機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
辛うじてストライクを収容することが出来たアークエンジェルではあったものの、代償としてアフリカ大陸のリビア砂漠…ザフトの勢力圏のど真ん中に降りる羽目になってしまった。
しかも、キラはコクピットから救出された時………
「熱い!っ………キラ、キラ!」
着艦してもキラは中々降りてこないため、外から操作してコクピットハッチを開くと中から凄まじい高熱が吹き出し、ユリがマードックと共に吹き出した高熱に耐えてキラを引きずり出した。
「おい、坊主!聞こえるか!?」
キラを横たわらせ、マードックがヘルメットを脱がせるとヘルメットから解放された熱が吹き出してきた。
「あつ……キラ、しっかりして!キラ!」
レナも駆け寄り、呼びかけるがキラは反応しない。死んではいないが、重傷だった。
「すぐに医務室へ運ぶぞ!」
「ストレッチャーを!早く!」
ムウとレイラがパイロットスーツのファスナーを緩め、少しでもキラの熱を和らげる。
「キラ、なんで…!」
ユリが泣きそうな顔になっており、シュウも駆け寄る。
「落ち着け……!医務室で看てもらってからだ……サイ達には俺から伝える!」
ストレッチャーでキラが医務室に運ばれたのを見届けた後、シュウはマードックと共にコクピットのデータを確認して、収容された時の内部温度を確認した。
「な…こんな高温で!?」
「スペックで大丈夫と言っても……もし、キラがナチュラルだったら。」
シュウの分析にマードックは頷いた。
「ああ、間違いなく死んでいたぜ。コーディネイターだったのが幸いしたみたいだな。」
大気圏突入時にコクピットが想像を超える高熱になって、キラは倒れてしまった。子供達もそれを聞いて、現在はフレイがつきっきりで看ている。
キラの様子を見に行った後、ムウとレイラはスカイグラスパーを調整していた。ストライクとブレイズに合わせて四機配備され、ムウが一号機と二号機でストライクを、レイラが三号機と四号機でフレイムのサポートをするのを想定している。それ以外にも一種類……興味深い装備があるが、こればかりはキラとユリの意見を聞く必要がある、と言わざるをえない代物だった。それだけ強力な反面、扱いにくそうだからだ。
「ストライカーパックを装備した専用支援機、ね。キラ達三人は少尉、サイ達もみんなまとめて二等兵か。」
「俺達も一階級進んでも、この状況じゃあな。」
第八艦隊所属に併せて主だった士官、下士官は全員一階級進んでもこの状況では給料が上がったくらいしか良いことがない。
「そういえば、キラ達は何でアレのことをガンダムって呼んでるんだ?」
「ああ、それですかい?OSの頭文字を繋げて、そう読んだみたいです。」
ムウの問いにマードックが答え、シュウも続いた。
「ストライクならば、ストライクガンダム…ですか。単語一つよりはパンチが効いてますね。」
シュウのジョークにレイラはため息をついた。
「全く、男ってのは……さて、それじゃあ私もキラ達の様子を見たら少し休むから。貴方達も休んでね。」
その後、ムウと一緒にキラの様子を見たレイラは一足先に休んでいるレナの様子を見に来た。
レナはベッドに座り込んでいた。
「どうしたの?」
だが、聞かなくても理由はある程度想像がつく。シューターに乗っているという彼女の兄のことだろう。こればかりは、レイラも口外できなかった。言えば間違いなく、レナは内通の疑惑をかけられてしまう。まして、あのユニウスセブンで叔父夫婦の遺体を見てしまったのだから尚更だ。あの状況では丁重に弔うことさえ出来ず、彼らの遺体は今でもデブリベルトだ。あの巨大な棺桶と一緒だ………
「ヘリオポリスの人達…死んじゃったんですよね。あの時…」
「あ…」
あの後、シャトルがデュエルによって撃ち落とされたのは全クルーが知っている。
「小さい子もいたのに……私、先遣隊の時に私達をスパイ扱いした人達が死んだのを聞いて、『いい気味だ』、『ざまあみろ』って思ったんです。私、こんな酷い人間だったの?」
レナの嗚咽に、レイラは何も言えなかった。あの罵倒への報いだという嘲笑が、先に出てしまった。
「何も言えないけど……少し、泣いて良いから。」
優しくなでられ、レナはそのままレイラにしがみついて啜り泣いた。
シュウはマードックの計らいでキラの様子を見に行きがてら、先に上がって良いと言われて食堂にいるサイ達と合流した。熱が下がってきたようだが、フレイがつきっきりで看ている。
改めて、シュウはミリアリアに耳打ちする。
「なあ、どうしたんだフレイ?」
「分からない……」
コーディネイターへの偏見がなくなった……にしては、これは極端だ。何しろ、付き合いの浅いシュウから見てもフレイのコーディネイターへの認識はコーディネイター排斥を掲げる『ブルーコスモス』のそれに近い。彼女の父も『ブルーコスモス』に所属しているから、当然と言えば当然だ。
なんだろう……あの志願の時も思ったけど、極端すぎて逆に不気味だ。そう思っていると、フレイが戻ってきた。
「フレイ、キラは?」
トールの問いにフレイも答える。
「もう大丈夫よ。食事も取ったし……。先生には一日安静だって言われたけど、昨日の状態が嘘みたい。」
フレイは少し言いよどんだ。
「やっぱり、私達とは違うのね。身体の構造が…」
フレイの言葉にシュウがむっとしたような声を出した。
「せめて俺達より丈夫と言うべきだろう。」
一瞬、食堂を包んだ暗い雰囲気を打ち消すようにミリアリアがいつもの明るい口調で言っ
た。
「とりあえず、一安心だね。」
「フレイも疲れたろ?少し休めよ。」
サイが気遣いの言葉をかけるが、フレイは拒否した。
「大丈夫よ。食事もキラと済ませたし、早くよくなってもらわないと…」
なんだ…今の、言い方。
シュウは今の言い方に薄ら寒いものを感じた。なんだろう…そう、例えるならば早くキラに戦って欲しい?
まさか……それを狙って志願した、とかじゃないよな?
それからは何事もなく、アークエンジェルでは時間だけが過ぎていった。
「これ、整備の人に渡すように頼まれたんだけど。」
キラは不思議がった様子で見ていた。
「ストライクのコクピットにあったから、キラのだろうって。」
フレイの出した紙の花を見た途端、キラは背筋が凍った。あの子がくれた物だ。そしてそれをくれた少女はもうこの世にはいない。
「キラ?」
フレイの怪訝そうな声でキラの意識は現実に戻った。
「あ、ありがと……」
何もないように受け取ろうとしたが、花を手にした途端、キラはガクリと膝を落とした。
「キラ!どうしたの?」
フレイの言葉を聞いたら、何かが切れて、涙があふれた。
「あ……あの子…ぼく…守れ……なかった」
自分の甘さのせいだ。あの時デュエルを撃っていればあの子と一緒にシャトルに乗っていた人達もオーブへ戻れた。悔やんでももう遅いのに……
「キラ…大丈夫よ。私の想いが…あなたを守るわ……」
フレイが囁き、唇を重ねてきた……
シュウはユリの様子を見に来た。まだ眠っておらず、ぼんやりと横になっているようだった。
「どうかした?」
「なんで…戻ってきたの、あの子?」
キラのことだ……
「あの子だけでも、オーブに帰って欲しかったのに。」
本当に弟思いの人だ……弟にだけは平和に暮らして欲しくて、志願したのに。
「私のせい?キラが戻ってきたの、私のせいなの?」
シュウはそっとユリの手に自分の手を添えた。
「ユリのせいじゃない…キラが志願したのは……!」
言えない……確証などあるわけがないのだ。そんなの、いくらなんでも。
「…ねえ、しばらく…手、握っててくれる?」
ユリの問いにシュウは大きく目を見開いた。思わず、妙な期待をしてしまうが慌ててそれを押さえ込む。
「……ああ。わかったよ。」
アークエンジェルの索敵範囲外からそれを覗き込む一団がいた。
「まさか、本当に降りていたとはな。」
背中まで伸びた銀髪の少年がゴーグルを外して、感嘆する。砂漠のど真ん中にいれば、あの白い船体は目立つ。
「データでしか見たことはないが、間違いない。」
同じように金髪の少女もそれを肯定する。
「ヘリオポリスで開発されていた地球軍の新型特装艦、アークエンジェル…か。」
キラがフレイに依存していくように、レナはレイラ、ユリはシュウに依存気味です。キラに比べれば、まだ真っ当な方で、何よりフレイと違い裏がありません。が……レナの方はコーディネイターを差し引いても、おそらくキラですら先遣隊の時みたいなことを言われてたら、先がそっちだったかもしれないというのが私の解釈です。
因みにキラとユリ、二人分の意見が必要だとされるストライカー装備はリマスターを見た人なら分かるアレです。