翌日、ポッターは何食わぬ顔で食事をしていた。マルフォイが突っかかっていったが、返り討ちだったようだ。皆ポッターの話題で持ち切りだったので情報はすぐに入ってきた。
昨日のあの後、ポッターに箒の才能があることを知ったマクゴナガル先生は校則をねじ曲げてポッターをクディッチの選手にしたらしい。あのマクゴナガル先生が校則に歯向かうとは思わなかったけど。
マルフォイを初めとした連中は口々に不平を言っているが、私も同じだ。生徒を贔屓にしているのと同じだ。それについてはいつか機会があれば聞いてみよう。
あれから数日経ったある日、今は魔法薬学の授業が終わったところ。皆、課題を出して外に出て行く。スネイプ先生は相変わらず、ポッターいじめを続けている。何が楽しいのか、未だには分からない。
教室から出て彼女を見つける。
「アリア、私は先に帰っておいた方がいい?」
「それはダフネに任せるけど、どうしたい?」
「ラベンダーはともかく彼女とは面識がないから寮に戻ってるね」
「うん、それじゃ、ちょっと話しに行くね」
彼女にばれない様についていくと彼女は図書館に入っていく。私も図書館に入り、少し本を探して彼女が座っている席に向かう。
「隣に座っても構いませんか?」
「はい、いいですよ……って、アリアじゃない」
「あはは、図書館で読書とは精が出るねぇ、ハーマイオニー」
「アリアこそ図書館に何か用事?」
「私はこれを借りに」
持っている本をハーマイオニーに見せる。
「ホグワーツの校則について書いてある本なんてどうしたの?」
流石、表紙と題名だけでどんな本か分かるとは。さては読んだな。
「ちょっと寮の部屋を校則の許す範囲で模様替えしようかなぁ、と思ってね」
「校則の許す範囲ってどこまでするつもりなの?そもそも部屋の……」
私は指を一本立てて口元に持っていく。図書館でそんなに大きな声で話していると、司書さんに怒られるから。
「私が本を借りた後で、外で話さない?」
ハーマイオニーが頷いたことを確認して私は本を借りに行った。図書館を出た後は彼女を連れて少し離れた授業では使わない教室に行く。
「ここなら、誰も来ないからいいかな」
「こんな場所で何の話かしら、アリア」
ハーマイオニーが警戒している。無理も無い。
「こんな場所を選んだ理由は単純で私とハーマイオニーが一緒にいるところを見られたくないんだ」
「どういう意味かしら?」
「……スリザリンとグリフィンドールが不仲なのは知ってる?」
「ええ、知っているわ。けど、私とアリアは……」
「そう、友達だよ。だけど、それが知られると、ハーマイオニーにとっては困ったことになるんじゃない?」
「どうしてかしら?別にあなたと私が友達であることが知られても……」
「周りは私のことをアリアじゃなくてスリザリン生として見るんじゃない?」
「……」
「そうすると、寮内で孤立する可能性があるんだよ、ハーマイオニーが。」
「……っ」
「今のままの関係だと、ハーマイオニーも私も立場が悪くなるからさ、ちょっと距離を置こうかな、と」
「……」
「縁を切ろうって話じゃないから心配しなくていいよ。表向きは疎遠になった感じでいましょうって話で」
「……」
「今のハーマイオニーの気持ち、当ててみよっか?」
「……えっ」
「アリア、あなたは私を裏切るの、かな」
「……分かってくれているなら何で!」
「……」
ここからが本題かな。
「今、ハーマイオニーがグリフィンドール内でどんな状況か、は知ってるんだ。だから、これ以上状況を悪化させないためにもこれは必要だと思う。それにハーマイオニーは何も心配することは無いよ。だって、ハーマイオニーはいい子なんだから」
「……」
「大丈夫、私が保障してあげる。皆もきっかけが掴めてないだけできっとハーマイオニーと友達になりたがっているだろうから。ちょっと力を抜いてみたらいいかもよ。ハーマイオニーは一生懸命すぎるところがあるから」
「……本当に?」
「うん、私が保障するって言ってるんだから、大丈夫。もしも駄目だった時は私が助けてあげるから」
手を彼女の肩に乗せる。
「自分に自信を持って」
「……ありがとう、アリア」
「どういたしまして」
「ところでさっきの部屋の模様替えについてだけど……」
「それはそれ。ハーマイオニーが何と言おうとも校則の穴を見つけ出して大改装するんだから」
私は本を掲げてにっこりと笑う。
「先生に言いつけるわよ」
「先生を納得させる程度の改装にするから大丈夫ですよ〜」
「……むぅ」
これでハーマイオニーは大丈夫かな?
駄目だった場合は私がどうにかするしか無いけど。
十月末。そう、ハロウィンだ。魔法界にもハロウィンはあった。そして、今日の夜はパーティーだ。私が大広間に入ったところでラベンダーに呼び止められた。
「……ラベンダー、こんなに人がいる場所でどうしたの?」
普段のラベンダーならこんな大勢の人がいる場所では話しかけてこない。
「ハーマイオニーがちょっと……」
そう言ってラベンダーは今日の授業でハーマイオニーがロン・ウィーズリーに友達がいないことを指摘され、それからずっとトイレに籠っている、と教えてくれた。
「同室のパーバティって子が見に行ってくれたんだけど……」
「それでも駄目だから私にどうにかしてほしい、と」
「うん、せっかくのパーティーなのに申し訳ないけど……」
「……行くのはいいけどこのままじゃ彼女、私に頼り切りになるような気がして……」
「……それは」
「……私が一緒に行く」
「ふぇ!?」
いつから聞いてたの、ダフネ。それに何で私と行こうとしてるの?
「私も行って、彼女と友達になれば、彼女も少し落ち着いてくれるはずだよ。それに、私が個人的に彼女に興味があるだけ」
「それならいいけど」
「……だったら、私も」
ラベンダーも参加ですか。
「決まったならさっさと行こうよ、まだ、私、パーティーの食事あきらめてないんだから」
「……」
「……」
何、その目。止めて、お願いだから。
「遠いなぁ」
「もうすぐだから」
「ねぇ、この辺り異臭がしない?」
ダフネに言う通り、異臭が漂ってくる。それに何かの足音がする。その音は人のそれよりも大きく感じる。その直後に曲がり角から現れた姿は人よりも大きく、醜い顔で、大きな棍棒を持っていた……。
「……何これ?」
「ト、トロール!?」
「に、逃げないと」
「え、何!?」
ラベンダーとダフネが私の手を取って走り出した。後ろを見ると、さっきの巨人みたいなのが棍棒を振り回しながら追ってくる。
は、速い。このままだと追いつかれる。
「ダフネ、ラベンダー。どこかに隠れよ。そうしないと、ぺちゃんこだよ」
「で、でも、ど、どこに」
「そこの部屋は?」
角を曲がってすぐにラベンダーが指差した部屋に三人で入り、扉を閉める。私も含めて、三人とも息切れしているが、トロールにばれない様に無理矢理息を潜める。近づいて来たトロールは一定の間隔で足音を響かせる。そして、足音が扉の向こう側で聞こえてすぐに、音は小さくなり、やがて、何も聞こえなくなり、私達の息切れの音だけが残る。
「はぁ、はぁ、どうにか逃げ切れた〜」
「一先ず、安心だけど、何でトロールがホグワーツにいるの!」
「まずは、先生に知らせないと!」
私達はゆっくりドアを開け、トロールがいないことを確認し、大広間の方向に向かって走った。
すぐにマクゴナガル先生と出会った。先生は私達を見て、すぐに
「何故、あなた達がこんなところにいるのですか?」
何故って……、それは……。あっ。
「先生、この先にハーマイオニーが!」
その言葉を聞いた途端、先生の顔は険しくなった。
「あなた達はまっすぐ寮に帰りなさい」
「は、はい」
ハーマイオニーのことが心配だったが、先生の有無を言わさぬもの言いに負け、私達は寮に帰っていった。
その日は眠れなかった。
次の日、元気な姿のハーマイオニーを見て、初めて安心した。その日以降、ハーマイオニーにハリー・ポッターとロン・ウィーズリーの二人の友達ができた。そして、それを機に彼女には友達が増えていった。そんな彼女の様子は力がいい感じに抜けたいい顔だった。