パーティが終わった次の日は汽車に乗って帰るだけだ。私とダフネは汽車に乗り、誰も乗ってないコンパートメントをどうにか探し出して座った。
その後の会話はやっぱり昨日のあの話になる訳で……。
「ダンブルドア先生は自分がグリフィンドール出身だからって贔屓しすぎだと思う」
ダフネの機嫌は治りそうにない。私も同じで昨日からずっともやもやした気分だ。スリザリンでの私の立場だと喜べるのかと思うかもしれないけど、私だってスリザリン生だ。他の寮が優勝杯を取られて……いや、奪われて嬉しいはずがない。悔しいなぁ。もし、私が点数を少しでも稼いでいれば……来年からは少しでもいいから、点数を取るようにしよう。
「アリア、アリアっ!」
「うわっ、な、何、ダフネ」
考え事に耽りすぎたらしい。ダフネが呼んでいる。
「スペースあるから後二人席に座っても大丈夫よね?」
「うん、いいよ」
ダフネが外にいる女生徒二人と話している。どこのコンパートメントも一杯だったのだろう。二人とも私達がスリザリンと分かっている様だけど、それでも構わないみたいだ。そもそも、一つのコンパートメントを二人で占領できる組は一握りの強い子か、はたまた、嫌われ者か、のどちらか、だ。……私達はまだどちらでもなかった様で一安心。
入ってきた二人は顔がそっくりだった。
「二人って双子?」
「ええ、そうよ」
ダフネが私の聞きたい事を聞いてくれた。魔法界にも双子っているんだ……考えてみると、当たり前か、どうしても魔法界とマグルの世界って区別しちゃうなぁ。それにしても。
「双子なのに寮が違う事ってあるんだね」
「……ええ、そうみたい」
双子の一人はグリフィンドールの、もう一人はレイブンクローのローブを来ている。
「私達、入学した時からかなり有名で、知らない子はいないと思っていたのだけど」
「スリザリンって他の寮の情報にはうといから」
「ああ、なるほど。それじゃあ、まずは自己紹介からね。私はパーバティ・パチルで」
「私がパドマ・パチルよ」
なるほど、どちらも最初が『P』だ。これは覚えるのが大変そうだ。それにしても、スリザリンだから、という理由で情報にうとい事に納得されるとは。一体スリザリンは他の寮からどんな印象をもたれているのか?
「私はダフネ・グリーングラス。それでこっちがアリア・サンロ。」
「そこは私に自己紹介させてよ、ダフネ。もう言われちゃったけど、私がアリア・サンロ、スリザリンの一年生」
「えっ? あなたがアリア?」
「私のこと知ってるの?」
「ラベンダーから聞いてるよ。スリザリンには場違いな学生だって」
パーバティが言う。間違ってないけど……間違ってないけど、なんて説明の仕方なの。ダフネは無言で頷かないで。パドマはどういう意味か、分かってなさそうだし。
「アリアは確かにスリザリンって柄じゃないね」
「ダフネ、何を言ってるの? 私だってこれでもスリザリンなんだから」
「例えば?」
「……狡猾なところが」
「狡猾? 何が?」
「……性格」
「どこが?」
「……」
返す言葉もありません。
私達の会話を聞いていた二人は声をあげて笑い出した。
「あははは、聞いてた通り。アリアって面白いね」
「いつもこうなの?」
「うん、いつも」
ラベンダー、何を言ったの? そして、ダフネ、パドマに変な印象を与えないで。私だって、最初ぐらいは好印象でいたいのに。
納得はできないけど、この会話のおかげで二人とはすぐに仲良くなれた。その内に二人は寝てしまった。昨日は夜遅くまで寮でパーティをしていたとのことで。グリフィンドールは分かるけど、何故レイブンクローも……。
静かになったところでダフネが私に話しかけてきた。
「アリア、グリフィンドールが勝った理由って何かな?」
「それは最後の最後に大量に得点が入ったから」
「そこが不思議なの。何で大量に加点されたのか……」
「それは、立ち入り禁止の部屋のことでしょ」
「……何があったのかな?」
何があったのか、それはポッターの話を聞いて皆が思ったこと。
「推測ならできるけど……」
「……聞かせて」
ダフネがすごく私の推理を聞きたそうにしている。逆に話しにくい。
「最初から言うけど……まず、あの日の後に変わった事がいくつかあるの。一つはポッターが怪我をしたこと、次に進入禁止の部屋が解除されたこと、最後に、クィレル先生がいなくなったこと。この三つが全部関係あるとすると、ポッターはあの部屋で怪我をして、それにはクィレル先生が関わっている、と考えられるの」
「それだと、そもそも加点にはならないんじゃ」
「それだけならね。でも、加点はされた。だから、ポッターは加点される様な行いをしたことになる」
「ここであの部屋が重要になる。あの部屋は何のための部屋だったのか?」
「……」
「覚えてる? あの部屋には三頭犬がいて扉を護っていた」
「うん、覚えてるよ。あれを見た時のアリアの顔まではっきりと思い出せるもの」
また、どうでもいい事を覚えていて下さったダフネさん。恥ずかしいから早く忘れて。
「それは置いておいて。問題は扉の奥に何があったのか、ということ」
「……ポッターはその扉の奥の何かをクィレル先生と護った、それが皆の考えだよね」
「半分正解」
何が違うの、とダフネは私を睨んでいる。
「クィレル先生が味方とは限らないよ。もしかしたら、その何かに手出ししたのはクィレル先生でポッターはそれを防いだのかもしれないよ」
「そうだとしたら、相手は先生だよ。勝てるはずが……」
「それをはっきりと断言できる理由はどこにもないけどね。今、クィレル先生が敵か味方か、よりも重要な事は護られていた何か。ポッター達は多分だけど、その正体を知っていた」
「どこで知ったのかな? 手がかりなんて無いと思うけど」
「でも、調べたんじゃない。手がかりを掴んで……。誰にもばれない様に、こそこそと」
「アリア、そう言うと、まるで実際に見たみたいだけど……」
「うん、私達はそれを見てるよ。一回だけスネイプ先生がハリーを箒から落とそうとしたって言いに来た時、ハーマイオニーが私達に何か聞かなかった?」
「そう言えば、人の名前を聞かれた気がする」
「そう、ニコラス・フラメル。恐らく、扉の奥にあったものは彼に関係するもの」
私はポケットに入っていた一枚のカードをダフネに渡す。
「これ、カエルチョコのカード?」
「うん、そのカードの最後の説明を読んでみて」
「ダンブルドアのカードだよね、え〜と、あっ!」
ダフネはうっかり大きな声を出してしまい、あわてて、隣で寝ているパーバティの様子を確認する。起きてない様だ。私の隣で寝ていたパドマも同じ。
「それは偶然、見つけたものだけど、これがダンブルドアとフラメルには関係がある事を示しているの。まぁ、これだけだと決めつけられないけど」
「……これが真実だったら、あの加点も仕方ない、かぁ」
ダフネがはぁとため息をつく。
「すごいね、アリアは。ここまで考えつくなんて」
「ううん、私が持ってる情報から考えただけで実際に合っているかは分からないし、分からないこともいっぱいあるよ。護っていたものは何か、とか、誰がそれを狙ったのか」
「今、分かる事は、ポッター達は四階の部屋で護っていた何かを護って、それにはクィレル先生が関わっている、これでいい?」
「うん、そう」
私達に分かる事なんて本の一部だけ、当事者でない限り。
その後、もうすぐ駅に着くという知らせを聞いた私達は寝ていた二人を起こして、普段着に着替えて汽車を降りた。ホームは一年前と同じだけど、一年前とは違う感じがした。
私はダフネと新しく知り合いになったパーバティとパチルと分かれて、壁を抜けて、外にいるだろう施設の人に会いに行った。
長い長い夏休み。来学期が早くも楽しみだなぁ。