機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
アークエンジェルではクルー達が仮眠を取り、今トールとミリアリアも仮眠を終えていた。が、そこでサイはフレイに呼びかけている。
先ほどのことだろうか。確かに、あのフレイの変わり様はミリアリアから見ても何か不気味なものを感じる。アークエンジェルに保護された頃は婚約者……という話があったサイにベッタリだったのが今度はキラにつきっきり。ブルーコスモス、とまでは行かなくても父の時にあんなことを言って…一応謝罪はあったが、どうにも違和感を拭えない。
「前は、キラのこと嫌ってたって訳じゃなかったけど…」
「コーディネイターが嫌いなんだろう?」
さらりとキラを傷つけるようなことを言うトールをミリアリアはにらみつけたが、トールは受け流す。
「フレイって、一級下じゃん。けどお前とサークル一緒だったし、校内でもよく見かけてさ。キラ『可愛いな』って言ってたんだ。」
多分、その頃からキラはフレイのことが…
「変な風にならなきゃ良いけどな。」
トールがお気楽そうに見えて、フレイの変わりようとキラやサイの関係が何かおかしな方向に進まないか懸念していた。
「そうね…」
だが、二人は気づいていなかった。既に事態が最悪の方向に進んでいたことに。
砂漠のアークエンジェルを見つめる人影があった。その人物、クラウド・デゼルトはコーヒーを飲みながら虎視眈々とアークエンジェルの様子を見ている上官の方へ声をやった。
「何も動きはありませんね。」
「まだ、彼女はお休みのようだな…」
男はコーヒーを一口飲むと、表情を変えた。クラウドはうんざりした声で訪ねた。
「今日はどんな成果なんですか?」
「いや、今日はモカマタリを五パーセントほど減らしてみたんだがね、こいつは良いね。」
「そうですか。」
クラウドはこの上官のこの趣味だけは着いていけないと思った。確かにこの辺りはコーヒー豆の産地であるが、ここまで凝るとは。それにクラウドはコーヒーよりもむしろ葉の組み合わせで様々な香りの立つ紅茶の方が良いと自分は思う。ここがスリランカやインドならどんなに良かったか………これでは副官のマーチン・ダコスタが苦労するだろう。
一見コーヒーに五月蠅いだけのふざけた人物ではあるが、この男こそ自分の上官であり、地上において『砂漠の虎』と呼ばれるザフトの将、アンドリュー・バルトフェルドである。
コーヒーのカップをクラウドに渡し、バルトフェルドは待機していた部下達の元へと向かった。彼らの背後にはザフト戦闘ヘリ・アジャイル、ザフト唯一の四足歩行の地上用MS、バクゥが佇んでいた。アークエンジェルの近くにいて、この状況、彼らはこれから戦力分析としてアークエンジェルに攻撃をかけるのだ。
「うん、やはりコーヒーが美味いと気分が良い。……さあ、戦争をしに行くぞ。」
ブリッジにトールとミリアリアが上がり、周辺のデータを観測していたアークエンジェルでセンサーが反応した。
「本艦、レーザー照射されています!照合、測的照準と確認!」
チャンドラが報告し、ナタルが第二戦闘配備を発令する。
「だ、第二戦闘配備!?」
ユリは飛び起きた。横を見ると、ベッドに寄り添う形でシュウも寝ていた。手を握ったまま。
「あ……」
思わず頬が熱くなってしまい、慌てて首を横に振る。シュウも少しずつ起きた。
「ぅ…敵か!?」
「私はアラートに行くわ!」
「ああ、先に行ってる!」
ユリは制服を着て、シュウは別方向へ走り出す。
あの後、レイラにあやされて泣き疲れて眠ったレナは飛び起きて、アラートへ向かっていた。そこへ、レイラと出くわした。
「あ、大尉…」
「少しは眠れた?」
「お、おかげさまで…」
「なら、良いわ。」
「敵!?」
キラは警報に飛び起き、ちらりと脇に眠るフレイを見た後、制服を着て飛び出していった。そして、部屋に残ったフレイは涙を流しながら、笑っていた。
「守ってね…あいつら、みんなやっつけてね。」
フレイの意図は父を殺したコーディネイターへと復讐をする事だった。その為に自分は軍に志願し、キラを利用しようと考えた。それでサイ達を巻き込む事なんて何とも思わない。自分を捧げる事だって。フレイは涙を流しながら狂ったように笑い続けた。
父を殺した、汚らわしいコーディネイターに抱かれる事だって厭わない。そう、キラは戦って、戦って死ぬんだ。ユリとレナも一緒に死んでもらう。
〈敵はどこだ!ストライク、発進する!〉
「キラ?待って、まだ…」
〈早くハッチ開けて!〉
〈まだ敵の位置も勢力も分かっていない。発進命令も出ていないぞ。〉
だが、ナタルの制止もキラは聞こうとしない。
〈何、のんきなことを言ってるんだ!良いからハッチ開けろよ!僕が行って、やっつける!?〉
「キラ?」
ミリアリアは今までと打って変わったキラの横暴、いや何かがおかしい……一体、何が?
フレイムのユリもキラの暴走に困惑していた。
「キラ!相手がどれくらいか分からないのに、出たら…」
〈戦う気がないなら、姉さんとレナは引っ込んでろ!〉
〈な…!キラ、一体どうしたの!?〉
レナも意見するが、キラは聞く耳を持たない。
〈うるさい!二人は邪魔だ!僕だけで行く!!〉
まるで聞き分けのない子供みたいだ。ユリは弟の変貌に付いていけないながらも、ブリッジに繋ぐ。
「ああ、もう!艦長、私達も出て良いですか!?」
ユリがマリューに問うと、頷いた。
〈言い様は気に入らないけど、仕方ないわ。発進を許可します。〉
ストライクが先行してランチャーで発進した。コロニーのとは違う地球の重力に引っ張られ、ストライクは着地した。すぐにザフトの戦闘ヘリ・アジャイルが現れてミサイルを撃つ。PSをオンにしてアグニを構えたところで、体勢が崩れた。
「な、足が!?」
砂漠の砂に足を取られ、発射態勢を取れない。ならばと、頭部のバルカンと右肩のガトリングでヘリに応戦するが、相手は砂丘の影に隠れてやり過ごす。
「くそ!どこに…!?」
センサーが反応し、向きを変えると巨大な獣…の姿をしたMSが現れた。TMF/A802バクゥ…ザフト地上軍の主力MSだ。
〈宇宙じゃどうだったか知らないがな。〉
〈地上じゃ、このバクゥが王者だ!〉
パイロット達がバクゥの優位性を疑わないのも無理はない。何しろ、バクゥはジンと違い徹底的に地上での戦闘に特化している。汎用性では劣る分、そのスピードは地上に降りたジンの比ではない。地上軍の花形とも言うべきMSだ。
アークエンジェルからは追加のMSが二機、発進した。X104フレイムとX106ウインドも発進した。しかし、二機も同じように砂に足を取られた。
彼らの敵はバクゥやヘリだけではない。バクゥが縦横無尽に走り回れるのに対し、人型のMSはこの砂漠の粒状に対応するのは困難だ。
〈隊長、私も出て良いのですか?〉
「ああ、良いよ。ダコスタ君、レセップスにもいつでも撃てるようにさせておいてね?」
「は!」
一番の部下であるマーチン・ダコスタが通信を送り、クラウドがビームサーベルを装備した後期型のバクゥに乗り込んだ。
クラウドはX106ウインドに向かった。クルーゼ隊が収集したデータで、あの機体は接近戦特化なのは分かる。だが、この砂漠であの装備ではバクゥどころか遙かに旧式のTFA-2ザウート相手だって苦戦する。
ウインドはビームライフルを構えるが、砂に足を取られて膝をついた。その隙を逃さず、部下のバクゥが体当たりを仕掛ける。PSに物理攻撃は効かなくても、中の人間へのダメージは別だ。
「さあ、どう対処する!?」
接地圧が逃げるんなら、合わせりゃ良いんだろう!?
キラは足を取られるのが砂の粒状が原因だと分かった。なら、それに合わせてOSを書き換えるだけだ。
ストライクは着地し、これまでと違い足を取られることはなかった。一機のバクゥが突進し、キラはそれを蹴り飛ばした。更に後ろから一機襲ってくるが、今度はアグニで殴りつけて仰向けに倒した。これならば、もう的だ。
「このぉ!」
コクピットに直接アグニをたたき込んでバクゥを撃破し、キラはユリとレナに電文を送る。OSの書き換え指示とその詳細だ。
「接地圧の調整!そういうことね!?」
ガトリングを装備したフレイムは先ほどからヘリの相手をしていたが、機関銃やミサイルを喰らって一方的にやられるばかり。迎撃しようにも足を取られて的を絞れなかった。その理由がそれならば……!
ユリも戦闘ヘリの攻撃がやんだところでOSを書き換え、まだ書き換えられずにいるウインドを翻弄するバクゥの編隊にビーム砲を撃つ。
「レナ!今のうちにOSを書き換えて!」
〈わ、分かった!〉
バクゥの部隊はこちらに標的を変え、体当たりを仕掛ける。だが、今度はそうはいかない。突進のためにジャンプしたタイミングを狙ってミサイルを発射した。至近距離で空中ならば、例えバクゥでも避け切れない。コクピットに直撃し、バクゥを撃破した。
そして、その間にウインドがもう一機のバクゥをビームライフルで撃ち抜いた。
「隊長!こいつら、運動プログラムを書き換えたのでは!?」
クラウドは三機の動きが変わった理由をバルトフェルドに伝える。他に可能性は考えられない。だが、これほどの短時間で。ナチュラルでそこまでやれる人間が三人もいるのか!?特にストライクは真っ先に対応してのけた。
〈……レセップスに打電だ。敵戦艦を主砲で砲撃させる。〉
レナはバクゥの突進に翻弄されていた。だが、徐々に慣れてきた。何機かが交互に襲ってくるのが分かる。それならば……
一機が突進してきた。まっすぐに突っ込んでくる。なら、ギリギリまで引きつけてウルカヌスで串刺しにした。別の機体が襲ってきて、今度はパンツァーアイゼンで捕まえた。バクゥは振り払おうとするが、レナはそれを引っ張るのではなく機体のスピードで接近した。基本スペックはこちらが上だ。
「しつこいのよ!」
膝蹴りで頭が吹き飛び、バクゥは後退していった。サーベルを装備したバクゥがレールガンで突進してきた。ジャンプしてそれを躱して、ビームライフルで反撃する。が、相手のパイロットも腕が良いのか砂丘に隠れてやり過ごされる。
着地すると、別のバクゥがミサイルを撃ってきた。バルカンで撃ち落としたが、そこへ先ほどの機体が突っ込んできた。ウルカヌスを振るい、左前足を取った。だが、コクピットは取れなかった。
アークエンジェルに艦砲射撃が来た。ムウとレイラがスカイグラスパーで出撃して目になろうとしている。だが、それよりも先にまたも艦砲射撃が来た。
「あ、アークエンジェル…!」
当たれば、シュウが!
ユリの頭がクリアになった。直後に再び襲ってきたバクゥ……
「邪魔よ!」
だが、ユリはその腹部にアーマーシュナイダーを突き刺した。ナイフはパイロットを貫通して、そのままバルカンでトドメを刺す。
別の機体がミサイルを撃ってくるが、ガトリングで全て撃ち落とす。否、自分でも驚くほど正確にバクゥの動きが見える。そこから、ミサイルポッドめがけてガトリングを撃って何発かが発射口に入り込んでバクゥごと吹き飛ばす。更にビーム砲とバルカンでヘリも撃ち落とした。
その間に、キラが艦砲の弾を全て撃ち落とした。
やってくれた。キラが…後は、こいつらを!
そう思った時、警告音が響いた。エネルギーが残り少ない。バクゥの突進やミサイルの直撃を受けすぎたのだ。
「くっ、せめてバクゥだけでも倒さないと!!」
と、突然飛んできたミサイルがヘリを一機撃墜した。驚いて目をやると、砂丘の向こうから数台の戦闘バギーがミサイルをバクゥに撃ちかけるのが見えた。内の一台がストライクの前で止まり、ワイヤーを発射した。混乱するユリの耳に聞き覚えのあるような少女の声が耳に入った。
〈そこのMSのパイロット!死にたくなければこちらの指示に従え!〉
「隊長!『明けの砂漠』の奴らです!!」
「…地球軍のMSを助けるのか?」
動きが変わった三機にクラウド達が翻弄されるのを見ても、バルトフェルドは冷静さを失わなかった。クラウドの部隊は先に後退したが、残った部隊の内三機が逃げるMS隊を追う。
そして、ある地点でストライクが飛んだ直後、バクゥのいる地面が突然爆発し、地面が陥没した。下が空洞のようだ。バクゥはもがく暇もなく、その直後の爆発に飲み込まれた。空洞の中に残留していた天然ガスに引火させるという巧妙な罠だ。
「撤収する……この戦闘の目的は達成した。残存部隊をまとめろ。」
「は…はい!」
バルトフェルドは心が騒いだ。あのMS、中でもストライクに。あの短時間で運動プログラムを砂地に対応させた。しかもバクゥを相手にしながら。
あれがナチュラルの仕業だと?
フレイムのパイロットもあの対空迎撃型の装備でバクゥを相手に立ち回り、しかも小さなナイフで正確にバクゥのコクピットを貫いた。ウインドはあの二機には劣るが、それでも並外れて強い。三機ともバルトフェルドが知るナチュラルのパイロットの次元を超えている
クラウド・デゼルト、まあ名字は砂漠の英語表記の読み方変えたイメージ?
ファーストで例えれば、アイシャがハモン、ダコスタがクランプならば、クラウドはアコースとコズンと思っていただければ。
後期型のバクゥを優先して回してもらえるように、優秀なパイロットです。