な魔物だった。今まで出会った魔物にも喋る存在はいたが、それは総じて危険な魔物。故に今回も危ない事は間違い無い。
『我は水のカオス、クラーケン。封印を解こうとする愚かな娘共よ。死ぬ覚悟は出来ていような』
「悪いな、死ぬ覚悟なんて今まで一度も持った事はねぇよ。あるのは生きる覚悟だけだ」
「邪魔するんだったら、エーコ達がやっつけちゃうんだから!」
2人の答えはクラーケンの怒りを買う事になる。だがそんな事は知った事では無いと、レイナは黒鬼徹を手に構えた。そして襲い掛かるクラーケンの触手を避けて、その身体へ攻撃を加える。小さな身体の放った重い一撃はクラーケンを怯ませ、それと同時に少し離れた場所でエーコが笛を吹き始めた。
『エーコ。俺の事は気にするな』
『レイナ?』
『お前のやりたい様に戦っていい。呼びたいなら、呼べ。別にそんな事で怒ったりしねぇよ』
「おいで、フェンリル!」
共にまた戦う事になった時、リンドブルムの客室で言われた言葉を思い出しながらエーコは召喚獣を呼ぶ。彼女の呼び声に応えて現れたのは狼の様な召喚獣、フェンリル。そんな彼の者の足場には巨大な顔が付いており、フェンリルが吠えると共に地面が揺れ始める。そして、巨大な拳がクラーケンを下から大地ごと殴り飛ばした。
「じゃあな!」
空へ舞い上がった事で、体勢を崩したクラーケンにレイナが跳んで追い掛けると共に大剣を振るう。相手の身体とすれ違う様に移動した彼女が地上へ着地した時、一拍おいて落ちて来たクラーケンは叫び声を上げながら消滅した。
「一昨日来やがれ、ってな」
「レイナ馬鹿ね。一昨日なんて、行けないわ。過去には戻れないのよ?」
「……」
否定するのも面倒だったレイナは、祭壇の元へ。そして封印を解く鍵と思われる穴へ、ジタン達が手に入れた水の鏡を嵌め込む。特にこれといった変化は起きないが、やる事は他に無かった事で、2人は祠から出る事にした。
「レイナとエーコに掛かれば、楽勝だったわね!」
外へ出たエーコは両脇に手を当てて自慢げに言い切る。その後、暫く待っていた彼女達の元へヒルダガルデ3号に乗ったジタン達が迎えにやって来る。2人はそれに乗り込み、他の仲間達を拾った後に別世界への入り口とされる場所……輝く島へ向かうのだった。
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エスト・ガザ近辺上空。
エーコが危険な目に遭ったグルグ火山のあるその付近に、封印を解かれた輝く島が存在する。そしてその島から
「行くしか、無いな」
「と、飛び降りるの!?」
「もし、別世界へ渡れなかったら……」
ジタンはそこで、飛び降りる事を決意する。ギリギリまで近づいたとしても、高さはかなりある。もしも飛び降りて別世界へ渡れなければ、どうなるのかは誰もが分かった。だが、他に方法が無いとジタンは甲板から身を投げる。彼に続いて他の者達も覚悟を決めて飛び出し、彼らの視界は真っ白に染まった。
テラ
レイナは見覚えの無い場所で目を覚ました。一面が青い光に照らされた、幻想的な場所。辺りを見渡せば、自分と一緒に飛び降りたエーコやビビが倒れている姿が彼女の視界に入る。
「おい、大丈夫か?」
「ぅ、ぅ……ん……」
「ぼ、僕達、生きてる、よね?」
「あぁ。間違いなくな」
怪我が無いかをしっかりと確認した後、2人は立ち上がる。すると違う場所からフライヤが顔を出して声を掛けた。全員、近い場所へ飛ばされたのだろう。他の面々とも合流し、最後に周囲の光景を見てから少し様子の可笑しかったジタンとも合流が出来た事で全員はテラを歩いて見る事にする。
「綺麗。でも、何処か悲しい……そんな場所ね」
「少なくとも、この様な光景を目にした事は一度も無いのじゃ」
「なら、目的通りに別世界とやらへ来れた訳だ」
「美味しい物、あるアルか?」
「こいつ、本当に食べる事しか頭に無いな」
「……」
「ジタン?」
「ん? あぁ、悪い。何か言ってたか?」
ダガ―、フライヤ、サラマンダー、クイナ、レイナの順で話をする中、考え込んだ様子のジタンに気付いてダガ―が声を掛ける。それに気付いて何時もの様に返したジタンだが、やはり話が終わると何かを考え込むような様子を見せる。すると、彼らの前に初めて人が姿を見せた。金色の髪に尻尾を生やした、ジタンに似た誰か。一番最初に気付いたエーコが声を上げた時、全員がその姿を視界に捉える。だが、見られた相手は逃げる様に何処かへ去って行ってしまった。
「ここに住んでいる者かもしれないのである!」
「どうするの?」
「……取り敢えず、追い掛けよう」
スタイナーの予想とビビの言葉にジタンはそう決断して、逃げてしまった人を追い掛ける。時折まるで自分達を待つ様に姿を見せては、何処かへ導く様に去ってしまうその人物。やがて逃げる事もしなくなった時、彼らは長い階段の目の前に立つ事となった。
「あれは……」
「赤い、目玉……?」
そしてそこで、彼らは何時か空に見た赤い目の様な光を放つ飛空艇の姿を見る。時にはイーファの樹で。時にはアレクサンドリアで見たそれを前に、何方も酷い悲劇に見舞われたダガ―はそれを見て倒れてしまう。ジタンは慌てながらも彼女を横抱きに抱えて、休ませる場所を探す事にした。……その結果、彼らは導かれた場所へ入る事となる。
魂無き村、ブラン・バル
そこに住む住人は全て金髪に尻尾だった。そう、全てがジタンと似た容姿をしていたのだ。何とか民家を見つけてダガ―を寝かせたジタンは、街を探索する為に外へ。一方、一時的に別行動となった事でレイナとエーコも街の中を探索していた。
「……」
「……」
「なんか、全員生きてるのか死んでるのか分からないって感じだな」
「エーコ、あんまりここに居たくないわ」
まるで自分達まで生きる気力を奪われる様な気がして、力が入らない様子のエーコを横目にレイナは民家へ入る。知らない人間が入って来ても、まるで反応する様子の無い彼らにレイナは頭を掻きながら情報を探した。……この世界になら、スピラへ帰る方法があるかもしれないと思って。
「(なんとなく、もう分かってるんだけどな……)」
「? レイナ?」
「……ここには何にも無いみたいだな。一度、ダガ―のところに戻るか」
自身がここへ来た理由を知った今、彼女は感覚的に帰る方法に気付いていた。それでもこの世界へ来たかったのは、スピラに関する何かがあると信じたかったから。もしそれがあるのなら、世界を自由に渡る手段があるかもしれないのだ。しかし、彼女が探す中ではそれらしき物を見つけられない。レイナはもう探す事を止めて、ダガ―を休ませる為に使っている民家へ戻る事にした。
その帰り道、自分達を。ジタンをここへ導いた人物とレイナ達は出会う。そしてジタンへの伝言を頼まれた彼女達は、ダガ―の様子を見に戻って来ていた彼へそれを伝えた。自分と似通った者達の居る世界、村を前にジタンの様子はやはり可笑しい。お礼も言わずに出て行った彼を見送ってから少しして、目を覚ましたダガ―は彼がいない事に嫌な予感を感じる。……そして、その予想を当たる事となった。
パンデモニウム
ジタンが誰にも何も告げずに村から消えてしまった事で、全員は彼を探す事になった。そしてガーランドという者が住む城へ、ジタンがその者に会いに向かった事が分かり、追い掛けてそこへ突入した一同は手分けしてジタンを探す事となる。レイナはエーコ、ビビと共に奥を目指し続け……やがて歪な椅子に座ったまま眠る彼の姿を見つける。
「ジタン!」
「おいジタン! 生きてんだろうな!」
「こんなところで寝ててどうするのよ! ジタン!」
何度も、何度も彼を呼び続けた時。ゆっくりと目を覚ましたジタン。しかし彼は何時もと明らかに様子が違っていた。まるで仲間を拒絶する様にレイナ達を退けて弱々しくも歩き始めた彼は、隣の部屋へ。急いで追い掛けようとした時、彼はその間にあった扉を強引に閉めてしまう。そして、そんな彼の前にはテラに住む魔物が現れた。
「ジタン! 無茶だよ!」
「うる、せぇな……子供は、引っ込んでろ。大人にしか、分からない、事情ってのが、あるんだよ」
「好き勝手言ってんじゃねぇぞ!」
「早くここを開けてよ! ジタン!」
3人の話も聞かずに魔物と戦い始めた彼は、案の定危険に陥る。しかしそこで彼らの騒ぎを聞いて駆け付けたフライヤとサラマンダーがジタンへ加勢に入り、だが前の部屋で閉じ込められた3人と同じ様に拒絶された上で閉じ込められてしまう。
フライヤはジタンを追う事が出来ないと分かり、閉じ込められていた3人を解放した。そして明らかに様子の可笑しいジタンに何があったのかを話すも、この場に居る誰1人としてそれは分からなかった。
「仲間、仲間と甘い事を言っていたアイツがその仲間を拒絶するとはな」
「ジタンは仲間を大切にする奴じゃ。一体、何があったというのじゃ……」
「確か、ガーランドって奴に会いに行ったんだよな?」
「それじゃあ、そいつがジタンに何かしたんだわ!」
「ジタン、大丈夫かな……?」
「部屋の向こうにはスタイナーとクイナが居る。ダガ―も何処かでジタンを探している筈じゃ。彼奴は独りじゃない」
「そうよ! エーコ達だって居るんだから!」
エーコの言葉と同時に隣の部屋から魔物の悲鳴が聞こえて来る。恐らく戦い、勝利したのだろう。部屋から出る事が出来ない5人は、外に居る仲間達が何とかしてくれる事を願って待ち続けるしか無かった。
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テラ・パンデモニウム
ジタン・トライバルはガイアでは無く、ここテラで生み出されたジェノムと呼ばれる存在だった。そしてその生み出された意味とは、衰退していくテラが存続する方法としてガイアを乗っ取る為。つまり、彼はガイアにとって。そこに住むダガ―達にとって敵として生まれた存在であった。だが生まれて間もなかったジタンを同じ様にして生み出されたクジャがガイアへ連れて行き、何も知らないままに彼は捨てられてしまった。故にジタンにはガイアで生きた記憶しか残っていなかった。
ジタンはそれを知り、苦しみ、自暴自棄になって仲間を拒絶する。仲間だと思っていた者達にとって、自分は敵なのだと。ブラネを誑かして戦争の引き金を引き、数々の命を奪ったクジャの様に生きる為に生まれて来たのだと。……しかし、そんな彼の元へ現れる仲間達は何度でも彼を呼び続けた。
ビビ、エーコ、レイナ、フライヤ、サラマンダー、スタイナー、クイナ……そしてダガ―。8人の声を聞き続けた彼はやがて、自分を取り戻す事が出来た。自分が生まれた意味など関係ない、例えガイアにとって敵であったとしても、予め与えられた生き方をしないと心に決めて。
「悪かったな」
「全くじゃ」
「吹っ切れたらしいな」
「あぁ、もう大丈夫だ!」
「良かった!」
「……」
「やっぱ、子供扱いしたの怒ってる?」
「もう! こういう時に許してあげるのが、本当の『大人』なのよ!」
ジタンが閉じ込めてしまった5人を迎えに来た時、4人が何時もの彼である事に気付いて安心した様子を見せる。だがレイナだけは腕を組んで足を揺すりながらジタンを少々睨む様に見つめていた。その理由を察したジタンの言葉にエーコが続ければ、やがてレイナは溜息をつきながら「分かったよ」と怒りを納める。
「これからどうするつもりじゃ?」
「ガーランドのところへ行く」
「今度は僕達も一緒、だよね?」
ビビの問いに頷いてジタンが返せば、彼と共に再び歩き始めた仲間達。魔物も徘徊するパンデモニウムの中を何時もの様に、協力し合いながら進み続けた彼らはやがて外へ出る。……そしてそこにはジタンが目的としていた人物、黒い鎧に身を固めた老人、ガーランドが立っていた。彼こそがジタンを、そしてクジャを作り上げた張本人であった。
試す様な物言いをするガーランドに対して、ジタンは自身の生きる意味を告げる。そしてそれを証明する為に、彼が差し向けた巨大な竜……銀竜と戦い、勝利したジタン達の前に改めてガーランドは立ち塞がる。
死闘の末にガーランドに膝を突かせた時、ジタンは改めて自身を作ったガーランドに対して生きる事に対する思いを告げる。だがその時、この場には居なかった新たな人物がジタン達とガーランドの間へ降り立った。……それはジタンと同じ様に生み出されたジェノム、クジャだった。
襲い掛かって来たクジャと戦う事になったジタン達。しかし攻撃を与える度に意味深な笑みを浮かべる彼に対して、戦いに対する疑念が湧き始める。だが躊躇していては死ぬのは自分達だ。故に攻撃を続けていた時、彼は何かを感じた様に笑みを浮かべ始める。そして、その姿は光輝き姿を変えた。
「そう、これだ。この力だよ! あぁ、魂の震えを感じるよ!」
「トランス!?」
怒り、憎しみ。そんな感情の高ぶりから発現する力、トランス。レイナ以外の全員がそれを経験した事があり、その時に溢れる力を彼らは知っている。それにクジャが至った事で全員が戦慄する中、彼は小手調べとばかりにその力を解放した。
究極魔法・アルテマ。彼の放ったその魔法は空へと舞い上がり、やがて雨の様に数えきれない程の光がジタン達へ降り注いだ。それを受けて立って居られる者は誰も居らず、全員が地に伏してしまう。
圧倒的な力を手にしたクジャは嗤う。そしてジタン達との戦いで弱り切ったガーランドを蹴り、底の見えない大地の下へと落としてしまった。もう、誰も彼に敵う者は居ない。彼の独壇場が始まろうとした時、落とされたガーランドの声が響き始める。
彼は告げる。ジタンよりも前に生み出されたクジャには命の期限があると。そしてその時はもう、すぐそこまで迫っていると。それはクジャが作り出した黒魔導士兵の様に、限られた命しかないという事。グルグ火山で命の期限を伸ばして欲しいと願った彼らへ『限られた時間を変えられる訳が無い』と嘲った彼もまた、同じだったのだ。
「……認めないよ」
「っ! クジャ! 止めろっ!」
ジタンが自らの出生を知って自暴自棄になった様に、クジャもまた自らの死を知った事で暴走し始める。彼はテラを破壊する様に、魔法を只管に放ち始めたのだ。崩壊していく青い世界。何とかジタン達は立ち上がると、急いでその場から逃げ出す事となった。
「どうやってここから出るの!?」
「あの船を使おう!」
ダガ―の問いにジタンはブラン・バルへ入る前に見た飛空艇を思い出す。赤い光を見て倒れてしまったダガ―の事を心配しながらも、今この場から脱出する方法はそれしか無かった。そして飛空艇へ向かう中、ジタンは途中で道を変える。彼の目的は、ブラン・バルに住むジェノム達を連れて来る事。
「私も行くわ!」
「なら、エーコも!」
「多い方が速く終わるってな!」
「ありがとう。急ごう!」
ジタン、ダガ―、エーコ、レイナの4人はブラン・バルへ。残りの面々は飛空艇を手に入れる為に行動を開始する。そしてジタンが最後の1人を連れて来た時、全員は飛空艇・インビンジブルに乗って崩壊するテラから脱出した。
黒魔導士の村
テラから脱出した事で元居た世界へ帰還する事が出来た全員は一時的な避難場所として、黒魔導士達の住む村へやって来る。逃がしたジェノム達をこの村へ預ける事にして、まずはクジャから受けた傷や疲労を癒す事を優先する。
「そうかい。それじゃあ、彼が言っていた女の子2人というのは」
「俺とエーコの事だろうな」
ジタン達は2度目の来訪だが、レイナにとっては初の来訪。最初は警戒をされたものの、ジタン達の姿もあった事で受け入れられた彼女は会話の中でコンデヤ・パタで出会った黒魔導士の話になる。エーコの話から、レイナは既に彼がいない事は聞かされていた。だが彼から2人の話を聞いていた者が、楽しそうに話をする姿がそこにはあった。
「君も、世界中に広がった霧をどうにかするつもりなのかい?」
「あいつらがそうするなら、乗り掛かった船だ。最後まで付き合うさ」
ガイアは今、大陸全土が霧に覆われている。ジタン達が嘗て、イーファの樹で霧を発生させていた敵を倒した事で世界から霧は消えていた。だが今、そこから溢れる様に霧が生まれ続けて居るのだ。それはジタン曰く、テラがガイアを乗っ取ろうとする前触れ。そしてクジャはテラを破壊しただけでは絶対に収まらないという確信。
「もし本当に世界が壊されたなら、その内スピラにもその手が来るかも知れないしな」
出発は明朝。目指す場所はイーファの樹上空に出現した謎の光。トランスしたクジャの圧倒的な力を見た事で、死闘となるのは確実である。しかし負けてしまえば世界は彼の手によって壊されてしまう。そしてレイナの不安は自分の世界にもそれが向けられるかもしれないという事。だからこそ、彼女も引く訳にはいかなかった。
村の中で別行動していたエーコがまるでお姉さんの様に何も知らないジェノムの少女へ色々な物を教える姿を眺めながら、レイナは明日に向けて身体を休めるのだった。