機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
パイロットロッカーへ入ったキラは思わぬ顔を見つけた。フレイだ。志願したとは聞いていたが、何故?
その間にもフレイがキラに抱きついてきた。
「フレイ、どうして?」
「貴方、行っちゃったと思ったから。私…みんな残って戦ってるのに、最初に残るって言った私が戦ってるのに。」
まさか、ストライクに!?よく見れば、開いているロッカーにはキラのパイロットスーツが入っていた。
「MSなんて無理だよ!君みたいな女の子には!」
フレイの目が大きく開かれた。
「ストライクには僕が乗るよ。フレイの分まで、僕が戦うから。…だから、フレイの想いの分もさ。」
父親を殺されて、一番逃げ出したいはずだったのに。彼女は自分からMSに乗ろうとした。
「もう、逃げない。決めたんだ、しょうがないよ。この戦争を終わらせなきゃ、僕達だってさ。」
フレイがキラに近づいてきた。
「なら、私の思いが貴方を守るわ。」
そのままフレイがキラに唇を重ねてきた。今まで、手の届かない相手だと思っていた少女の唇が自分に…キラは、その感触に身を委ねた。
戦闘は第八艦隊が圧倒的に不利であった。メビウス主体の第八艦隊に対してクルーゼ隊はジンに加え、五機のXナンバーがいる。
「くっ、イージスにバスター、ブリッツ、デュエル、シューターか…」
歯を噛みしめるハルバートンに副官のホフマンが冷笑的にいった。
「確かに見事なMSですな。だが敵に回しては厄介なだけだ。あの五機、なんとしても落とせよ!」
デュエルはメビウスの群れをイーゲルシュテルンで薙ぎ払い、ネルソン級を横からレールガン・シヴァとライフルを乱射し、一気に沈めた。
バスターがライフルを連結させて対装甲散弾砲として使用し、ドレイク級と共に数機のメビウスを宇宙の塵に変えた。
イージスは迎撃の対空砲を鮮やかなまでに避け、護衛艦の機関部に損傷を与えて離脱させた。
ブリッツもミラージュコロイドで消えたと思った頃には敵艦のブリッジの目の前に現れ、左腕のアンカー、グレイプニールでブリッジを潰した。
シューターは肩に内蔵されたビームサーベルで護衛艦のブリッジを潰し、リニアキャノンで止めを刺した。
「セレウコス被弾、戦闘不能。カサンドロス沈黙。アンティゴノス、プトレマイオス、アリストテレス、撃沈。」
「なんだと!戦闘開始からたった六分で五艦をか!?」
他にも、黒いジンは単独で並外れた機動力を見せ、剣でドレイク級を一気に切り裂いた。ジンは単独でも高い戦果を挙げる中、二機のジンは連携しており、一機がネルソン級の主砲をライフルで破壊したところでもう一機がブリッジに剣をたたき込んで破壊した。
更に追い打ちをかけるようにナスカ級とローラシア級が離脱していく艦を攻撃した。
「アスランとニコルは甘いわ……ミサキもね。」
「人を残しておけば、そいつはまた新たな武器を手に来るぞ。」
レイスとラウは部下の中でも特に甘い三人を酷評し、ヴェサリウスとガモフの主砲で沈めた。
「さて、この調子なら虎の子の三機を出す前に足つきを仕留められるかもね。」
メビウスは確かに数は多い。だが、五機か三機でやっとジン一機を撃墜できる計算だ。加えて、ジン三、四機は軽く行くXナンバーがこちらに五機ある。
〈おい!何で俺達は発進待機なんだよ!〉
ムウの横からレイラが割り込んだ。
〈アレ五機相手じゃ、第八艦隊も持たないわよ!〉
〈せめて、私達だけでも出してください!〉
〈私とユリだけでもジンの二、三機はどうにか出来ます!〉
ユリとレナも抗議するが、マリューは首を横に振る。とはいえ、確かにこのまま行けば第八艦隊の全滅は時間の問題だ。
「メネラオスに繋いで。」
「ビームを使うんだ!墜とせ!!」
「アークエンジェルよりリアルタイム回線!」
「……なんだ!?」
〈本艦は艦隊を離脱し、ただちに降下シークエンスに入りたいと思います。許可を!〉
「何!」
ハルバートンの驚愕と共にホフマンも割り込んできた。
「自分達だけで逃げ出そうという気か!?」
〈敵の狙いは本艦です!本艦が離れなければ、このまま艦隊は全滅です!〉
ハルバートンは苦虫を噛み潰したような表情になる。確かにそうだ。三隻の戦艦と二十機足らずのMS相手にこの規模の艦隊が全滅の一途をたどっている。
〈アラスカは降りられなくても、味方の制空圏内にならば突入できます!限界点まで行けば、ジンとザフト艦は振り切れます!〉
「良いだろう、アークエンジェルは直ちに降下準備に入れ。限界点まではきっちり送ってやる。」
〈ありがとうございます。〉
マリューの礼にハルバートンは苦笑した。
「相変わらず無茶をするな、マリュー・ラミアス。」
〈部下は上官に倣うものですから。〉
「ち、ハルバートンめ!第八艦隊を盾にしてでも足つきを降ろすつもりか!」
「こんなことなら私も出れば良かったわ!」
「副長が出るわけには参りません。それに、戦局は有利なのです。お二人が出るまでもないでしょう。」
アデスがいきり立つレイスを窘め、ラウは追撃を命じる。
MS隊が命令を受けて陣形を組み直す第八艦隊に飛び込み、ジンが一機撃墜された。しかし、それでもXナンバー五機は迎撃をかいくぐる。
一方、アークエンジェルの格納庫では大気圏突入をすると聞いた。
「この状況で降りるって……振り切れるの?」
「分からない、だがこのまま行けば第八艦隊が全滅するのも事実だ。」
「ザフト艦とジンが振り切れても、あの五機が問題ですよね。」
下から聞き慣れた声が聞こえた。ユリはコクピットから乗り出すと、そこにいるのは艦を降りたはずの弟だ。
「キラ!?な、なんで…降りたんじゃなかったの?」
「ストライクで待機します。まだ第一戦闘配備ですよね。」
キラはマードックとムウに相談し、そのままストライクに乗り込んだ。
レナはレイラとメカニック達に事情を聞く中でキラを見つけた。
「どうして、キラまで……」
「馬鹿…人の好意を無駄にしてるんじゃないわよ。」
レイラはキラの選択をなじった。
「あんな若い頃から戦場に入り浸ってたら、後の人生きついぜ。」
ムウは純粋な好意か使命感で残ったキラの今後の人生を憂えずにいられなかった。もし、仲間を置いていけないから自分もと思ったのならばなおのことだ。
一方、キラを見届けたフレイは先ほど重ねた唇に指を触れた。
汚らわしい…コーディネイターなんかとキスをして。
だが、だからなんだ。
そうよ……パパを殺したコーディネイターを殺してもらわないとね。
賭けだった………サイ達の前で自分が志願して軍に留まるように仕向け、キラもまた引きずり込む。そして、フレイは勝った。しかもユリとレナも自発的に志願するという豪華なおまけ付きだ。
あの二人は無理だが、キラは。そのためにどんな手も使ってやる。
ヴェサリウスからの命令を受け、五機のXナンバーが先陣を切る。
艦隊は陣形を立て直し、密集陣形にある。しかし、Xナンバーは難なく突破し、メネラオスの砲撃でも足止めにはならなかった。陣形を突破している中、シオンはアークエンジェルに目をやった。アークエンジェルからMSとMAが発進していた。
この状況で出るのか!?
一歩間違えれば、大気圏に堕ちてしまう。Xナンバーは大気圏に単独で降下可能だが、中はどうなるか。
〈ようやくお出ましか、ストライク……この傷の例だ。受け取れーーー!!〉
傷をつけられた屈辱に燃えるイザークが真っ先に突っ込んだ。ディアッカのバスターも例のMAの一機と交戦している。
〈チッ、マジでやばいぜ!!〉
正面のモニターにはこちらへ向かってくるウインドが映っていた。
「レナ……イリア達は戻れ!これ以上は無理だ!!」
〈ええ!?〉
不満を挙げるイリアをキールが制した。
〈シオンの言うとおりだ!ジンでは大気圏に落ちたら終わりだ!〉
〈…ああ、もう!またお前らがいいとこ取りかよ!〉
キールの突きつけた現実にイリアは不平を口にしながら退いた。
〈……気をつけて。〉
ミサキの心配する声を聞き終え、シオンはウインドへ向かっていった。……ここで終わらせる!
エール装備のフレイムで出撃したユリはイージスを見つけた。重力にひかれ、機体が重い。
「アスラン!」
イージスにライフルを撃ち、イージスもシールドで防いだ。間髪入れずにMAに変形して複列エネルギー砲スキュラを撃ち、ユリはそれを躱した。
あんなのを喰らえば一撃だ。
ビームサーベルでイージスに斬りかかり、イージスもサーベルを展開する。二機は地球に近づきながら、斬り結んでいる。
その時、ローラシア級が一隻突出していた。
「え!?」
レイラはローラシア級が近づいていくるのに気づき、ガンバレルとレールガンで攻撃する。だが、MA一機の火力では戦艦を沈めることは出来ない。その上、まだ離脱していないジンが撃ってきた。
「ち!」
標的をジンに変え、ガンバレルで足を破壊する。それで離脱は出来るだろう。
レイラは戦場を探すが、あの女の気配はない。ローラシア級からも感じない。
「出ていないようね…!」
ならば、まだ追撃を諦めていないジンを追い払うだけだ。
レイラはガンバレルを展開し、先に離脱した部隊は無視してまだ追ってくるジンを攻撃する。
「ガモフ、出過ぎだ!何をしている!ゼルマン!?」
〈ここまで追い込んで…元はといえば、我ら…足つき……必ず!〉
ガモフのゼルマンとの通信が切られた。
「ラウ、今からガモフの援護に行ってもアスラン達は間に合わないわ。」
「アスラン、ニコル、シオンを戻せ!今からでは間に合わん!重力に引きずり込まれるぞ!!」
アスランはヴェサリウスからの後退命令を見た。フレイムのパイロットもこれ以上は無理と判断したのか、先ほどこちらを蹴り飛ばしてアークエンジェルへと向かっていった。
「フレイムとウインドのパイロット……まさか、どちらかがユリなのか?」
キラがヘリオポリスにいたのならば、ユリもいる可能性が高い。二人共お人好しだ。きっと、ナチュラル達に利用されているに違いない。
友達なんて言ったって、ナチュラルだろうに。
ガモフが既に第八艦隊の旗艦メネラオスと撃ち合っているにもかかわらず、アスランの心は月で別れた旧友達に向いていた。
「く!兄さん!」
ウィンドはウルカヌスで斬りかかるが、シューターはライフルとレールガンで距離を置いて撃ってくる。それが当たり前だ。先ほどからずっとそれだ。そして、シューターは背中を向けたかと思えば、レールガンをパージして加速し、大気圏を離脱した。
「もうすぐ、フェイズ3……!」
これ以上は無理だ。ウインドをフルスピードでアークエンジェルに向かわせる。
〈レナ、捕まって!〉
レイラのメビウス・ゼロがいた。既に彼女も戻ろうとしている。
レナはウインドをゼロに捕まらせた。その直後にゼロがアンカーを射出してアークエンジェルに取り付かせた。
「キラは!?」
モニターを見ると、ストライクはまだデュエルと斬り合っていた。よく見れば、バスターもいたがあの様子ではもう戻れないようだ。
キラはデュエルと斬り合っていたが、戻れという通信が来たので、デュエルを蹴り飛ばし、戻ろうとした。デュエルは逃がすものかとライフルを向けるが、撃沈する前にメネラオスが射出したシャトルが二機の間に入った。シャトルに阻まれて照準がずれたビームはストライクの横を通り過ぎた。今度こそ戻ろうとしたが、デュエルは突然ライフルをシャトルへと向けた。撃ち落とすつもりだ。キラは恐ろしい感覚に襲われた。守ろうとスラスターを全開にしてシャトルへと手を伸ばした。
「やめろおぉぉぉぉ!それにはああぁぁぁぁぁ!!!」
遅かった。中にいた人達は一瞬で木っ端微塵だ。コクピットに立てられた折り紙の花……キラが守り切った証。それをくれたあの子が。
シャトルの爆発でストライクは艦から大きく離され、完全に戻る事ができなくなった。
デュエルがシャトルを撃ち落とした爆発でストライクはアークエンジェルから引き離され、シールドを構えて熱を遮る体勢だ。しかし、パルが最悪の報告をする。
「本艦とストライク、突入角に差違!このままでは降下地点が大きくずれます!」
「キラ、キラ!戻れないの!?艦に戻って!」
「無理だ、ストライクの推力ではもう!」
ミリアリアの呼びかけにナタルが流石に悲痛をにじませて不可能を断じるが、マリューはまだ諦めていない。
「艦を寄せて!アークエンジェルのスラスターならまだ!」
「しかし、それでは艦も降下地点が…」
「一機でも見失ったら意味はないわ!早く!」
マリューの指示を受け、ノイマンとトールがアークエンジェルのスラスターを使ってストライクに位置を合わせる。そして、ストライクがゆっくりと着艦した。
だが、その代償としてアークエンジェルはアフリカ大陸……ザフト地上軍の勢力圏に降りることとなってしまった。
遂にキラのトラウマ二つ目。
次はオリジナルキャラとMSで休憩もかねます