【完結】FFX もう1人の物語&Re:FFIX 帰る場所を求めて   作:ウルハーツ

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After Chapter 召喚士エーコの執念

A1

 

 あの世界を守る戦いから4年。ブラネ女王の手で破壊されたリンドブルムは街の人々の手で復興が進み、今では壊される前と変わらぬ街並みが広がっていた。

 

 

 リンドブルム城

 

「うーん……これじゃきっと駄目ね」

 

 先日、10歳の年を迎えて心身共にあの頃から成長を続けたエーコ・キャルロル・ファブールは自室の机で1冊の本を眺めながら頭を抱える。そして何を思ったのか愛用の帽子を被って部屋を飛び出すと、真っ直ぐに向かった先は玉座の間。兵士が入り口を守る中、彼女が現れた事で彼らは用件を尋ねる。

 

「お義父さんに話があるの!」

 

 それだけで彼らはエーコへ道を開けた。そして中へ入ったエーコは元気よく「お邪魔します!」と言って、玉座で文臣と会話をしていた義理の父親……シド・ファブールへ声を掛ける。彼女の登場にシドは優しく出迎えると、文臣と何度か会話をした後に彼を下がらせた。

 

「さて、どうしたのだ?」

 

「アレクサンドリアに行きたいの!」

 

「ふむ。だが、この前も行ったではないか」

 

「あの時、トットの叔父さんは居なかったから。今ならきっと、居る筈よ!」

 

「……」

 

 エーコの目は本気だった。それこそ、許さなければ勝手に1人で出て行ってしまうかも知れない程に。シドは自慢の髭を触りながら考える仕草をすると、やがて頷いて彼女に国を渡る事を許可する。嘗てリンドブルムを壊したアレクサンドリアだが、現在はガーネット・ティル・アレクサンドロス17世が国を治めている。彼女とエーコは共に旅をした絆のある旧知の仲であり、シドもガーネットに叔父様として慕われている事が国を渡り易くしていた。

 

 政治の事は文臣に頼る事が多いものの、だからといってシドが暇な訳では無い。彼はついて行けず、代わりに妻であるヒルダガルデが彼女へ付き添う事となった。エーコ自身はもう10歳を超えたために1人で良いと宣言するも、立場が立場の為に仕方の無い事である。

 

 

 

 

 

 

 

 アレクサンドリア城

 

 翌日。飛空艇に乗ってアレクサンドリアへやって来たエーコはまず、ガーネットと再会する。スタイナーとべアトリクス背後に控えさせながら、手を取り合ってお互いの元気な姿を見て安心し合った後に、ガーネットはエーコにやって来た用件を尋ねた。そこでエーコがトットの名前を出せば、彼は図書室で学者と共に居ると告げられる。そして城の中を自由に動いて良いと許可を貰い、エーコは図書室へ向かった。

 

「トット叔父さん!」

 

「おやおや、これはこれは。お変わりなく元気な様で安心しました、エーコ姫様」

 

「もう、エーコでいいって何度も言ってるでしょ! まぁ、良いわ! それより、今日は聞きたい事があるの!」

 

 彼女を守るリンドブルムからやって来たお付きの兵士も居る中、エーコはトットを見つけるや否や駆け出した。昔の様な天真爛漫な性格は余り変わっていない様で、何処かで見た少女が騒がしく図書室で喋る姿を学者たちは目撃する。

 

「人型の召喚獣、ですかな?」

 

「型じゃなくて、人そのものを召喚する方法なの。それをずぅーっと調べてるんだけど……」

 

「そもそも、召喚獣とは(ガイア)の生命が化身となったものと考えられています。ですが、貴女が呼びたい相手はこの星には居ない方。正直、難しいと思いますが……」

 

「でも、私のご先祖様達は召喚出来たのよ? なら、エーコが出来ない筈無いじゃない!」

 

「命無き者達の召喚により、呼ばれた別世界の存在……ふむ」

 

 トットは考え始めてしまうと終わらない癖があり、それが始まった事でエーコは肩を落としながら図書館にあった召喚獣の本を眺め始める。何度かここへやって来ては召喚獣について調べていた彼女は、殆どの本を読み切っていた。だが何度でも読み返しては何処かにヒントが無いか探し続けているのだ。

 

「っとと、つい考え込んでしまいましたな」

 

「……ねぇ、トット叔父さん。召喚獣って普段、何処に居るのかしら?」

 

「ふむ。普段は姿を見せず、召喚者の呼び掛けに応じて現れますからな」

 

「でも、ガーネットはラムウって召喚獣と直接会って力を貸して貰ってたわ。ピナックルロックスに住んでいたって事でしょ?」

 

「何処かに住処がある、という事ですかな?」

 

「それもそうなんだけど、エーコ達って普段召喚獣の力が込められた宝石を介する事が多いの」

 

「オパールには氷の召喚獣(シヴァ)。トパーズに炎の召喚獣(イフリート)。ペリドットには雷の召喚獣(ラムウ)ですな」

 

「うん。なら、別世界にいる人を呼べる何かがあるのかな……って」

 

 エーコの言葉にトットは再び思考の海へと潜ってしまう。だがそれはエーコも同じであり、彼女はガーネットや自分から話を聞いた学者が纏めた宝石と召喚獣の関係図を眺め始めた。召喚獣は10以上記載されており、既に召喚士一族の生き残りはエーコと嘗てマダイン・サリで幼い頃に住んでいたとされるガーネットのみ。故にそこに記載された以上の召喚獣が居るのかは定かではない。……そしてエーコはその召喚獣の中に含まれる大好きな人の名前に触れた。獣では無いが、彼女も同じ存在として記録されていたのだ。

 

「彼女の居た世界に由来する何かがあれば、それを媒体とする事で可能になるかもしれませんな」

 

「スピラにある物って事ね。でも、残ってるのはこの帽子だけよ。これはリンドブルムで買ってくれた物だから、きっと駄目ね」

 

 頭に被っていた思い出の帽子を手に取り、抱き締める様にしながら告げたエーコの姿にトットは自身の頭を指で突きながら考える。そして顔を上げた彼は、エーコに告げた。

 

「別世界へ行く方法はありませんが、流れ着いて来る可能性はあるかも知れません」

 

「? どういう事?」

 

「実は余り知られておりませんが、様々な物事や名前の由来にはガイアとは違う世界のものが由来になっている。そんな事が多いのです」

 

「???」

 

 トットの言葉にエーコの頭には疑問符が多量に浮かび上がる。しかしそれを彼女へ分かる様に説明するのはかなり大変な事であり、トットは大事な部分だけを掻い摘んでエーコへ説明した。

 

「彼女の世界にあったものが、このガイアへ流れて来る場合があるかも知れない。という事ですな」

 

「それを見つける事が出来たら、召喚出来るかもしれないって事!?」

 

「そこまでは言いませんが……手掛かりになる事は間違い無いでしょう」

 

「ありがとう、トット叔父さん!」

 

 説明を聞いたエーコは図書館を飛び出してしまった。別世界にある物を手に入れる。それはとても難しい事であり、判別すら出来ない物が殆どだろう。しかしそれでもやるべき事を決めたエーコはガーネットの元へ。そして彼女と会話をした後、飛空艇に乗ってリンドブルムへ帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンドブルム城、エーコの自室

 

 アレクサンドリアへ来訪してから早数ヵ月。そこには多種多様の物が散らばっていた。シドへ無理のない範囲で珍しい物を手に入れて貰える様に頼んだ上で、エーコもまた頻繁に街へ出ては市場を巡る。ガーネットにも協力してもらい、いつの間にかエーコの部屋はまるでゴミ屋敷の様になっていた。

 

「これは……違うわ。これも違う。もう! 何処にあるのよ!」

 

 一目で判断出来る物は即座にゴミとなり、判断出来ない物はよく確認した上でゴミとなる。部屋に散らばったそれを何度も眺めては繰り返して、やがて部屋は綺麗になるが、数日後には同じ光景がまた広がる事になるだろう。エーコは全然見つけられない事に苛立ちを感じて、廃棄すると決まったゴミを部屋の隅へ纏めてからベッドへ横になった。

 

「無理なのかな…………駄目よ。弱気になっちゃ! 約束したんだから!」

 

 少しだけ吐いた弱音を弾き飛ばす様に、自身の決意を思い出したエーコは疲れからそのまま眠りについた。

 

 

 エーコの夢

 

『スフィアって何? ロンゾ族っていうのも、聞いた事無いわ』

 

『……なぁ、この世界の名前は分かるか?』

 

『世界? あたし、あんまりここから出た事無いからわかんない』

 

『スピラじゃねぇ……なんて事、無いよな? まさか、な……』

 

『ねぇ、それでスフィアって……』

 

 それはエーコが初めて彼女と出会った時の夢だった。知らない言葉を聞いて思わず沢山の質問したエーコは、不安そうにされた質問へ答える。そして改めて聞いた質問に、彼女は説明をし始めた。

 

『こう、丸くてキラキラ光ってる宝石みたいな奴だな。映像を残したり、魔法を宿してたりする……らしい』

 

『映像?』

 

『それも分からないのかよ……えっと、つまりな』

 

 知らない事を知っている相手からの話に、エーコは興味津々だった。そしてもっと聞き続けたいと思った矢先、夢は終わってしまう。気付けばリンドブルム城の自室で寝ていたエーコは、もっと見ていたかったと悔し気に暴れながらもやがて天井を見上げた。

 

「はぁ……あれ? そういえば」

 

 終わってしまった事に嘆くのが辛くなったエーコは、夢の内容を思い出して何かに気付いた様子でベッドから降りる。そしてゴミとして廃棄する予定だった場所へ手を突っ込んだ彼女は、1つの丸い物を手に取った。青く光り輝くそれは、ガーネットが見つけてくれた物の1つ。宝石の様に見えるが、大した価値としては認められない。そんな残念な道具だったが……エーコは何気なく、その輝きを覗き込み始めた。

 

 

 

『なぁ、聞いたか?』

 

『あぁ。またあの平和な日々がやって来るんだな』

 

『今度は蘇ったり、しないよな』

 

『オハランド様が命を掛けて築いたナギ節なんだ。きっと、大丈夫さ』

 

『大召喚士オハランド様に、感謝しないとな』

 

 

 

 覗き込んでいたエーコは、その後も誰かの話す声がするスフィアを見つめ続ける。だがその声が聞こえなくなった時。彼女の瞳からは涙が溢れていた。

 

「あった、あったわ! ナギ節って、大召喚士って言った! 間違い無いわ!」

 

 その言葉は大好きな人から聞いた言葉であり、それは先程の会話が彼女の居たスピラでされたものである証明でもあった。それが分かったエーコは飛び上がって喜び、積み上げたゴミが崩れる事も気にせずに部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

A2

 

 廃墟マダイン・サリ

 

 そこには今もエーコの家が残っている。モーグリ達が日々暮らしており、何時でも彼女が帰って来られる様に綺麗にされているのだ。エーコ自身にとっても大事な場所であり、年に数回は帰郷する事も多い場所。……そんなマダイン・サリには今、沢山の人達が集まっていた。

 

 召喚壁と呼ばれる召喚獣に関する事柄が描かれた召喚士一族にとって神聖な場所。そこへ入る事が出来るのは、召喚士一族の生き残りであるエーコが許した者だけ。そんな場所に、エーコを始めとしてリンドブルムからファブール夫妻が。アレクサンドリアからガーネット姫と彼女の御付きであるスタイナーとべアトリクスが。トレノからはトットが。ブルメシアからはフライヤが。更にビビの子供として生まれた彼と全く同じ容姿をした小さな黒魔導士達が。そして、あの戦いから行方不明になっていたジタンがガーネット姫の隣に立っていた。

 

「エーコ姫様」

 

「……うん」

 

 普段、トットの自分に対する呼び方を訂正していたがエーコだが、今日この時はそんな余裕も無い様子だった。愛用の帽子を被り、両手には大事そうに笛を握り締めて。彼女はゆっくりと召喚壁の中央へ歩き始める。そこには召喚塚と呼ばれるものがあり、彼女はそれを前にして大きく息を吸い込んだ。不安そうに彼女を見つめるガーネットに、ジタンが背中を押して安心させる様に頷く姿も見られる中。エーコは笛に口を付ける。……彼女は思い浮かべる。自分が旅に出る切っ掛けを作り、夢の様に色々な体験を出来たあの忘れられない日々の中には必ず一緒に居た、自分の大切な人の姿を。

 

「(レイナ、お願い……来てっ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スピラ、ナギ平原

 

 自分達の飛空艇を着陸させて、魔物の居ない広大な平原の中で暇を持て余していたレイナは寝転がりながら目を閉じていた。すると自分の上に現れた人の気配に気付いて彼女は目を開ける。自分を覗き込む様にココアの顔がそこにはあり、レイナが目を開けた事で「おはよう」と抑揚の無い声音でココアは声を掛けた。

 

「何かあったか?」

 

「……何にも」

 

「ったく。リアラも大概だよな。何だってこんな場所で売り子のバイトなんてするんだよ」

 

「……仕方ない」

 

 2人が向けた視線の先には、ナギ平原に唯一あるお店に訪れたお客さんへ接客をするリアラの姿。決して2人はサボっている訳では無い。ただレイナは素行が悪くお客に不評で、ココアは愛想が悪くお客に不評。故に戦力外通告されただけであった。

 

「はぁ……次、何処行こうかな……ん?」

 

「?」

 

 旅の行く先について考え始めたレイナは、何かに気付いた様子で身体を起こした。ココアが彼女の様子に気付いて首を傾げる中、レイナはそのまま立ち上がると……空を見上げる。そして楽しそうに笑みを浮かべた。

 

「ははっ、マジかよ」

 

「……レイナ?」

 

「悪い、ココア。ちょっと行ってくる」

 

「!? 待って……!」

 

 レイナの言葉と共に、空から何かが猛スピードで飛来する。そしてそれは言い切った彼女の身体を攫って行ってしまった。ココアは見る見る内に遠くなるレイナの姿を、彼女を連れ去ってしまったヴァルファーレの姿に届かない手を伸ばす事しか出来ない。

 

 シンが消えた際、共に消えた筈の召喚獣。それを再び見た事でリアラは仕事を放り出して思わず駆け出してしまい、ココアの元へ。レイナが連れ去られてしまった事実を知り、彼女は頭を抱える。そしてそのまま仕事に手が付かなくなり、彼女もまた戦力外通告を言い渡された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガイア、廃墟マダイン・サリ

 

 召喚壁の中でエーコの齎す綺麗な笛の音が響き渡り続ける。その音色に耳を済ませて目を閉じる者も居る中、誰よりも早く気付いたのはべアトリクスだった。

 

「何か来ます!」

 

「むっ!?」

 

 圧倒的な存在感を放ちながら接近して来る気配に思わず愛剣、セイブザクイーンの柄を握ったべアトリクス。彼女の言葉にスタイナーも武器を構え、フライヤやジタンも警戒し始める。……そんな中、エーコだけは笛を止めて空を見つめていた。そして見えて来るその姿を前に、彼女の瞳からは涙が落ちる。

 

 召喚壁の上空に辿り着いた召喚獣、ヴァルファーレはその周りを何度か回り続ける。そしてそんな巨体から小さな何かが飛び出し、エーコの目の前。召喚塚の上へと降り立った。茶色の長髪がヴァルファーレの起こす風で揺れ動き、左右で色の違う瞳がエーコを見下ろす。やがて彼女はニヤリと笑みを浮かべて告げた。

 

「元気そうじゃねぇか」

 

「レイ、ナ……レイナぁぁぁ!!!」

 

「ちょ!? お前馬鹿っ、ごはっ!」

 

 それはエーコにとって、4年以上前から変わらないレイナの姿だった。レイナ自身も成長したエーコを前にして戸惑う事無く受け入れており、念願適ったエーコは感極まって思わずレイナへ帽子が転がるのも気にせず飛びついた。召喚塚の上に立って居り、成長したエーコとは殆ど身長に差が無かったレイナに彼女の飛び込みを受け止められる訳が無い。当然ながら召喚塚から落ちたレイナはそのまま後ろに倒れ、幸いにも頭を打つ事は無かったが背中を強打してしまう。

 

「痛ってぇ……お前、ちょっとは考えて」

 

「レイナ! レイナ!」

 

「……はぁ。仕方ねぇな」

 

 痛みに苦しみながら抗議しようとするレイナだが、エーコが泣きじゃくりながら自身の胸に顔を埋める姿を見てそれ以上言えなくなってしまう。そして代わりに頭へ手を乗せて優しく叩けば、レイナの服を握るエーコの手に力が入る。

 

「これ、しばらく離れねぇな」

 

「諦めるのじゃな」

 

「ん? おぉ、フライヤじゃん。って他にも一杯……ジタンも無事だったんだな」

 

「あぁ、この通りな」

 

「お久しぶりです、レイナ」

 

「……そうか。もう、女王なんだな」

 

「えぇ」

 

 フライヤが声を掛けた事が切っ掛けとなり、周りで見ていた者達も各々レイナへ話し掛け始める。そしてエーコが彼女にしがみ付く姿をそのままに、再会を果たした。

 

 

 飛空艇内

 

 レイナとの再会を果たした事で、ガーネットや彼女の御付きであるスタイナーとべアトリクスはアレクサンドリアへ帰る事となった。そして未だに離れないエーコと共に、リンドブルムの飛空艇に乗ったレイナはそこで沢山のビビを前に驚愕する。因みに彼女と共に現れたヴァルファーレは気付かぬ内に姿を消していた。

 

「エーコお姉ちゃんのお姉ちゃんみたいな人なんだよね!」

 

「あ、あぁ」

 

「オレ、話を聞いて一回会ってみたかったんだ!」

 

「おっきな剣を使うって本当?」

 

「魔法も使うんだよね!」

 

「だ、誰か助けてくれないか? なぁ?」

 

 大凡5人以上のビビが絶えず質問し続ける光景にレイナが同じ飛空艇に乗っていたフライヤへ助けを求める。しかし彼女は無言で首を横に振り、やがてブルメシアの上空へ到着した時。「また会おう」と告げて甲板から飛び降りた。竜騎士であるが故にジャンプする事は得意だった為、危険は無いのだろう。

 

「ほら、取り敢えず順番にしてやれって」

 

≪はーい!≫

 

「……助かった」

 

「まぁ、仕方ないさ。俺達も最初はあんな感じだったからな」

 

 ジタンは嘗て居た盗賊団、タンタラスの一員に再び戻っていた事で同じリンドブルムへ向かうこの飛空艇に搭乗していた。彼が幼いビビ達を纏めた事で、何とか質問攻めからは解放されたレイナ。ジタンの話によれば、自分達の知るビビから話を聞いていた彼らは本物と出会う度、似た様に質問攻めしている様だった。恐らくジタンも経験しているのだろう。

 

 その後、飛空艇がリンドブルムへ到着するまで幼いビビ達からの質問に答え続ける事になったレイナは到着と共に城へ招かれる。ジタンや幼いビビ達とも別れてエーコとファブール夫妻、そしてトットと共に城へ入った時、3人はエーコへ気を利かせるようにまずは彼女の部屋へ行く様にレイナへ告げた。彼女は言われた通り、エーコと共にエーコの自室へ向かう事にした。

 

 

 リンドブルム城、エーコの自室

 

「うぉ、結構散らかってんな」

 

「レイナを召喚する為に、今まで一杯手掛かりを探してたんだから」

 

 一向に離れないものの、既に泣き止んでいたエーコは自身の部屋の散らかり様について説明。彼女が必死で自分を召喚しようとしていた事を改めて知ったレイナは、座る場所が余り無い為にベッドへ座る事にした。

 

「何か、随分復興も進んでたっぽいな」

 

「4年以上経ってるんだから、当然よ」

 

「4年?」

 

「そうよ、4年よ。エーコはもう10歳なんだから!」

 

「あぁ、だから大分変わってたのか。特に身長とか、大分伸びたよな」

 

「そういうレイナは全く変わってないわ」

 

「まぁ、数か月じゃ流石にな」

 

「?」

 

 エーコの4年とレイナの数ヵ月。それは世界が違う事で時間の流れに差異があるという事なのだろう。レイナ自身、エーコの成長した姿を前に彼女が誰だかを分かったのは召喚された身だからであり、もしも普通に出会っていれば疑っていた。それ程までに子供の成長は早いものだった。

 

「えへへ」

 

「……なんだよ?」

 

「今までずっと、レイナを召喚する方法を探し続けてたのよ? それが成功したんだもの、嬉しいに決まってるじゃない!」

 

「ははっ、そうか……まぁ、俺もまた会えて良かったよ」

 

「これからずっと、一緒だからね!」

 

「おいおい、流石にそれは無理だろ」

 

「……ぇ」

 

 まるでレイナの言葉を信じられないとでもいうかの様にエーコの顔から笑顔が消える。しかしレイナの言う通り、それは難しい話であった。

 

 本来、ガイアの召喚獣は召喚しても長い間居続ける事が出来ない。それはエーコに召喚されたレイナも同じであり、一緒に居られる時間には限りがあった。今は共に同じ部屋で話をしているが、何時かはまた消えてしまう。エーコは会う事だけを考えていたため、その後を事を考えていなかったのだ。

 

「大変!」

 

「お、おい……」

 

 それに気付いたエーコは慌てた様子で部屋を飛び出した。彼女を追って向かった先は、玉座の間。そこにはシドとヒルダガルデ、そしてトットの姿があり、エーコはトットの元へ近づき始める。

 

「トット叔父さん! レイナがこのままじゃまた消えちゃうわ! 何とかならないの!」

 

「ほっほ。ご安心なされエーコ姫様。確かに消えてしまいますが、また呼ぶ事は出来る筈です」

 

「そう何度も呼ばれるとこっちも大変だけどな」

 

 エーコの不安を払う様に言ったトットの言葉へレイナが続ければ、エーコはそれでも不安な様子でレイナと自分を再び繋げた物……スフィアを取り出した。

 

「それ、記録スフィアか?」

 

「ほう、これは記憶スフィアというのですね」

 

「これのお蔭で、レイナを別の世界から召喚出来たの。でも、とっても弱くて大変だったんだから! もう1回出来るか、わかんない」

 

「スフィアの? ……なら、これとか使えるかもな」

 

 エーコの話を聞いてレイナが取り出したのは、紛う事無きスフィアであった。それも彼女自らの手で持って来た代物。前持っていなかったそれを今、何故持っているのか? その理由をレイナはこう語る。

 

「何時もは弾丸を作って貰うんだけどさ。あんなことがあったから、自分で作れる様になった方が良いと思ってな」

 

 作る弾丸とは初めてマダイン・サリへ落ちて来た時や、ヴァルファーレとの戦いで使用した特殊な弾丸。それを彼女達はスフィア弾と呼んでおり、その材料は他ならないスフィアであった。

 

「なるほど、この中に魔法を封じ込めるのですね」

 

「あぁ。で、それをこの銃に込めて打ち出すって訳だ。仕組みは……俺もよく分かんねぇ」

 

「……」

 

「貴方、血が騒ぐのが分かりますが抑えてくださいね」

 

「う、うむ。分かっておる」

 

 トットがスフィア弾について知る中、同じ場所で話を聞いていたシドの手に自らの手を重ねながらヒルダガルデが彼を諫める。

 

 エーコはレイナからスフィアを受け取り、それを持って目を閉じた。……特に特別な魔法の籠っていないスフィアだったが、それでもエーコはそこから別の世界を感じる事が出来た。恐らく召喚士にしか感じられないものなのだろう。様々な宝石から多種多様の召喚獣を感じられる様に、エーコは確かにそこからスピラを。そしてレイナを感じる。

 

「これなら、失敗しないわ! これを何度も使って、完全に覚える事が出来たら……!」

 

 彼女の言いたい事は、この場に居る誰もが理解出来た。レイナは取り出したそれをエーコに渡して、最初に使った記録スフィアは研究の為にトットの元へ。斯くしてエーコが確信を持ってレイナを呼び出せる物を手に入れた時、レイナの身体が何時かの様に光り始める。

 

「っと。時間切れらしいな」

 

「また、戻ってしまうのですね」

 

「あぁ。俺の世界は向こう(スピラ)だからな」

 

「また召喚するからね! 絶対に来てよね!」

 

「分かってるよ。……おっさん」

 

「うむ」

 

「約束、守ってくれてありがとうな」

 

「シド・ファブールの名に誓うと言ったじゃろう。安心してよい」

 

「記録スフィア、ありがたく頂戴いたしますよ」

 

「はは。それは見つけたエーコに言ってくれよ。……じゃ、またな」

 

「レイナ……またね!」

 

 1人1人と話をしながら、やがてレイナの姿は玉座の間から消えてしまう。だがあの時の様な悲しさは全くなかった。何故なら、何時だってもうエーコは彼女を呼ぶ事が出来るのだから。エーコは大切な帽子と共に、大切なスフィアを肌身離さず持ち歩く事を決める。別世界の手掛かりであるスフィア無しでレイナの召喚を覚えるのは非常に難しい事だが、彼女は絶対に覚えるだろう。その場に居る誰もが、それを確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイナ!」

 

「よっ」

 

 翌日から、エーコの特訓は始まった。

 

「レイナ!」

 

「お、おう」

 

 彼女が消えては再び召喚。

 

「レイナ!」

 

「……」

 

 消える度に再び召喚を繰り返す。

 

「レイナ!」「レイナ!」「レイナ!」

 

 

 

「いい加減にしろ!」

 

「あぅ……」

 

 それが10を超えた時、流石にレイナは堪らないとエーコを叱った。

 

「お前、1日に何度も召喚する奴があるか! お蔭であいつら、俺が消える事に慣れてきて『行ってらっしゃい』とか言い始めたからな!?」

 

「が、頑張って覚えようと思って」

 

「そんな何度も繰り返す必要無いだろ。後、召喚に成功したからって最後は還し始めたよな? うっ……ちょっと気持ち悪くなって来た」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 流石にやり過ぎたと自覚したエーコは反省し、その後は2人の交渉が始まった。エーコは1日1回は召喚したいと告げ、だがレイナは1週間程度は開けて欲しいと告げる。何故なら時間の差があるため、エーコの1日1回はレイナに取って3.4回となってしまうのだ。余り何度も来てしまうと、仲間達を置いて1人だけお婆ちゃんになってしまう。まだ旅を続けたい彼女にそれは許されない事だった。

 

 やがて決まったのはエーコが三日に一度はレイナを召喚するという事。必死の説得にレイナが折れた形であり、エーコは少々残念そうにしながらも約束を守る。

 

 こうして大切な人と再会する為、召喚士エーコの執念が実を結ぶのだった。

 

 

 

【THE END】




常時掲載

【Fantia】にも過去作を含めた作品を公開中。
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