【完結】FFX もう1人の物語&Re:FFIX 帰る場所を求めて   作:ウルハーツ

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Chapter2 リンドブルム狩猟祭

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 リンドブルム

 

 そこは飛空艇を始めとした技術の発達が他国で随一の街であり、シド大公が納める平和な国である。そしてそんな国では今、ある催し物の準備で街中が活気に満たされていた。

 

『リンドブルム狩猟祭』

 

 街中に魔物を放してそれを参加者が倒し、倒した魔物の大きさで勝敗を決めるというリンドブルムに長く伝わる伝統のある祭り。各国から参加者が集まっており、腕に覚えのある物が街中で見掛けられた。

 

「凄いわレイナ! 角の無い人達が沢山!」

 

「……あぁ」

 

「レイナ?」

 

「……」

 

 コンデヤ・パタから出て鉱山を超え、謎の沼地を超えて遂に辿り着いた街。そこでレイナが目にしたのは人工的な建築物の数々と、自分にとって当たり前である『人間』の姿だった。時折人とは違う容姿をした者も居るが、大体は自分の常識と同じ容姿をした者達。やっと出会えた『普通の人達』を前に、レイナは言い様の無い感情を抱く。

 

「こんだけ大きい街なら、色々分かる筈だ。エーコ、街を回りながら片っ端から話し掛ける」

 

「はーい! あ、ねぇねぇ!」

 

 レイナの言葉に返事をして、通り掛かった人物へ遠慮なく話し掛け始めるエーコ。幸いにもその相手は親切な人で、この街の事や祭りについての説明を嫌な顔を一切見せる事無く説明してくれた。2人が見るからに子供だった事もあるのだろう。やがて様々な情報を得た上で、レイナは意を決して質問する。

 

「スピラ、もしくはシンって分かるか?」

 

「すぴら? しん? いや、分からないね」

 

「……そうか。色々ありがとな!」

 

「ありがとう!」

 

 1人から求めた以上の情報を貰う事が出来たレイナは、しかし返って来た質問の答えを聞いて目を閉じてからお礼を告げる。エーコも告げればそれを合図にその人物は去って行き、エーコは「色々聞けて良かったわね!」とレイナへ視線を向ける。……だがレイナの表情は浮かないものだった。

 

「レイナ?」

 

「……はは。何となく予感はしたんだよ。でもここまで来ると、受け入れるしかないじゃねぇか。こんな大きな街があって知らない訳が無い。こんなに人が居るのに、シンも知らなきゃ自分達の世界の呼称すら知らない。……ここは、俺の知ってる世界じゃ、無い」

 

「ちょっとレイナ!」

 

 力無く告げて弱々しく笑うレイナの姿に不味いと感じたエーコは、何とか彼女の手を引いて街の中にあった宿へ向かう。そして彼女の代わりに頑張って部屋を借りると、個室でレイナをベッドへ座らせる事に成功する。明らかに元気を失ってしまったレイナを心配しながら、どうしようかとモグに相談をしたエーコ。しかし方法が分からず、2人はそのままそこで一夜を明かす事になった。

 

 翌日、目を覚ましたエーコはベッドにレイナがいない事に気付いて宿を飛び出す事となる。

 

 

 

 

 

 

 リンドブルム工場区。

 

 エアキャブと呼ばれる乗り物に乗って広い街を移動出来た事で、レイナはそこへ訪れていた。名前通り工場が多いその場所で、適当に彷徨っていた彼女はとある店を見つける。

 

『居酒屋 死の宣告』

※今日のスペシャルメニューは『沈黙のスープ』

 

「……随分物騒な名前の店だな」

 

 店の名前に少々引きながらも、気付けば腹を空かせていたレイナは中へ入る事とした。

 

 店の中はそこそこの客で賑わっていた。カウンターに椅子は無く立ちながら飲み食いをする様であり、かといってテーブル席も数席は存在する。レイナが入って来た事で店のマスターが「いらっしゃい」と迎える中、彼女は適当に赤を基調とした服を着る尻尾の生えた者の横へ立つ。……が、残念な事に彼女の身長ではそもそもカウンターに高さが足りない。

 

「お主……ここは子供が来る様な場所では無いのじゃ」

 

「子供じゃねぇよ。これでも17だ。……テーブル席、使って良いか?」

 

「あいよ。で、注文は?」

 

「んじゃ、沈黙のスープってのを」

 

 仕方なくテーブルと椅子の席へ座ったレイナはマスターへ注文する。そして自分へ声を掛けた者へ視線を向けた。……その顔は明らかに人では無い。何かに例えるならばネズミであり、声音は女性。視線を向けられていた事で寄り掛かっていたカウンターから体重を離したその人物は、レイナへ向き直る。

 

「つい、見掛けで判断してしまった。失礼した」

 

「慣れてるから、別に良い。謝罪する奴なんか殆どいないから、余計にな」

 

 自身が子供扱いされる事は、過去にも数え切れない程にあった。だが中には謝罪しない者も沢山おり、彼女の様にしっかりと謝る者は少ない。故に謝られた事で苛々はすぐに消え、レイナはテーブルに頬杖を突いて注文したものが来るのを待つ。

 

「はいよ、沈黙のスープだ」

 

「へぇ~、思ったより」

 

 やがて出て来たそれを食べ始める中、再び新たな客がお店へ訪れる、金髪に尻からは尻尾が生えた青年であり、横目で見たレイナはこの世界に人とは違う存在が沢山居る事を改めて感じる。……そして青年はマスターと話をしてから、店で働いていた女性を口説き始めた。

 

「そこの尻尾、他の客に迷惑だぞ」

 

「なんだと!? そういうお前も尻尾があるじゃねぇか!」

 

「(美味いな)」

 

 先程話をした人物と青年が言い争いを始める中、レイナは黙々と沈黙のスープを食べる。恐らく美味しすぎて喋れなくなるから、そういう名前がついたんだと考えながら。

 

 そんな中、彼女は何時の間にか隣に立って仲良さげに話をする2人の会話を聞いた。どうやら2人は元々面識があった様だが、それはレイナには関係の無い話。しかし女性の方が言った『狩猟祭』という言葉にレイナは反応を示す。何処かでそれに関する情報を書いた説明版があったが、レイナは気にしなかったが為に読んでいなかった。

 

「強い者が集まる祭、ね……」

 

「あ! やっと見つけたわ!」

 

「あ」

 

 考え込んでいたレイナは突然騒がしい声と共に自分へ駆け寄って来た人物、エーコを見て固まる。何も言わずに出てしまった為、非常にお怒りだった彼女は店の中だからと気にもせずに文句を言い始める。当然店に居る者達全員から注目されてしまう中、レイナは「悪かった」と言って向かいの席へ座る様に促した。

 

「沈黙のスープ、もう1つ良いか?」

 

「あいよ。全く今日は騒々しいな」

 

 それから注文した品が来るまで、レイナはエーコにお小言の様に文句を言われ続けた。しかしやがてやって来た沈黙のスープを食べ始めたエーコは、先程のレイナと同じ様に黙々と食べ始める事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、エーコ。少しここに滞在しても大丈夫か?」

 

「別に良いけど、何かあるの?」

 

「あぁ。ちょっと面白そうな事があるみたいだからな」

 

 居酒屋を後にした2人は、エアキャブで移動しながら話をする。幸いにも宿へ泊まるギルは道中の魔物から手に入れたギルで事足りる為、滞在する事自体は何の問題も無い。そもそもエーコはレイナへついて来た為、彼女の行く先がエーコの行く先でもあった。故に了承する中、レイナはエアキャブの中にあった張り紙を眺める。

 

「狩猟祭、楽しそうじゃねぇか……!」

 

 そう言って笑みを浮かべる彼女は、新しいおもちゃを手に入れた無邪気な子供の様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンドブルム商業区。

 

 狩猟祭への参加は誰でも簡単に行う事が出来た。開始は翌々日であり、レイナはエーコと共に街の中を歩きながら戦いの準備をする。主に黒鬼徹の手入れであり、それと同時に重要なのは弾丸を補給出来るかどうか。……結果から言えば、弾丸はどの店でも取り扱っていなかった。そもそもこの世界には『銃』というものが存在しない様である。

 

「下手に使えない、か。仕方無いな」

 

「見てレイナ! あんなところに面白そうなのがあるわ!」

 

「あ、おい! ったく、勝手にどっか行くなよ。って……俺の言えた事じゃないか」

 

 お店を見つけて飛び出したエーコを追ってレイナも入ったそこは、女性が経営するアイテムショップだった。薬の他にも様々な物が取り扱われており、エーコはその中で『クポの実』と呼ばれる物を見つける。モーグリの大好物であるそれは中々マダイン・サリでは手に入らないもので、品数は全部で2つ。

 

「ねぇ、レイナ」

 

「良いぜ」

 

「まだ何も言ってないんだけど!?」

 

「あんだけジッと見てれば、誰だって分かるっての」

 

 エーコのお願いを聞くまでもなく了承したレイナに驚きながらも、やがてクポの実を1つ取って店員の居るカウンターへ向かったエーコ。会計を済ませてから、彼女は胸元に入っていたモグへそれをあげた。

 

「クポ! クポポ~♪」

 

「モグも喜んでる! ありがとう、レイナ!」

 

 お礼を言われて何も言わずに笑みを返したレイナは、その後アイテムショップで適当に商品を見てから宿へ戻る事にした。開催まではまだ時間が1日以上ある為、明日も適当に街を見て回るとエーコへ約束しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。明日に狩猟祭を控えた事で、今まで以上に活気に満ちた街中をレイナとエーコは歩く。時にはギサールの野菜と呼ばれる物をピクルスにした食品を食べて咽たり、買い物でエーコにつばの広い黄色のリボンが付いた白い帽子を買ったり等々。エーコの角はやはり珍しいのか、時折視線を向けられる事で隠した方が良いとレイナが判断したのだ。特にそれについてエーコへ告げる事は無かった為、彼女はレイナからのプレゼントと喜んでそれを被っていた。

 

「どう、似合ってる?」

 

「あぁ、悪く無いな」

 

「もう! そこは『可愛い』とか言わなきゃいけないのよ!」

 

 相手の容姿や見た目を褒める事が殆ど無かったレイナはエーコからお叱りを受けて、頭を掻いた。すると突然鈍い音が聞こえて来た事で2人は振り返る。……そこには見覚えのあるとんがり帽子を被った黒魔導士が倒れていた。どうやら転んだ様で、立ち上がりながら帽子を治すその姿は似ている様で少し違う。主に大きさが。

 

「大丈夫か?」

 

「え?」

 

「凄い転び方してたじゃない!」

 

「あ、うん。大丈夫。ありがとう」

 

「気を付けなさいよ!」

 

 黒魔導士の少年はエーコにそう言われながら歩き去ってしまい、レイナはコンデヤ・パタで出会った黒魔導士を思い出しながらもそれ以上声を掛ける事はしなかった。

 

 その後、レイナが次に訪れたのは合成屋と呼ばれる場所であった。そこで出来る事は名前の通り、道具を合成。つまり2つの物で1つの物を作り上げる事であり、アイテムショップとも武具店とも違う品揃えがあった。『もしかすれば、そこでなら弾丸も……』。そんな事を思いつつ、レイナは中へ入る。

 

「いらっしゃい!」

 

「なぁ、こんな物を作れないか?」

 

「なんだいこれは? 随分小さいけど……意外に重いんだね」

 

 弾丸を店員だった青年へ見せつつ聞いたレイナだが、結局は無理と判断されてしまう。すると、青年の背後に居た年老いた老人がレイナを見て驚いた様子で近づき始める。

 

「お主、随分と大きな剣を持っておる様じゃの?」

 

「? これの事か?」

 

「うわぁ! 一体何処から……それにどうやってそんなに重いものを?」

 

「ほぅ、これは中々……だが大分刃こぼれしている様じゃな」

 

「手入れはしてるんだけどな。色々あって、最近は真面に出来て無いんだ」

 

「ふむ。聞くがお主、狩猟祭には?」

 

「出る」

 

「なら、そのままじゃいかんの。ここは合成屋の腕の見せどころじゃ!」

 

 そう言って青年と何かを話し始める老人を前に、レイナはエーコと顔を見合わせる。お互いによく分からず首を傾げていると、再び傍へ近寄って来た老人はレイナと話を始めた。

 

「儂らの手で、そのボロボロになった刃。直してやれん事も無い」

 

「そいつは助かるが、一応これは俺の相棒だからな。簡単には……」

 

「武器には持ち主の思いが込められておる。相棒と呼ぶからには、相当共に過ごしたんじゃろう。ならばそのままではその相棒が可愛そうじゃ」

 

「まぁ、確かにな」

 

「お主の相棒。いや、魂を儂らに一時預けてはみんか?」

 

「レイナ、どうするの?」

 

「……」

 

 老人の提案にエーコが聞く中、レイナはしばらく黙ってしまう。だがやがて彼女が出した答えに、老人達は真剣な表情で頷いて見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 合成屋を出て、2人は適当に街の中を歩いていた。やって来て既に2日。その殆どを街中で歩き回っていたため、既に行きたいと思う場所も無い。狩猟祭が始まるまで、特に用事は何も無くなってしまった。

 

「宿に戻るか?」

 

「エーコはどっちでも良いわよ」

 

 エーコの答えにどうしようかと悩み始めた時、そんな2人へ声を掛ける人物が現れる。それは鎧を纏った騎士の様な男性であり、どうやら街の中で迷ってしまったとの事であった。

 

「城へ戻りたいのである!」

 

「城、ね。どう見てもあんた騎士だけど、自分の仕える場所を普通忘れるか?」

 

「私は訳あってここに居るだけで、リンドブルムの騎士では無いのだ」

 

「そうなのか? まぁ、良いや。でも俺達だって一昨日来たばかりで、あんまり街には詳しく無いんだよ」

 

「そうか……それは致し方ない」

 

「取り敢えず、エアキャブに乗れば良いんじゃないの?」

 

「城行きってあったもんな」

 

「エアキャブ……あの珍妙な乗り物の事か」

 

「流石にそこまでの道のりは……分かって無さそうだな」

 

「うむ!」

 

「何でそんなに堂々と言えるのよ!」

 

「まぁ、仕方ない。宿の目の前だし、一緒に行こうぜ?」

 

「おぉ! ご協力、感謝する!」

 

 騎士を伴って宿屋へ向かう事になった2人はやがてエアキャブ乗り場で彼と別れ、明日に備えて一夜を過ごすのだった。

 

 

 

 

6

 

 リンドブルム

 

 狩猟祭当日。エーコは街を一望出来る観客席で、モグと共に街を見下ろしていた。街の中へ解き放たれた魔物達と戦う参加者達の中には、居酒屋で見かけた2人や転んでいた少年の姿もある。そんな中、探していた人物を見つけたエーコは大きな声を上げた。

 

「レイナー!」

 

 

 飛びかかって来る獣型の魔物、ファングを軽々と吹き飛ばしたレイナは手入れされた黒鬼徹を眺める。僅かな刃毀れは綺麗に整えられており、吹き飛ばしたと同時に放たれた斬撃がファングの息の根をそのまま止める。

 

「へぇ、悪く無い腕だな。っと!」

 

 倒したファングを眺めながら、跳躍したレイナの元へ鳥型の魔物が今度は襲い掛かる。だがそれを軽々と避けた彼女はそのままその身体の上へ黒鬼徹と共に着地した。巨大な刃に貫かれて逝った鳥を見下ろしつつ、彼女は周囲を見回す。

 

「もっと大きいのは……」

 

『現在のトップはフライヤ選手! 98ポイント!』

 

「負けてらんねぇな!」

 

 今居る場所に魔物はもう居ない。そう判断したレイナは急いでエアキャブに乗って別の区へ移動を始めた。

 

 

 リンドブルム商業区。

 

 エアキャブを降りて外へ出た途端に現れた魔物を倒しながら進んだ先には、何時かの転んでいたとんがり帽子の小さな黒魔導士がファングに襲われている光景であった。彼も参加者の様だが、余りにも戦いに慣れていない様子を見兼ねたレイナは彼とファングの間へ立つ。

 

「よっと!」

 

 一撃でファングを仕留めた時、転んでいた黒魔導士は立ち上がってレイナへお礼を告げる。

 

「お前、大丈夫なのか?」

 

「その、僕は何時の間にか参加させられてたから」

 

「そりゃまた、災難で……っと。来たな?」

 

 黒魔導士の言葉に若干同情した時、四方から自分達へファングとリスの様な魔物……ムーが襲い掛かり始める。

 

「一応、戦えるんだよな!」

 

「う、うん」

 

「そんじゃ、一時共闘だ。つっても仕留めた方のポイントらしいからな。俺がやっても文句言うなよ?」

 

 レイナの言葉に頷き、そして彼女と共に戦う事になった黒魔導士。レイナがまずは魔物達の注意を引き、そして彼は魔法を放つ。出会って2度目、共闘は初でありながらも悪く無いチームワークで魔物を倒した2人はアナウンスを聞いた。

 

『現在のトップはビビ選手! 123ポイント!』

 

「なんだよ、全然戦えるじゃねぇか」

 

「ぐ、偶然だよ」

 

「偶然でも、トップなのに変わりは無い。自信を持てって。まぁ、負けないけどな!」

 

「が、頑張ってね」

 

 競い合う相手でありながらもお互いを鼓舞し合い、そしてレイナは彼と別れて次の獲物を探す。すると、先程と同じ様に背後から飛来した鳥の魔物を迎え撃とうとして……空から降る槍がそれを貫いた。

 

「ふむ。横取りしてしまったか?」

 

「気にすんな。やったもん勝ち、だ!」

 

 そして現れたのは居酒屋で2度程会話をしたネズミの女性だった。槍を持った状態で降り立った彼女へレイナは気にした様子も無く告げ、彼女へ武器を振り下ろす。驚きも束の間、その剣から飛んだ斬撃は彼女を通り過ぎて背後へ。彷徨っていたムーを仕留める。

 

「中々やるようじゃの」

 

「まだまだ、こんなもんじゃないぜ?」

 

 それだけの会話をして、2人は別々の方向へ。その後も魔物を狩り続けたレイナにアナウンスが現状を伝える。

 

『現在のトップはジタン選手! 142ポイント!』

 

「俺の点数って、いくつだよ? やっぱここは大物を狙うしかないか」

 

「うわぁぁぁ!」

 

「!」

 

 自身のポイントが分からずに少々焦り始める中、突然聞こえて来た子供達の悲鳴にレイナは駆け出した。この狩猟祭は街中に魔物を放っているため、時折街の住人が襲われているのだ。本来であればしっかり避難したのを確認してから離すのだが、今回は手違いがあった様子。レイナが駆けつけたそこには、他の魔物の数倍は巨大な魔物……ザグナルに襲われる子供2人の姿があった。

 

「らっ!」

 

 子供へ突進するザグナルを横から黒鬼徹で切りつけた時、ザグナルは体勢を崩して横になる。そしてその隙に子供達へ逃げる様に言えば、急いで2人はその場を後にした。

 

「中々の大物じゃねぇか。こいつで一発逆転、てな」

 

「そうはいかないぜ!」

 

 ザグナルと相対した時、違う場所から聞こえる声と共にレイナの横へ現れたのは先程の女性と同じく居酒屋で見かけた青年だった。2本の短剣を構えた彼の狙いは言わずもがな。レイナはそれを見て、楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「悪いが、仕留めるのは俺だ」

 

「いいや、俺だね!」

 

「なら……」

 

≪どっちがやっても恨みっこ無しだ!≫

 

 立ち上がり咆哮するザグナルを前に、2人は臆する事無く挑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「頑張れー! レイナー!」

 

「クポ! クポポ!」

 

「ジタン、ビビ……」

 

「まだまだここからですぞ、ビビ殿!」

 

 気付けば観客席でエーコとモグ、そして美しい女性と何処か見覚えのある騎士が大声で応援していた。女性以外3人の応援は何処の誰よりも大きく、自然と観客は応援される彼らへ注目する。そんな中、ザグナルと戦いを始めた者が現れたという言葉が聞こえて来た事で観客の目が一斉にザグナルへ。それと戦うレイナと青年へ向けられた。

 

「おや、あれは……」

 

「いっけー!」

 

「ジタン!」

 

「クポー!」

 

 騎士の男性は青年と共に戦うレイナの姿に当然見覚えがあり、女性は青年へ……ジタンへ向けて祈る様に応援を送る。その横で騒ぐエーコとモグは他の観客同様、非常に盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

「ぶっ飛べ!」

 

「まだまだ!」

 

 ザグナルの巨体は見掛け倒しでは無い。他の魔物に比べて非常に凶暴で強く、これを倒した者は殆ど優勝と言える。毎年沢山の怪我人を出す事でも有名であり、しかしそれは今2人の人間によって一方的にやられていた。ザグナルをこの日の為にと育てて来た老人は、狩猟祭の参加者を蹴散らして無双する我が子の予想を覆された事で開いた口が塞がらない。

 

「こいつで終いだ!」

 

 レイナはザグナルの傍で黒鬼徹を横に構え、その場で回転を始める。やがて彼女を中心に生まれた斬撃の渦は徐々に広くなり、そしてそれをザグナルへ向けて容赦無く放った。途轍もない斬撃の嵐がその巨体を襲い、悲鳴にも聞こえる咆哮が木魂する。

 

「画竜点睛、ってな」

 

 やがて耐え切れずに浮き上がり始めた巨体は切られ飛ばされ、落ちて来る。地面へ倒れたザグナルは何度か身動ぎをした後、そのまま静かになった。

 

「何だよ、今の」

 

「悪いな。こっちも色々経験して来たんだ。こんな事で負けらんねぇ」

 

 呆気に取られるジタンを余所に、レイナは黒鬼徹をしまう。そしてそれと同時に響き渡るけたたましい音が、狩猟祭の終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 リンドブルム城。

 

「231ポイントでレイナ殿、優勝です」

 

「素晴らしい戦いだったブリ」

 

「あ、あぁ」

 

 優勝した事で玉座の間へ通されたレイナは、何故か玉座に座る変な生き物から賛辞を受ける。予めされた話は、現在シド大公が謎の侵入者によって半年前から『ブリ虫』と呼ばれる生き物へ姿を変えられてしまったとのいう話。非常に特徴的な髭を残したまま玉座に座る見た事が無い生き物の姿に、レイナは動揺を隠せなかった。

 

「お主にはハンターの称号を与えるブリ」

 

「そして優勝者の望みの品ですが……シド大公と話がしたい、との事でしたね」

 

「なるほど。それでここへ来たブリな。普通なら、ここへ通す事は出来ないブリ」

 

 現在、玉座の間にはレイナを始めとしてジタンや美しい女性。騎士の男性に黒魔導士。ネズミの女性にエーコと、沢山の人物が集まっていた。

 

 本来、狩猟祭で優勝した者にはハンターの称号と望みの品が与えられる。そこでレイナが出した望みは、この国のトップ。シド大公と話をする事だった。不思議な頼み故に警戒されはしたものの、現在は武器などを預けている為に安全と判断されてここまで通されたのである。

 

「何を話したいブリか?」

 

「なぁ、本当にあれが大公なのか?」

 

「はい、間違い無く」

 

「信じられないのも無理ないよな」

 

 大公の傍で仕える文臣へ確認した時、彼女の動揺が分かるとばかりに聞いていたジタンは呟いた。周りの反応を見て本当なのだと無理矢理納得したレイナは、改めてシドと相対する。

 

「俺が聞きたいのは、あんたが『スピラ』。そして『シン』って言葉を知ってるかどうかだ」

 

「スピラにシン、ブリか?」

 

 レイナの言葉を聞いて不思議そうに文臣へ視線を向けたシド。向けられた彼は首を横に振り、シドはそれを見て答えた。

 

「残念ながら知らないブリ。一体それは何ブリか?」

 

「……いや、知らないなら良いんだ。……嫌でも受け入れるしか無いからな」

 

 今まで出会った人物に聞いても、誰もがその言葉を知らなかった。ただ世間知らずなだけかも知れない。辺境に居たから、意外に地理や情報に詳しく無かったから。レイナはそんな理由を作って微かな希望を抱き続けていた。……だからこそ、彼女は聞きたいと思ったのだ。国を治める程に地位のある者が果たしてその言葉を知っているのかと。そしてその結果は『知らない』。それは彼女の小さな抵抗も、希望も、儚く散った瞬間だった。

 

「むぅ、気になるブリな」

 

 知らない言葉を気になるのは当然の事。シドが今度は聞こうとした時、玉座の間に予想外の来訪者が現れる。……それは傷を負い、死に物狂いで助けを求めに来た他国『ブルメシア』の若い兵士だった。




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