十二月に入った。寒さが身に染みる。今月の末にはクリスマスもある。
スネイプ先生は冬休みに学校に残る生徒は名簿に名前を書き込む様に言った。特に帰る用事もないので私は学校に残ることにする。ダフネは家に帰るそうだ。クリスマスのプレゼントを送りたいからと住所を聞いたら、考え込む様な顔をして送らないで、とお願いされた。
ここまで露骨に拒否されるとは。私は嫌われているの?
「あ、あのね、家だと、お父さんに誰からのプレゼントか尋ねられると困るから」
ダフネが落ち込んだ私の顔を見てあわてて理由を説明してくれた。家族は純血思想の強い家系で私とダフネが友達だとばれるのは危険らしい。ダフネが暗い顔で説明した。家では、ダフネは私と友達であることを隠さないといけないの? それは大変なんじゃ?
「それじゃあ、学校に帰って来た時に何か用意しておくね」
「ありがとう、楽しみにしておくね」
そんな疑問を押さえ込んで違う言葉を掛ける。ダフネは笑って反応した。
クリスマスか。プレゼント何が良いかな。
冬休みになると殆どの生徒は家に帰ってしまったので学校に残っている生徒はあまり残っていない。スリザリンも同じで人が少ない。だから、私はのんびり談話室にいられる。といっても、端っこの方でだけど。
「何で穢れた血がこんなところにいるのかしら?」
「いたら悪い?」
「ええ、いるだけで気分が悪くなるから消えてくれない? できれば、学校から消えてくれれば嬉しいけど」
「……」
のんびりしていたら、後ろから話しかけられた。一瞬誰かと思ったが、振り返らなくても分かる。パーキンソンだ。マルフォイの近くにいる女子だ。未だに私に対して突っかかってくる。そのせいか、声だけで判別できる様になってしまった。
もうそろそろ、あきらめましょうよ。ソウゴフカンショウって言葉もあるんだからさぁ。意味は……調べて。
「何も言い返せないからってだんまり? これだから穢れた血は」
穢れた血しか単語を知らないの? もう面倒くさいなぁ。無視だ、無視。
「あの子は何でこんな根暗な奴と親しくするのかしら?」
「……ダフネは関係ないでしょ」
ダフネのことを言われ、思わず口を出してしまった。パーキンソンは私の反応したのを見て、喋りだす。
「関係あるわよ、あの子もあんたと一緒にいる時点であんたと同類よ。だから……」
「――だから、何?」
私は振り向いて、パーキンソンの目をまっすぐ見る。いきなり振り向かれてパーキンソンも驚いたのだろう。言葉が途切れる。私は彼女が言わなかった言葉の続きを急かす。
「……だから、あんたと同じ様にしてやるんだから」
「その時は、私も黙ってないよ」
パーキンソンを睨みつける。
「ふん、そうやって粋がってなさいよ」
パーキンソンはそう言って談話室から去っていった。私ごときがにらんでも恐くはないか。
さっきのは警告かな。それとも唯の脅し。脅しと思いたいけど、そうもいかないか。身を守る呪文か、簡単な呪いでも覚えないと駄目かなぁ。
休みでも宿題は出る。調べものもために図書館に行く。ついてでだから、ニコラスさんについても調べようかなぁ。
ハーマイオニーにこの前、司書の人に聞けば、とアドバイスしたら、それは無理、知られたくないから、と言われた。後ろめたいことでもあるのかなぁ〜。ちなみにハーマイオニーからのクリスマスプレゼントはミント味のお菓子だった。家が歯医者だからってそんなものを送ってくるとは。私からは十個入りのカエルチョコレートの袋を送っていた。
「護衛呪文、護衛呪文、あった」
図書館で本を探すことにも大分慣れた。借りることにも。司書さんは私が本好きだと勘違いしていた。ある日、聞かれたので否定したら、すごく不機嫌になった。
寮に帰って借りて来た本を読む。ニコラスさんについては全く分かりませんでした。いったいどんな人なんだろう?
冬休みの最後の日。ダフネが帰って来たのであらかじめ準備しておいたプレゼントを渡した。私からのプレゼントはかわいい小物入れにしておいた。鍵付きの奴だ。ダフネは私の好きそうな本を二冊くれた。わぁ、嬉しいな。
ダフネは小物入れを予想以上に喜んでくれた。良かった。
「アリアはいつも本を読んでいるからから、面白そうな本を選んだのだけど気に入ってくれて良かった」
ん、ここにも私のことを本の虫と勘違いしている人を発見した。ダフネさん、ダフネさん。私は別に司書さんみたいに本を愛しているわけではありません。
ダフネからもらった本は二冊。一つは魔法界の童話。この前、マグルと魔法族で読まれている童話が違うことが分かったから、ダフネは知らない私のために選んだ様だ。もう一冊は呪文の本。色んな呪文が書かれている。これも役立ちそう。
新学期が始まって数週間。授業はいつも変わらず、大変なぐらいで大丈夫だ。周りからの反応も変わりなしだ。スリザリン生は私とダフネはそこに居ない様に接することで収まった様だ。もちろん、パーキンソンは除く。
「彼女もあきないなぁ」
「……そうだね」
そんな私達の一日は朝、普通に朝食を取って、授業を受けて、放課後は宿題のために図書室か寮にいるか、もしくは学内の探検、又はハグリットの小屋に行っている。
ハグリットとはマフラーを貸してもらって以来、時々遊びにいく。時々だ。一回マフラーを返しにダフネと行ったが、少し問題があった。
ハグリットが私達のために振る舞ってくれたシチューから謎の生物のかぎ爪が出て来たのだ。運良く、私のお皿から発見されたから良かったけど、もしも、ダフネのお皿からあれが見つかっていたら……、ダフネは今頃、大広間の夕食に出てくるシチューも食べられなくなっていたに違いない。唯でさえ、シチューは私に毒味させてから食べる習慣がついたのだから。
それからハグリットの小屋には行っていない。危険すぎるから。少なくとも、ダフネのトラウマがこのまま無くなるまで。産まれて初めて、時間が解決してくれる、という言葉の意味を理解しました。
私の日課だけど、休日も平日とさほど変わらない。宿題があれば、宿題をするし、ダフネと外で散歩したり、新しい呪文を覚えたり、後は最近チェスで遊ぶ。ダフネが家から持ち帰って来てくれたものだ。よく管理人のフィルチさんの検査を突破できた、と私は感心した。
チェスのルールは知っていたので対戦はできたけど、魔法界のチェスは、過激で取られた駒は取った駒に壊される。まぁ、対戦後、元に戻せるので安心して遊べる。
さらに駒一つ一つに意思があるのでそれぞれが勝手なことを言う。私が初心者と分かるや否や、駒が言う事を聞かず、駒が私にこうしろ、ああしろ、と指示しだした。あげくの果てにキングまで私の命令に反発した。
キングの反乱なんて聞いた事がない。プレイヤー(私)、つまりは神への反逆だ。
ダフネはある程度遊んでいたので駒も言う事を聞いてくれた。ダフネは命令を聞かない烏合の衆を次から次へと破壊し、盤上から消し去った。最後は、私からお願いしてキングも消し去ってもらった。ざまあみろ。神になんか反逆するからだ。来世では言う事を少しは聞いてくれるだろう……。すみません、来世では言う事を聞いて下さい、私の切実なお願いです。