私の過ごした7年間   作:潜水ラクダ

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初めての投稿で誤字や読みにくい部分も多いと思います。


1年目:魔法の呪文
魔法との出会い


「魔法、か」

 

 今日、一番出てきた単語を口に出してみる。私には魔法を使う才能があるらしい。正直に言うと嬉しい。普通ならできないことを自分ができるなんて、夢みたいだ。これをお母さんが聞いたらどう思うのかな?

 

 今はいないお母さんのことをふと思い出す。お母さんがこの世からいなくなり、今いる施設に引き取られてから六年。今が十一歳だから、施設に引き取られたのは五歳の時だ。そう考えると、時間が経つのが早い様な気がする。

 

 私、アリア・サンロがこの施設に入ったのは六年前。それまでは、お母さんと二人暮らしだった。家は都会から離れた田舎も田舎だった。

 

 お父さんについては知らない。物心がついた時にはすでにお父さんはいなかった。一回お母さんに、お父さんはどこ、と聞いて困らせたのは記憶に残る数少ない思い出の一つ。お母さんは少し困った顔をしながら、今は仕事で遠くにいるのよ、と言っていた。これがお母さんのついた最初で最後の嘘だ。私の記憶に残る、だけど。

 

 施設に入った後に一回お父さんについてマユラさんに聞いてみたことがある。マユラさんは私のお父さんについて知っていることを全て話してくれた。

 

 お父さんは村で有名な不良だったらしい。それもどこからか流れてきた。そんな人が何故か、改心してお母さんと結婚し、私が産まれた。けれど、私が一歳になる前に亡くなったらしい。つまり、お母さんはそれからずっと一人で私を育てていた。マユラさんも私が住んでいた村の人から聞いた話だったみたいだったけど。

 

 私の記憶の中のお母さんはいつも働いていた。どんな仕事か、は知らなかったけど、頑張っていた。そんなお母さんが、私が5歳の時、倒れた。無理をしていたのではなく、運の悪いことに病気になったそうだ。

 

 日に日にやせていくお母さんの姿は悲しい思い出として残っている。そんなお母さんがある日、私に言った。どんな子にでも優しくすること、悪い事をしたら謝ること、他にも色々なことを言われた。幼い私はその言葉の先の意味なんて知らず、ただ、頷いた。その日はたくさんお喋りをした。今日は暖かいね、とか、私もお母さんみたいに美人になれるかな、とか。その日は眠たくなるまで話した。

 

 そして、次の日、お母さんは亡くなった。

 

 身よりの無い私はすぐにこの施設に入ることになった。しかし、お母さんを失った私は毎日泣いてばかりだった。それでも、マユラさんのおかげもあり、時が経つに連れて幼い子供であった私も親の死を受け入れることができた。元々、明るい性格だった私なので立ち直れば元気そのもの。よく笑い、よくイタズラし、よく喋り、よく怒られ、よく寝る。うん、何かそこら辺にいそうなワルガキだ。思い出さないことにする。

 

 そして、私は小学校に入学した。明るい私は結構友達もいた。でも、4年生の時に両親がいないことが皆に知られてしまったのだ。それからは、よくからかわれた。嫌だったけど、からかわれるぐらいだったので問題はなかった。

 

 そんな日々が数ヶ月続いていたのだが、ある日、クラスの男子が私を驚かせようと思い、窓から外を眺めていた私の肩をそっと押そうとした。その頃の私は、からかっても反応が薄いのでそんなことをしたんだと思う。

 

 その時、偶然にも後ろではしゃいでいた他の生徒がその子の背中に強くぶつかってしまった。結果、私はその反動で強く押され、窓から転落。しかも、運悪く教室は4階。下手すれば、死ぬことだってある。それに下はコンクリート。

 

 突然のことで何も分からなかった私は、何故か近づいてくる地面を見て、思わず目をつぶった。

 

 いつ地面と当たるのか、どれほど痛いのか、恐かった。恐怖の感情が私の心を埋めた。でも、いつまで経っても私は地面には落ちなかった。さっきまで感じていた落ちる感覚も無くなっていた。恐る恐る目を開く。すると、私は地面から1メートルのところで浮かんでいた。そして、ゆっくりと地面に着地した。教室からそれを見たクラスメートは驚いていた。

 

 これが都会の学校であったら、すぐに話が広がって、今頃私はどうなっていたか、は想像できない。でも、私の施設が田舎の方にあったために、私が通っていた学校も田舎にあり、それほど大きくなかった。その結果、先生達は生徒に口止めをして、この件は終わりになった。

 

 次の日、昨日のことは無かったかの様に皆は接してくれた。私が聞いても、そんなことは知らない、と皆が皆、口を揃えて言った。

 

 まるで私だけが昨日夢を見たみたいな状態だった。いや、違った。まるで私だけが除け者にされている様な感じと言った方が正しかった。それが嫌で怒った私は友達に、何で知らない振りをするの、と言い寄った。だけど、言い寄られた友達は本当に何も知らなかった、いや、私に起こったこと自体を覚えていなかった。

 

 最終的に誰も覚えていなかった。私が窓から落ちた事も浮遊したことも。それはそれで良かった。私も忘れてしまえば、いつも変わらない、いつも通りの毎日に戻る。そう思った。

 

 でも、その後からだ、私にちょっかいを出した生徒に何かしらの不幸が起こる様になった。不幸とは言っても、筆箱をなくす、財布を落とす、程度で小さなものだけど、必ず私にちょっかいを出したその日にそれは起こった。最後には、ちゃんと筆箱も、財布も見つかったのだけど。

 

 私はからかわれることに多少思うこともあったのでいい気味だ、心の中では思っていた。

 

 そんなことがあったせいで、ちょっかいを出してくる生徒はいなくなったけど、クラスメートは少し距離を置く様になった。私のことを気味悪く思ったみたいだった。それまでの友達も少し距離を置く様になった。

 

 それが私の初めての魔法だったのだろう。あの空中浮遊も、小さな不幸も魔法だとすると、説明がつく。魔法があの時使えなかったら、私は今こうしてここにいないかもしれない。

 

 その事実を私は今日初めて知った。事の始まりは今日の午後だった。

 

 学校が夏休みで、その休みの中では意味がない日曜日。私がお昼を食べ終わってのんびりと読書をしていたところ、いきなりマユラさんに呼び出された。

 

ー数時間前ー

 

「近頃は呼び出されることなんて無かったんだけどなぁ」

 

 昔はいたずらをすると、こうやってマユラさんの部屋まで呼び出され、叱られた。十一歳になった今では、私もそれなりに大人しくなり、そんな機会は無くなっていた。

 

 だからだ。何故呼ばれたのか、検討もつかない。……まさか、あれか!

 

 私がこの施設の先輩から引き継いだマンガが見つかったのか!! あれは私達の先輩達が残してくれた大切な皆の宝物なのに。誰かが掃除に入った際に見つかったか。

 

 私はマンガをどうすれば没収されずに済むか、考えながら歩いていたが、いい考えも浮かばずマユラさんの部屋に着いてしまった。

 

 仕方ない、焼却される前に絶対取り戻す。ばれずに。あれは他の子も時々読みに来るのだ。ジェシーなんか、自分の部屋に持って帰るほどだ。皆の楽しみを奪われるわけにはいかない。

 

 決心を固め、軽く二回ノックして部屋に入ると、マユラさんと知らないおばさんがいた。

 

「アリア、あなたにお客さんです」

 

 マユラさんはそう言って私を応接用の椅子に腰掛けているおばさんの向かいに座らせる。マユラさんは私の隣の椅子に座る。

 

 何、これ? 私にお客さん? この施設に入ってから一回も私にお客さんなんか来た事なんて無いのに、と思い、目の前の人を見ると、厳しそうな顔つきをして、何故かローブを着たおばさんがいた。うわぁ、これが変人かぁ。私がそう思っていると、向かいの女性が話しだす。

 

「アリア・サンロさんですね」

「はい、そうですが……」

「私の名前はミネルバ・マクゴナガルと言います。本日はあなたにホグワーツ魔法学校について説明に参りました」

 

 やばい、目の前にすごい変人がいる。

 

「えっと、どうしてでしょうか?」

「あなたには魔法の素質があるのです。ですので、ホグワーツに入る資格があります」

 

 訳がわからない。魔法? ホグワーツ? 何? 

 

「どうやら、突然のことでまだ理解できていない様ですね」

 

 そう言ってマクゴナルガさんは杖とハンカチを取り出した。そして、テーブルにおいたハンカチに杖を向ける。すると、ハンカチがいきなりリスに変わる。え、私が混乱していると、マクゴナルガさんはリスを今度は綺麗な指輪に変えた。

 

「……これが魔法、ですか?」

「そうです。そして、あなたにも魔法が使えます」

「私が、ですか……。ありえないです」

 

 一般市民の私がそんな魔法なんて夢のようなもの、使えるわけ……

 

「今までにあなたの周りで、普通では起こりえないことがいくつかありませんでしたか?」

「えっ……」

「どうやら心当たりがあるようですね」

 

 心当たりはある。あるか、ないか、で言われると、ある。でも、あれが魔法? それでも、魔法と考えると、全て説明が付いた。

 

 マクゴナルドさんは私の反応を見て微笑み、それから杖を振り、書類をたくさん出す。その後は、学校がどうやら、補助金が出るやら、買い物がどうやら、色々な話をした。

 

 マクゴナガル先生―書類に書いてあった名前を見てようやく覚えた―はホグワーツ魔法学校の先生で、しかも副校長。その顔つきや話し方から厳格な人であることが想像できたが、実際そうであった。私がもう少し見てみたいから、とお願いしても結局、最初以外は全く魔法を見せてくれなかった。もうちょっと、見せてくれてもいいのに。

 

 でも、それ以上にマクゴナガル先生は優しかった。杖や教科書を買う場所や方法を知らない私のために、今度一緒に買いに行く約束をしてくれたし、最後には、魔法で作った指輪を私にくれた。

 

 今日もらった指輪をポケットから出し、部屋の明かりに照らしながら眺める。

 

「魔法、か」

 

 さっき呟いた単語をもう一度、口に出す。光にかざした魔法の産物はとても綺麗だった。

 

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