私の過ごした7年間   作:潜水ラクダ

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箒の反抗期

 私はスネイプ先生が嫌いだ。

 

 別に先生が私の提出物を評価してくれないのではない。評価は自分で言うのもあれだけど、いい方だ。

 

 別に先生の髪の毛が何日も洗ってない頭に見えるのでもない。先生の頭になんて興味は無いから洗っていようがいまいがどうでもいいけど。

 

 私があの先生を好きになれない理由は授業にある。先生はいつもハリー・ポッターを目の敵にするからだ。いつも先生はポッターのあらを探していたり、わざと、悪い評価をしたりする。他にもポッターとは関係なくてもスリザリンに贔屓になる様なことをする。

 

 先生だって好き嫌いはある、と思う。だけど、あそこまで見せつけられると、いい気持ちにはならない。それにあの笑みが似ているのだ。私のことを穢れた血と呼んでくる生徒達の笑みと。寮長でもあるスネイプ先生でも、そんな笑みを浮かべるのだから、私は好きにはなれなかった。

 

「アリア、明日はクディッチだよ!」

「クディッチ? 何それ?」

 

 ダフネが嬉しそうに話しかけてくる。私は読んでいた本を閉じてルームメイトを見ると、ベッドに座って笑顔で足をばたつかせていたルームメイトの顔が驚愕した顔になる。

 

「マグルの世界にはクディッチはないの?」

「う〜ん、聞いたことないけど……」

「アリア、それは人生の半分を損しているから」

 

 私の約六年間が友達に否定された。これは今月のショックな出来事ランキング二位にランクインだ。現在の一位は夢の中に女装したゴイルが出て来たことだ。あの微笑みを思い出すだけで寒気が止まらない。

 

 ダフネがすごく嬉しそうに私にクディッチについて教えてくれる。普段、宿題や課題で私が面倒を見ている代わりなのか、こういった私が知らない魔法界の知識を教えてくれる時のダフネは一生懸命だし、楽しそう。別に他の時も今と変わらないぐらい楽しそうにしているからいつも通りなんだけど。

 

「えっと、クディッチは箒に乗って行うスポーツで、ボールをゴールポストに入れて得点したり、別のボールでそれを邪魔したりして……」

「うん、うん」

「最終的にスニッチを取ったら試合終了、と」

「その通り、流石、アリア」

 

 何とか理解できました。長い間話していたため、ロウソクの灯りが消える。

 

「ルーモス、光よ」

 

 ダフネの杖先から光が溢れる。

 この一ヶ月程で私もダフネも少しであるが、いくつかの呪文は使える程になった。

 

「ダフネも上手になったよね〜」

「そんなこと……ないよ」

 

 そんなことあるって思ったよね、今。

 

「……」

「うっ……ちょっと思いました」

 

 半目で見つめてあげると、ダフネがすぐに白状した。

 

「でも、スリザリンの一年生の中でもダフネはまあまあのところでしょ」

「うん、それはまちがいない、と思う」

「それなら自信を持ってもいいんじゃない」

「……微妙だよ」

 

 その日はちょっとだけ微妙な空気で就寝となりました。

 

 クディッチは学校をあげての行事みたいなもので、グリフィンドール対スリザリンの試合なのに、レイブンクローとハッフルハフの生徒も見に来ていた。クディッチの得点はそのまま寮の得点にもなるので他の寮の試合も重要だ、とさっき誰かが言っていた。

 

 今日はグリフィンドールとスリザリンの試合だけど、皆の注目は一年生でシーカーに抜擢されたハリー・ポッターらしい。グリフィンドールは秘密兵器として隠しているつもりらしいが、すでに学校中が知っている。試合の一ヶ月前にマクゴナガル先生の推薦で選手になったポッターは先生から箒も買ってもらった、と噂が流れて来た。本来、一年生は箒を持ってはいけないし、クディッチの選手になることもできないのだけど、そこはマクゴナガル先生が押し通したらしい。

 

 先生、何してるんですか。

 

 噂では、先生はすごくスリザリンに対抗心を持っていると聞いたが、ここまででしたか。

 

 私がスリザリン側の席のど真ん中に座るのはちょっと嫌だったので、ダフネには申し訳ないが、スリザリン側の席の端の方に座る。うん、ちゃんと見える。

 

始まる前なのに熱気がすごい。試合開始の時刻が近づくに連れてその熱気が大きくなる。そして、選手が入って来た時に歓声と共に熱気も一番大きくなった。各寮のキャプテンが握手した後に試合が始まった。スリザリンのキャプテンはマーカス・フリントという上級生で、見た目が何と言うかバカっぽい。対して、グリフィンドールのキャプテンのオリバー・ウッドは我らがキャプテンと比べると、かっこ良かった。

 

 試合は実況が入ってくれたのでルールがあまり分かっていない私でも大丈夫だった。見ていてとても面白い。ダフネが人生を損しているのが分かった様な気がする。

 

 途中で誰かが一人に選手を指差した。その方向を見ると、ポッターの箒が乗り手を振り落とそうとしていた。皆がその様子を心配そうに見ていた。スリザリンは除いてだけど。その内、ポッターは何事も無かった様に箒に乗ると、すぐにスニッチを取り、グリフィンドールの勝利という形で試合を終わらせてしまった。

 

 あれは何だったんだろう?

 

 試合が終わってから三日後ぐらいに私とダフネが廊下を歩いていると、ハーマイオニーがこちらに走って来て、とんでもないことを言い出した。

 

「試合中、スネイプが呪いを掛けてハリーを箒から落とそうとしていたの」

 

 近くには誰もいなかったのでその声は私と隣にいたダフネにしか聞こえなかったけど、今ハーマイオニーは明らかに恐ろしいことを言ってのけた。

 

「証拠は、あるの?」

「えっと、あなたは?」

「ダフネ・グリーングラスです」

「私はハーマイオニー・グレンジャーよ」

 

 あ,そう言えばダフネとハーマイオニーはこれが初対面だった。今はそれどころじゃない。

 

「ダフネの言う通り、証拠は何かあるの?」

「試合の間、スネイプがハリーに向かって呪文を唱えていたわ、後、私がスネイプの気をそらしたら、ハリーへの要害も止まったもの」

 

 それはまた。さらにスリザリン生の前で先生を呼び捨てですか。

 

「それで誰かに言ったの?」

「ハグリットに言ったけど、そんなはずはないって話も聞いてくれなかった」

「それで、私達に話してどうするの?」

「アリアの意見を聞きたくて……」

 

 私の意見ねぇ。決定的な証拠も無いし、ここは何とも言えないかなぁ。

 

「ハーマイオニーさん、それは言いがかりじゃないですか」

「ハーマイオニーで良いわ。ダフネ。それで言いがかりってどういう意味?」

「そのままの意味です。スネイプ先生が呪文を唱えていたとしても、それがポッターと関係があるか、は分からないですし」

「でも、スネイプが呪文を唱えることを止めたら、ハリーの箒は元に戻ったわ」

「でも、それでスネイプ先生の仕業と断言できないですよね」

「……ええ」

 

 ダフネが押し込んじゃいましたか。まあ、自分の寮監を悪く言われると、嫌な気持ちになるしね。とか言う私もちょっと嫌な気分だし。嫌いだと言っておいてだけど。

 

「ダフネの言う通りだね」

「アリアまで……」

「ハーマイオニーの言い分は分かるよ。私も普段、あそこまでポッターを恨んでいる先生だったら確かにうっかりやりかねないと思うけど」

 

 そう言って二人を見ると、ダフネも思うところがあるらしい。悩み出した。

 

「そう言われると、ハーマイオニーの言うことが正しいのかな」

 

 ダフネ、意見が変わるの速すぎない?

 

「ダフネも言ったけど、ハーマイオニーの言う証拠はよくて、やっていたかもね、ぐらいで誰も信じてくれないんじゃない?」

「……そうね」

「私の意見としては、犯人ではないかなぁ。スネイプ先生は怪しいけど、自分が疑われる様な場所でそんな呪文を唱えるとは思えないから」

 

 そう言うと、ハーマイオニーはちょっと納得がいかない顔をしたが、最後にニコラス・フラメルって言う人を知らないか、聞いて来た

 

「ニコラス? ダフネ、知ってる?」

「ううん、知らない」

「もしも、どんな人か分かったら教えて」

 

 ハーマイオニーはそう言うと、去っていった。

 

「私、ハーマイオニーはちょっと苦手かも」

「……あはは」

 

 彼女がいなくなってからダフネが呟いた言葉に私は笑うしかなかった。

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