ダフネと友達になってから毎日が楽しい。一緒にご飯食べたり、一緒に会話したり、一緒にマクゴナガル先生に怒られたり。
最後のは授業中に会話してたら先生に見つかってしまいました。ごめんなさい。浮かれすぎだったことは認めます。でも、それはダフネも同じだった様で授業中でもよく話しかけてきた。変身学でおしゃべりは無理でも他の授業ではそれも可能なのでダフネは私に話しかけてくる。
内容は授業内容についてのことが多いけど。他にも四階にある立ち入り禁止の部屋にうっかり入って、中に何故かいた三頭犬に襲われかけた。私は焦っていたので気付かなかったけど、ダフネは犬が何かの扉を護っているのを見たらしい。これは二人だけの秘密にした。入ったことがばれるとまずいから。
そんな感じで仲良くしているのだからマルフォイ達にもダフネと私が仲良くしていることは知られている。今のところは、ダフネを私と同じ様に無視することにしたみたいでちょっかいはあまり掛けてこない。これ以上、酷くならない様に当分大人しくしていようと思う。
「アリア、アリア」
「どうしたの。ダフネ」
「私の話ちゃんと聞いてた?」
ダフネが半目で私を眺めてくる。
「ごめん、考え事してた。何?」
「もう、いいよ。アリアはよく考え事しているものね」
「うぅ、気をつけます」
「浮遊呪文がなかなか上手くいかないんだけど」
「呪文はちゃんと発音できてる?」
「うん、さっきアリアが訂正してくれたから大丈夫だと思うけれど。ねえ、アリア。もう一回やってくれない?」
「いいよ。……それじゃぁ、ウィンガーディアム・レビオーサ」
私が呪文を唱えると、目の前に置いてある羽が少し浮かび上がる。ダフネはそれを見ながら
「アリアはすごいよね。このクラスで恐らく一番に成功しているし、さらに完璧に制御もできているし」
「仕方ないじゃん、これぐらいしかやることが無かったんだもん」
私が一人でいる間、ずっと図書館や探検をするのには無理がある。実際、ダフネが部屋にいない時は部屋にずっといることも多かった。
問題は部屋ではやれることが少ないことだった。暇を持て余した私は仕方なく、呪文の練習でもと思い、呪文学の教科書に書かれてある呪文の中で面白そうな呪文を練習していたのだ。結果が今、この少し浮かんでいる羽だ。今は呪文学の授業中で浮遊術の練習中。私はもう浮遊術はできるのでのんびりとダフネの先生役をしている最中だ。
そうしているとフリットウィック先生が近づいてきたので羽を浮かすのを止め、浮かそうと必死になっている様に見せる。先生が離れていったのを確認してから、ダフネが再び話しかけてくる。
「目立たないことも大変だね」
「そうだね」
フリットウィック先生は私が浮遊術に成功していることを知らない。知らせてもいいけど、そうすると、先生は私に得点をくれるだろう。得た得点はそのまま寮の得点となり、学期末に最も得点の高い寮は最優秀寮とされる。
普通はこういう場面では得点を取りにいくべきだが、私の場合、少し事情が変わる。ここで私が目立とう物ならマルフォイ達の目にはよく写らない。恐らく、生意気だ、みたいな下手な理由で何かまた面倒なことになりそうなので、できない振りをしているのだ。実際に浮かせる場合も周りからは分からない様に低い位置に調節している。
「ウィンガーディアム・レビオーサ」
ダフネが羽に杖を向けながら呪文を唱える。羽は少しだけ浮いたが、すぐに落ちた。
「やっぱり、アリアみたいにはできないか」
「いや、十分すごいだと思うよ。周りはまだ羽が少し動くくらいだから」
そう言ったもののダフネは納得していない様で再度呪文を唱えていた。
授業が終わった後も、私はダフネに付き合って練習することになってしまった。簡単な呪文なので寮の部屋で練習することにして歩いていると、授業が終わったグリフィンドール生とすれ違った。知り合いに簡単に会釈をしておく。
ダフネから聞いたところ、グリフィンドールとスリザリンは仲が悪く、長い間いがみ合っている。それなのに私がグリフィンドール生と仲良くしていることは少し危険らしい。そういったことに詳しそうなラベンダーに確かめたところ、肯定した。私はラベンダーにこれからどうしようか、と聞いてこれからはたまに会って話すことにした。話すことは少なくなっても友達は友達だから、それでもいいと思う。
寮に戻って呪文の練習をする。昨日は宿題を一緒にやったかな。最近は寒くなってきたから外にはあまり出なくなってきた。けれど、談話室には居づらいから部屋でこうやって何かをしている方が多い。することは宿題と呪文の練習。ダフネは意外と勉強が苦手で苦労が絶えない。この前なんか私が止めなかったら、魔法薬学で大爆発を起こすところだった。散々ネビルの爆発を遠くから観察していたので分かる。あれは危なかった。
今日の授業でできなかった浮遊術を練習しているダフネだが、なかなか浮きそうにない。羽は動いてるんだけどなぁ。
私は隣でのんびり呪文学の本を読んでいる。何か一年生で使えて便利な呪文を探している。あ、この周りを明るくする呪文使えそう。ルーモス、光よ。メモ。メモ。後は、盾の呪文、ああ、無理そう。次々。
「アリア」
「な〜に?」
ダフネが目線を羽に向けたまま、口を開く。
「アリアの知り合いで、グリフィンドールの……」
「ハーマイオニー?」
「そう、その子。あの後、どう?」
「……苦労してるみたい」
学校が始まって一ヶ月以上経っているが、ハーマイオニーには親しい友達が寮内にいない様なのだ。最近まで同じだった私が言うのもおかしいが。
自分も一人だった時は気づかなかったけれど、ダフネが友達になってくれて、心に余裕ができたのかな。周りに目が向いた。そして、ハーマイオニーが孤立してしまっていることに気づいてしまった。これは、と思ってどうにかしよう、と動こうとしたら、ダフネから待った、がかかった。そこで、スリザリンとグリフィンドールの間の溝を知った。
だから、私が表立ってハーマイオニーの手助けをすると、立場上よろしくないとのことで。それはラベンダーにも確認済み。ついでにハーマイオニーの孤立の理由も聞いたが、どうも彼女はすぐに自分の知識を会話の内容にしてしまうらしい。みんなが話題についていけないのだ。それは友達もなかなかできないわ。とりあえず、ラベンダーも悪い子ではないことは分かっているが、きっかけがない、と言っていた。
「私は彼女のフォローしかできないみたいだし、当面様子見。それよりもうちの寮、他の寮と仲が悪すぎるでしょ。特にグリフィンドールと……。そう言えば、ダフネはグリフィンドールのこと、嫌いじゃないの?」
ダフネはどうなんだろう?
「私? 私はグリフィンドールのこと、嫌いとは思ったこと無いけれど……あっ」
ダフネはおかしな点に気がついた様だ。
「それじゃあ、何でスリザリンとグリフィンドール仲が悪いのか、多分、寮内の雰囲気じゃない」
「……雰囲気?」
「みんなが嫌っているから嫌おう、って感覚の人が半分ぐらいじゃない。最初から嫌っている子もいるだろうけど」
そう、マルフォイ達のような子達だ。
「初めはただの思い込みがその内、本当になるんじゃない。それが、また、他の子に」
「グリフィンドールを嫌おう、と考えさせる……」
「予想の域を出ない推測だけどね。スリザリンではそうだ、としても、グリフィンドールの生徒は本当に嫌ってるんだろうけど」
スリザリンは大変だね、と言うと、そうだね、とダフネも心から頷いていた。そんな話をしている間にダフネはちゃんと浮遊術ができていた。上手くできなかった理由は力みすぎだった様だ。