私の過ごした7年間   作:潜水ラクダ

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 今日は待ちに待ったマクゴナガル先生とのお出かけの日。よし、おしゃれをするぞ〜、と息込んだ私はふと、重要なことに気づく。魔法の世界では、どんなおしゃれが普通なのか、分からない。

 

 マクゴナガル先生がローブを着ていたことを考えると、あれが正装、なのか? ん、待てよ。それじゃあ、スーツは正装じゃないの?

 

 それから、約三十分間悩むことになるが、最終的にいつも学校に行く際に着る服にしておいた。あちらの流行を予測なんてできるはずが無い、変に着飾って恥は掻きたくない。

 

 私は今日付き添いをしてくれるマクゴナガル先生を施設の入り口で待つ。先生は待ち合わせの時間ぴったりに来た。流石です、先生。

 

 先生は普通にタクシーに乗って現れた。魔法使いと言うからには瞬間移動とか、箒とか、魔法を使っての移動手段で来るのでは、と空想していた私は少し夢が壊された気分になった。

 

「こんにちは、ミス・サンロ」

「こんにちは、マクゴナガル先生」

 

 このまま、買い物に出発〜もできるが、まずは、施設のボスであるマユラさんに一声掛けていかなければならない。

 

 私はすでに外出許可をもらっているので、マユラさんに会う必要はない。マクゴナガル先生のみマユラさんのいる部屋に入り、私は部屋の前で待つことにした。部屋の中からマクゴナガル先生がマユラさんに、今日一日、ミス・サンロをお預かりします、と言うのが聞こえてきた。

 

 先生が部屋から出て来た。前回と同じ様にローブを着てやってきたマクゴナガル先生。買い物に行く、と言ってもどうやって行くつもりなのだろう。そのままの服で電車やバスに乗るのはご遠慮願いたい。誰が見ても変人です。私の世間体は変人ではなく、一般人です。

 そんな私の思いを察したのか、マクゴナガル先生は言う。

 

「心配する必要はありませんよ、今回は姿現わし、という魔法で移動します」

「ええと、それでは私はどうすれば?」

 

 何故、タクシーではなく最初からそれで来ないの、と思った私の頭は正しいと信じたい。先生の考えが分からない。それにいきなり魔法で移動と言われても、私は魔法が使えない。どうすればいいの?

 

 私が先生に尋ねると、先生は手を繋いでいるだけでいい、と私の手を握る。そして、それでは行きますよ、と一声掛けた瞬間、私は何かに引っ張られる感覚に襲われ、その次の瞬間には——活気に溢れた街がそこにはあった。

 

「先生、ここが」

「ええ、ダイアゴン横丁です、ミス・サンロ」

 

 すごい。もうそれしか感想がない。目の前に広がる町並みはどこを見ても見たことが無いものばかりで溢れている。それに人も多い。こんな場所があったんだぁ。街の様子に感動していると、通行人のおじさんに、ダイアゴン横丁にようこそ、と笑顔で言われた。恥ずかしい。顔が暑い。今、私の顔は少し赤くなっているはず。

 

「行きましょうか、ミス・サンロ」

「はい、先生」

 

 先生と一緒に歩き出す。お金のことは心配しなくてもいい、とのことで。先生の奢りですか、やった。と思ったら補助金から出るんだって。お金はすでに先生がグリンゴッツって名前の銀行から出してくれていた。グリンゴッツ? 人名か何か?

 

「先生、補助金はどれくらいあるんですか?」

「そうですね、それにはまず、魔法界の通貨について説明しなくてはなりませんね」

 

 お金が出る。だったら金額は、と心配になる。まさか足りないことは無いと信じてるけど。先生と目的のお店に着くまで、魔法界の通貨や簡単な常識について説明してもらう。

 

「えっと、通貨の単為は大きい方からガリオン、シックル、クヌートで、1ガリオンが17シックルで、1シックルが、え〜と、」

「29クヌートです」

「あっ、そうだった。先生、ありがとうございます」

「いえ、構いませんよ」

 

 全く覚えられる気がしないし、通貨の計算もできそうにない。算数は大切な科目だったんですね。今日から頑張ります。ホグワーツに算数があるかわからないけど。

 

 ついでに補助金の額も教えてもらったけど、その金額が多いのか、少ないのか、よく分からなかった。

 

 こうやって、誰かと買い物をするのは本当に久しぶりだ。お母さんと一緒に近くのお店で買い物をしたのが、最後だし、施設は規則が厳しいのでそんな機会は無かった。だから、今、とても楽しい。こうやって歩くことも、先生とお話することも。

 

「先生、先生」

「何ですか?」

「お店まで後どれくらいですか?」

「この通りをもう少し進んだところですよ。ミス・サンロ」

「そこで何を買うんですか?」

「あなたが学校で着るローブや服を買います」

 

 やっぱりローブは魔法界では正装の様だ。ここに来てから、ずっと、すれ違う人やお店の人の服装を観察していたが、ローブの人が多い。とは言っても、ローブを着ていない人は私が普段学校やテレビで見る服装と変わらないので今の私の服装は問題無し、浮いていない。

 

 あっ、着いたみたいだ。「ここがそうです」、と言いながらお店に入っていく先生の後から、私もお店に入る。

 

 中で色々採寸された私は少し疲れ気味にならながらも、必要な服を買い、次は本屋さんで教科書を買う。教科書がいっぱいだ〜。えっ、先生、もしかして持ってくれます……違うんですか。残念。

 

 その後も、大鍋や筆記用具などの用品を買っていく。鉛筆は使わず、羽ペンが魔法界の筆記用具だそうだ。書くのが大変そう。

 

 ペット屋はスルーで。カエルと猫とフクロウの中から選べるそうだけど、どんなペットがいいのか、よく分からない。先生が手紙の運搬に便利なフクロウが良い、と教えてくれたけど、手紙を送る機会が今の私にはない。それにペットは高そうだし、餌代もかかりそうなのでそれほど飼いたい、とは思えなかった。私、お金は貯金する派なので、必要になったらまた考えよう。

 そして、最後に杖。そう、杖。ついに杖。それはもう私のテンションは上がる。先生みたいに杖を振るだけであんなことやこんなことが……。

 調子に乗って、先生よりも先にお店に行こうとした私がバカでした。

 

「これは……迷子だ」

 

 うん、迷子。ここがどこなのか、全く分からない。何故一本道で迷子になるの、私。はぁ……。

 

 周りを見渡しても先生の姿は無い。私は近くのお店の壁際まで移動し、荷物を横に置いてから先生の姿を探しながら歩いている人を見る。迷子になったら、動くなって聞いた。誰から聞いたか、は覚えてない。

 

 色んな人が歩いているが、中には私と同じ様に学用品を買いに来ている人もいた。皆、親子だった。私と先生もさっき一緒に歩いていた時は親子の様に見えていたのかな? う〜ん、先生と私だと、親子より祖母と孫かな。

 

「あの、誰か待っているんですか?」

「えっ……、え〜と、そんなところです」

 

 突然の呼びかけに対し、びっくりした私は反射的に返事をしてしまった。声がした方を見ると、私と同じぐらいの年頃の女の子がいた。可愛らしい顔立ちをしている。正直に迷子と言うのは恥ずかしいので、さっきの言葉は訂正せず、人を待っていることにする。

 

「あの、あなたも今度ホグワーツに入学するの?」

 

 目の前の女の子は教科書がいっぱい入った袋を見つつ、私に聞いてくる。正解です。周りから見たら分かっちゃうのかな。それと今、あなた“も“って。

 

「あなた“も”、ってことは私と同じ」

「うん、私も今年1年生なの」

 

 こんなところで未来の同級生に会えるとはラッキー。

 

「私、アリア。アリア・サンロって言うの」

「私はハーマイオニー・グレンジャーよ。」

 

 名前を教え合ったところで彼女、ハーマイオニーの両親が着たので軽く挨拶して別れる。彼女はもう必要な物を買ったので帰るらしい。ハーマイオニーと別れた後すぐに私も先生を見つけることができた。怒られたけど。

 

 先生のお叱りを受けた後で杖を買いに行く。

 

 着いたお店はすごく古いお店に見えたが、入ってみると、本当に古い。私達が入ると、先に先客がいた。私と同じぐらいの年の女の子で、私が入った時には杖の代金を払うところだったのでその子はすぐにお店を出て行った。よし、顔は覚えた。多分、私と同じ一年生だよね。ホグワーツで会えるかな。

 

 先生がお店にいたおじいさんに少し話しをすると、おじいさんは私の利き腕を調べて、すぐに奥に行って杖が入った箱を持ってくる。は、早い。

 

「樫の木にヒッポグリフの毛、18cm、しなりやすい」

 

 はい? 何を言ってるの。とりあえず、おじいさんが私に杖を持たせる。これが私の杖? こんなに簡単に決まるの? しかし、次の瞬間にはおじいさんに杖をひったくられた。そして、また、呪文を唱えて、私に杖を渡す。今度は「振ってみてくれ」、と言うので、軽く振る。すると、いきなり棚の一部が崩れた。杖がたくさん床に落ちる。えっ、今の私が? 落ちた杖、後で弁償とか無いよね? そんな私の不安をよそにおじいさんはまた、杖をひったくる。床の杖のことなんて気にせず、おじいさんは杖を次々と持ってくる。

 

「これは難しい子だ」

 

 すいません。難しい子で。おじいさんの呪文にも慣れてきた。どうもこの呪文は杖のことを言っているようだ。呪文ではなかった。

 

 それにしても、杖を買うのって大変だなぁ。その後、おじいさんの呪文もどき、手に取る、奪われる、というやり取りを十数回行って、ようやくおじいさんは納得できる杖を見つけたようで私はそれを買う事になった。途中からおじいさんの呪文もどきは聞いてなかったので自分の杖がどんな杖なのか、全く知らない。

 

 杖を買って、私の買い物は終わりなので、その後はすぐに先生の瞬間移動で施設に帰った。

 

 そして、再びマユラさんの部屋に行った。今度は私も一緒で。部屋で先生から少し注意事項を聞いたり、これからのことについて再確認を行ったりした。

 

 学校以外の場所で魔法は使っちゃいけないんだって。危ないから。確かに杖を振るだけで棚が崩れるのだから、当たり前だ。

 

 それと、ホグワーツには列車で行くため、九月一日に駅に行かないといけない、ことは分かったけど、九と四分の三番線って何ですか、先生。「行けば分かります」、ってどういうことですか〜。はぁ、当日遅れない様に早めに行きますか。

 

 その後は、マユラさんと先生が謎の世間話を始めた。私はその話についていけませんでした。

 

 先生とマユラさんの永遠に続くかと思われたお話は私が睡魔と戦いを始めだしたところで終わった。危なかった。後、十分お話が続いていたら、私は睡魔との戦闘に負けて先生とマユラさんの前で眠っていた。先生はともかく、マユラさんの前でそんなことをしようものなら、かなり怒られていたに違いない。

 

 話が終わって帰る先生を私はお見送りした。先生は何故か、施設の電話を借りて、タクシーを呼び、タクシーで帰った。

 

 何で、そこは魔法を使わないのだろうか?




魔法界の通貨の単位はあれで良かったはず
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