今日は楽しい登校日、と言う訳で私は今駅にいる。一応駅までは施設の人に送ってもらったけど、その人は用事があるのですぐに帰ってしまった。
忘れ物は無いはず。杖も教科書も入れたし、日用品も入れた。後、マクゴナガル先生がくれた指輪も入れた。お守りみたいな感じで持っていくことにした。
一人で初めて来た駅に放り出されるのは不安だけど、どうにかなると自分に言い聞かせる。
「まずは、九と四分の三番線を探そう」
自分がやるべきことを言い聞かせて駅のホームを歩く。でも……。
「見つからない……」
九番線と十番線しかないじゃないですか。よし、落ち着こう。これはきっと、テストだ。九と四分の三番線を探し出せない生徒はホグワーツに入学する資格はない、と言いたいに違いない。ん? それだと、私が買い物した意味がない? うん、変なこと考えるのは止めよう。落ち着いて考えるんだ、私。九と四分の三番線…………駄目だ。分からない。頭をかかえたい気分な私です。
そこでふと、視線を感じたので回りを見てみると、いろんな人が私を見ている。こんなところで一人、大荷物を持っている女の子。怪しい。怪しすぎる。やばい、早く九と四分の三番線を見つけるんだ。時間をかけすぎると、駅員さんに不審な少女に認定されてしまう。
九と四分の三番線、九と四分の三番線、四分の三番線、四分の三……。三と四……。九番線と十番線の間には柱が三本ある。う〜ん、もしかすると、あの柱のどれかが九と四分の三番線なのかな。
他にそれらしい場所も思いつかないので三本の内の一本に近づいてみる。柱のそばに着ても何も起こらない。何か起こるのでは、と思っていた私は少し落胆する。
「どうしようかなぁ」
駅員さんに聞いてみようかとも思ったけど、知らない様な気がするし、時間はまだまだあるから他にそれっぽい人が来るまで待っていようと決める。少し疲れたので柱に手で触れようとする。しかし、柱は私の手を受け止めてくれず、私の手は柱の中に入ってしまった。
「えっ」
余りの驚きに普段より大きな声をあげてしまう。すぐに手を壁から引っ込め、誰かに見られていなかったか、ときょろきょろと周りを見渡す。
よかった、周りには人はいない。少し安心したので今度は手を思いきって柱に入れてみる。やっぱり、手は柱の中に入る。ここが目的の九と四分の三番線みたいだ。念のため、手以外も柱の中に入れるのか確かめる。恐る恐る柱に足を近づける。足も手と同じで柱の中に入った。今度は思い切って柱の向こうに行ってみることにした。恐いけど、行ってみるしかない、と決心して柱の中に目を瞑って入る。無事に入れたのだろうか、と、目を開けると、そこには別の景色が広がっていた。さっきまでいたホームとは全く違う。さらに目の前には汽車が停車している。ここで正解の様だ。
「すごい」
数日前にダイアゴン横丁で最初に浮かんだ感想と同じ感想を口に出す。それから数分周りの景色や汽車を眺めていた私は荷物を柱の向こう側に置いてきたことを思い出してあわてて取りに戻った。
荷物を持ってくるために一回戻り、荷物を持って戻ってきた私はホームのベンチに座る。送ってくれた人の予定もあって、かなり早く到着していたのでホームにいる人はほとんどいない。どうしようかな。知り合いもいない、というより、ハーマイオニーはまだ来てないのが、正しいかな。
結局、荷物を預けて汽車に乗る。コンパートメントは一部屋に4人程乗れる様になっていて、私はまだ埋まっていないコンパートメントの中から適当に席を選ぶ。席を決めて座っても、特にやることがない。困った。暇つぶし様の物は杖だけだ。ううん、暇つぶしにもならない。暇だ……。昨日、ちょっと眠れなかった私は眠ることにした。少し眠たいのも確かなので。夜眠れなくなってもいい、と思いながらうとうとしていると、
「アリア、久しぶり」
「ん?」
誰かに呼ばれる声がした。後、一分もあれば、夢の世界に旅立てたのに。私がコンパートメントのドアを見ると、ハーマイオニーと知らない男の子が立っている。
「暇つぶし発見」
「暇、つぶし?」
私の言葉で機嫌を悪くしてしまったハーマイオニーを宥めるのは大変だった。はい、とても反省しています。とても。
そう言えば、ハーマイオニーと一緒に入ってきた少年の名前を聞いてなかった。
「ええと、ハーマイオニー。そこの男の子はハーマイオニーの知り合い?」
「ええ、さっきそこで知り合いになったの。ネビルよ」
「ネビル・ロングボトムだよ、よ、よろしく」
ネビルは少しおどおどしながら私に自己紹介してくれた。私も自己紹介しておく。
「私はアリア、アリア・サンロ。気軽にアリアって呼んで。ところでネビルが持っているそのカエルはペット?」
「うん、僕のペットのトレバーって言うんだ、アリアは、ペットを持ってないの?」
「うん、私は持ってないの。私、どういうペットが多いのか分からないから買うのは止めたの」
そんなこんなで私達がやりとりをしている内に汽車も出発した。最初の一時間は三人でお喋りして時間を潰していたが、気がついたら、トレバーがいなくなっていた。ネビルが今にも泣き出しそうだ。ハーマイオニーが一緒に探そう、と言っている。私も友達のネビルのために探す、としますか。
「と、言っても、女の子がカエルを探すって何か……嫌だな」
カエル自体を触ることに抵抗は無いが、何か、ね。でも、ネビルのためにも探そう。私達は一人一人別々に探すことにした。私は廊下を歩きながらカエルを探す。ずっと歩いていると、端の車両まで来たけど、見つかったのは可愛いペンダントを一つだけだった。他の車両を歩いている時に落ちているのを偶然見つけたものだ。どこか古さを感じる小さいペンダントだけど、落とした人には大切なものかもしれない。後で誰かに渡しておこう。
「それにしてもあんなに大きいカエルがどこに行ったのかなぁ」
ハーマイオニーとネビルが見つけているかもしれないから来た道を戻る。すると、向こうから女の子が一人歩いてくる。あ、この前、杖を買う時にいた子だ。その子は何かを探す様な仕草をしながら歩いてくる。
「あの、何か探し物ですか?」
「はい、小さなペンダントを」
「もしかして、これですか?」
私がポケットから先ほど拾ったペンダントを出す。それです、と女の子は言って私からペンダントを受け取る。
「ありがとうございます」
「どういたしまして、大切なもの、なんですね」
「はい、母がくれたものなんです」
母、か。
「あの、どこかで会いませんでした?」
私は忘れ去られていた。ちょっと悲しいです。私が杖のお店で会ったことを言うと、あの時の、と言ってくれたので思い出してくれたのだろう。簡単にお互いの自己紹介をして別れた。
ダフネ・グリーングラス。彼女の名前。私は新しく知り合いができたことに対する喜びでトレバーのことをすっかり忘れてしまい、後でハーマイオニーに怒られた。すみません。とても猛省しています。とても。
結局、トレバーはハーマイオニーが見つけた。それと、ハーマイオニーがハリー・ポッターに会った、と自慢してきた。誰?
私が知らない、と分かると、ハーマイオニーに長時間の説明をいただいた。ありがとうございます、ミス・ハーマイオニー。トテモ、ベンキョウニナリマシタ。
「つまり、そのハリー・ポッターが闇の魔法使い『レイノ・アノヒト』を倒したってことでいいんだね」
「何か、勘違いしているような……」
ネビルが私の発言に何か違和感があるらしい。
「そんなはずはないよ、ネビル。私、ちゃんとハーマイオニーの話聞いてたよ。『レイノ・アノヒト』がどれだけ恐ろしいか、ってことも、ハリー・ポッターがどれだけ偉大か、ってことも理解してるから。もう、ハーマイオニーの長い講義から解放させて」
私は必死で訴える。
「アリア、ハーマイオニーがいるんだから、少しは」
「アリア……」
ハーマイオニーが少し震え声で話し掛けてくる。顔をよく見ると、少し目に涙がたまっている。私の言葉で少し傷ついたみたいだ。言い過ぎた、謝ろう。ネビルはハーマイオニーが単に怒っている、と思っている様だ。ネビル、あなたの考え方も分かるけど……。いいや、まずはハーマイオニーだ。
「ごめん、言い過ぎた。私、今日はずっと、色んな事に驚いてばっかりだから、もう頭が混乱してて。それに私、昔から物覚えが悪いから」
「……」
「でも、ありがとう。色々教えてくれて、これでちょっとはみんなの話に着いて行けるよ」
「そう……、良かった。私の方こそごめんなさい。熱くなっちゃって」
「それじゃあ、おあいこってことで」
「ええ」
一先ず、どうにかなった。さっきの言葉は半分本当で、半分は嘘。物覚えは結構いい方です。けれど、魔法界のお菓子や中の人が動き回る写真など、今まで魔法に触れてこなかった私は驚きの連続でもう何が何やら分からなくなってます。疲れた。早く寝たい。
その後は、私が一般人の出身で家族に魔法使いはいない、って話で盛り上がった。両親がいないことは上手く伏せておいた。しんみりするのが分かりきっているので。ハーマイオニーの親は一般人らしい。だから、学校に行く前に色々調べたらしい。えらいなぁ、ハーマイオニーは。私は何も調べてないのに。
そう言えば、魔法界では、魔法使いではない人のことをマグル、と言う、とハーマイオニーに教えてもらった。また、一つ賢くなりました、私。よし、今度からマグル出身と言おう。両親が魔法界出身とは聞いてないし。ネビルは逆に生粋の魔法使いの家計なんだって。でも、ハーマイオニーの話に、時々知らなかった、と返すのを見ていると、本当にそうか、と疑いたくなった。
学校にもうそろそろ着く、というお知らせが来たので、ローブに着替えた。ホグワーツには4つの寮があって、みんなどこかの寮に入る。私、どこの寮かなぁ。