【完結】FFX もう1人の物語&Re:FFIX 帰る場所を求めて 作:ウルハーツ
世界はそれからとても忙しかった。ジタンが行方不明となって以降、彼の仲間達は各々の目的の為に活動していた。
アレクサンドリアではガーネットが改めて女王陛下となり、国から去ろうとするべアトリクスを引き留めたスタイナーが彼女と共に。彼女も含めて国を守ると誓う。
クイナはアレクサンドリアで料理長を務める様になり、フライヤは旅の目的でもあった探し人を見つけて共にブルメシアの民と国の復興を目指す。
サラマンダーは元々ブラネに裏仕事の人間として雇われていた為、またその仕事に戻る過程である人物と共に行動する様になる。
ビビは自らに定められた命の時間を使って、自分の記憶や思い出を次へ繋げる為に自らと同じ姿をした子供達を作り出す。
そして……。
リンドブルム城
「ねぇ、レイナ。ようし、って何かしら?」
「ようし?」
「何かね、シドの叔父さんがエーコに『ようしにならないか?』って言って来たの」
「あぁ、養子か。……まぁ、簡単に言えば家族になるって事だな」
シド大公の計らいで客室に泊まっていたレイナはエーコの質問にそう答えた。エーコはそもそも召喚士一族唯一の生き残りであり、身寄りが無い。そこでシドは彼女を自分と妻ヒルダガルデの養子として面倒を見たいと考えていた。エーコの中で家族といえば、死んでしまったお爺さんだけ。故にレイナからの説明を受けた彼女は悩み始める。
「エーコはどうすれば良いと思う?」
「さぁな。でも、悪い話じゃ無いんじゃないか? 養子になれば、エーコはこの国のお姫様って訳だ」
「お姫様って、ダガ―みたいな?」
「どんな姫になるかはお前次第だけどな。それに何より、エーコはもう1人になる事は無い」
悩むエーコに対してそう告げたレイナは、それからも彼女の相談に乗りつつ話を続ける。そして数日後、エーコは遂にリンドブルム大公、シド・ファブールと王妃、ヒルダガルデ・ファブールの養子になる事を決断した。それを伝える為にシドの元へと向かうエーコの姿を眺めていたレイナは、服越しに自身の胸へ触れる。
「現金な奴らだよ、お前らは。エーコが1人じゃ無ければ、俺は必要ないもんな……」
彼女の胸にあった刻印は、徐々にその色を失い始めていた。
リンドブルム城、玉座の間
エーコが寝静まった夜、レイナは玉座に座るシドと彼の傍らに立つヒルダガルデを前に話をする。何度かヒルダガルデが必死な様子で話をするも、レイナは首を横に振って答え……そしてシドは重い空気の中で静かに頷いた。
「彼女の事は心配しなくて良い。シド・ファブールの名に誓って、必ずや幸せにしてみせよう」
「あぁ、頼んだぜ」
その言葉を受けたレイナは玉座の間を後にする。ヒルダガルデは何処か悲しそうにシドへ視線を向けるが、彼は何も言わずに首を横に振った。
リンドブルム、客室
眠っていたエーコは自然と目を覚ました。そして何時もなら隣にあるベッドで寝ていたレイナがそこに居ない事に気付き、眼元を擦りながらベッドから降りる。果たして彼女が何処に居るのか分からなかったエーコだが、ふと感じた感覚を頼りに彼女は昇降機を使って最上階へと向かった。
「……レイナ?」
不思議な感覚はまるで導く様に展望台の方へと続いていた。エーコは迷わずに薄暗い道を通って階段を上がり、やがて人が誰も居ない展望台へ。そして外周を回る様に繋がる階段を上った時、そこにレイナの姿は確かにあった。だが、エーコはその姿を見て声を上げる。
「レイナ!?」
「……なんだよ。もうちょっと寝てろっての」
「な、なんでレイナが光ってるの!? なんで、なんでレイナの身体、消えそうになって……!」
エーコがやって来た事に気付いたレイナは後ろ髪を掻きながら振り返り、エーコの言葉を受けて少しの間黙ってしまう。エーコの言う通り、レイナの身体は今消えようとしていた。エーコがその光景に焦る中、レイナは微かな笑みを浮かべる。
「もう、お前は1人じゃないんだ。これからは新しい家族がずっと、お前の傍にいる。俺の役目は終わりって事さ。元々お前が寂しがらない様に、俺はここへ呼ばれたからな」
「そ、そんなの……いや、いやよ!」
レイナの言葉を聞いたエーコは、消えそうになっていたレイナの身体へ抱き着いた。まだ確かにそこには彼女の感触があり、エーコは離さないとばかりに腕の力を強くする。そんな彼女にレイナは少し困った様子を見せるが、やがてエーコの背中に手を回して彼女もまたエーコの身体を抱きしめ返した。
「エーコも連れてって! 置いて行かないで!」
「我儘言うなって。……あぁ、そうだ。後で俺の居たベッド、見ておきな。ちょっとした置き土産があるんだ」
「レイナ! れいなぁ!」
「困ったな……」
泣きながら名前を呼ぶ姿にレイナは困りながらも、徐にエーコの肩に手を置いて距離を取らせるとしゃがみこんだ。そして彼女としっかり目を合わせる。
「俺が消えても、思い出は消えない。エーコが覚えてるなら、俺はお前の中で生きてる筈だ」
「でも、でも……!」
「誰でも別れる時が来る。俺との別れだって、来る事は分かってたろ?」
「ぐすっ、……ぅん」
「そういうのを乗り越えて、人間ってのは強くなるもんさ。だから、強くなれエーコ。立派な『レディ』になりたいんだろ?」
「ぅん……うん!」
レイナの身体が更に光り始めると共に、その身体が最後まで消えようとし始める。エーコはそんな彼女を見上げながら、再び抱き着いて眼元をレイナの服で擦ってから大きく宣言した。
「いつか、何時かエーコが大きくなったら必ず、またレイナを召喚するわ!」
「ははっ。その時は俺、今度こそ帰れなくなるんじゃねぇか?」
「エーコはそれでも良いもん! だから待っててね、レイナ」
「……あぁ、またな』
消え行く寸前に告げたレイナの言葉は、光の中で確かにエーコへと届いた。やがてその身体が光と共に最後まで消えてしまった時、抱きしめる相手が居なくなったエーコの両腕は空を抱きしめる。必死で泣き止んだものの、彼女が居なくなってしまった事で再び今度は声を上げる様に泣き始めた時。階段の下から様子を見ていたヒルダガルデが駆け寄ろうとするのを、同じく様子を見に来ていたシドが止めて首を横に振った。
一頻り泣き続けたエーコは、やがて眼元を赤くしたまま立ち上がる。そしてレイナが言っていた言葉を思い出して、客室へと向かった。レイナのベッドには掛け布団が掛かっており、エーコはそれを捲り上げる。……そこにあったのは、黄色いリボンの付いた白い帽子。所々破けた跡を縫った後があり、エーコはそれを手にする。
「レイナ……」
それは最後の戦いを終えた後、エーコがシド達と話をしている間にレイナがピナックルロックスで見つけて来たエーコの帽子だった。リンドブルムはまだボロボロの為、帽子を取り扱う店は無い。新しいのを買う事が出来ず、その結果失くした帽子を見つけて彼女なりに修繕したのだろう。綺麗とは言えない縫い目を見て、慣れない裁縫に四苦八苦するレイナの姿を思い浮かべたエーコは少しだけ笑いながらその帽子を被る。
始まりはマダイン・サリ。召喚壁へ落ちたきたレイナを助けたエーコは、元の世界へ帰る為に旅立つレイナへ着いて来る形で家を飛び出した。
コンデヤ・パタでドワーフと出会い、黒魔導士と出会い、鉱山の存在を知らされた2人は人間の居る街を目指してそこへ向かう。
リンドブルムでは狩猟祭に参加したレイナをエーコとモグが思いっきり応援。優勝した事で玉座の間へ通され、そこでエーコは人の死を目撃する。
お姫様を守る為にアレクサンドリアへ向かう事になった2人は、トレノへ立ち寄ってトットと出会いながらも目的地へ。しかしそこではブラネの命令を受けた双子の道化師によって囚われの身となってしまう。
牢から脱出した後、ダガ―の処刑を知らされた事で彼女を助けに向かい、現れたべアトリクスとレイナが死闘を繰り広げる。だがやがて現れたブラネに反抗したべアトリクスと共に今度は背中を預けて戦う事となるも、そこでレイナとエーコは別れる事になってしまう。
エーコはジタン達と共に大冒険。やがて戻って来た事で、レイナと合流出来た。しかしバハムートの襲撃とアレクサンダーの攻撃によって、レイナは行方不明となってしまう。
攫われて連れて来られたグルグ火山で
ピナックルロックスで使命と自身の在り方に悩んだレイナの前へ現れたヴァルファーレ。彼の者の出す試練に打ち勝ち、レイナはヴァルファーレを呼べるようになった。
別世界へ行く為の封印を解く為に、共に水の祠へ乗り込んだ2人。エーコがレイナの前で召喚獣の力を借りて、クラーケンを打ち倒した2人は皆と共に別世界へ。
別世界では自身の生まれを知って自暴自棄になったジタンを元に戻して、彼と共にガーランドと対峙。現れたクジャに一度は敗北を喫する。
そして最後の戦いへ赴く中、現れる銀竜の群れを相手にヴァルファーレを召喚した2人は空を飛び回った。
「夢みたいに、楽しい時間だったわ。……ありがとう、レイナ」
輝く水面を上に見上げて、レイナは目を覚ました。彼女が居たのは水の中。ゆっくりと目を開けた彼女は、水面に気付いて泳ぎ始める。……そして外へ顔を出した時、見える様になった景色は青い木々や輝く植物が美しい光景だった。
「ここは……マカラーニャの森か?」
レイナは自分が何処に居るのか気付いて、岸へと向かい始める。そして地に足を付けた時、聞き覚えのある鳴き声が彼女の耳に届いた。
『クェ~!』
「一体どうしたんですか! この先に何が……ぇ……」
「…………」
複数の足音。そして現れたのは黄色のふさふさな毛並みと愛らしい顔立ちが特徴のチョコボだった。そのチョコボはレイナの元へ駆け寄ると、目の前で喜ぶ様に跳ね始める。そしてチョコボを追ってやって来たのは、2人の女性。何方もレイナの姿を見て固まるが、やがて黙っていた女性が駆け出し始める。
「っ! レイナ!」
「のわぁ! 痛ってぇ……って、ココアか?」
勢いをつけて身体ごとレイナへ飛び込んだ女性、ココアにレイナは受け止め切れずに尻餅をついてしまう。背後が水辺だった事もあり、比較的痛みは少なかった事で驚きながらも相手を見る余裕があったレイナは、自分を抱きしめるココアの姿を見てから顔を上げて自分を見つめる女性……リアラと目を合わせる。
「今まで……今までどこで何をしていたんですか!」
「いっ! そんな怒鳴んなよ。ちょっと、別世界に行ってただけだって」
「何を、訳の分からない事を……!」
怒りを露わにしていたリアラだが、その瞳からは涙が流れていた。それを見てレイナが「悪かったよ」とばつが悪そうに返すと、リアラは何時もの彼女と分かって泣きながら笑う。そして、座り込んだ彼女へ手を差し伸べた。
「お帰りなさい、レイナ」
「……あぁ、ただいま」
レイナは差し出されたその手を見て、笑顔で自分の手を重ねて答えた。
斯くしてガイアと呼ばれる別の世界へ渡っていたレイナは、スピラへ帰還する事が出来た。後に問い詰められて少なからず彼女が語る冒険を信じられる者はそう多くない。しかし彼女の中にある思い出は正真正銘、本物であった。
【THE END……?】