【完結】FFX もう1人の物語&Re:FFIX 帰る場所を求めて   作:ウルハーツ

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執筆開始当初は26話の後、追ってきているシーモアに殺される予定でした。……dead endは書けなかった。


20~29話

20

 

 シーモアは素早く詠唱を始める。それに気づくとレイナは一気に近づき、思ったよりも早く終わった詠唱に驚いた後にその場を飛び退く。と、先ほどまで立っていた位置が炎の爆発に包まれた。

 

 背後に一回転しながら着地するレイナ。相手であるシーモアを見ればその口は【笑っていた】。それを不審に思うレイナ。と、ロンゾ族の青年が「飛べ!」と叫ぶ。反射的に飛べば再びレイナの居た場所が爆発に包まれた。

 

「あっぶねぇ。……連続魔法か。ま、老師なんだから出来るか。助かった、キマリ」

 

 レイナの答えにロンゾ族の青年……キマリは答えない。その代わりに目の前に立つシーモアに視線を向けた。因みにレイナがキマリの名前を知っているのは先ほど逃げたユウナが名前を呼んで居たからである。

 

 黒鬼徹を担ぎなおし、キマリと一緒にシーモアの前に並ぶレイナ。すると何処からとも無く現れた虫の様な何かがシーモアの右肩から出現する。そしてそれは生き物の様に動くと、レイナの目の前に雷を落とした。幸い当たらなかった物の、レイナは今ので目の前には敵が2体存在しているのだと認識する。

 

「ユウナ殿の妹君ならば、私は貴女に最高の安息を送ろう」

 

「ありがとさん、でもそんな物なら受け取りは拒否させてもらうぜ!」

 

 シーモアと虫……幻光異体が詠唱を始めると同時にレイナも走り始める。最初に攻撃を行ったのは幻光異体。先ほどと同じ様にレイナに雷を落とすが、それを何とレイナは黒鬼徹を頭の上で傘の様にする。と、不思議な事に雷が当たった黒鬼徹からレイナの手に雷が通電することは無かった。そして勢いを止めぬままレイナは少し飛ぶとシーモア……では無く幻光異体を斬りつける。そして斬ったと同時にその場を離れれば今度は氷の柱が出現。レイナは間をあけて再度飛ぶことで2度目の魔法も避ける。

 

 幻光異体には大きな切り傷が出来ていた。それは非常に大きく、機械などならば確実に壊れる様な傷だ。もしもあれが生き物であれば確実に息の根は止まっていただろう。だが、レイナの考えは上手く行かなかった。

 

「なっ!」

 

 幻光異体はあろう事か繋がっているシーモア自身から生命力を吸い取り、傷を一瞬で治したのだ。つまりそれはシーモア本人を倒さない限り、何度でも蘇ると言うことであった。その現実に頭を抑えながら「マジかよ」と呟くレイナ。と、今度はキマリが素早く距離を詰めてシーモアを攻撃する。だが、シーモアの身体は人ならざるせいで異常に硬かった。

 

「面倒だな、こりゃ」

 

 黒鬼徹を肩に担ぎながら言い、直ぐにシーモアの攻撃を避けるために移動し始める。2体の魔法攻撃のせいで無闇に近づくことが出来ず、遠距離が上手く行く可能性も低い。レイナは確実に攻撃できる隙を避けながら伺い始める。と、キマリと一緒に同じ位置に着地した時。2人の左右を数人が通過する。それは先ほど逃げたはずのユウナ達だった。

 

「! お前らなんで戻って来てんだよ!?」

 

「2人だけにかっこつけさせられるかっての!」

 

「キマリと貴女を置いて逃げるなんて出来ないよ!」

 

 レイナの抗議に答えたのはティーダとユウナ。それを見て先程での唯一理解者であったアーロンに視線を送るも、アーロンは大剣を構えてシーモアに視線を向けながら「諦めるんだな」と一言。この瞬間、ユウナとそのガード達を逃がす選択肢は無くなってしまった。結局、全員で戦うのだ。

 

 最初と同じ現状に戻った事に苛々しながらもレイナはやけくそ気味に黒鬼徹の包帯部分を手に巻く。レイナにとってこの行動は黒鬼徹を扱う上で飛んでいかないようにする兼、仲間に当たらないようにする物でもあった。

 

 レイナが前に出るとキマリも同じ様に前に出る。そして同じ様にティーダとアーロンが前方に並んだ。その1つ後方には金髪の少女とバンダナを巻いた男性。最後尾にレイナを前に止めた女性とユウナが並ぶ。戦いをする時の陣形としてはこの位置が一番それぞれに良いポジションなのだろう。

 

「態々戻ってくるとは。余程死にたいと見える。ならば望みどおりあなた方に安息を送ろう」

 

「そんな物は要らん。あれでも友だったんでな。キノックの仇、取らせて貰う」

 

「本気でテメェはムカつくんだよ!」

 

「怒るのも良いけどよ、ガードなら守れよ?」

 

 シーモアの言葉に返すアーロンとティーダ。その内、ティーダの言葉を聞いてレイナは少し笑いながら言うと黒鬼徹を持って走り始めた。シーモアと幻光異体は詠唱を始める。が、その内幻光異体に突然白と青い柄で出来たボールが激突してその詠唱を止めた。投げたのは……バンダナの男性だ。

 

 レイナは少し驚きながらも黒鬼徹を振り上げるとシーモアを斬りつけ、そのままついでの様に幻光異体も斬りつけると少し距離を取る。と入れ替わりにティーダとキマリが攻撃をし、同じ様に下がったところでアーロンが思い一撃を加えた。初めてにしては中々の連携である。

 

「皆、もっと離れて!」

 

 金髪の少女の言葉に4人は更に距離を取る。と、持っていた何かをシーモア目掛けて投降。それは着弾と同時に爆発を起こした。するとそこに間髪居れずに炎の魔法による連続攻撃が発生した。と、幻光異体は再びシーモアから生命力を吸うと紫色の塊を出現させてレイナ達に投げる。それは全員の身体を掠り、小さな傷を作る。が、直ぐに全員の身体を光が包むと小さな怪我は消失してしまう。

 

「……慣れねぇな」

 

 レイナは感じた思いを思わず呟く。それは今の様に大人数で戦うと言う現状に感じた率直な思いだ。

 

 レイナは殆どの戦闘を1人でしていた。ココアの求めていた部品を手に入れたりする場合の時もそうであり、それ以外のときではリアラとココアの2人を交えての戦闘も無かった訳では無い。だからレイナは1人。又は3人での戦闘には慣れていた。が、今現在の戦闘はレイナを含めた8人。余りにも人数が多すぎてレイナはやり難さを感じて居たのだ。そしてシーモアと戦闘を繰り広げる中、徐々にその思いは大きくなる。

 

「考え事をしている余裕があるのか?」

 

「まぁ、あるな」

 

「あるの!?」

 

 行動をしながらも考え続けるレイナにアーロンが質問すれば、余裕の表情でレイナは答えた。そしてその答えに金髪の少女は驚き、レイナはアーロンを見た後に溜息を付く。そして一言呟いた。『暴れたい』と。

 

「ふん、好きにしろ」

 

 その言葉を聞いたアーロンは行動を止めると大剣を横に横に向ける。それは今まさに攻撃をしようとシーモアに近づこうとしていたティーダを止める物となり、止められたティーダは「何すんだよ!」とアーロンに抗議した。アーロンの行動を不審に思う一同。と、それを見てレイナは無言で前に出ると笑う。

 

「何故足掻くのです? 安息を求めるのは当然のこと。それを今、送ろうと言うのに」

 

「他の奴は知らないけどよ、少なくとも俺はそんな安息お断りだ。まだ生きてやりたいことがあるんでな、それを邪魔するお前は倒すだけだ。……あぁ、もう1つあった。テメェは気にいらねぇ」

 

 シーモアの質問にレイナは答えながらゆっくりと前に出る。それと同時に黒鬼徹の柄から手を離し、包帯のみで持ち上げるとそのまま頭上で回転させ始める。その行動は周りに取って危険な行動。アーロンが止めた理由をティーダは理解すると同時に「何やってんだよ!」とレイナに言う。が、それを無視してレイナは回していた黒鬼徹を真っ直ぐにシーモアの身体向けて投降した。

 

「っ!」

 

 強度な身体をしているシーモアにそれは深くとまでは行かない物の、確実に刺さる。詠唱を始めるシーモア。するとレイナは一瞬で近づいて何も持っていないもう片方の手で刺さっている黒鬼徹の柄目掛けて掌底を放ち、刺さっていた黒着徹はシーモアの身体を通って背後に回る。が、ここでシーモア同様レイナに向けて詠唱を開始する幻光異体。だがまるで意思を持って居るかの様に黒鬼徹が頭上から落ちてくる。そしてそれを見ずにレイナは開いている手で掴むと詠唱を始めた幻光異体を少し飛んで斬る。包帯がシーモアを貫通して繋がっているため、離れることは出来ないのだ。だがその一撃は確実に生命力が無くなるほどの威力。その行動によって幻光異体はシーモアから生命力を奪いために詠唱を止める。

 

 レイナは攻撃した姿勢から振り向きざまに脇のしたから刺すような形でシーモアの胸部分に再び黒鬼徹を突き刺す。その攻撃が入った時、シーモアの詠唱も終わる。レイナ以外の全員がレイナの頭上に出現した雷の存在に気づいた。が、レイナはそれでもその場から動かないで徐に包帯を巻いた手を上に上げる。そして雷が真っ直ぐレイナに着弾したのだった。

 

 

 

 

21

 

 マカラーニャの森の小部屋の様な部屋で、レイナ達は座りながら休憩をしていた。シーモアとの戦闘は簡潔に言えば勝利で終わった。だがシーモアは老師と言う偉い存在。べベルだけでなく、世界中に居る人々にとって尊敬する様な存在なのだ。故にそんな彼を倒したレイナ達は当然あの場に居るべきではない。例え倒せたとしても兵士たちに囲まれたりすれば一貫の終わりである。そのため、逃げたのだ。そしてべベルから出てすぐの場所はマカラーニャの森であり、今に至る訳である。

 

「……無理させすぎたか……悪いな、黒鬼徹」

 

 レイナの目の前には黒鬼徹が横たわっており、その刀身を触りながらレイナは呟く。別に刀身に何かがあったりする訳ではない。だが、柄の部分に存在していた包帯が途中から切れてしまっているのだ。【丸焦げ】になって。

 

 戦闘の最後、レイナに襲い掛かった雷をレイナは黒鬼徹の包帯で巻いた手で受け止めた。それは別にそれしか方法が無かったのではなく、そうすることが一番最善だったからである。と言うのも、黒鬼徹の包帯は投げれば伸びる。それは【ゴム】が包帯の中に入っているからだ。そしてそれは電気を通さない性質を持っていた。故にそのまま受け止めたのである。因みに作ったのはココアである。

 

「ま、普通に使うしかねぇか」

 

「……さっきから何度も思うけどよ、本当にお前。ユウナの妹なのか?」

 

 独り言を言って黒鬼徹から手を離すレイナ。そんな行動をじっと見ていたバンダナを巻いた男性が質問をする。その声にレイナが顔を上げれば男性を筆頭にミヘン街道でレイナを止めた女性と金髪の少女がジッと自分を見続けているのに気付いた。この場にはアーロンも居るが、本人は入り口近くの木に背中を預け、そんな光景を見ながら「ふん」と笑っていた。

 

「別に信じようが信じなかろうがそっちの勝手だぜ?」

 

「いや、正直信じられないんだけどよ。アーロンさんが言ったし……」

 

「じゃ、アーロンが嘘ついてると思え」

 

「それは流石に無理があるだろ。……何か全然似てないな」

 

 バンダナを巻いた男性の言葉にレイナは「育ち方が違うんだよ」と返し、黒鬼徹を持って一度立ち上がると木の傍に移動。黒鬼徹を地面にまっすぐ突き刺し、再び座ると背中を木に預けて目を瞑ってしまった。

 

「聞いてた感じと全然違うんだよな」

 

「仕方がないわ。人は変わる。そう思って受け止めなさい、【ワッカ】」

 

「うわ、【ルールー】は全然驚いて無い感じ?」

 

「これでもしっかり驚いてるわ。でもね【リュック】。少なくとも私は彼女を信用して良いと思うわ」

 

「? 何でだよ?」

 

「シーモア老師との結婚。あの時起りかけた事を考えると……ね」

 

 その言葉に3人は黙り込んでしまう。女性……ルールーの言葉に呼び起こされた記憶は結婚式で鐘が鳴った瞬間の光景。あの場で誰も動くことが出来ず、シーモアがユウナの身体を引き寄せた瞬間。自分たちが守るべき存在が今まさに穢されようとしている瞬間だった。だが、結果的にレイナと言う存在が邪魔をすることでそれが起きることは無くなったのだ。そう考えれば安心と同時に浮かぶのはレイナへの感謝。

 

 「あれは危なかったよね」と金髪の少女……リュックが言い、その言葉にかなり暗い表情を見せながら「あぁ」とバンダナを巻いた男性……ワッカが答える。ワッカは最後までシーモア老師を。そしてエボンと言う組織の掟などを信じていた。が、今回の件でその掟を作ったエボン自身が掟を破っていたことを知ってしまったのだ。この場に居る中で一番ショックを受けているのは彼だろう。

 

 と、目を瞑っていたレイナがまた立ち上がる。そして黒鬼徹を抜いて背中に背負うと小部屋であるここから出ようとする。突然の行動に不思議がっていた3人だが、どこかに行こうとしていることに気付くとワッカが「おい!」と声を掛ける。が、レイナはそのまま歩き

 

「恐らく次はお互い、ぶつかり合うだろうよ」

 

「……そうか」

 

 入口の近くに立っていたアーロンにそう言うとその場を立ち去って行った。理解できないレイナの言葉にワッカはルールーに「どういう意味だ?」と質問。溜息をついて「私が分かる訳ないでしょ?」と返した。が、アーロン以外にも何となく理解できる存在がこの場に居た。グアドサラムの異界でレイナがアーロンと話をしていた時、リュックはその場に居たのだ。故にその意味が何となく理解できた。だがそれを簡単に口にするのは難しい事である。先ほどまで信用して良いと話して居たのに、『敵になるかも知れない』等と簡単には言えないのだ。

 

「どうにか出来ないかな~?」

 

 リュックは小さく呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マカラーニャの森には大きな湖が存在している。その水面は周りにある木々にあるキラキラが反射し、非常に幻想的な光景を作り出している。そしてそんな場所でティーダとユウナは座り、会話をしていた。

 

 そんな2人の遥か後方でシーモアを止めるために戦ったロンゾ族の青年……キマリが静かに立っている。彼はユウナを守ることを第一に考えるガードの鏡とも言える存在。今もユウナをいつでも守れるように待機しているのだろう。ティーダとユウナがとあることをしていた時も彼はその場から離れなかった事から時折度を超える事がある様だ。

 

 今も2人が語らうのを遥か後方で見ているキマリ。と、そんな彼の横にレイナが立った。キマリは非常に長身である。逆にレイナは背が低い。リュックと並んでどう見ても負けるぐらいの背だ。故にキマリはレイナの存在を確認すると普段の様に目だけを向けようとしても頭しか映らなかった。

 

「お似合いのカップルってか?」

 

「……」

 

「悪かった、だから不機嫌になるな。怖い顔がさらに怖くなる」

 

 レイナの言葉に黙って、だが微かにその顔に皺を増やしたキマリ。常に無表情故に分かりにくいが、それでもその言葉に機嫌を損ねたのが分かったレイナは謝る。キマリの顔の皺が少し減った。

 

「この世の召喚士で一番大変な目に合ってるかもな。ガードも大変なこって」

 

「キマリはそれでもユウナは守る」

 

「もし召喚士を投げ出したいって言ったらどうする? 例えば……あぁ、ティーダと幸せになりたいとか言ったら?」

 

「ユウナが決めた事ならキマリはそれに従う。だがユウナはそれを言わない」

 

「……だろうな」

 

 キマリの言葉にレイナは業とらしく肩を落とす様な仕草をすると「じゃあな」と言ってその場から去ろうとし始める。それを見てキマリは初めてユウナ達から体ごと背け、レイナをしっかりと捉えた。

 

「ユウナは家族に会えた。これから一緒に居るべきだ」

 

 その言葉にレイナは足を止める。そして振り返らずに

 

「例え一緒に居てもすぐにまた別れる時が来る。なら最初から居ない方が良いさ。今更やり直したって手遅れだ」

 

 そう言うと片手を上げて手の甲を向けてキマリに軽く手を振ると今度こそレイナはマカラーニャの森を出る。行き先はナギ平原。リアラ・ココアの2人と合流する場所であり、2つの思いがぶつかりある【運命の場所】である。

 

 

 

 

22

 

 マカラーニャの森を出てナギ平原に入ったレイナはまず最初に突然視界が明るくなった事に思わず手で目を隠す。マカラーニャの森は普通の森と比べて明るい。それでも太陽が出ている外の明るさには敵わないのだろう。前回も同じ様に森からナギ平原出ているものの、その時は殆ど通り過ぎるのみだったために明るさに慣れていたのだろう。しかし今回は森でしばらく長居をしていたため、眩しく感じるのも仕方がない事だろう。

 

 一度見ている光景ではある物の、その広大な平原の姿に再び感嘆するレイナ。普通なら坂になっている道を迂回して平原に出るのだが、レイナはまず崖の目の前に立って平原を見渡す。そして目的の物を確認するとその崖から大きく跳躍して地面に着地をする。前回と違ってレイナの傍にはチョコボが居ないため、広大なこの平原を歩くのは非常に大変である。故に小さくとも近道したのだろう。危険だが。

 

 目的の場所に向かって歩き始めるレイナ。と、そんな彼女の目の前に魔物が現れる。広い平原で居るとはいえ数人しか人が居ないこの場所では魔物も普通に存在しているのだ。

 

 魔物は2体。沢山の存在が混じったような生き物、キマイラブレインと猫の様な姿をしたクァール。両者とも違う位置にいたが、レイナの存在に同時に気付いて目の前に姿を現したのだ。普段は種族が違うために仲が良い訳ではない2体。だがそれでも人間を襲う思いは同じ故、同時にレイナに襲い掛かる。

 

「ったく。邪魔すんなっての」

 

 レイナは悪態をつきながら黒鬼徹を取り出す。最初に動いたはクァール。その猫の姿から飛びかかると思われたその攻撃方法は魔法。鳴き声だけで詠唱を済ませてレイナの頭上から雷を落とす。落ちる瞬間、ギリギリでレイナはその場を飛び退くことでそれを避ける。が、その先にはキマイラブレインがその巨体には似合わない速度で回り込んでいた。そしてその拳をレイナ目がけて振りかぶる。

 

「ちっ!」

 

 咄嗟に黒鬼徹の平たい刀身部分を盾にしてその攻撃を防ぐレイナ。しかしその威力はかなりの物で、背が低いレイナは体重も低いため簡単に飛ばされてしまう。そしてその先にはクァールが体を上げて爪を振り下ろそうとする体制で待機していた。凄い連携である。が、吹き飛ばされたまま体制を素早く整えると振り下ろされる前に大剣をクァールにまっすぐ突き出す。結果その頭に黒鬼徹は刺さり、クァールは鳴き声も上げずに幻光虫となって消えていった。

 

 消え続けるクァールの頭に刺した黒鬼徹を支点にして地面に着地するレイナ。そんな彼女にキマイラブレインが片手を出すとそこに火の球体が出現する。そしてそれをレイナ目がけて投降。しかしそれはレイナに当たる前に突然地面から出現した水の波に飲まれ、消失してしまった。

 

「……助太刀ってか?」

 

「似たところです」

 

 黒鬼徹の刀身を肩に担ぎながら呟くレイナ。と、そんな彼女の言葉に聞きなれた女性の声による返答が返って来る。と同時に突然聞こえる発砲音。瞬く間にキマイラブレインの身体には風穴が数カ所に出来、地面に背面で倒れるとクァール同様に幻光虫となって消えていった。が、レイナは大剣をしまわずに溜息をついた。

 

 戦闘が終了した場合、普通は武器などをしまうだろう。だがレイナはそれをしない。いや、出来なかった。それもその筈、今現在彼女の後頭部には一丁の銃が突きつけられて居るのだから。そして突きつけているのは他でもない、レイナの仲間であるリアラであった。

 

「もう居ないからその物騒な物をしまったらどうだ?」

 

「断ります。ココア」

 

「ん……了解」

 

 レイナの言葉をバッサリと切り捨てるとココアの名前を呼ぶ。と、静かに返事をしてリアラの後方からロープを持ったココアが姿を現す。そしてレイナは瞬く間に両手を体と一緒に拘束。両足首も同じ様に拘束され、一切動けない状態にされてしまう。最初抵抗したレイナだが、リアラが突きつけている銃をレイナの後頭部に当ててその存在を認識させるのですぐに抵抗は止めた。誰でも銃を突きつけられて脅されれば抵抗など出来なくなる物だ。

 

 銃をしまい、レイナの身体を持ち上げるリアラ。女性であっても簡単に持ち上がることからレイナは相当軽いのだろう。そしてココア同様に待機していたチョコボの背中にレイナを乗せると飛空艇の停めてある場所に向かって移動を始める。レイナが行こうとしていた目的地だ。チョコボは自分の主が無事に帰還したことに喜びの鳴き声を上げる。が、対称的に乗せられたレイナはやれやれと言ったように溜息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、弁解があるならどうぞ。聞く気はありませんが」

 

「なら意味ねぇじゃん。煮るなり焼くなり好きにしろ」

 

 ナギ平原の旅行公司近くに停められていた飛空艇に連れて行かれたレイナは現在、その内部の1室にて縛られたまま正座させられていた。そしてそんなレイナの目の前には腕を組んで仁王立ちするリアラ。レイナはリアラの言葉に迷わず返答。リアラは余りにも堂々としたその態度に呆れると同時に溜息を大きくついた。

 

「貴女はその時々で行動し過ぎです。今ここに居るのも殆ど奇跡みたいな物なのですよ? べベルで捕まった者は殆ど生きて帰って来ません。最悪の場合……死んでいました」

 

「でもああしなきゃ今頃俺だけじゃ無くてお前らも捕まってただろうな。叱りだろうが何だろうが別に良いけどよ、俺は間違ったつもりは無い」

 

 先ほど同様、迷わず返すレイナの瞳は真剣その物。リアラは目を見開いた後にしばらく黙ってしまい、何度目かの溜息をつく。

 

「……貴女は本当に馬鹿です…………でも」

 

 リアラが喋っている途中で突然部屋の扉が開かれる。入ってきたのはココア。その手には黒鬼徹が握られており、扉を閉めると2人に視線を向ける。が、なぜか口を開いたままリアラは固まっていたために首を傾げた。

 

 レイナはココアが入って来た時に一度視線をココアに向けた物の再度リアラに戻すと、「でもそんな何だよ?」と質問。リアラは急に赤くなると「なんでもありません!」と言って扉に向かって歩き始める。そしてココアに片手を上げて「後はお願いします」と言うと部屋を出て行った。

 

「なんだよあいつ……で、黒鬼徹はどうだ?」

 

「……ゴムの修復は……無理…………本来の方法で……戦って」

 

 ココアはレイナの質問に普段通りの途切れ途切れな口調で答えると持っていた黒鬼徹をレイナの横に置く。そして服の中の豊満な胸の谷間に手を入れるとそこから奇妙な形をした何かを取り出した。そしてそれを見て徐々に青ざめて行くレイナの表情。ココアは常に無表情だが、なぜかそれを取り出してレイナの表情が変わったのを見ると同時にほんの僅かだがその口元を歪める。その後、外に出てチョコボと一緒に休んでいたリアラの耳に普段のレイナからは想像出来ない様な声が聞こえて来るのだった。

 

 

 

 

23

 

 翌日、飛空艇の中でレイナ・リアラ・ココアの3人は揃っていた。が、そんな3人の間にあるのは沈黙。誰もしゃべらず、誰も何も行動をしようとしない。

 

 レイナは唯腕を組んで壁に背中を預けながら目を瞑っており、ココアは操縦席らしき場所で唯何かを行っている。そしてそんな光景を何も言わずに見続けるリアラ。何時までも続く沈黙だが、それは突然途切れた。

 

「! ……確認」

 

「レイナ。覚悟は良いですね?」

 

 ココアの言葉に初めて内部の空気が大きく変化する。そしてリアラがレイナに視線を向けて質問をすると、少しの間の後に寄りかかっていた壁から離れて静かに目を開ける。その瞳には何かを覚悟した意が宿っており、唯静かに告げる。【開始する】……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 召喚士ユウナとそのガード一行はナギ平原へと足を踏み入れた。そしてその先にある向かうべき場所に足を進める。広大な平原を歩き、現れる魔物を撃退し、やがて広大な平原から吊り橋が掛かった場所へと移る。ユウナ達の目の前にあるのは大きな山・【霊峰ガガゼト】。召喚士の旅はこの先に目的地があり、ナギ平原以降。町と言った場所は存在しなくなると言われている。

 

 吊り橋を渡ったユウナ達。そんなユウナ達の目の前に突然グアド族の男性が姿を現す。そして一言。

 

「シーモア老師のご命令だ。ついてきて貰おう」

 

 そう言ったとほぼ同時にガードであるティーダ達がユウナの目の前に盾になる様に立つ。そして静かに、強い思いを込めてユウナは男性に自分がついて行かないと言う意思を伝える。すると男性はまるでそれが分かって居た様に、そして面倒そうにユウナ達を見て一喝。

 

「シーモア老師の命令は絶対。シーモア老師は死体でも構わないと仰った!」

 

 男性はそう言うと同時に大きな足音が響き始めた。そしてすぐにその正体が分かる。それは機械仕掛けの巨大な人型兵器、【護法戦機】。護法戦機は橋の下にある坂道から全員の目の前に立ちふさがる様に姿を現した。

 

 既にその場を離れていた男性。その代わりの様に護法戦機が立つ。男性は既に逃げた様で、ユウナ達の目の前には護法戦機だけとなる。だがその存在感は強く、気を抜けば簡単に殺されてしまう可能性があることはこの場に居る誰もが理解できた。そして護法戦機が動き始める前にそれぞれが武器を取ると戦闘を始める。

 

 機械の身体は非常に頑丈で、重い一撃ならば入る物の並大抵の力では傷をつけることも出来ない。故に魔法を使えるルールーと大剣での重い一撃を入れられるアーロンが主に攻撃を行いながら、それぞれが仲間達に取って戦いやすい位置に回る。勿論ユウナを守ることを全て最優先にした上での戦闘だ。

 

 戦闘が始まって数分。ユウナ達は戦闘を続けるものの、決定打を与えることが出来ずに戦いを続けていた。劣勢な訳ではなく、どちらかと言えば優勢。だが手首から先を飛ばしてくるなどの攻撃をしてくるため、不用意に近づけないで居たのだ。と、そんな全員の足元が突然暗くなる。その原因は頭上。全員が上を見上げればそこには自分達が知っているものに比べると小さいが、それでもそこそこの大きさを誇る【飛空艇】が飛んでいた。

 

「な、なんじゃありゃ!」

 

 突然現れた飛空艇にワッカが驚きの声を上げる。すると飛空艇の下部分が小さく開き、それと同時に護法戦機がユウナ達では無くその飛空艇に腕を向ける。そしてその手首から先を思いっきり飛ばし、飛空艇に向けて攻撃を放った。が、飛んでいくその手首は飛空艇に当たるよりも早く開いた部分から飛び出した何かと接触。飛空艇にぶつかることもなく空中で【真っ二つ】になるとそのまま重力に従って地面に落ちて行った。そしてそれと一緒に同じように落ちて来る【人影】。

 

「覚悟しな! 一刀、両断!」

 

 大きく声を上げて持っていた大剣を頭上に掲げ、着地と同時にその大剣が護法戦機の身体を通り抜ける。護法戦機の背後に着地したため、その姿をユウナ達は捉えることが出来ない。が、既に何度か遭遇していることでその人物が誰なのかはすぐに納得することが出来る。と同時に目の前の光景に驚いてしまう。

 

 大きな地響きと共に中心から綺麗に2つに分かれて倒れる護法戦機。重い一撃ならば与えられるとは言った物の、その身体を分断させられる程の力は誰も持っていなかった。故に目の前でそれを行った小柄な少女の姿にその場に居る全員が驚きを隠せずにいた。

 

 と、そんな彼女の遥か後方に飛空艇が下りる。着陸場所はガガゼト山に続く道を綺麗に塞ぎ、出入り口と思われる場所が開くとそこからは見た事の無い女性が2人。と同時に大剣を振り下ろしたままの体制だった少女は立ち上がる。そしてユウナ達に目も向けずに自分が切った護法戦機の成れの果てを見る。

 

「質の悪いストーカーだぜ、まったく」

 

「急に飛び出ないでください。毎度の事ながら貴女は無鉄砲過ぎです」

 

「……危険」

 

「頼むからこんな時にまで説教は止めてくれ」

 

 2人の女性……リアラとココアが少女……レイナの背後に立つと喋り、それを聞いてレイナは頭を押さえながら首を振る。そんな光景を呆気に取られながら見ていたユウナ達だったが、やっと我に返ることが出来た。

 

「えっと、あ、ありがとうございます」

 

「んぁ?」

 

「助けてくれたんだろ?」

 

 ユウナは前に出るとお辞儀をする。だがレイナはそんなユウナの行動を見て訳が分からないと言った表情を浮かべ、それを見てティーダが質問。するとレイナは背後に居たリアラとココアに顔だけ振り返り、「助けたのか?」と質問。リアラは呆れた表情をし、ココアは表情も変えずに静かに「……やれやれだね」と答える。と、ユウナ達の中から1人。アーロンが前に出る。

 

「ここで決めると言う事か」

 

 そう言ったアーロンに全員が視線を向ける。と、レイナが笑いながら「あぁ」と答えて持っていた大剣……黒鬼徹を【ユウナ達に向けた】。

 

「お、おい!」

 

「どう言う、事だよ?」

 

「多分、戦うんだよ」

 

 目の前で自分たちに剣を向けるレイナを見て再び驚くワッカと訳が分からずに質問をするティーダ。するとその質問に答えたのはレイナでもアーロンでも無く、リュックだった。そしてその声を聴いたティーダは「はぁ?」と聞き返す。だが彼が理解をせずとも現状はどんどん進んで行く。

 

「あんた達は。いや、あんたは召喚士だ」

 

 レイナはそう言って剣をユウナ1人に向ける。そしてその言葉にユウナは驚きながらもレイナを見続けていた。

 

「あんたに決意があることは理解してる。シンを倒すことが【自分の死】に繋がると分かって尚、自ら進むあんたを責める気はない。だがな、決意があったとしても【俺たちは認めない】」

 

「シンは人々にとって恐怖であり、ナギ節は人々にとって一時の安らぎであることは間違いありません」

 

「……だけど……誰かの……【死による平穏】……それは……まやかしでしか無い」

 

 レイナの言葉に続くように両手に一丁ずつ銃を取り出すリアラ。そんなリアラ同様に短剣を1本取り出して地面と平行に構えるココア。どう見ても3人はこれから自分たちと敵対する存在であり、最初理解出来ていたのはアーロンとリュックのみだったが、目の前の光景を見ればそれぞれが理解することにそう時間は掛からなかった。

 

「俺たちはこの先に召喚士を絶対進ませねぇ。誰かが死んで出来た平穏なんて御免だ。例え傷つけてでも俺達は召喚士を、あんたたちを……止める!」

 

 

 

 

24

 

「止める……ってお前ら何言ってんのか分かってんのか!?」

 

 レイナの言葉を聞いて一番最初にワッカが前に出て抗議する。レイナ達の言った言葉は、今から行おうとしている行為は言ってしまえばこの世界で繰り返される常識の様な物を覆そうとして居る事に他ならないからである。が、ワッカの言葉に向けていた黒鬼徹を一度頭上で回すと自分の横の地面に突き刺してレイナは一度顔を下に向ける。

 

「冗談でこんな事しねぇよ。本気だ。俺たちは本気でお前らを止める」

 

「っ! 下がれ!」

 

 言葉の最後で突然レイナが顔を上げる。と同時に刺した黒鬼徹を手に一瞬で間合いを詰めると迷うことなく自分の姉であるユウナにその刀身を振り下ろした。真近に迫った刃にユウナは反応も出来ず、唯目を瞑るしかなかった。だが来るはずの痛みは来ず、変わりに来たのは耳鳴りがしてしまうほどの大きな音が響いた。恐る恐る開いたユウナの瞳に飛び込んだのはレイナが振り下ろした黒鬼徹を自分の大剣で防いでいるアーロンの姿。その現状にレイナは予想通りと言った様に笑う。

 

「アーロン!」

 

「俺はガードだ。召喚士が危険になれば身を挺してでも守り、その障害を排除する。それが俺の役目だ」

 

「ですが彼女はユウナの妹。戦うなんて」

 

「無理だよ」

 

 ティーダの声に唯々この現状に関し、何の間違いも無い答えを返すアーロン。ガードと言う存在である以上、間違っていないことは全員に分かる物の、それでも納得出来ないと感じたのだろう。ルールが抗議するが、その言葉はリュックによって遮られる。そしてそんなリュックの表情を見てレイナの背後に居たリアラが「その通りです」と言った。

 

「シンを倒そうとしている者。それを止めようとしている者。今この場に居るのはその2組。それぞれの意思が固い限り、話し合いは無意味でしょう」

 

「……実力……行使」

 

 リアラとココアは言葉を発しながらそれぞれ自分の武器を取り出す。レイナは見る事無く一度バックステップで後ろに戻り、再び3人で並ぶ様に立つ。対するユウナ達もリアラの言葉と目の前で武器を構える3人を見て戦闘は避けられないと分かったのだろう。各々が武器を構える。その光景を見てレイナは黒鬼徹を肩に担ぐようにしてトントンと肩を叩いた後、再び笑った。その笑顔は普通の笑顔では無い。言うなれば【怖い笑顔】だろう。そしてレイナは

 

「行くぜ?」

 

 そう唯一言だけ言うと同時にレイナ・リアラ・ココアの3人の姿が消える。そしてそれが戦いの始まる合図となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイナが猛スピードで再び間合いを詰めて黒鬼徹を振り下ろす。が、それは先程同様にアーロンの大剣によって防がれる。アーロンはそのまま大剣を大きく押してレイナを押し返すと、勢いを殺さ無い様に振り返りながら大剣を振り下ろす。今度はそれをレイナが先程のアーロンの様に防いだ。

 

「伝説のガード……正直あんたがそう呼ばれる様になったのは驚かねぇけど、もう結構経ってる。腕は衰えてねぇよな? 【師匠】」

 

「ふん」

 

 ぶつかり合う刃が音を立てる中、少し離れた場所でリアラによる銃声が何度も響く。放たれた銃弾はまっすぐにリュックの足目掛けて飛んでいく。しかしリュックがその場から何度も側転をすることでリュック自身に銃弾が当たる事は無く、リアラは銃の持ち手部分から何かを落とす。と同時に腰に銃を素早く動かせば、一瞬で抜けた部分に全く同じ物が入る。

 

「はやっ!?」

 

「逃がしませんよ」

 

 リアラの動作にリュックは驚くが、それでも一切の迷い無くリュックに向けてリアラは連続発砲を開始する。身軽なリュックは同じように走り回ったりしながら避け続けるが、それでもリュックの体力が何時までも無限にある訳では無い。リアラが連射し続けていると、そんな彼女に向かってボールが飛んでくる。威力が高く、それをリアラは背後に宙返りをして回避した。

 

「色々あり過ぎて訳わかんねぇ、ってかあれも機械かよ」

 

「あんな小型の銃は私も知らないよ! っと!」

 

 ボールを投げたのはワッカ。リアラが避ける行動をしている最中にリュックの真横に位置を取ると仲間の中で一番詳しいであろうリュックに質問をする。が、リュックはそれを首を横に振って答えた。リュックの頭の中にある銃と言って思い浮かぶのは長い所謂猟銃に近い銃。が、目の前に居る相手が持っているのは片手で持てる小型の銃。小さいが故に扱いも早く、早いが故に隙が殆ど無いのだ。相手にすれば、それは辛い。

 

 リアラは話して居る2人に銃を向けて再び放とうとするが、何かに気付いた様にまったく別の方向に発砲。放たれた弾丸は真っ直ぐに飛び、別の場所で戦っていたココアに振り下ろされかけていた槍に当たる。結果、槍は横から来た力によってずれる事となり、ココアの横に卸される。

 

「……ありがと」

 

「油断は駄目です。あのエフレイエを倒せる者たちですからね」

 

「……了解」

 

 離れた距離で会話をするリアラとココア。そんな姿を見てリュックは今とばかりにリアラに近づく。が、その爪で攻撃をしようとした時。リアラはリュックの頭を押さえ、背中合わせに乗りかかってその身体を超える。そして銃をリュックに向けようとして、またボールに邪魔をされた。

 

 リアラが再び戦闘を再開したのを見て走り出すと先ほど自分を攻撃しようとしていた存在……キマリに急接近。両足を上げてドロップキックを放つ。それをキマリは槍で防御すると、ココアは槍に乗る様にして足をバネに大きく飛ぶ。そのまま距離を取る様にして着地しようとしたココア。しかしそんな彼女の足元に突然氷の柱が出現する。先は尖り、刺されば確実に怪我をするだろう。

 

 確実に着地しようとしていたココアはそれに気付くと何も無い所で短剣を振るう。と、距離がある筈の氷の柱。その先が少し切れ、落ちる事で平らになる。そしてそこにココアは片足で綺麗に着地した。

 

「……危ない」

 

「くっ、強いわね……」

 

 少し離れた場所、そこで魔法を放ったルールーは思わず呟く。氷の上に片足で立っているココアは無表情なのも相まってどう見ても余裕に見えてしまう。先程のキマリの槍は油断による物だとリアラは言っていたが、一度先程の様な事が起これば油断など無くなる。そして油断が無くなった事はルールー達からすれば厳しくなったのと同義。氷の上から一気にルールー目掛けて飛び始めたココアにキマリはすぐに間に入ると先ほど同様に攻撃を受け止めた。

 

 目の前で広がる3カ所の戦闘。その光景にティーダは困惑していた。相手はユウナの妹とその仲間。戦う事は当然避けたいが、ならばここを通る事は許されない。それでも通りたければ倒すしかないのだ。その状況にどうするべきなのかと混乱していた。

 

「何で、何でこんな事になってんだよ!」

 

「……皆……レイナ……!」

 

「! ユウナ! あぁ、もう!」

 

 目の前の光景を認めたくない様に誰も聞いて居ないにも関わらず抗議するティーダ。だがその後ろでユウナは杖を手に何かを決意すると走り始める。向かう場所はアーロンと戦うレイナの元。ティーダはその姿に一瞬固まるが、すぐに止められないと分かると地団駄を踏んでその後を着いて行くのだった。

 

 

 

 

25

 

≪はぁ!≫

 

 大きな音と共にぶつかり合う刀身。余りの威力からか、2人の足元は大きくその威力を受け止めた結果抉られる事になる。が、それでも2人がぶつかる事を止める事は無かった。

 

「あんたも分かってる筈だ! この先にある物の現実が!」

 

「……」

 

 レイナはぶつかり合っていた黒鬼徹を身体ごと1回転させて今度は横に振るう。が、それも再び防がれると同時にその刀身を押し返されてしまった。アーロンとレイナでは大きく違う物がある。それはお互いに大きな剣を使っているが、アーロンはしっかりとした体格の男性に対してレイナは女性のしかも子供と同等の大きさ。故に力でレイナが適う事は無かった。が、それで諦めるなどレイナには当然ありえない事である。

 

 押し返された勢いを利用して空中に後ろ周りで1回転、黒鬼徹の重さも利用して地面に指すとその勢いのまま着地する。そして抜くと同時に再びアーロンに向かって駆け出した。が、その間に突然ユウナが飛び出てくる。黒鬼徹を構えたまま、攻撃を加えようとしていたためにレイナは一瞬目を見開くと止まる。勢いもあり、ユウナの目の前でレイナは止まる事になった。

 

「もう止めて!」

 

 ユウナの悲痛な叫びを聞き、レイナは握っていた黒鬼徹を握ったまま固まる。と、そんなレイナに1歩1歩とユウナは歩み寄り始め、ゆっくりとその頭に腕を回すと抱きしめた。そしてまるで子供にあやす様に話始める。

 

「お願いだからもう止めて……貴女達と……レイナと戦いたく何て、無い」

 

「……」

 

「私は大召喚士になって、ナギ節を作りたい。皆の為に……父さんみたいに……」

 

「…………違う」

 

 静かに低い声で言われた否定の言葉にユウナは静かに声を上げる。ユウナの胸に押し付けられていたレイナはゆっくりと片手でそのお腹の部分を押して距離を取る。否定された事でユウナの抱きしめていた力は抜けており、レイナとユウナは見上げ見下ろす形で視線を合わせる。

 

「皆の為? 父さんみたいに? ふざけるな!」

 

 大声で吐き捨てる様に言ったレイナの言葉に別の場所で戦っていた者達も止まり、2人に視線を送った。そんな中でレイナは持っていた黒鬼徹を静かにユウナに向け、ユウナは向けられたそれを見て目を見開く。

 

「シンが居なくなる事はつまり召喚士が死んだことも意味する。確かに平和なナギ節が来るかも知れない。だけどな、人が死んで喜べるほど俺は人間止めた覚えは無いんだよ……べベルの連中みたいにな」

 

 レイナの言葉にユウナは一瞬、幼い頃にべベルに住んで居た時。父であるブラスカがシンを倒して出来たナギ節にべベルに住む人々が大いに賑わって喜んでいた姿を思い浮かべた。そしてレイナの言いたいことをすぐに理解することが出来る。シンを倒し、ナギ節が来る事は召喚士の死があった上で成り立つ事。そしてナギ節が来て喜ぶことは間接的にではあるが、召喚士の死を喜んでいると思っても不思議では無い。

 

「街の奴らは最初、親父達を馬鹿にしていた。アルベドと結婚した落ちこぼれだとか何だとかな。だけどシンを倒した瞬間『大召喚士様』扱いだ。親父はあいつらに取って、この世界に取って『死ぬことで初めて功を成したと認められた』……死んで喜ばれて、死んで崇められて……初めてだ。それが……召喚士だ」

 

 持っていた黒鬼徹の柄、それを握っていたレイナの手に力が籠る。ユウナがレイナの言葉を聞き、顔を伏せるがすぐに上げると同時に口を開こうとする。が、その前にレイナは向けていた黒鬼徹を大きく振り上げた。

 

「俺はこの世界が嫌いだ、人が嫌いだ、何よりも召喚士が……大嫌いだ!」

 

「ユウナ! いっ!」

 

 その言葉と同時に振り上げていた黒鬼徹を振り下ろす。ユウナはそれに動けずにいたが、横からティーダが飛び出るとユウナの目の前に立って剣でレイナの攻撃を防いだ。刀身に手を添えてその攻撃を受けるが、威力が強かった様でティーダの手には激しい痺れが襲い掛かった。ティーダ自身レイナが小さく、それでいてアーロンは攻撃を当たり前の様に受けていたため、そこまで大きくないと思って居たのだろう。

 

「邪魔を……するな!」

 

 レイナは防がれた事に一瞬驚くが、すぐに降ろした黒鬼徹の勢いをそのままに少し宙に浮くとそのままティーダの上を飛ぶ。ユウナはすぐに後ろに下がるが、その結果2人の間に着地をする事になり、レイナは着地すると同時にティーダに向かって回し蹴りを放った。まさかその様な行動を取られるとは思ってなかったティーダは、驚きの声と共に大きく飛ばされる事となる。

 

「召喚士は死ぬ。旅で死ぬ。シンを倒して死ぬ。始めた時から覚悟して、残された者達を考えもしないで!」

 

「それは違う! 私は、私達は皆に笑ってほしいから!」

 

「それがまず間違いなんだよ……他力本願で生きる奴らが居るこの世界で、召喚士は唯の生贄でしかない。そして父さんも……【その1人】だ」

 

「!」

 

 最後の一言がレイナの口から発せられた、その瞬間。ユウナは杖を手に胸の前でまっすぐに持ちながら構える。その目は今の今までしていたレイナへ向ける『戦いたく無い』と言う意思を持った目では無く、何かを示すために持つ覚悟の瞳。アーロンはこの会話の間離れたまま止まっていたが、ユウナのその行動に横に並ぶ。飛ばされたティーダも雰囲気の変わったユウナに気付くとその横に並んだ。

 

「召喚士は生贄じゃない。私達は、私達の意思でシンを倒したい。そう心から思ってる。だから!」

 

 目の前で並ぶ3人にレイナは目を閉じ乍ら黒鬼徹を頭の上で回した後、肩に担いで顔を上げる。そして瞳を開くと同時に黒鬼徹を目の前で横に振るって左側に移動させ、そのまま一気に駆け出した。それを迎え撃つ3人。今ここで史上最大の【姉妹喧嘩+α】が始まるのだった。

 

 

 

 

26

 

 地面に落ちた巨大な刃を中心に地面には小規模ではあるがクレーターが一瞬にして出来上がる。その威力に寄り、そのすぐ傍に居たティーダは大きく飛ばされる。が、地面に着地するまでには立て直して居たために転んだりすることは無い。

 

 黒鬼徹を振り下ろした体制のまま、レイナは息を一回吐くと同時に着地したばかりのティーダに向かって急接近。驚き武器を構える暇も無く迫って来たその刃は、間に入ったアーロンが防ぐと押し返すことで再び距離が出来る。そしてそんな2人の背後でユウナは右手を前に、杖を後ろにして広げる。

 

「召喚獣……か」

 

 レイナの言葉と共にユウナの足元が突然光出し、その光は空で1束に纏まると雲の上へと上がって行く。そしてその光が消えてすぐ、雲の吹き飛ばして現れるのは巨大な生き物。世間では【召喚獣】と呼ばれており、召喚士が各寺院を回ってそこに居る【祈り子】と契約をする事によって得られる力である。

 

 大きな羽を羽ばたかせながら着地すればそれだけで地面は揺れ、召喚獣……ヴァルファーレはユウナの目の前に。ユウナはその顔を撫で、小さな声で「お願い」と一言。ヴァルファーレはレイナの目の前に立ち、ティーダとアーロンは既にその場には居なかった。召喚獣はその殆どが巨体であり、尚且つ攻撃の1つ1つが協力な事が多い。故に傍に居れば巻き込まれる可能性が高いため、避難したのだろう。

 

 レイナは黒鬼徹を地面に刺し、目の前に存在するヴァルファーレを見る。レイナの身体の数倍の巨体と召喚獣故の圧力。それをレイナはその小さな体で1人、受けていた。静かに目を閉じ、深呼吸を一回。目の前に刺して居た剣を差したまま握り、そのまま再び深くまで差し込む。と、地面に足を着けて居たヴァルファーレはすぐに羽を使って空へ。同時にその足元は爆破された。

 

「俺はさっきも言ったが召喚士が嫌いだ。そしてその召喚士が求める召喚獣は……もっと嫌いなんだよ!」

 

 深くに刺していた大剣を抜くと、レイナは目にも止まらぬ速さでその場から移動。気付けばヴァルファーレの目の前に存在しており、左手はヴァルファーレの顔に。右手は黒鬼徹を背負う様に存在していた。当然空を飛んでいるヴァルファーレの目の前に居る為、レイナは現在空中。その場に居る誰もが、ヴァルファーレすら反応出来る前にレイナは鋭い瞳を向け乍らその大剣を小柄な身体と重さを生かして1回転する様に振り下ろした。

 

 ヴァルファーレの顔から真っ直ぐ黒鬼徹は傷をつける。その1撃。たったの1撃でヴァルファーレは空を飛ぶ力すら失い、地に伏すと同時に消滅して行った。そして消えて行く姿を見て目を見開くユウナとティーダ。アーロンは次にレイナが取る行動が分かったのか、ユウナに「下がれ!」と吠える様に一言。一瞬分からなくなるも、すぐにその意味が分かる事になった。

 

 1回転したが故にレイナは先程と同じ様に空中に居り、ヴァルファーレが居ない今目の前には何も居ない。つまり少しの距離を置いて、今現在ユウナ達3人は無防備な状態だったのだ。

 

「ぶっ飛べ! 破衝撃はしょうげき!」

 

 レイナは空中で今度は黒鬼徹を横に思いっきり振るう。風がその勢いで鈍い音を立てる程だ。そしてその振るった刃は遠くに居るユウナ達には当然届かない。が、振るったことで発生した衝撃波の様な物は3人の目の前に着弾。その地面を破壊して3人をも襲った。

 

 砂煙が舞い上がる中、レイナは黒鬼徹を背中に背負いなおしながらも目を離すことは無い。それもその筈。相手は自分の姉と謎の青年。そして伝説のガードであり、師匠である男なのだ。

 

「何だよ今の……ヤバいだろ!」

 

「レイナ……」

 

 煙が晴れて行けばその中ではボロボロな姿のティーダと同じ姿のアーロン。そしてアーロンに庇われたが故に怪我をして居ないユウナの姿であった。守ったとはいえ地面が破壊された事による砂は避けられなかったらしく、少し服装は汚れている。その姿を見てレイナは「だよな」と呟き、黒鬼徹の柄に手を掛けて走り出そうとする。しかしその時、別の場所で戦っていた物の1人……リュックがそれに気付いた。

 

「! ユウナ、避けて!」

 

 突然聞こえた声にレイナは疑問に思う。自分は近づいて居るだけ、攻撃をしようとしているだけでしている訳では無いのだ。そしてすぐに何を避けるのかに気付くことが出来た。ユウナ達の背後、レイナ達に取って死角になって居た場所で倒したのとは違う護法戦機が1体。その右手をユウナ達に向けていた。そして少し離れた陰で先程ユウナ達の目の前に立った男が笑っている姿。

 

「っ! 姉さん!」

 

 それに気付くと同時にレイナは黒鬼徹を迷うことなくユウナ達の後ろにまっすぐ投げた。既に3人が気付けたところで避ける事など出来ない事は目に見えて居たからである。黒鬼徹は猛スピードでユウナ達に近づく。が、それはユウナとティーダの間を綺麗に通過するとそのまま護法戦機へ。と同時に護法戦機も拳を飛ばし、黒鬼徹は飛んできた腕と接触するとそれに突き刺さった。

 

 勢いよく発射された護法戦機の拳に突き刺さった黒鬼徹はその威力を相殺し、やがてユウナ達の近くで完全に相殺しきる。それはユウナ達が振り向いて護法戦機の姿に気付けたと同時であり、驚いたユウナ達を尻目にレイナはその横を素早く駆け抜けると護法戦機の目の前に。拳を飛ばしたばかりの護法戦機に何か行動を取る余裕など無く、レイナはそのまま跳躍するとその身体に両足で蹴りを入れた。巨体は地面に倒れふすが、機械故にそれだけでは倒せない。

 

 立ち上がるよりも先にレイナはその場から逃げると距離を取った。今レイナの手に武器は無いため、これ以上戦う手段が無いのである。

 

「邪魔すんじゃねぇよ!」

 

「今の内に行くぞ」

 

「え?」

 

 レイナは急いでその場から走って護法戦機の拳に向かう。そこに刺さっている黒鬼徹を抜くためだ。そしてそんな姿を見ながらアーロンはユウナに言い放った。言われたユウナは驚き戸惑うが、レイナがそんな2人に気付く事は出来なかった。

 

 走るレイナに護法戦機はその巨体に似合わぬ速度で近づくと固い金属で出来た左腕でその身体を叩く。武器の扱い方などが上手かったが故に出来て居た行動も、それが無ければ意味を成さない。レイナは吹き飛ばされる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「……加勢する」

 

「お前ら……悪いな」

 

 吹き飛ばされたレイナの目の前にリアラとココアの2人が壁になる様に立ち、レイナは礼を言うと護法戦機の拳に向かう。大きな騒音が響く中で黒鬼徹を引き抜こうとするレイナだが、そんな彼女の視界にガガゼトへと続く道へ走っていく自分の姉とそのガードの姿が映った。今現在護法戦機の相手をしているのはリアラとココア。自分は黒鬼徹を抜くために居り、止める人間は居なかったのだ。

 

「なっ! テメェら!」

 

 レイナの声にユウナは悲しげな瞳で一瞬振り返りながらも去って行ってしまう。その瞳は謝っている様であり、レイナは去っていく全員を見て舌打ちを1回すると怒りも混ぜて黒鬼徹を勢いよく引き抜いた。レイナの中で既にやる事は護法戦機を倒すことでは無い。それはその過程に過ぎなかった。

 

「速攻で終わらせてやる! ……はぁ!」

 

 戦いが行われている場所にレイナは黒鬼徹を一度振り下ろすと一気に突撃していく。護法戦機がバラバラに破壊されるのはその数秒後の事であった。

 

 

 

 

27

 

 先程までの戦いの後が残る場所で、ガガゼト山を睨むように視線を向けるレイナ。その背後では護法戦機が全ての四肢を胴体から離した状態で転がって居た。完全に破壊されており、もうレイナ達を襲ってくることは無いだろう。しかし、既にレイナ達の目的であった止めると言う行動は失敗に終わってしまった。

 

「……」

 

「どうしますか?」

 

 唯黙り続けるレイナに話しかけるのはリアラ。ココアは倒れている護法戦機を漁っており、今この場で次の行動に関する指示をするのはリーダー的位置に居るレイナに任せる様である。

 

 普通ならば追う事を選ぶだろう。しかしガガゼト山はキマリの様なロンゾ族の守る土地であり、無断で足を踏み入れる事は許されない。罪人としてべベルから逃げて来たユウナ達を普通ならば通さない。が、帰ってこない事から通ったのだとすぐにレイナは察することが出来た。

 

「あいつらは通れた。だけど俺達が通れるって訳じゃ無い」

 

「そうですね……では諦めますか?」

 

 リアラの言葉にレイナは笑いながら「まさか」と答える。リアラ自身、レイナの考えは大体予想して居たのだろう。そしてその上での質問だったのだろう。彼女の答えに微笑みながら「では」と答えれば、レイナは歩き始める。

 

「ココア、行くぞ」

 

「……何処へ?」

 

 歩きながら声を掛けるレイナ。その足は飛空艇へと向かっており、掛けられたココアは護法戦機を弄って居た手を止めてレイナの言葉に顔を上げて質問をすれば、半身だけを振り返って言い放った。

 

「あの女が居る場所だよ」

 

「!」

 

 その言葉にココアは目を見開くと、すぐに立ち上がってレイナの傍に駆け寄る。そして静かな声で、しかし何かを期待する様に「良いの?」と質問。それにレイナが頷けばココアはその身体に抱き着いた後、飛空艇の中へと走って行った。何時もの静かな雰囲気とは一変しており、リアラはそんなココアの変化もまた予想して居たのかやれやれと言う様に首を振った。と同時に飛空艇が音を立て始めた。

 

 レイナは飛空艇の中に入り、リアラもその後に続く。やがて二人が操縦席につけば、そこにはココアが既に準備を終えて居た。そしてレイナに「……何時でも」と一言。その言葉に頷き返せば、飛空艇は更に音を立てて大地から離れ始める事となった。向かう場所はガガゼト山の更に向こう側、召喚士の向かう最後の場所……【ザナルカンド遺跡】である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛空艇内部でレイナは黒鬼徹を手に溜息をつく。と、そんなレイナの姿を見て少し離れた場所に居たチョコボが立ち上がって彼女の傍へと近づくと座り込み、その身体でレイナの身体を包む様にし始めた。今現在、ガガゼト山の更に上へと上がって居る飛空艇内部の温度は非常に低い。操縦席ではリアラとココアが身体に別の物を掛けて温めていたが、レイナは特に気にして居なかった。そしてその姿を見て寒いと思ったのだろう。チョコボの気遣いである。

 

「ありがとよ……次の失敗はきっと【死】だ。もし俺達が帰って来なかった場合、お前は戻れ。お前ならナギ平原辺りまで訳無いだろ?」

 

 目の前で自分の身体を温めてくれているチョコボの身体に手を乗せて撫でながらレイナは言う。先程の戦いでもチョコボはここに残って居た。そして今度行おうとして居る事はそれ以上の戦いの様で、チョコボに忠告する様に言った。が、その言葉にチョコボは首を静かに横に振ると立ち上がってその場で小さめに足を出したりしてキックを放つ。それだけでレイナは言おうとしている事が分かった。

 

「頼もしいな、おい。でもよ、お前はここに居てくれ。確かに失敗したら帰ってこれないけどよ、失敗する気なんて更々無い。だから終わったら俺達を迎えてくれ、な?」

 

 チョコボはレイナの言葉にキックなどを止めて少しレイナを見つめた後に再びその身体を温める様に座って一鳴き。了承したのだろう。その声にレイナは再びお礼を言うと静かに目を瞑る。そうしてしばらく静かな時間を共に過ごして居たレイナとチョコボ。しかし徐々に音が大きくなり始め、大きな揺れと共に小刻みにあった揺れが停止する。と、レイナ達の居た場所の扉が開かれた。

 

「着きましたよ」

 

「了解……じゃあ、留守番。頼むな?」

 

 入って来たのはリアラ。その背後にはココアも居り、レイナは立ち上がるとチョコボを撫でながら言う。そしてチョコボもその言葉に大きく鳴いて返事をし、レイナ達はそのまま飛空艇の外へと出て行ってしまった。結果、部屋の中は無音となる。そんな中で、チョコボは唯静かにその場で座り込みながら目を瞑る。主の帰還を待つために。

 

 外に出たレイナ達の目の前にあるのは既に人の居ない遺跡。幻光虫だけが飛び回り、魔物や古代の機械などが動き続けている場所。この場所こそが、召喚士の旅の終着点。究極召還を手に入れる場所、ザナルカンド遺跡。

 

「最初からここに来るべきだったのかも知れないな」

 

「究極召還、世界の希望」

 

「……違う」

 

 黒鬼徹を背に背負い、見上げながら言ったレイナの言葉に銃を腰よりも少々下の太もも辺りに巻いてあるベルトに引掛けながらリアラが呟く。だがその言葉をココアは腰の後ろに短剣を数本しまいながら否定した。そしてそのココアの言葉にレイナは「あぁ」と肯定する。

 

「唯のまやかしでしかない。あいつ自身がそれを肯定したんだ」

 

「……借りは……返す」

 

 レイナの言葉に頷いた後、ココアは呟く。と、リアラが「行きましょう」と言って歩き始めた。ココアもリアラについて行く様に歩き始め、そんな2人の背を見ながらレイナはもう一度目の前にある建物を見つめる。一度目を瞑り、もう1度開いた時。レイナの横から大きな巨体の魔物……ベヒーモスが襲い掛かる。しかし一瞬の内にレイナは黒鬼徹に手を掛け、その場から動かずに再び背中に納めた時。その身体は文字通り真っ二つになった。その別れた身体の間から見えるレイナの瞳は今まで以上に強い思いを映し出して居た。そしてその瞳のまま、建物に。その中に居る人物に向けて言う。

 

「待ってろよ、【ユウナレスカ】!」

 

 

 

 

28

 

 一気に跳躍すると、2本の砲身を上に向けて居る機械の兵器の目前に着地。下から上へと一気に切り上げて一撃で破壊後、すぐさま2つに分かれる身体の間を駆けてその向こうに居たもう1体の同じ兵器を横一線で破壊。それでもまだ留まることなく駆け抜けると、今度は片足を上げて立つ長身の兵器の目の前に現れる。が、まるでそれを予想して居た様にその兵器は踵を振り上げて居た。

 

 鈍い音が鳴り響き、次に大きな振動が地面を揺する。前者は武器で攻撃を防いだ音。後者はその後の一撃で平気が倒れ伏した音である。そうして無傷な身体で黒鬼徹を地面に突き刺し、片足を倒れ伏す機械の上に乗せて

 

「次来いよ!」

 

 大きく吠えるレイナ。その見つめる目線の先には同じような機械や巨大な身体をした魔物などが沢山存在し、彼女の声に反応した魔物は同じ様に遠吠えを。機械は大きな音を立てて近づき始める。その光景にレイナは笑って黒鬼徹を抜き……背後から迫り来る拳に気付けずにレイナは頭を抱える事になる。

 

「敵を呼んでどうするんですか! 馬鹿なんですか! あぁ、馬鹿でしたね貴女は!」

 

「ってぇ……思いっきり殴る事ねぇだろうが! 後馬鹿馬鹿うるせぇよ!」

 

「……レイナは馬鹿……当たり前」

 

「勝手に当たり前にすんなよ! ったく」

 

 レイナは悪態を付きながら再び前に視線を向ける。暢気に話をして居る間にも、先程のレイナの声に反応した敵は徐々に徐々にと近づいてきているのだ。正に目の前に居る量を一言で表せば【大群】。今現在居るザナルカンド遺跡は旅の最終地点であり、ここで力尽きた者などは恐ろしい程の執念を抱えてしまっても可笑しく無い。故に強い魔物が数多く存在して居ても不思議では無いのだ。

 

 目の前の大群にリアラは「仕方ありません」と言いながら銃を構え、ココアも同じ様に短剣を取り出して構える。そんな2人を見てレイナも少しは非があると思ったのか、「悪かったっての」とだけ呟いて黒鬼徹を前に向ける。目指すは魔物の大群……では無く、その向こうにある場所。

 

「行くぜ!」

 

「はい!」

 

「……了解」

 

 レイナの掛け声に2人が答える。そして真っ先に先程同様、レイナが魔物の群れに突っ込み始めた。

 

 一気に近づいて来るレイナに既に死人となった兵士が生者への嫉妬から銃を向ける。が、その兵士の頭を遠くから来た銃弾が貫いた。それを受けた兵士は構えて居た銃を地面に落とし、幻光虫となって消えて逝く。

 

 同じ様にして駆け抜けるレイナに向けて自らの身体に付いて居る砲身2つを向ける兵器。だがその弾を発射しようとした時、出る筈の砲身に小さい何かが入り込む。と同時に気付かない兵器は発砲。飛び出る筈だった弾丸は入って来た何かによって塞がれ、行き場を失ったそれは砲身の中で爆発を起こして発射主共々崩壊する。

 

「よっ! らっ! 退け退け退けぇぇぇ!」

 

 目の前に飛び出てくる兵士を、機械を、魔物を、全て一振りで排除しながら突き進むレイナ。そんな彼女の死角からの攻撃を全て阻止するリアラ、ココア。信頼し合う彼女達のチームワーク故か、数では圧倒的不利な状況でも尚戦場を駆ける3人の姿には微塵も敗北を感じさせる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラスト! だぁ~! 流石に疲れたな!」

 

 目の前に居た自分の何倍も巨大な魔物……ベヒーモスを切り裂き、黒鬼徹を地面に刺して杖の様にするレイナ。そんな彼女を見下ろしながら「自業自得です」とリアラは呟くと、レイナを置いて前進していく。続いてココアが「……やっぱり馬鹿」と言ってリアラの後を追って行った。

 

「好き放題言いやがって……ってか何でお前ら疲れてねぇんだよ? 結構な距離と量だったぜ?」

 

「魔物の大半は貴女が倒してくれましたからね。唯私達はフォローに回っただけですし」

 

「……お疲れ」

 

 レイナの質問に平然と答えて進んで行く2人。そんな姿を見て「何だよそれ」とため息をつきながらレイナも立ち上がり、黒鬼徹をしまうと歩き始める。

 

 周辺には様々な物が崩壊した後が残っており、かなり時間が過ぎて居る事等が素人目にも伺える。そんな光景が続く道を歩き、階段を上りながらやがてたどり着いたのは中へと続く道とその横に設置されているスフィアだった。既にリアラはそのスフィアに触っており、追いついたレイナにリアラが視線を向ける。

 

「このまま行くのはお勧め出来ません。もうこの付近なら安全でしょうし、少し休憩しましょう」

 

「とっとと奴をどうにかすれば良い話だろ? だったら行こうぜ」

 

「忘れたのですか? ……最悪、私達は彼女と戦う事になります。少しでも万全な体制で挑むべきです」

 

「……まず……入れない」

 

 口論を開始してしまった2人にごく自然に言ったココアの言葉。その言葉に2人は開いて居た口を開けたままココアに視線を向けた。その顔は等しく『どういう事?』と言って居る様であり、ココアはそんな2人にまた同じ様に当然の如く答える。

 

「……試練の終わりは……降りる足場…………召喚士が居ないと……起動しない」

 

「……え? てことは俺達足止め? ここまで来てあいつの場所にたどり着けないの? マジで?」

 

「ココア、そう言う事はここに来る前に言ってください」

 

 リアラの言葉にココアは「……知ってると思った」と返答。リアラはそのままレイナに視線を向ける。本人は入れないと言う現実に落胆した様な表情をし乍らスフィアの近くに座り込んだ。と、思い出した様に立ち上がってココアに視線を向ける。が、まるでレイナが言いたいことが分かった様にココアは「……私はもう」と一言。再びレイナは座り込むことになった。

 

「どうしますか? ここで来る者を止めますか?」

 

「……もしここで止められたとしても、あいつが居る限り終わりは無い」

 

 リアラの質問に目を瞑って答え乍ら考え込むレイナ。2人は唯静かにレイナの判断を待ち続け、やがてゆっくりと目を開くレイナの表情に何を言われても良い様な心構えをする。

 

「待つぞ。本当は知らない方が良いが、そうも行かないみたいだしな。今知るか未来で知るか……師匠が居るなら可能性もあるからな」

 

 静かにそう言い、再びゆっくりと目を閉じるレイナ。そんな姿を見てリアラとココアはお互いに見合い、レイナに気付かれない声量で笑った後に2人もそれぞれレイナからつかず離れずの距離に座り込んだ。レイナの言った言葉の【真の意味】を2人は即座に理解したのだ。それはつまりこれから来るであろう姉に真実を見せ、止める。もしくは共闘……と言う理由で守る事。

 

「素直になれば良い物を」

 

「……だね」

 

「何こそこそ話してんだよ?」

 

≪何でも≫

 

「?」

 

 

 

 

29

 

 遺跡の中で一夜を明かしたレイナ達は現在、壊れた岩の端に3人で固まって息を潜めて居た。狭い場所に無理やり固まる3人。隠れて居る理由は、少し離れた場所に居るレイナの姉である召喚士のユウナとそのガード一行であった。

 

「なぁ、もっと詰めらんねぇのか? 俺、少し出てんだけど」

 

「無理言わないでください。……貴女なら大丈夫そうですね」

 

「おい、何勝手に納得してんだよ。ってちょ! 何で持ち上げんだお前! ココアも乗ってんじゃねぇ!」

 

 隠れて居る場所はどう頑張っても人が2人程隠れてしまえばその時点で入る場所が無い広さ。しかし隠れようとして居るのは3人であり、ココア・リアラ・レイナの順で隠れて居れば3人目のレイナは当然出てしまう……筈だった。だがリアラはレイナの体型と自分達の状態を確認した後、レイナの身体を持ち上げるとそのまま自分とココアの間に挟む様にして配置。ココアはリアラの行動に一瞬驚くも、すぐにレイナが居れる位置を確保する。

 

 声を上げるレイナに「気付かれてしまいますよ」とリアラは注意をして2人しか存在できない場所にその身体を自分の上に乗せる事でレイナを隠す。予想外の状況に困惑しているレイナを放置し、リアラ達は再び息を潜め始めた。現在、2人の膝の上に座らされているレイナは不機嫌そうな表情をして居る。

 

「何で小さいんだよ、俺」

 

「私達と出会うまで、碌な物食べてませんでしたからね」

 

「……不摂生」

 

 小さく呟いたレイナの言葉をリアラは拾い、ココアも同意したことで何も言えなくなってしまった結果、レイナは舌打ちをして返すことしか出来なかった。と、小声で話をして居る間に一行は通過した模様。姿が見えなくなるまで時間を置いた後、3人は隠れて居た場所から出る。まず最初にレイナが大きく背伸びをした。

 

「こそこそすんのは趣味じゃねぇんだけど……仕方ないか」

 

「ここは堪えて貰わないと困りますよ。さて、どうしますか?」

 

 苛々を出来る限り内から発散するかの様に身体を動かすレイナ。と、リアラが次にどうするのかとレイナに質問をする。本来隠れて居たのも召喚士が居なければ進めないと言う理由であり、現在召喚士はレイナ達の前方に存在して居る。故に聞きながらもこれから行う事をリアラは分かって居た。それでも聞くのは暴走しない様に自ら言わせるためなのだろう。レイナは溜息をついて「付けるぞ」と言うと歩き始める。

 

「えぇ。……ココア」

 

「……」

 

 歩き始めたレイナに答え、リアラは遠い場所を見て居るココアに声を掛ける。だが返答は無く、リアラはそんなココアに近づいて再び声を掛ける。今度は反応があり、ココアは遠い場所へ向けて居た視線をリアラに向けた。

 

「……まだ実感……湧かない」

 

「だろうな」

 

 ココアの言葉に返答したのは歩き始めた筈のレイナ。何時の間にかに隠れて居たその場所の上に腰を下ろして居たレイナはココアの言葉を肯定すると、その場所から降りてココアの目の前に立つ。身長差から見上げる形となるレイナ。他所から見れば大人と子供だが、その存在感はココア以上の物を発して居た。

 

「実感何て結局後の話だ。済んでから感じれば良い。全てを終わらせる覚悟なら最初から出来てんだろ? だったら後はいつも通り。今日、俺達はその日を作るだけだ」

 

≪……≫

 

 レイナの言葉にココアだけでなく、リアラも黙ってしまう。何も答えない2人に「どうした?」とレイナが質問すれば、2人は顔を見合わせた後に微笑みながら首を横に振った。そんな2人の行動に頭の上に『?』浮かべながらもレイナは話は終わりとばかりに今度こそ進み始める。

 

「馬鹿で無鉄砲で、なのにこう言う時に言う事は的を得て居て……レイナらしいですね」

 

「……だね」

 

 2人はそう言葉を交わし、レイナの後を追う様に歩き始める。やがてたどり着くのは召喚士がする旅の終着点。【究極召還】を得る場所である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後を追って試練の間に入ったレイナ達は静かに、だが地面が揺れ響いて居る事に気付く。その音を聞いて3人はお互いにそれぞれ目を合わせた後、走り始める。狭い廊下の様な場所を駆け抜け、一気に広い空間へと出た3人はそこで付けて居たユウナ達旅の一行が巨大な魔物と戦って居る姿を視界に捉える。両手は釜の様になっており、サソリの様な生き物を想像させる巨大な魔物。その姿を見た時、レイナは今日何度目かの舌打ちをする。

 

「完全に忘れてたな」

 

「……魔天の……ガーディアン」

 

「助太刀、しますか?」

 

 頭を掻きながら困った顔をするレイナの言葉にココアが続ける。目の前に居る魔物は試練の間を超えて次にある試練の1つであり、召喚士がたどり着いた際には必ず出現する。つまり必ずこの場で大規模な戦闘が始まるのだ。知恵はあろうとも、力の無い物はここで倒れる定めだとでも言う様に。

 

 リアラの言葉に溜息をついて黒鬼徹を取り出すレイナ。その姿に2人も武器を取り出すと、一気に戦いの場へと踊り出る。と同時に3人が立って居た足元は一瞬で消滅。魔天のガーディアンを中心に6つの足場が出現した。そしてその足場にそれぞれユウナ達が3カ所を使って、レイナ達が一カ所を使って立った。

 

「!」

 

「お前ら!」

 

「追いかけて来たのね」

 

「あぁ。そう簡単に諦めるかっての。でも今はそれより……」

 

 突然現れたレイナ達の姿にユウナが目を見開き、ワッカが声を上げる。そしてルールーは唯静かにこの場に居る理由を把握した。しかし現在、目の前にはそれ以上の異物が存在する。レイナは軽く答えると黒鬼徹の柄を両手で持ち、刀身の上を相手に向ける様に斜めにして構える。今口論して居る暇は無いのだ。

 

「覚えて居ますね? 足場は限られて居ます」

 

「何でそんな事知ってるのさ!?」

 

「……経験者」

 

「! それって……」

 

「話すのは後だ! 来るぞ!」

 

 リアラが確認する様にレイナに言った言葉。それに反応したのはレイナでは無く、リュックだった。自分達は初めて戦うのだが、何故か戦い方をリアラは理解しているのだ。いや、3人とも理解して居るのだろう。その質問に答えたのはココアであり、聞いたユウナは驚いて言葉を続けようとする。が、目の前に居る魔物は暢気に会話を待ってくれる訳では無い。アーロンの吠える様な言葉と共に、戦いは始まった。




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