【完結】FFX もう1人の物語&Re:FFIX 帰る場所を求めて   作:ウルハーツ

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Chapter4 死闘のアレクサンドリア

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 アレクサンドリア城、牢獄

 

「これは何かの誤解なのだ! ここから出すのである!」

 

 囚われたスタイナーが天井から吊るされた檻の中で叫ぶが、誰も聞く耳を持とうとはしなかった。それでも叫び続ける彼はやがて疲れた様に肩で息をするも、再び叫ぼうとし始める。

 

「止めとけ。無駄だっての」

 

「レイナさんの言う通りッスよ。俺達の話をそもそも聞いてる奴なんか誰もいないッス」

 

「むむむ……元はと言えば貴様の様な賊が居た事で我々が誤解されたのだ!」

 

「八つ当たりッス」

 

 囚われていたのはスタイナーだけでは無い。マーカス、レイナ、エーコの3人も同様であり、レイナは腕を組んだまま壁へ寄り掛かっていた。

 

「なんか、余裕そうッスね」

 

「似た様な経験があるからな。そう言えば、あの時もこんな面子だった」

 

 レイナが思い出すのは姉の結婚式を妨害した後、ベベルで捕まってしまった時の事だった。今と同じ様に天井から吊るされた檻の中で姉のガードだった2人と共に囚われた事を思い出し、だがあの時と違って1人多い事。そして子供がいる事がその違いを決定づける。……その時は待っていると檻から出され、その後水の中へ放り込まれる事になったレイナだが、今回はそうもいかない様子であった。

 

「にしても、アレクサンドリアの兵士ってのは全員頭が悪いのか?」

 

「なっ! アレクサンドリアの兵は他国に負けない強い者達ばかりなのである!」

 

「じゃあ、あれだな。強さばっかで賢さが足りて無いって事だ」

 

「それ以上の侮辱は許さないのである!」

 

「落ち着くッス。一体どうしたッスか?」

 

「普通に考えれば分かるじゃねぇか……なんで武器を取り上げないんだよ?」

 

「むっ?」

 

「ちょっと!?」

 

「マジっすか!?」

 

 そう言って黒鬼徹を取り出したレイナが大きく振り被る姿を前に、スタイナー以外の2人が驚いた。そして檻の中から白い光が一瞬生まれた事で、下から囚人を監視していた女兵士が怪訝そうな表情を見せる。……すると一瞬聞こえて来た金具が壊れる様な音が静寂に響き、続けて檻の横が突如破壊された事で檻自体が大きく揺れながらその足場が斜めになる。

 

「よっと! やっと窮屈から解放されたぜ」

 

「もう! やるならやるって最初に言わないとビックリしちゃうでしょ!」

 

「予め言って欲しかったッス」

 

「出れたんだから良いじゃねぇか……スタイナーは?」

 

 エーコを抱えながら、揺れる檻を利用して横の足場へ跳躍したレイナ。マーカスも続き、2人からの非難を受けながらも軽い調子で返したレイナは1人足りない事に気付いた。そして3人が同時に檻へ視線を向ければ、そこには誰も居ない。続いて下を見れば……落下したスタイナーが女兵士に囲まれる姿があった。

 

「逃げ出すとは言い度胸です」

 

「待つのだ、自分はプルート隊隊長」

 

「覚悟!」

 

「ぬおっ!」

 

 やはり話を聞く気は無い様で、容赦無くスタイナーへ剣を向ける女兵士たち。そんな彼女達の剣を自らの剣で何とか受け止めたスタイナーは、そのまま押し返して見せた。

 

「ぐっ……何としてでもブラネ様の元へ行かねば」

 

「おっさん! 梯子で上に上がるッス!」

 

「致し方あるまい!」

 

 上から聞こえるマーカスの声を聞き、梯子を見つけて上がろうと走り出したスタイナー。当然彼を追い掛けて女兵士たちが剣を手に走り出す中、エーコを降ろしたレイナは上からルインを使って彼の元へ辿りつけない様にする。そして先に梯子の上へ到着していたマーカスと合流したスタイナーは、誤解を解く為に王女の元へ向かう事を告げる。

 

「俺はブランクの兄貴を助けに行くッス」

 

「ええい! この期に及んでまだ身勝手な」

 

「話してる余裕は無さそうだぜ」

 

 マーカスの言葉にスタイナーが憤りを見せる中、彼が上った梯子を使って女兵士達が数人現れる。改めて剣を握ったスタイナーと共に、4人は女兵士を倒しながら牢獄の中を駆け抜ける事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 無事に牢獄の外へと続く廊下へ到着した時、マーカスは宣言通りブランクを助ける為に別れる事となる。そんな彼の後ろ姿を前にスタイナーが飛び上がりながら怒りを見せる中、今度は空から謎の光が飛来した。……そしてそれは3人の人間へと姿を変える。リンドブルムで出会ったジタン、ネズミの女性、黒魔導士の少年である。

 

「むっ。ジタン! 何故貴様がここに!」

 

「おっさん。ここはアレクサンドリアであってるか!?」

 

「ええい、今はお前と話をしている場合では無い! 今は一刻も早くブラネ王女の元へ行かねば」

 

「アレクサンドリアなんだな!?」

 

「あぁ、あってるぜ」

 

「お主は……いや、今は話を聞いている場合では無いのじゃ!」

 

 アレクサンドリアだと分かった途端、走り出したジタン達にマーカスへの怒りもあって再び飛び上がり始めるスタイナー。しかし戻って来た彼らは告げる。約30分後、『ダガ―は処刑される』と。ジタンの言葉だったが故に信じられなかったスタイナーだが、黒魔導士の少年がここへ来る前に乗っていた船でブラネ王女自身の口から聞いた事を説明。……彼はその少年の言葉を受けて、遂にそれを信じる事にした。

 

「とにかく急いでダガ―を見つけるぞ!」

 

 今度はスタイナーも交えて走り出したジタン達。そんな彼らを見送りながら、エーコはレイナへ視線を向ける。

 

「レイナ! エーコ達も行きましょう!」

 

「あぁ。お姫様に死なれたら、約束も果たして貰えなさそうだしな」

 

 そして彼らを追う様に、2人もダガ―を探して城へ突入する。向かうは玉座の間。スタイナー先導の元に、立ちはだかる兵を蹴散らして到着したそこには人の姿が一切無かった。

 

「何処にいるんだ、ダガ―」

 

「……居るとすれば、地下か?」

 

「エーコ見たわ! 捕まってから連れて来られる時、ここを通ったもの! あそこの蝋燭を倒すの!」

 

 エーコの言葉を聞いてジタンは部屋にあった紫色に光る蝋燭へ視線を向ける。それに触れれば、まるでレバーの様に蝋燭は倒れた。そして暖炉が引っ込み、下へ続く階段が姿を現す。

 

「悪い事を隠すには丁度良さそうな場所じゃな」

 

「だな。急ごう!」

 

 今度はジタン先導の元、下へ降り続ける事になった一同。回転する足場や螺旋階段を抜けた先にある広い部屋のこれ見よがしな大きい扉を前に、ジタンは飛び蹴りをして中へ突入した。……そこには台座に横たわるダガ―とその周囲で謎の踊りをする双子の道化師の姿があり、彼らは入って来たジタン達に気付いて近づいて来る。

 

「誰でごじゃるか?」

 

「見た事無いでおじゃる」

 

≪追い出すで()じゃる!≫

 

 襲い掛かって来る道化師達にジタンやネズミの女性が構えた時、その2人の横から飛び出したのはレイナと彼女にしがみ付いたエーコ。そしてスタイナーだった。

 

「おじゃ!?」

 

「ごじゃ!?」

 

「ぬん!」

 

「ぶっ飛べ!」

 

「仕返しよ!」

 

 突然迫った3人の姿に驚く道化師たちへ、容赦無くレイナとスタイナーが武器を振り下ろす。その一撃には自分達を捕まえて小馬鹿にしていた彼らへの恨み辛みが込められており、彼らが何かをする前にその一撃が戦いの決定打となる。レイナの一撃で吹き飛ばされ、壁へ激突したソーン。スタイナーの一撃で地面へ叩き伏せられたゾーン。彼らはゆっくりと立ち上がると、「逃げるで()じゃる~!」と言って部屋を飛び出していった。

 

「ふぅ、スカッとしたわ!」

 

「ダガ―!」

 

 エーコが満足そうに告げる中、横たわるダガ―の元へ駆け出したジタン。彼を追って全員が彼女を中心に集まった。

 

「何という事だ! 姫様を守る騎士でありながら、守れなかったとあっては……もう自分に生きている資格など無いのである!」

 

「早まるでない。まだ息はある様じゃ」

 

「なに!?」

 

 スタイナーが膝を突いて絶望する中、告げられた言葉に彼は即座に立ち上がる。そしてジタンがダガ―を横抱きに抱え上げると、ここから抜け出す事となった。

 

 ダガ―には何か特殊な魔法が掛けられている様で、簡単には目を覚まさないのだろう。彼女を連れて来た道を戻り、やがて玉座の間へ到着した彼らは地下への道を蝋燭を操作して塞ぐ。……今のところ、彼らを狙う追手の姿は何処にも無かった。

 

「皆、少しダガ―を休ませても良いか?」

 

 ジタンの言葉に一同が同意する中、レイナは何かに気付いた様子で黒鬼徹を取り出す。エーコが不思議そうに声を掛けるも、彼女は「下がってろ」と何時に無く真剣な様子で告げた。そして再び現れる道化師、ゾーンとソーン。そんな彼らが連れて来たのは、1人の眼帯を付けた美しい女性であった。

 

「お久しぶりですね、スタイナー」

 

「なっ! べアトリクス!」

 

「まさか今までこの様なケダモノ達と遊んでいたのですか?」

 

「なんだと!」

 

 べアトリクスと呼ばれた女性の言葉に反応してジタンが前へ出る。他の面々も武器を構える中、ジタンと並ぶ様にレイナもまた彼女の前へ出た。

 

「……ほう」

 

「お前ら、下がってろ」

 

「何を言っておるのじゃ! 儂らも加勢を」

 

「邪魔だから下がってろって言ってんだよ!」

 

 明らかに余裕の無い声音で声を荒げながら告げたレイナの姿に一同が驚く中、べアトリクスは腰に差した剣をゆっくりと抜き放つ。

 

「まだ子供の様ですが、覇気は上等。貴女なら、私の渇きを満たせるかもしれませんね」

 

「そんなつもりはねぇよ。それに子供じゃねぇ。……悪いな、今回は加減が出来そうに無い。近くに居られると、巻き込まない保証が無いんだ」

 

「うぉ! なんだ、これ……!」

 

「おっかないでごじゃる~!」

 

「本気で戦う気でおじゃる~!」

 

 向かい合う2人から突如生まれる重い空気が部屋の中を支配する。何度も戦いを経験して来たジタンを始め、殆どの者達がその空気に耐えられず真面に動く事すら出来なかった。そして道化師の2人が逃げる様に部屋を飛び出す中、レイナはべアトリクスへ向けて飛び出した。

 

 

 

 

12

 

 レイナの愛剣である黒鬼徹と、べアトリクスの愛剣であるセイブザクイーン。前者は大剣であり、後者は剣であるが故にその威力はレイナの方が大きい様にも思える。しかし急接近して振り下ろされたレイナの一撃を容易く受け止めたべアトリクスは、これまた容易く押し返すと共にレイナへ向けて剣を横に振るった。

 

「っ!」

 

 それを前転しながら顔擦れ擦れに跳んで回避したレイナは、再び大剣を今度は跳んだ勢いも混ぜて振り下ろす。流石に受け止め切れないと悟り、一歩後ろへ下がってべアトリクスが回避すれば、玉座の間の床に巨大なへこみが出来上がる。……その光景を見て、ジタンは思わず冷や汗を掻いた。

 

「ふっ、なるほど。口だけでは無い様ですね」

 

「んなの、お互いに分かってんだろうが……よっ!」

 

 振り下ろした刃をそのまま横へ流す様にして、避けたべアトリクスへ再びレイナは攻撃を仕掛ける。そして再び武器同士がぶつかり合えば、甲高い音と共に2人は鍔迫り合いを始めた。見た目からしてセイブザクイーンの方が折れてしまいそうだが、柔な強度で作られてはいない様子。その証拠に、再び距離を取った彼女の剣には傷が一切付いていなかった。

 

「ぶっ飛ばす、はあぁぁぁ!」

 

「こんな場所でやる技じゃ無いっての!」

 

「あわわわわ!」

 

 何時かの様に回転を始めたレイナを中心に発生する竜巻は、部屋を好き放題に荒しながら徐々に大きくなり始める。間近でその技を見ていたジタンはダガ―を庇いながら様子を伺い、他の者達も帽子を押さえたり壁にしがみ付いたりしながら耐え続けた。……そして容赦無く作り上げた竜巻の刃をべアトリクスへ放てば、それを前に彼女は優雅に髪を掻き上げる。

 

「威力は悪くありません。ですが……私とこのセイブザクイーンの前には無力」

 

 そう言って剣を顔の前へ立てながら構えたべアトリクスは瞳を閉じる。そして一気に開くと同時に剣を前へ突き出せば、そこから放たれた白い衝撃が竜巻の中心へ触れた。その瞬間、竜巻の勢いは一瞬にして拡散する様に消え去ってしまった。

 

「まだ終わらねぇぜ!」

 

「っ! 良いでしょう、次は魔法で挑みますか」

 

 目の前の光景に各々が呆気にとられる中、竜巻を作り上げた本人は驚く事も焦る事も無くルインをべアトリクスへ向けて放つ。それを軽く剣で弾きながら、不敵な笑みを浮かべたべアトリクスはお返しをする様に魔法を唱える。……それは聖なる力を秘めた魔法、ホーリー。光の軌跡が輝きながらレイナへ迫る中、彼女はルインを込めた手に力を入れる。

 

「こいつで、どうだ!」

 

 そして放った特大のルインは光とぶつかり合い、玉座の間中心に白く巨大な爆発が発生する。何とかホーリーを相殺する事が出来た事で、再び黒鬼徹を構えたレイナ。そんな彼女を前に、べアトリクスは口を開いた。

 

「何故、本気を出さないのですか?」

 

「あぁ? 何言ってんだよ、こっちは最初から本気(マジ)だぜ」

 

「……まだ私を侮っているのか。……ならば我が剣技、受けてみなさい!」

 

「小細工は無しだ! 全力で、ぶった斬る!」

 

 戦いの中で互いに距離があった2人は再び駆け出した。そしてべアトリクスは跳躍すると同時に剣を上から。レイナは走る速度を活かして大剣を下から振り上げる様に、技を放った。それは動作は違えど、偶然にも同じ名を持つ技。

 

≪クライムハザード!≫

 

 ぶつかり合った刃から生まれた衝撃は、今までの戦いで起きたものとは比較にならない程に巨大だった。

 

 

 

 

 

 

 荒れ果てた玉座の間、レイナは黒鬼徹を杖の様に立てて体重を支える事で倒れる事を拒んでいた。一方、彼女の前には膝を突いて刃をそれでも握るべアトリクスの姿がある。しかし少しの間をおいてゆっくりと立ち上がったのは……べアトリクスであった。

 

「見事。ですが、私に勝つには少々足りなかった様ですね」

 

「ちっ……言い訳はしねぇ。俺じゃ、あんたには届かないらしい」

 

「……その左手がもし真面に使えていたのなら、勝敗は変わったかも知れません」

 

「ああだったら、こうだったらって話は好きじゃねぇんだ。『今はまだ』あんたには届かない。それだけだっての」

 

「ふっ」

 

 レイナの言葉を聞いて微かに笑いながらセイブザクイーンをしまったべアトリクスは、この戦いの最中にダガ―が玉座で寝かされている事に気付いていた。故に彼女はゆっくりとダガ―の元へ歩み寄り、守ろうとするジタン越しにその姿を改めて確認する。

 

「ガーネット姫がここに居るという事は、本当にブラネ様はガーネット姫を殺そうと……」

 

「なんだと!? ブラネ様がその様な事をする筈が無いのである!」

 

「スタイナー。どうやら、現実は私達にとって残酷な様です。私はブラネ様の命令に従い、罪の無い者達を。ブルメシアの民達を殺してしまった。償え切れない過ちを犯してしまったのですね」

 

 べアトリクスはここへ戻って来る前、ある街へ攻め込む作戦に参加していた。それは攻め込んだブルメシアの者達が逃げ込んだ街であり、彼女はブラネの命を受けてそこに居た者達から大事な物を奪った。……そしてその後に待っていたのは、召喚獣を使った街そのものの消滅。果たしてどれだけの存在が死んだのか、数える事も億劫になる程の惨劇である。そしてそれに一番苦しんでいたのはブルメシアが故郷であったネズミの女性であり、彼女はべアトリクスの謝罪の言葉に怒りを露わにする。だがそれでも今はダガ―を助けたいと願う彼女の思いに、べアトリクスは頷いた。

 

「私の務めはガーネット姫を守る事。出来る限りの事はしてみましょう」

 

「無駄でおじゃる!」

 

「我々の魔法は簡単には解けないでごじゃる!」

 

「また出たわね!」

 

「いい加減、しつこいんだよ!」

 

 眠り続けるダガ―を起こそうと魔法を使うべアトリクスへ戻って来た道化師が告げる中、レイナはしっかりと立ち上がって2人へ大剣を向ける。怯えて部屋の外へ逃げようとする2人を前に、何度も繰り返し魔法を掛け続けたべアトリクス。……やがて彼女の魔法は道化師がダガ―へ掛けた魔法を解く事に成功する。

 

「ぅ、ん……? ここ、は」

 

「ダガ―!」

 

「お姉ちゃん!」

 

 目を覚ましたダガ―の姿にジタンを始め、その場に居た殆どの者が彼女を呼ぶ中。逃げようとした道化師達の前へ1人の女性が立ち塞がった。片手には扇子を持ち、「何の騒ぎだ!」と怒りを露わにしながら現れたその人物を前にダガ―は告げた。『お母様』と。

 

「こいつらが!」

 

「ガーネット姫を!」

 

「ガーネットか……召喚獣を取り出す事は出来たのか?」

 

「それはもう」

 

「バッチリでごじゃる!」

 

「ふん。ならとっとと捕らえて牢へ入れろ。その後は手筈通り、処刑するのだ!」

 

「お母、様……」

 

「その命令、どうかお取り下げください!」

 

 ブラネの言葉にべアトリクスが抗議の声を上げた時、ブラネはまるで面白いものを見た様に笑う。そしてべアトリクスまでもを反逆者として捕らえる様に2人へ命令を下した。その後、去り際に自分を呼んだダガ―の言葉など全く無視する姿に各々の怒りは高まる。……だが、時間に余裕は無かった。

 

「あれを使うでおじゃる!」

 

「こいつで全滅なのでごじゃる!」

 

 そう言って道化師が呼んだのは、巨大な犬の様にも見える魔物……バンダースナッチであった。相手が魔物となれば、加減も何も無い。本気で殺しに来たと分かった時、誰よりも前に出たのはべアトリクスとレイナであった。

 

「ここは任せて行きなさい! ガーネット姫を、お願いします……!」

 

「なっ! お前らは!?」

 

「悩んでる場合じゃねぇだろ! 行けっ!」

 

「レイナ!」

 

「安心しろ、死んだりしねぇよ」

 

 魔物が追い掛けられない様に押さえつつ、ジタンを先導に暖炉から再び地下へ降りる全員を見送ったレイナはべアトリクスと横に改めて並ぶ。

 

「貴女も逃げるべきだったのでは?」

 

「悪いな。こういう時に引けないのは師匠譲りなんだよ」

 

 先程まで刃を交えていた2人が共に並び、襲い掛かる魔物を倒す。倒しても倒しても数は減らず、隙を見て2人も暖炉の下へ入った時。そこには別の場所から入り込んだバンダースナッチと戦うネズミの女性の姿があった。

 

「無事じゃな!」

 

「まだ、安心は出来ませんよ」

 

「言われなくても分かってるっての!」

 

 上からも下からも迫る魔物を前に、今度は3人で戦う事になったレイナ。しかし先程の戦いにおける疲労はまだ残っており、それはべアトリクスも同様であった。倒す度に現れる姿を見て息が荒くなる中、魔物が1匹下へ向かう姿をレイナは視界に捕らえる。そしてその魔物の向かう先には、まだ階段を降りるジタン達の姿もあった。

 

「こっちは任せるぜ!」

 

「なっ! 何をする気じゃ!」

 

 螺旋階段の様になっていたその場所の中央には回る足場があり、真ん中へ飛べば下へ一直線に落下してしまう。レイナはそれを分かった上で階段から飛び出すと、ジタン達を追い掛ける魔物の元へ急接近した。彼女の行動に驚きながらも魔物が邪魔をして追い掛けられず、2人で戦う事になってしまったべアトリクス達。

 

「おら、犬っころ! 俺が遊んでやるよ!」

 

「レイナ!?」

 

 一気に落ちて来たレイナが今正に飛び掛かろうとしていたバンダースナッチの上へ黒鬼徹を突き立てながら着地する。エーコを始めとして全員が驚く中、更に追って来る姿を前にレイナは彼らを急がせた。……すると、扉だけがあった壁に回転していた足場が固定される。そして足場が橋となり、そこから現れたのは黒魔導士兵の軍団だった。

 

「マジかよ」

 

 嘗て出会った者とは違い、ただ相手を殺す為にしか行動しない心を持たぬ人形。攻撃するのを躊躇いながらも、放たれる魔法を回避してからレイナは意を決して反撃する。

 

「って、行くなっての!」

 

 そしてその間にもジタン達を追い掛けようとする魔物を確認したレイナは、貴重だからと使わない様にしていた弾丸を遠慮無く使用した。懐から出された銃を左手に、魔法の様に準備をする事も無く一瞬で発砲すれば、それは魔物の身体へ直撃。命を奪えないまでも、その矛先はレイナへ向けられる。だがその一瞬を見逃さない者が、背後から魔物を両断した。

 

「レイナ殿! 無事であるか!?」

 

「スタイナー!? 何で戻って来てんだよ」

 

「騎士として、べアトリクスや其方達が戦うのを前に逃げる事は出来ん!」

 

「ったく。本当にめんどくさい奴だな、っと!」

 

 話をする間に現れる黒魔導士兵と魔物。終わりの無い戦いを前に、2人は橋となった足場の上で背中合わせに武器を構える。上からは時折致命傷を負い、もう動けないであろう魔物が落ちて来る様子を見るに、まだ戦っているのだろう。無事にその場を倒し切った時、スタイナーは上に居る2人へ加勢する為に階段を上り始めた。

 

「そんじゃ、俺は上で逃したのと出て来る奴を倒し続けるとするか」

 

 果たして数がどれ程なのか。終わりはあるのか。何も分からないままに、レイナは次々と現れる相手と戦いを続ける。身体に感じる疲労は着々と増えて行き、遂には攻撃を避けた先に待っていた黒魔導士兵の魔法を受けそうになる。が、その寸前で空から降って来た槍が黒魔導士兵を貫いた。

 

「まだ倒れるには早いのじゃ!」

 

「そんなつもりはねぇよ。……そう言えばあんた、名前は?」

 

「フライヤじゃ。お主はレイナであってるな?」

 

「あぁ。そんじゃ、フライヤ。預けるぜ」

 

「ふっ。頼もしい限りじゃ」

 

 ネズミの女性……フライヤと共に追加される敵を倒し、やがてべアトリクスとスタイナーも降りて来た事でジタン達を逃がす為に残った4人は合流する。そして敵を倒しつつ地下へ降り続ければ、ダガ―が捕まっていた広い部屋の前、円状の床が広がる巨大な空間で4人はそれぞれ別々の方向を向きながら構える。

 

「少し、敵の数が減って来たようですね」

 

「なんだ、弾切れか?」

 

「じゃが、此方も大分消耗しておる」

 

「もう一息なのである!」

 

 4体の黒魔導士兵。4体のバンダースナッチ。まるで数を合わせる様に、順番で現れるそれを打ち果たした時。スタイナーは膝を突いて息を整える。フライヤも疲れが隠せない様子で少々前屈みになっており、それはレイナとべアトリクスも同様であった。

 

「これで終わり、だと良いのですが」

 

「この先は……ガルガントの居る場所か?」

 

「うむ。しかし姫様達が逃げたとなれば、恐らくもう居ない筈だ」

 

「何処か抜け道の様な場所があれば良いのじゃが」

 

 次に魔物が来る前に、何とかして脱出手段が欲しい。そう願った4人の元へ近づく2人の人影。その場に居た全員が残りの体力を振り絞って構える中、現れたのはマーカスと……1人の青年だった。




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