私の過ごした7年間   作:潜水ラクダ

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魔法の効果

 冬休みが終わってから、すでに数ヶ月程経ったときの出来事だった。ある朝、大広間に行くと、グリフィンドールの点数が大きく減らされていたのだ。今まで首位だったグリフィンドールはこの大減点により、最下位に転落。代わりにスリザリンが一位になっていた。スリザリン生はグリフィンドールをあざけり笑っていた。他の生徒は誰が減点を招いたのか、と犯人探しをしている。

 

 私個人としては、スリザリンが一位になって嬉しい気持ちが無いと言ったら嘘だ。けれど、近くで人をバカにした様に笑うスリザリンの生徒を見ると、嬉しい気持ちよりも恥ずかしい気持ちの方が大きかった。

 

 あの減点が誰のせいか、その疑問はすぐに答えが出た。ポッター達だ。夜に寮の外に出ていたところをマクゴナガル先生が発見し、減点したそうだ。マクゴナガル先生も自分の寮の生徒に対して、よくあんな大減点をしたと思う。スネイプ先生でも、それほど減点はしないはず。

 

 減点の犯人、ポッター、ウィーズリー、そして、ハーマイオニーは皆から責められた。せっかくスリザリンに勝っていた点数が一夜で最下位になったのだから。他の寮生もスリザリンが一位になったことが気に食わないらしく、ポッター達に冷たくあたっていた。

 

 あれから、三人は肩身の狭い思いをしている様だ。元々、知名度があるものだから、かなりきついはず。

 私は最初こそ、同じ寮の生徒から色々言われたりはしたが、今や、皆、無視の方向でいるので快適です。ダフネもいるし、他の寮の知り合いもいるから友達は人並みにいるのではないだろうか。

 

 だからこそ、警戒していた。たった一人、私のことを敵視しているあの子を。私がパンジー・パーキンソンと一門着起こしたのはそんな時だった。

 

「痛っ!」

「あら、ごめんなさい、見えなかったわ」

 

 廊下を一人で歩いていたら、正面から歩いて来たパーキンソンがぶつかって来た。明らかにわざとだよ、これ。

 私が怒りの念を込めてにらむと、パーキンソンはにやつきながら

 

「睨むことしかできないの?」

 

 その挑発に乗ってやろうか。今日は少し機嫌が悪いし……。

 

 朝はピープズに突っかかられ追いかけ回されるし、呪文学の授業では暴発したゴイルの魔法のせいで弾丸と化した羽ペンが髪をかすめるし、午後の薬草学では近くで作業していたクラップが植木鉢を落とした際に何故かスプラウト先生から一緒にお叱りをもらうし、あげくの果てにピープズにまたもや出会うし……。

 

 さっきまであのうざい小人から逃げてました、私。

 

 パーキンソンは杖を取り出して私に杖先を向けてきた。

 

「何の真似?」

「ふふっ、アグアメンティ」

「!?」

 

 距離があったからとっさに横に避けれた。杖から出た水は私が直前までいた場所に廊下に小さな水たまりを作る。

 

「いきなり呪文なんてどういうつもり?」

「いい加減目障りなの」

「へぇ、私自身はこれでもかなり自粛してるつもりだけど、これ以上だと何をすればいいのかな?」

「だから、言ってるでしょ、私の前から消えて、ロコモーター・モルティス」

 

 完全に言いがかりじゃない。私ももう我慢ならない。

 

「プロテゴ 護れ」

 

 パーキンソンが放った呪いを防ぐために盾の呪文、いわゆる防御用の呪文を放つ。まだ、習得できてないために、本来ならバリアみたいなものが張られるはずだけど、変な膜みたいなのが出た。それでも、呪文を逸らす程度の役には立ってくれた。

 

「インカーセラス」

 

 パーキンソンが私の呪文に驚いている隙に拘束するための呪文を言う。どこからともなく出てきたロープがパーキンソンを縛り上げた。

 

 ハーマイオニーから教えてもらった呪文は使えるなぁ。もう一つ教えてもらった全身金縛り呪文だっけ。あれは呪文をまだ覚えてないから使わなかったけど。

 

 パーキンソンは縛られても反撃しようとしているが、縛られた時に杖を落としてしまい、それはできなかった。私は彼女の杖を拾って、その杖を彼女に向ける。

 

「残念。私の勝ちかな。」

「チッ」

「感じ悪いなぁ」

 

 さて、今回の戦いでこちらの被害はゼロ、捕虜は一人、と。う〜ん、どうしようか。

 

「捕虜と言えば、尋問だと思うんだけどどう思う?」

「それを私に聞いてどうするの?」

 

 つれないなぁ。

 

「今だったらあなたの希望に沿う形にしてあげようかなぁと」

「は……?」

「希望が無いんだったら私の呪文の実験台になってもらえる? 例えば、呪いの重ねがけの実験はどう。私が読んだ本だとちょっと記憶が無くなるぐらいだから心配ないよ。だから安心して」

 

笑顔のまま軽く脅しをかけてみる。脅しなので実際にやるつもりなんて全く無い。今の言葉も嘘。やったらすごい罰則をもらいそうだし、でも、今のパーキンソンに冷静な思考は無理だから、そんなことに頭が回らないはず。ネビルあたりのうっかり屋さんだと、冷静でも回らないかもしれないけど。

 

「今日は私の機嫌がちょっと悪いんだ〜。だから…………言う通りにしてね」

 

 私は笑顔のままパーキンソンの顔を覗き込み、自分の虫の居所が悪いことを伝え、そして、急に真顔に戻して一言言う。彼女は顔を青白くした。

 

「ただ、今回は私の質問に答えてくれればいいよ」

「質問って何よ?」

 

 いつもと違って覇気のない返事が帰ってきた。私は杖を向けたまま、質問をする。

 

「あなたと「ミス・サンロ、それは何の真似ですか?」!?」

 

 後ろを見ると、マクゴナガル先生がこちらに歩いてきていた。人が通らない廊下だから油断していた。先生は近くまで来て再度何をしているのかと聞いた。

 

「パーキンソンが呪いを掛けてきたので私もやりかえしただけです」

「ですが、その杖はあなたの物ではない様ですが」

「これはパーキンソンの杖ですので」

 

 それを聞いた先生は私とパーキンソンを見比べた後に黙り込んで考え事を始めた。

 

「……」

「……先生?」

 

 

 先生は私の呼びかけではっ、として私に話しかける。

 

「ミス・サンロ。その呪いを解いてミス・パーキンソンの杖を返しなさい」

「……はい、先生」

 

 私は呪いを解いてパーキンソンの杖を返す。パーキンソンは私を睨んでいたが、先生の前なので流石に何かしようとは思っていないはずだ。

 

「ミス・パーキンソン、廊下での魔法は禁止されているはずです。スリザリンは五点減点です」

 

 パーキンソンはそれを聞いて苦虫を噛んだ顔になる。これは自業自得ですよ。心の中で言う。

 

「ミス・サンロは私についてきなさい。話があります」

「えっ」

 

 パーキンソンが先ほどの顔から一変、先生から見えない位置にいることを良いことに私を見ながらニヤニヤしだす。すごくむかつく笑顔だ。私は減点ではないけど、呼ばれるということは何かあるのだろう。処罰でもあるのでろうか。マクゴナガル先生はすぐに歩き出したので私はその場からすぐに離れた。

 

 私が先生に連れてこられたのは先生の部屋だった。先生は私に近くの椅子に座る様に言ってから部屋の奥に行く。少ししてから、カップを持ってきてくれて、紅茶をいれてくれた。今は紅茶しか用意がない、と先生は言った。その優しさが逆に恐い。先生の話が聞きたくなくなった。何だろう? まさか、あの呪文は使っていけない呪文で、私、退学にでもなるの? そうしたら、私、追い出されて……まさか、ないよね。

 

「ミス・サンロ」

「は、はい!」

 

 先生の呼びかけに緊張して返事が大げさになる。そんな私を見て、先生は微笑みながら、そんなに心配する必要はありませんよ、と言ってくれる。よかったぁ。

 

「ミス・パーキンソンはあなたにどんな呪文をかけたのですか?」

「えぇと、最初はアグアメンティで私に水をかけようとして、その後はロコモーター・モルティスで呪いを……」

「そうですか……。確かにそこまでされれば、少し魔法でやり返しても許容範囲内でしょう。ですが、ミス・サンロ、あなたが仕返しで使った呪文は少しやりすぎだと私は思います」

 

 少し厳しい顔つきで先生は私に言う。確かにやりすぎたのかもしれない。でも、ああでもしないと次の呪文が飛んできたに違いないし。

 

「あなたのことは他の先生から真面目でいい生徒だと聞いています。それでも、あなたの年齢の生徒が術を完全に制御できる確証はありません。もしも、あの術でミス・パーキンソンに何かあった場合、あなたはどうするつもりでしたか?」

「……!」

 

 先生に言われて気がついた。そうだ。あの呪文はハーマイオニーに教えてもらって少し練習はしたけど、人に対して使ったのは初めてだ。もし、呪文が上手く発動していなかったら、相手がパーキンソンだったからなんて関係ない。大怪我させたかもしれない。

 

 その考えが浮かんだ瞬間、私の顔から血の気が引いていく感じがした。機嫌が悪かったから……そんな理由で私は人に対して、呪文を放った。私は今まで魔法を甘く見ていたのかもしれない。魔法は何でもできる便利なもの。私の魔法のイメージはこれ。でも、大切なことが抜けていた。魔法は便利であるともに危険なもの。その考えが私には無かった。

 

「すみませんでした。先生、私……」

「分かったようですね」

 

 先生は最初の優しい顔で紅茶を勧めてくれた。少し冷めて飲みやすくなった紅茶は私を落ち着かせてくれた。今日からは魔法の使い方に気をつけよう、と私は心に誓った。

 

 マクゴナガル先生は最後に私にも五点減点を言い渡した。それでこそマクゴナガル先生だ、と思ってしまった。

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