【完結】FFX もう1人の物語&Re:FFIX 帰る場所を求めて   作:ウルハーツ

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2021年、思いついて書き始めました。


Re:FFIX 帰る場所を求めて
Chapter1 見知らぬ者達


1

 

 その日、薄暗い洞窟の中に3人の人間が入り込んでいた。真っ暗で先が見えない通路を前に、先導していた少女が振り返る。そして手にぶら下げていた物を背後にいた人物へ差し出せば、何度か擦る様な音と火花が散った後に火が生まれた。

 

「よし、これで見えるな」

 

「……ランタン、便利」

 

「もっと楽に明かりを付けられるものはあるんですが」

 

「分かってねぇな。この方が、『らしい』だろ?」

 

 火に照らされながら振り返った少女(レイナ)の表情は、明らかに冒険を楽しむ子供だった。言われた女性(リアラ)が頭を抱えて首を振る中、そんな彼女を置いてレイナは歩みを再開してしまう。1人にする訳にはいかないと慌てて追い始める中、レイナは進みながら口を開いた。

 

「なぁ、ココア。ここには何があるんだ?」

 

「……知らない」

 

「知らないって、ここにお宝があるかもって言ったのお前だろ!?」

 

「ココアが言っていたのは『スフィア』ですよ」

 

「スフィア……あぁ、あの丸いキラキラした奴か。売れるのか?」

 

「分かりませんが、希少なのならそこそこのギルにはなるでしょう」

 

「マジか。ならさっさと見つけようぜ! ……腹減った」

 

 彼女達の目的はこの洞窟の奥にあるかもしれないというスフィア。それを集める者はスピラ中に居り、だが彼女達はそれを専門で集めている訳では無かった。

 

 旅をしている彼女達だが、続けるにはどうしても資金が必要である。時には魔物退治や用心棒、時には砂漠で地獄の作業を経験した事もあった。……しかし稼いでも稼いでも、資金という物は減り続ける。生きて行くのだから、それは当然の事。そんな時に舞い込んだ嘘か真か分からないお宝情報。面倒な事から解放されたかったレイナはそれに賭け、こうしてお宝を探しにやって来たのである。

 

「お、ちょっと広い場所に出たな……? あれ、そうか?」

 

 ランタンの明かりも要らない程に青白い光に包まれた明るい謎の空間へ足を踏み入れたレイナは、少し離れた場所にあった台座の上に転がる青く輝く球体を目にする。光の発生源はそれであり、リアラとココアが同じ部屋へ入り込む中。レイナはそこへ警戒した様子も無く近づき始めた。

 

「なぁ、これがそうなのか?」

 

「あったのですか? っ! 勝手に触っては危ないですよ!」

 

「?」

 

「……スフィアには、色々ある。……映像を残す。……魔法を宿す」

 

「へぇ~。んじゃ、これはどっちなんだろうな?」

 

 レイナは戸惑いも無くそれを掴み上げていた。リアラが目にしたのは、手の平で上に投げてはそれをキャッチしてを繰り返す危なかったしいレイナの姿。ココアの説明を聞きながらもそれを止めない彼女を止めようとリアラが一歩足を踏み出した時、突然レイナの手にあったスフィアが急激に輝きを増し始める。

 

「っ! なんだ!?」

 

「!? レイナ!」

 

「……ぁ」

 

 ゆっくりと浮かび始めたレイナの身体。リアラが焦った様子で名前を呼び、ココアが嫌な予感を感じて彼女へ手を伸ばす中、光は遂に人の目で見る事が出来ない程の眩さへと変わる。洞窟の中が輝きに満たされ、外で待機していたチョコボが突然の光に驚く中、何かが地面へ落ちて割れる音がその空間に響き渡った。

 

「っ! 一体、何が……レイナ?」

 

「……」

 

 真っ暗になってしまった洞窟の中、リアラとココアの前には壊れたランタンの中で残る小さな灯だけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 欠片も光の無い真っ暗な闇の中、レイナはそこに浮かんでいた。目を覚ますと同時に自分の状況を理解した彼女は立ち上がろうとするが、そもそもそこに足場は存在していなかった。泳ぐ事も出来ず、歩く事も出来ない謎の空間でただ漂う事しか出来ない現状に、レイナは困った様子で頭を掻き始める。

 

『……ぉ……ぃ!』

 

 大きな声を出したつもりだったレイナだが、その声は明らかに小さく、そもそも言葉になっていない事に気付いて自身の喉に触れる。他に誰かが居る様子は無く、悩んでいた彼女の頭上へ突然光が差し込んだ。顔を上げてそれを見上げた時、その光から突如としてレイナへ沢山の鎖が伸び始める。

 

『っ!?』

 

 最初の鎖は紙一重で躱す事が出来たものの、泳ぐ事すら出来ないその場所で逃げ続ける事など不可能。やがて鎖が1本レイナの身体を拘束すれば、手足にも巻き付き始める。……そして拘束されたレイナの胸へ、青白い光を放つ手の様な何かが触れた。

 

 

 空に微かな光が生まれる。そしてそこから飛来し始めたのは1人の少女だった。気付けば閉じていた目を開きながら、不思議な感覚に襲われていた彼女は自分の状況をそこで嫌でも理解する事になる。

 

「……は?」

 

 下を見れば、綺麗な青空が。上を見れば徐々に迫る茶色の大地が。上下が反対の様に見えるのは、今正に自分が身体を逆にして急速に落下していたからである。非常に高い所から落ちて来た様で、このままでは死亡へ一直線。焦りながらも少女は自分の身体を触って何か使えそうな物を探した。……彼女が持っていたのは愛用の武器と、銃が一丁。そこで思い付いた彼女は銃に弾丸を込め始める。地上はもう、すぐそこまで迫っていた。

 

「間に合えよ! そら!」

 

 激突するまで後少しといったところで少女は頭上、地上へ向けて弾丸を放つ。するとそこから巻き起こり始めた竜巻が彼女の落下する勢いを殺した。しかし全てを殺し切れる訳では無かった。激突の衝撃はかなり抑えたものの、それでも残っていた事で少女の身体は地面に激突した後に転がる。嫌な音と激痛を感じながら、仰向けになった彼女は痛みに顔を歪めながら青い空を見上げる。……空は半分しか見えず、残り半分は何かの絵が描かれた謎の壁に阻まれていた。

 

「何処だよ……ここ……」

 

 その痛みは常人が耐えられるものでは無く、少女の身体は悲鳴を上げていた。ゆっくりと意識が落ちて行く中、最後に彼女が見たものは不思議な赤く丸いボンボンを頭に付けた何処かで見た事のある生き物だった。

 

 

 

 

 

 

 

「クポポ―! 大変クポ!」

 

「どうしたの、モコ?」

 

「空から! 人が! 降ってきたクポ! 召喚壁の中へ落ちて来て、そのまま寝ちゃったクポ!」

 

 小さな身体にフワフワとした毛並み。そして頭に付いた丸く赤いボンボンを揺らしながら焦った様子で告げた生き物、モーグリのモコはそう言って来た道を大急ぎで戻り始める。話を聞いていたのはモコと同じモーグリの仲間達と、頭に角が生えた1人の少女だった。その様子からただ事では無いと全員が顔を見合わせてからモコを追って走り出せば、壁に囲まれた場所の中に倒れるレイナの姿を発見する。

 

「空から落ちて来たクポ?」

 

「そうクポ。凄い勢いだったクポ! でも何かを地面にやったら、いきなり風が出て来て転がったクポ!」

 

「かなり弱ってるクポ。エーコ嬢、どうするクポ?」

 

「助けるに決まってるでしょ! 皆、協力して!」

 

≪クポポ!≫

 

 エーコと呼ばれた少女の言葉を合図に、モーグリたちが落ちてきた少女を運ぶために行動を開始する。その数は全部で6匹であり、小さな身体のモーグリたちは力を合わせて少女を持ち上げ始めた。そしてエーコが常日頃住んでいる家へ運び、寝かせる。

 

「ふぅ、何とか運べたクポ。それで、どうするクポ?」

 

「モチャとチモモはお薬を取って来て! モーネルとモリスンは召喚壁に可笑しなところが無いか調べてちょうだい! モコはあたしとモグと一緒にこの子の面倒を見るの! まずは傷の手当てをしなくっちゃ!」

 

≪了解クポ!≫

 

 エーコの指示を受けて一斉に動き始めるモーグリたち。その姿を確認してから、エーコは少女の身体を眺めた。……彼女は普段、モーグリ達と暮らしている。他の人間と関わりを持つ事は殆ど無く、故に自分とは別の人間である少女の存在に興味津々だった。そして何よりも彼女が気になるのは、少女の頭。

 

「どうして角が無いのかしら?」

 

 彼女の知る人間は全て角が生えていた。しかし、レイナの頭にそれらしいものは見当たらない。不思議そうにエーコが少女を眺め続けていると、モチャとチモモが薬を持って戻って来る。

 

 その後、エーコは自身の出来る範囲で少女を治療した。空から降って来た、自分の知らない世界を知っているかも知れない角の無い人間。目が覚めたらどんな話が出来るのか、内心でワクワクしながら。

 

 

 

 

2

 

「……ぅ……ん……?」

 

「クポ!?」

 

「どうしたの、モグ? って、あ! 起きたのね!」

 

「ここ、は……?」

 

 エーコとモーグリたちの手当てを受けて遂に目を覚ました少女は中途半端に力の入る左手で頭を押さえながら起き上がる。右腕に巻かれた痛々しい包帯は見るだけで折れている事が伺え、足も片足が同様に包帯で巻かれていた。……決してそれは綺麗な巻き方では無いが、それでも少女は誰かが怪我を治そうとしてくれた事を即座に理解出来た。

 

「ここはマダイン・サリよ。エーコのお家なの!」

 

「マダイン・サリ? 聞いた事無い場所だな……エーコってのは」

 

「あたしよ!」

 

 そう言って両脇に手を置いて堂々と仁王立ちするエーコの姿を見た少女は、一度部屋を見回す。テーブルが中央にあり、椅子が数席。小さな本棚には何冊か本も入っているが、見覚えのある本は1冊も無い。

 

「……? なんだ、ありゃ」

 

 ふと、天井から視線を感じた事で上を見上げた少女は沢山の見慣れない生き物が自分を見ている光景に呆気にとられる。見慣れないと言っても、見た事が無い訳では無い。しかしそれは少女の中で着ぐるみやお話の中でだけ現れる空想上の生き物であり、現実には存在しない筈の生物だった。

 

「モーグリよ。皆、ここで住んでるの」

 

「モーグリって……マジかよ」

 

「ねぇ、貴女の名前は? 何処から来たの? 何で角が生えて無いの?」

 

 エーコは話せると分かった少女の前で座り込み、沢山の質問をする。現状が全く理解出来ないながら、少女は取り敢えず自分に分かる範囲でエーコへ説明を始めた。

 

 名前はレイナ。ここへ来た方法は不明であり、最後に覚えているのは見つけて手に持ったスフィアが光った事だけ。角が無いのはロンゾ族では無いから。……と。しかしエーコは聞き慣れなかった言葉に首を傾げてしまう。そしてレイナもまた、明らかにロンゾ族では無いにも関わらず、エーコの頭に小さな角がある事に気付いた。

 

「スフィアって何? ロンゾ族っていうのも、聞いた事無いわ」

 

「は? ……なぁ、この世界の名前は分かるか?」

 

「世界? あたし、あんまりここから出た事無いからわかんない」

 

「スピラじゃねぇ……なんて事、無いよな? まさか、な……」

 

「ねぇ、それでスフィアって……」

 

 会話の中で嫌な予感を感じながらも、エーコからされた質問へ答える事にしたレイナ。彼女との会話で分かった事は、エーコがそもそも家の外へ少ししか出た事が無いという事だった。つまり彼女が知らないだけで、ここがスピラの名前も知らない辺境の何処かである可能性が生まれたのだ。

 

「取り敢えず、これからよろしくね! レイナ!」

 

「よろしくって……まぁ、そうするしか無いか。世話になる、エーコ」

 

 怪我もあり、真面に生活するのも難しい現状。レイナはエーコ達に頼る事しか出来なかった。幸いにも歓迎はされている様子であり、こうしてレイナはマダイン・サリで過ごす事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃墟マダイン・サリ

 

 レイナが落ちて来てから月日は流れた。徐々に怪我も治って行き、包帯も取って問題無いと判断したレイナはまだ多少痛む腕や足で行動する様になっていた。医者といえる存在がこの場所には居ないため、出来る事は人の自然治癒力に頼る事だけ。だが、日常で戦いに慣れていたレイナには問題の無い事であった。

 

「それじゃあ、レイナはそのしんって言うのを倒す為に戦ったのね!」

 

「あぁ。って言っても、俺が出来たのは手助けくらいだけどな。最終的にはやられちまったし。っと、来た来た!」

 

 その日、夕飯に食べる魚を手に入れる為にキッチンの端からエーコと共に釣り糸を垂らしていたレイナは自分に起きた出来事をお伽噺の様にエーコへ語っていた。娯楽と言えるものは数冊の本のみであり、レイナは本を読むのが余り得意では無い。しかしそれでも暇潰しに読み、その上でもうやる事が何も無かったのだ。釣りをしている間も魚が食いつくまでは暇であり、そんな中でエーコがしたレイナのこれまでの軌跡についての質問に答えたのである。

 

「結構大物じゃねぇか?」

 

「そうね! それなら、モーグリの皆で分けて丁度良いかも!」

 

「っとなりゃ、後は俺達の分だな」

 

 ここに住んでいるのはエーコとモーグリ6匹。大きさの大小はあれど、殆ど見分けのつかない彼らをレイナが判別する事は未だに出来なかった。そんなモーグリたちはエーコと同じでとても小さい為、食べる量も必然的に少量。故に大きな魚が一匹いれば、分け合っておかずは事足りる。

 

「クポポ―! 大変クポ!」

 

「なんだ?」

 

「どうしたの、モチャ?」

 

「魔物が入り口に入り込んでるクポ! もしかすると、家の方まで来てしまうかも知れないクポ!」

 

「大変! 皆に隠れる様に言って! 居なくなるまで絶対に出てきちゃ駄目よ!」

 

「了解クポ!」

 

「……」

 

 廃墟と化しているこの場所で、魔物を追い払う術は無い。故に魔物が入り込んだ時は身を隠す等して常にやり過ごしていたエーコ達。今回もそうしようと急いで行動する中、話を聞いていたレイナは無言で新たに釣り糸へ掛かった魚を釣り上げる。そしてそれをバケツへ放りながら、天を仰いだ。……何処か楽しそうに口元を歪めて、笑みを浮かべながら。

 

「丁度良いじゃねぇか」

 

「レイナ? ちょっと!? どこ行くのよ!」

 

「お前らは隠れてろ! 魔物は、俺がやる」

 

 突然その場を跳躍して家の屋根へ乗ったレイナは、声を掛けるエーコへそう告げて入り口へ跳んで行ってしまう。余りの行動に呆気に取られていたエーコだが、すぐに「大変!」と慌てながらレイナの後を追い掛けた。

 

 入り口には丸盾と槍を構える大きな魔物、トロールが徘徊していた。その身体はレイナの2倍近くあり、明らかに戦闘慣れしている姿から察するに大人でも倒すのは危険と判断して近づこうとはしないだろう。瓦礫に隠れながら怯えるモーグリの元へ着地したレイナは、隠れる事無くその姿を肉眼で確認する。

 

「あいつか」

 

「あ、危ないクポ! 急いで隠れるクポ!」

 

「まぁ、待ってな。よっと!」

 

「クポ!?」

 

 モーグリの制止を無視して再び跳んだレイナはトロールの前へ降り立つ。突然現れた彼女の姿に驚きながらもすぐに武器を構えたその姿は宛ら戦士の様であり、レイナはそれを見て再び笑みを浮かべた。……そしてその小さな身体の何処かから取り出したのは、彼女の身の丈を上回る程の大剣。

 

「久々に暴れるぜ、黒鬼徹(こくきてつ)!」

 

 彼女の言葉にまるで呼応する様に陽の光を受けて僅かながら光る真っ黒な刀身。そしてトロールが槍を手にレイナへ突進を始めた時、彼女はそれを跳んで回避する。そして落下の間に身体を逆さまにして振り下ろした斬撃は、見事にトロールの背中を切り裂いた。

 

 痛みに悲鳴を上げて暴れる様に槍を振り回し始めたトロールを前に、レイナは黒鬼徹へ視線を向ける。その表情は何処か納得がいっていない様で、やがて諦めた様に首を横に振った。そして再び何処からともなく取り出したのは、小型の銃。暴れ回るトロールへその銃身を向ければ、彼女は迷いなくその引き金を引いた。

 

「じゃあな」

 

『!?』

 

 発射された弾丸は無情にもトロールの叫ぶ為に空いていた口を貫く。今度は声も出せずに固まってからそのままゆっくりと倒れた巨大な身体を前に、レイナはやはり納得がいかない様子であった。

 

「大分鈍っちまった。場慣れするしかないか……?」

 

「レイナ!」

 

 彼女が感じていたのは、何日も療養を続けた事で身体が思う様に動かないという事であった。最初の一撃で仕留めるつもりが仕留め切れず、眉間を狙った弾丸も口へ。まだ完璧に怪我が治ったとはいえないため、それは仕方の無い事。それを嫌でも感じていたレイナの元へ、心配したエーコが駆け寄り始める。彼女は倒れているトロールの姿に驚き、自分勝手に挑んでしまったレイナへ叱る様に言葉を続ける。

 

「勝手に飛び出さないでよ! まだ怪我も治って無いのに、危ないでしょ!」

 

「悪かったって。でも、大分良くなってるって分かったからな」

 

「そうなの? それは良かったわ……ねぇ、やっぱりレイナは怪我が治ったらここから出て行っちゃうの?」

 

 レイナの言葉に喜んだエーコだが、すぐに気付いた様子で顔を伏せながら質問する。エーコは今までモーグリ達とだけ過ごしていた。人間の家族はレイナが来る前に居たお爺ちゃんだけであり、既に死別している。レイナが現れて共に過ごした事で新しい家族が出来た様に喜んでいたが故に、また離れ離れになるかもしれない事実にエーコは寂しさを感じずにはいられなかった。そしてそれは共に過ごしていたレイナも何となく察していた。しかし、それでも彼女はここで永住する訳にはいかない。

 

「あぁ。帰らなきゃならない場所があるからな」

 

 思い浮かぶのは幼い頃に倒れた自分を拾い、共に過ごして来た仲間と相棒のチョコボ。果たして自分と同じ様に何処かへ飛ばされたのか、それとも自分だけがあの場から消えてしまったのか、それは定かでは無かった。だがそれでも彼女達と共に旅をして来たレイナは再び共に行動する為に、帰る決意をする。

 

「レイナにとってその人達は大切な人、なの?」

 

「んな大層なもんじゃねぇよ。そうだな……仲間、だな」

 

「仲間?」

 

「あぁ。エーコとモーグリ達みたいなもんさ。一緒に居るのが当たり前で、困った時は助け合う。俺とお前も同じだ」

 

「エーコとレイナは、仲間?」

 

「嫌か?」

 

「……ううん。とっても素敵ね!」

 

 それから、心配そうに隠れていたモーグリ達を探して安全である事を伝えた2人は釣った魚を使って料理を始める。エーコは普段から料理をしており、レイナも当番制で料理をする機会は何度もあったため、滞りなく終了。味も満足行く出来栄えだったため、モーグリ達の評価は上々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつら、今頃何してんのかな……ほんと、何処なんだよここは」

 

 夜。レイナは落ちて来た場所、召喚壁の前にある崖の上で流れる川を見つめながら離れ離れになってしまった仲間達の事を思う。マダイン・サリでの生活で分かった事は、エーコが世界を知らないという事だけ。それはつまりこの世界がスピラなのかどうかも今のままでは分からないという事だった。

 

「それに……何なんだろうな、この(あざ)

 

 他の誰もいないからこそ、遠慮なくレイナは服の胸元を脱いで見下ろす。そこにはココアどころかリアラにも負ける実る事が無さそうな小さい胸と……謎の痣。見た事も無いそれは気味が悪く、痣と言うよりも刻印(こくいん)と称した方が正しい様にも思えるものだった。

 

「明らかに怪我、じゃ無いしな。マジで何もわかんねぇ! ……やっぱ、行くしかねぇよな」

 

 暗い空を見上げながら、レイナは改めて旅立つ必要性を感じる。

 

 

 一方、キッチンの傍。釣り場では階段にエーコが座り込んでいた。そして彼女の前には他のモーグリよりも一回り小さなモーグリ、エーコの相棒であるモグが心配そうに彼女の顔を覗き込む。

 

「モグ、どうすれば良いと思う?」

 

「クポポ……」

 

「そうだよね、分かんないよね。エーコとレイナは仲間だけど、離れ離れになっちゃったら仲間じゃ無くなっちゃうのかな……」

 

「クポ! クポポ!」

 

「うん、大丈夫。だけど……もう1人は、嫌だよ……」

 

 その弱々しい呟きは、静かに夜の闇へと消えて行った。

 

 

 

 

3

 

 廃墟マダイン・サリ

 

 更に月日は流れ、レイナは自身の身体が完治した事を確認すると同時に旅立ちの準備を始める。彼女の持っている物は愛用の武器(黒鬼徹)とリアラから渡されている銃が一丁。そして複数の弾丸だけである。簡単に弾丸を補給する事は出来ない為、最後のは非常に貴重品だ。

 

「まぁ、他に何も無いからな」

 

 準備と言える準備の殆どは旅立つ覚悟を決めるだけ。そうして旅立ちの用意を終えたレイナはエーコへ挨拶をする為に彼女の姿を探した。前日に予め旅へ出る事は告げていたが、お世話になった身として当然の行いである。……だが家の中にもキッチンにも、エーコの姿は何処にも見当たらなかった。

 

「……そういう事かもな……」

 

 エーコの感情は分からないが、別れるのが辛いから見送りはしない。そんな風に受け取ったレイナはマダイン・サリの出入り口へ向かう。廃墟となったそこを改めて見上げ、やがて外へ向かって歩みを進めた時。廃墟の向こうから沢山のモーグリ達が一斉に顔を出し始めた。

 

「うぉ! あーっと、見送りか?」

 

「そうクポ。でも少し待つクポ!」

 

「?」

 

 代表する様にレイナの前へ降り立ったのは、モーグリ達の中で一番のしっかり者、モリスンだった。何を待つのか分からず首を傾げたレイナをそのままに、モーグリ達は一斉にエーコの家へ視線を向ける。すると小さな足音と共に、自分の元へ駆け寄るエーコの姿が徐々に見える様になった。

 

「もう! 勝手に行こうとしないでよ!」

 

「悪かったって。一応、探したんだけどな」

 

「朝はお祈りをしてるって、言ってるでしょ!」

 

 エーコは毎日、朝になったら召喚壁の中で祈りを捧げている。召喚獣に対して余り良い感情を持っていなかったレイナは、『部外者は立ち入り禁止クポ!』と召喚壁を守るモーグリも居た事で基本自ら近づこうとしなかった。その結果、中にエーコが居た事に気付かなかったのだ。

 

 沢山のモーグリとエーコの見送りを受けて、改めて旅立とうとするレイナ。しかし、そんな彼女の言葉へエーコは当たり前の様に告げた。

 

「それじゃあ、皆。行ってくるね!」

 

「気を付けるクポ!」

 

「エーコ嬢、どうかお気を付けて。何時でもここ、マダイン・サリが貴女の帰る場所(・・・・)である事を忘れないでください。ですがそれを重荷とせず、心の気の向くままに」

 

「えぇ、勿論よ!」

 

「……ちょ、ちょっと待て! は? まさかお前……ついて来る気か(・・・・・・・)!?」

 

「あたしだけじゃないわ! モグも一緒よ!」

 

「クポポ!」

 

 モリスンやモーグリ達と別れの挨拶をするエーコの姿に驚きながら質問した時、エーコは自身の胸元から小さなモーグリのモグを出してさも当然の様に答える。余りにも予想外だった事態に困惑する中、それでもレイナは改めて質問する。

 

「大人になるまでここから出るのは不味いって言って無かったか?」

 

「平気よ! エーコが決めた事だもの、お爺さんもきっと許してくれるわ!」

 

「絶対に魔物とも戦う事になる。遊びじゃねぇんだぞ?」

 

「旅に出るのが遊びなんて思わないわよ! それに、あたしも少しは戦えるから問題無いわ!」

 

「……」

 

 質問に帰って来るのは強い意思を伴ったエーコの答え。レイナは知っている。一度心に決めた人間の考えを覆すのは、そう容易くは無いと。

 

「全く。召喚獣を使う奴ってのは皆、似る者なのか……?」

 

 一度決めたら絶対に意思を貫き通す。そんなエーコの姿に一瞬姉を重ねて、レイナは頭を抱えながらもやがて受け入れる様に頷いた。エーコはそれに「決まりね!」と言ってもう1度モーグリ達へ声を掛けると、モグと共に先行してマダイン・サリを後にする。

 

「エーコ嬢の事、お願いします」

 

「あぁ、お願いされた」

 

 頭を下げるモリスンに同じ様にして他のモーグリ達も頭を下げる。それにレイナは答えると、モグと共に行ってしまったエーコを追ってマダイン・サリを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何処へ向かうの?」

 

「取り敢えず、何処かに街か村があれば話を聞けるんだけどな」

 

「なら、あっちね!」

 

 エーコの指差した方角には山があり、レイナは一度その方角を見てからエーコへ視線を戻す。その眼は『どういう事だ?』と語っていた。

 

「あの山道を抜けた先に、変な人達が住んでる村があるの。エーコも何度か行った事があるわ!」

 

「変な人……?」

 

 エーコやモーグリ達とは違う誰かが住んでいる村。それがあるという事実に驚くと共に、どうしてそれが分かってもエーコ達はあの場所で住んでいたのかレイナには分からなかった。明らかに何かあると察しながら、他に行く宛も無かった事でエーコの言葉通りに村へ向かう為の山道へ入り込む。

 

 山道には魔物が徘徊していた。以前戦ったトロールの様な魔物の他に、オチューといった見覚えのある魔物も居る事でレイナは似た様で違う姿を前に困惑する。そしてそれを退けながらも進んでいた時、突然地震の様な地響きに襲われた。

 

「不味いわ! あいつが居る!」

 

「あいつ? ……って、おぉ……デカいな」

 

 エーコの言葉に聞き返した時、突如として2人の前へ巨大な人型の魔物が現れる。ヒルギガースと言う名の魔物はその巨体で2人を見下ろし、叩き潰そうとゆっくり手を上げてから振り下ろした。

 

「っと! 危ねぇ!」

 

 咄嗟に身体の大きさからエーコを抱く様にしてその場を跳躍し、回避したレイナはエーコを降ろす。そして彼女へ後ろへ下がっている様に言うと、数歩前へ出て黒鬼徹を構えた。

 

「逃げればいいのよ! 何時もあいつが居る時エーコ達はそうしてるの!」

 

「逃げるったって、あいつの向こう側に村があるんだろ? 言って退いてくれる訳でも無さそうだし、無理矢理退かすしかねぇって訳だ」

 

 ヒルギガースは自身の尻を叩きながら攻撃の準備をしている。そんな姿を前に、レイナは黒鬼徹の柄を両手でしっかりと握った。

 

「ちょっと俺の肩慣らしに付き合ってくれよ。なぁ、デカブツ!」

 

 怒った様に吠えるヒルギガースを前に、レイナは一気に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……まぁ、こんなもんだな」

 

「凄いわ! しんと戦ったって話、本当だったのね!」

 

「疑ってたのかよ」

 

 戦いで服に付いた汚れを軽く払いながらエーコの言葉に答えたレイナ。そんな彼女の目の前には、大の字を描く様に横たわるヒルギガースの姿があった。その身体は頭から股まで中心を真っ直ぐ斬られた跡が残っており、既に息が無い事は誰にでも分かる。

 

「この先だよな?」

 

「そうよ!」

 

 エーコに改めて確認をしてから歩みを再開したレイナは、樹の根や蔦が作り上げる自然の道を通る。そしてふと、高台の様な場所へ立った時。その場所から見える巨大な樹の存在に気付いた。途轍もない存在感を放つその樹は、遠くから見るだけでも圧倒されそうになる。

 

「すげぇな」

 

「あれはイーファの樹よ! 召喚に失敗した召喚獣たちを祭ってるんだって」

 

「召喚に失敗? そんな事、あるのか?」

 

「エーコはした事無いから、わかんない。でもお爺さんはそう言ってたの」

 

 エーコの説明を聞きながら、再び歩き始めたレイナは遂に山道を通り抜ける。少々離れた場所に見えるのは、村なのか祭壇なのか。崖の上に作られた変わった建物がそこにはあり、遠くからでも誰かが居るのは伺う事が出来た。……しかしその容姿はお世辞にも人とは言えない。

 

「あの人達、今エーコ達が通って来た道を『聖域への道』って言ってるの」

 

「聖域……あのデカい樹の事か。まぁ、確かにそんな風にも見えたな」

 

「こっちから来た事はばれない方が良いかも」

 

 何とか彼らには気付かれない様にして、村の中へ入る事になったレイナ達は手っ取り早く崖を降りる事にした。その判断をしたレイナにエーコが驚くも、嘗て高い所から降りる経験をしていたレイナには簡単な行為。エーコを背中に乗せて黒鬼徹を使い、壁に突き差しながら下って見せる。

 

「後は反対から回れば、普通の旅人だろ?」

 

「滅茶苦茶だわ。でもやっぱり、レイナって凄いのね!」

 

 まるで姉を慕う妹の様に告げたエーコの言葉に、レイナは悪い気がしなかった。

 

 

 

 

4

 

 ドワーフ達の住む村、コンデヤ・パタ。

 

 そこに居る者達の容姿は人間と明らかに異なっていた。子供から年寄りまで、その身長は子供程度。肌の色は緑色で、『ラリホ』という言葉が彼らにとっての神聖な挨拶である。

 

「ラリホ!」

 

「……な、なんだこいつら?」

 

 山道の反対側から改めて入ったレイナは目の前で声を掛けて来る見た事の無い生き物の存在に困惑してしまう。そこでエーコが彼らについて知っている事を、ラリホが挨拶である事を耳打ちで説明した。彼女の話を聞いて、改めてレイナは声を掛けて来たドワーフの前へ一歩出る。

 

「ら、ラリホ……」

 

「ラリホ!」

 

 レイナが言い難そうにこの村の挨拶をした事で道を開けたドワーフ。何ともやり辛い事この上ない現状にレイナは頭を抱えながらも、エーコと共に村の中へ入った。

 

 村の中にドワーフ以外の者は居なかった。しかし彼らもしっかりと話が出来る為、情報を貰うには問題無い。2人は適当に村の中を回り、やがてドワーフが経営するアイテムショップの前へ訪れる。

 

「お客さんだどか?」

 

「あぁーっと……一応確認したいんだが、ギルって使えるか?」

 

「? 何を言ってる? お金と言えばギル以外に何かあるべか?」

 

「少なくとも金の概念は同じか。こんな奴ら見た事ねぇけど、やっぱり辺境にでも飛ばされたのか……?」

 

「買うか買わないか、早く決めてくれ!」

 

「あぁ、悪い悪い」

 

 通過が同じであると分かった事に安堵しつつ、適当にアイテムを眺めたレイナは持ち金と相談しつつ買い物をする。そんな時、エーコは謎の視線に気付いて振り返った。……そこにはドワーフと明らかに違う、とんがり帽子を被った謎の生き物がジッと此方を見る姿があった。

 

「レイナ、あれはなにかしら?」

 

「んぁ? ……人? いや、人形……か?」

 

「!?」

 

「あ、逃げたわ!」

 

「何か分からねぇけど追っかけるか!」

 

 見ていた事に気付かれたと分かったその生き物は突如として逃げる様に走り去ってしまう。レイナとエーコは取り敢えず追い掛ける事にして、村の入り口へ到着した。そこには複数のドワーフに話し掛けられて逃げる事が出来ずにあたふたするその生き物が居り、レイナ達に気付いて焦り始める。

 

「待った! あんた、一体何に怯えてるんだ?」

 

「あたし達は何にもしないわよ!」

 

「ほ、本当かい? でも君たちは人間、だよね?」

 

「あぁ。正真正銘のな。でも俺はお前を知らないし、怯えられる様な事をした覚えも無い」

 

 怯えた声音で話をする相手を何とか宥める様にレイナが声を掛ければ、徐々に落ち着きを取り戻した生き物。彼が最後に「子供、だから大丈夫かな」と呟くのを聞いて、レイナは訂正したかったものの今は堪える事にした。面倒を増やさない為に。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、お前は人間に作られたってのか?」

 

「うん。そうだよ。でも逃げ出したんだ。僕達がやっていた事が、よく分からないけど怖くなっちゃって」

 

「何をやっていたの?」

 

「それは……」

 

 コンデヤ・パタの入り口。ドワーフ達から少し離れた場所で話を聞き始めたレイナ達は、彼が『黒魔導士兵』として作られた事を聞いた。子供だからと思った以上に警戒が解けた様で、話を聞いたエーコの質問に言い難そうに下を向いた黒魔導士を見たレイナは察して話題を変える事にする。

 

「なぁ、人間が居る場所に行く方法、知ってるか? 出来れば大きな街だと良いんだけどよ」

 

「僕達は気付いたらこの村の傍に居たから。……でもそう言えば、僕の仲間が言ってたよ。この辺には『こうざん』って場所があって、そこは前に僕達が居た大陸に繋がってるって」

 

「そこを抜ければ人間の住む街があるかも知れないって事か……」

 

 出来れば自分と同じ人間の住む場所へ行きたい。それがレイナの目的だが、彼の話から察して余り良い印象を現状は抱けなかった。しかし良い人間と悪い人間が居る事はスピラで嫌でも実感して来たため、全部が全部悪いとは思わない。そしてそれ以上に気になる事がレイナにはあった。

 

「お前、スピラって分かるか? シン、でも良いんだけど」

 

「うーん、ごめん。わからないや」

 

「そうか……」

 

 彼は作られて気付いたらこの一帯で意思を持っていた。だから知らないだけかも知れない。ドワーフ達も知らない様で、だが彼らもエーコと同じくここから外へ殆ど出ていない為に知らないだけかも知れない。……レイナはそう考えるしか無かった。徐々に嫌でも感じ始めていたのだ。ここが、自分の知る世界とは全く違う別の世界かも知れないと。

 

「(黒魔導士兵を作る国、なんて聞いた事無いもんな。そもそも、あんまり国って概念が無かった訳だし。何よりシンを誰も知らないのは流石に……)」

 

「ねぇ、もし他の人間に会っても僕達の事は……」

 

「あぁ、約束する。誰にも言わねぇよ」

 

「エーコも約束するわ!」

 

「ありがとう! それじゃあ、僕は皆のところに帰るね」

 

 最初の出会いで人間を相手に不信感を抱いているのは誰にでも分かる。故に彼のお願いをレイナとエーコは迷わずに受け入れた。そして村を出て自分達が住むという場所へ向かった彼を見送り、レイナとエーコは再びコンデヤ・パタへ足を進める。

 

「これからどうするの?」

 

「その鉱山に行ってみる。上手く行けば、他の人間に会えるかもな」

 

「レイナ以外にも人が居るのね! 皆、どんな感じなのかしら?」

 

「少なくとも、角は生えてねぇと思うぞ。……いや、分かんないか」

 

 世界を旅していたレイナは街や村で過ごす人々よりも世界に詳しい自負が多少はあった。しかし飛ばされた先で出会ったのはお伽噺でしか聞いた事の無いモーグリと、ロンゾ族を知らない頭に角の生えた少女。その上に聞いた事も無いドワーフという種族に、黒魔導士兵。自身の常識が宛にならない事ばかり経験している故に、自身が持てなかった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。何かちょっと疲れちゃったわ」

 

「……山道を歩いて崖を下って、おまけに知らない場所で知らない生き物と出会う。まぁ、当然か。俺も流石に休みたい」

 

 次の行き先を決めはしたものの、今までの道中で疲労を感じた2人はコンデヤ・パタで休息を取る事にする。幸いにもギルを払えば泊めて貰える宿の様な場所はあったため、多少居心地が悪くとも休む事は出来た。一時的に別行動となり、レイナは宿で2人分のベッドを確保した上でもう1度コンデヤ・パタを回る。

 

「マジで別世界って可能性が出て来やがった。元々そんな気はしたけど、可能性が着実に増えてやがる」

 

 謎の足場がある建物の2階廊下で今までの出来事を思い出して頭を抱えるレイナ。仲間達と合流する為、手掛かりを探して旅立った先で得た物は分からない事ばかり。全て自分の経験は宛にならず、悩むのも仕方が無い事であった。

 

「人間が俺の知るのと全然違ったら、どうする?」

 

 幸いにも今まで出会った存在で人間であるのはエーコだけ。まだ1人という事もあり、角が生えていない人間が居る可能性は十分にある。しかし『人間とは角が生えている』といった常識がもしもあったならば、それはレイナにとって果たしてどう映るのか。自分だけが知らない世界に取り残された様な気がして、彼女は肩を落とした。

 

「こらモグ! 勝手に飛び出さないの!」

 

「ク、クポ~!」

 

「……」

 

 落ち込んでいたレイナに聞こえて来るエーコとモグの声。顔を上げれば少し離れた場所で逃げるモグを追い掛けるエーコの姿があり、ドワーフ達が不思議そうに見る中でも彼女達は楽しそうだった。そんな光景を目の当たりにした事で、レイナは僅かに笑う。

 

「悩んでも仕方ない。人間があいつらみたいだったら、それはそれで話を聞き易そうだしな」

 

 雲一つ無い空を見上げて、レイナは改めて人間と会う為に決意する。

 

 そして夜は更け、ドワーフの宿屋で一晩を過ごしたレイナとエーコは明朝。黒魔導士の情報を頼りに鉱山へ向かうのだった。




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